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消費増税ではDoomsdayは避けられない

マル激トーク・オン・ディマンド
マル激トーク・オン・ディマンド
第567回(2012年02月25日)
消費増税ではDoomsdayは避けられない
ゲスト:野口悠紀雄氏(早稲田大学大学院ファイナンス研究科顧問)

 今回は縁起でもないがdoomsdayをテーマに選んだ。原発事故の時もそうだったが、日本の将来についても、考え得る最悪の事態を知っておいた方がいいと思うからだ。より正確に言えば、今回はもう少し前向きに「doomsdayを避けるためにわれわれにはどんな選択肢が残されているか」を考えてみたい。doomsdayとは本来は聖書の黙示録に示されたハルマゲドンのことで、世界の終末を意味するものだが、ここでは日本という国家が破綻する日という意味で使っている。そしてここでいう国家破綻とは、財政破綻のことだ。

 相変わらず何一つ進展が見られない政治の閉塞が続いているが、こと消費増税については、野田政権は何が何でもそれだけは断行するつもりのようだ。そもそも野田政権がそこまでして消費増税にこだわる理由として、首相自身は日本の財政状態が待ったなしの状態にあることを繰り返し指摘している。
 しかし、経済学者の野口悠紀雄氏は、仮にそうまでして5%の消費増税が断行されたとしても、その効果は2年ほどで消えてしまうと言う。首相が増税の理由としている財政再建は、5%の消費増税ではとても実現できないと言うのだ。
 その理由はこうだ。そもそも5%の消費増税によって国庫に12.5兆円の増収があると言われているが、それが大きな間違いだと野口氏は言う。新たに国民が負担することになる5%=12兆5000億円のうち、1%分の2兆5000万円は地方消費税に回り、更に3割が地方交付税交付金として地方自治体に拠出されることが決まっているという。そのため、5%の増税によって新たに国庫に入る税収は、もともと7兆円足らずしかない。しかも、社会保障費の自然増が毎年少なくとも6000~6500億円はあるため、仮に政府の期待通り2014年に3%、2015年に5%の消費増税が実現できたとしても、2年後の2017年には国債発行額は金額も加速度的な増加パターンも、いずれも現在の状態に戻ってしまうと野口氏は説明し、それを裏付ける具体的な試算も明らかにしている。どう見ても消費税の5%増税では、焼け石に水程度にしかならないというのだ。
 野口氏は、もし消費税だけで財政の健全化を実現しようとすると、計算上は最低でも税率を30%にあげる必要があるという。そこで言う財政再建とは、ユーロ加盟国が要求されている財政健全化の水準のことで、具体的には公債依存度が一定程度に保たれ、持続的に増えていかない状況を指す。
 無論、5%の増税でも七転八倒している日本で、30%の消費税など政治的に不可能だし、そもそもそこまでの大増税になれば、経済への影響も莫大となるため、税収が税率と比例しなくなってしまう。また、そこまで高い税率になれば、食品や医薬品などの生活必需品に低減税率を適用する必要が出てくるが、インボイスが制度化されていない現行の消費税制度では、それも実現不可能だ。
 しかし、そう言って、何もしないとどうなるか。仮に5%の消費増税が実施されたとしても、その他の有効な手立てが取られなければ、日本の財政は2027~28年にはdoomsdayつまり、破綻状態に陥ると野口氏はある試算に基づいた予見を示す。それは2027~28年頃には国債の発行額が500兆円を上回ることが予想され、現在日本の国債を購入している金融機関の購入力がそのあたりで限界を迎えるからだと言う。5%の増税では15年後には日本はdoomsdayが避けられないというのが、野口氏の試算だ。
 となると、財政を再建するために残る選択肢は2つしかない。増税以外の何らかの形で増収を図るか、歳出を削減するかだ。野口氏の試算では、税収が毎年2%程度増えるか、歳出を毎年2%程度減らすことができれば、10年後、20年後の公債依存度はほとんど上がらないと言う。経済成長による増収が最も望ましいことは言うまでもないが、それが直ちに期待できない現状では、歳出カットが不可欠になると野口氏は言う。
 野口氏が不可欠な対応として提案するのは、社会保障費の削減だ。現行の制度では、様々な理由から高齢者が過分に年金をもらい過ぎていると野口氏は言う。しかも、そのかなりの部分は、厚生省(現厚労省)の計算間違いに原因があったのだという。まずは給付開始年齢を引き上げるなどして、年金に手をつけ、その上で、現在国が行っている社会保障の中で、公的な施策として行われなければならないものと、そうでないものを改めて見直す必要があると野口氏は言う。
 野口氏は、そもそも年金や医療や介護は受益者がはっきりしているため、原理的には料金徴収が可能であり、公的に行う必然性が見いだせないものが多い。シビルミニマムとしての最低保障は必要だが、それ以上のものについては、公的な補助を再考する必要があると言う。
 ただし、年金については、残念ながらもはや制度が破綻しているため、民営化することは不可能だと言う。しかも、現行の年金制度の積立金は2030年頃には枯渇するため、そこにも多額の公的資金の投入が必要になることは覚悟しておく必要があると警告する。
 doomsdayを回避するためには構造改革、とりわけ歳出構造と産業構造の改革が不可欠と説く野口氏に、話を聞いた。
(藍原寛子さんの福島報告は、今週はお休みいたします。)

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<ゲスト プロフィール>
野口 悠紀雄(のぐち ゆきお)早稲田大学大学院ファイナンス研究科顧問
1940年東京都生まれ。63年東京大学工学部卒業。72年エール大学経済学博士号取得。64年大蔵省(現財務省)入省。主計局、一橋大学教授、東京大学先端工学研究センター長などを経て01年退官。スタンフォード大学客員教授などを経て05年より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授、10年より現職。著書に『世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか』、『消費増税では財政再建できない』など。

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コメント (3)

日本の財政事情や人口構成を眺めて、高福祉高負担や中福祉中負担を
思いつく人は、いないと思うのですが、国会ではあれやこれや議論がされています。

行きつく先が、低福祉低負担で、高い消費税だけが残るくらいなら、早めに舵を低福祉低負担に切り替えてほしいものです。

結局、年寄りに冷たい政策を打ち出すと、今や大票田の老人票が得られずに選挙で不利になるということで、思い切った社会保障政策を打ち出せずにいるというところでしょうか。そんな風に国会の議論を見ています。

今回の消費税増税はお話のように、税制再建に重きを置いているのではなく、新たなバラマキに直結していること、よく理解できます。

野田総理の言葉を聞いていると国の財政が画期的に改善するように聞こえてくるが、実際は新たなバラマキですぎないのであって、言葉と遊離した世界が透けて見えます。

野田総理が財政再建というのであれば、ギリシャと同じような荒療治をしなければ改善するわけがなく、経済学者でなくとも、プラスマイナスの計算ができれば分かることです。

「国民第一」でなく「企業第一」である為替介入、金融緩和、低金利、企業優遇税制(補助金を含む)、箱モノ公共投資といったように、ずいぶん企業のために無駄金を使ってきました。しかし、いまだ懲りもせず、政府に補助金などを支出させている始末、いつまでも自立できないというか、餓鬼のような企業家の姿をみている思いがします。

お話のように、歳出構造と産業構造の改革なくしては、次の時代が切り開かれないのです。この改革を進めるのは官僚にできるわけがなく、金と数の論理による政治家でしかできないのです。民主党の若手のように議論をして集約すると言うのではなく、議論を戦わせた後は、多数決の数の論理で進めるのです。、それこそが一番民主的な方法であり、たとえ反対であっても、多数決で決まったことには従わなければならないのです。

賛成反対を明確にすれば、負けた方は、何としても次は自分たちの政策を通そうと、選挙に行くし、同じ考え方の人を集めようとするし、お金を寄付しようとするし、政治に活力が生まれてくるのです。

今の民主党のように勝ち負けを明確にせず中途半端な考え方に終始し、いつでも与党的立場でいたと思っているのでは、そこには活力が出てこないし、次の時代が切り開かれないし、民主主義が深化していかないような気がしています。

野口氏の見解は正論であるが、戦時体制を書いて日本の統治機構を詳細に説明したのに比べ、歯切れが悪い。
税収が40~50兆円なのに90兆円の予算を組んでいるのに5%の消費税アップでよいなんて子供でも問題であるのはわかる。
なぜ特別会計を含めて説明しないのか。
確かに社会保障費も問題であるが、統治機構そのものが問題で、日本全体をリストラしない限り財政の健全化などは不可能である。
そのためには戦時体制をつぶし、地方主権体制に大移行しないと実現しない。
その第一歩としては政治家が選挙で政策を国民に問い、実現する民主化が必要である。
今は政策は官僚が決め、政治家に指示して議会に諮り、決定しているので、リストラなどあり得ない。
そのシステムに挑戦したのが小沢であるが、官僚からなぶり殺しに会い、金権政治家のレッテルを張られ、国民からも憎悪されている。
同じようなことはタイでもタクシンという民主政治家は金権政治家とレッテルを張られ、権力者の王室と軍部官僚より追放されたが、復活し、民主政治を実践しそうである。タイの方が意識が高い。
今ひとり官僚機構にいぞもうとしている橋下であるが、はたして中央官僚に通用するのか未知数である。
日本の政治家が野田や藤井のように与党の政治家は国民の嫌がることをやるのが良い政治家という限りは官僚が政策を握り、政党や選挙はガス抜きという証拠である。こういう政治家がいるかぎり改悪はしても改革はしない。
私は中央政府を大リストラして8程度の地方政府を作り、年金も健保も移すべきと考える。地方政府ごとに制度が変わってもよい。
もちろん各省の業務も。日銀も8つくれば良い。
今の中央集権は中央、東京のみを日本にしてに、人、企業、金を集め過ぎて制度疲労を起こしている。
待機児童は東京の問題で、地方では保育所が余り、統廃合で遠距離通学が常習化、親が車で子供を送り迎えというお粗末さである。いわば東京も地方も後進国並みなのだ、地方に仕事を作っておれば、二重、三重の無駄は生じない。地方は保育所を壊して新築、東京は更に新築と金のかかることばかりであるのに、国民には悪くなっているのが現状。
今の制度は完全な失敗である。
統治機能の変革を伴う大リストラ以外日本の破たんは回避できない。
野口氏には戦時体制に代わる新日本の統治機構を提案していただきたい。
更に消費税は昔の物品税に戻し、ぜいたく品は25%、生活品は5%とすればよいのだ。
欧州は教育や子ども手当は日本の比でない、日本は官僚に金をばらまいているとしか思えない。
ギリシャなんて羨ましい制度であった。

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神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

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