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だから消費税の増税はまちがっている

マル激トーク・オン・ディマンド
マル激トーク・オン・ディマンド
第563回(2012年01月28日)
だから消費税の増税はまちがっている
ゲスト:高橋洋一氏(政策シンクタンク「政策工房」会長・嘉悦大学教授)

 いよいよ消費税増税が決まってしまいそうだ。野田佳彦首相は今週始まった通常国会冒頭の施政方針演説で、消費税増税の方針を明確に打ち出した。自民党も元々消費税増税を主張していたことから、「与野党協議」という名の国対裏取引によって消費税増税が実現するのは、永田町を見る限りは時間の問題と受け止められているようだ。

 確か、財政事情や少子高齢化による人口構成の変化などで、何らかの増税は避けられないとの説が幅を利かせている。実際マル激でも、これまでそのような主張を多く紹介してきた。しかし、一見、常識的に見えるこの主張に何か問題はないのかを考えるため、消費税増税の必要性を真っ向から否定している元財務官僚の高橋洋一氏に、なぜ氏が消費税増税が間違っていると主張しているかについて、じっくり話を聞いてみることにした。

 高橋氏が消費税増税に反対する理由は明快だ。

 まず、増税の前にやるべきことが山ほどあるはずなのに、それがまったくできていないこと。社会保険料も10兆円単位で取り損ないがあることがわかっているのに、それも手当をしていないし、ほとんどの法人がまったく税金を払っていない現状もそのままだ。民主党の公約だったはずの納税者番号制度や歳入庁を設立し、消費税インボイスなども導入して、まずは公正・公平な税と社会保険料徴収の仕組みを作ることが先決だと高橋氏は言う。それが改善されるだけで毎年20兆円前後の歳入増となり、消費税増税による増収以上の効果がもたらされる。それに、そもそもそれをやらずに、投網をかけるように全国民に広く徴税をする消費税を上げるのは、不公平この上もない。

 また、同じく増税の前にやるべきこととして、政府の資産売却や天下り特殊法人の整理も手つかずのままだ。そこに毎年血税が注入されるでたらめな歳出構造を放置したまま増税などを行っても、穴の空いたバケツに水を入れるようなものだし、当然、国民の不満は募る一方だ。

 それにも増して優先されるべきこととして、高橋氏は金融政策によって名目成長率をあげるマクロ政策の実施が必須だと言う。名目成長率をあげれば財政収支が改善することは、過去のデータが明確に示している。日本と並びインフレ目標の設定を拒否してきたアメリカが今週2%のインフレターゲットを設定したことを見てもわかるように、金融政策による名目目成長率の引き上げは、「ボーリングのヘッドピン」(高橋氏)の位置づけ。これをやればすべての問題が解決するわけではないが、これを外すとストライクは不可能になるという意味で、日本はまだやるべきことを全然できていないと高橋氏は言う。

 しかし、それにしても、もしそこまで明確な解があるならば、なぜ政府や日銀はそれを実行しないのだろうか。これについて高橋氏は日銀にインフレに対する極端な警戒心があることもさることながら、本当の問題は高橋氏の古巣でもある財務省にあるという。インフレターゲットが設定されマクロ政策によって名目成長率が引き上げられると、財政が健全化してしまうかもしれない。「財政が健全化すると財務省は増税ができなくなってしまう」(高橋氏)ため、財務省自身がそれを望んでいないし、それ故に、財務省の手のひらの上にのった状態にある民主党政権では、政治の側からもそういう主張は出てこないというのだ。

 一見一般人には理解しがたい論理だが、あれだけ財政健全化を声高に主張する財務省の真意は、実は財政再建そのものではなく、それを謳うことで実現する「増税」の方にあるのだと言う。それは増税こそが、税の特例措置を与える権限強化を通じて、財務省の省益や財務官僚の私益につながるからに他ならないと高橋氏は言い切る。つまり、今回の消費税引き上げでも財政再建にはほど遠いことが次第に明らかになりつつあるが、それこそが財務省の真意なのであって、そう簡単に財政健全化などされると増税する口実を失ってしまい、財務省にとっては不都合になるというのが、一連の増税論争の根底にある「財務省に乗っ取られた民主党政権」問題の本質だと言うのだ。

 財務省の手口を知り尽くした元財務官僚で、安倍政権下で財務省とガチンコ勝負を戦った高橋氏に、此度の消費税増税論争の根本的問題を聞いた。

今週のニュース・コメンタリー
•法的拘束力のない国民投票に意味はあるか
•エネルギー関連有識者会議続報
 議論が核燃料サイクルに戻ってしまう理由

<ゲスト プロフィール>
高橋 洋一(たかはし よういち)政策シンクタンク「政策工房」会長・嘉悦大学教授
1955年東京都生まれ。78年東京大学理学部数学科卒業、80年東京大学経済学部卒業。07年千葉商科大学大学院政策研究博士課程修了。博士(政策研究)。80年大蔵省入省後、理財局資金企画室長、98年~01年プリンストン大学客員研究員、06年首相補佐官補(安倍内閣)などを経て、08年退官。東洋大学経済学部教授を経て、09年政策シンクタンク「政策工房」を立ち上げ会長に就任。10年4月嘉悦大学教授に就任。著書に『消費税「増税」はいらない!』、『数学を知らずに経済を語るな!』など。

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コメント (4)

邪道ではあるが、利権権益構造を維持するためには、消費税増税なくしては成り立たなくなったと理解しています。

基本的には成長なくしては財政再建できないのですが、何度もカンフルザイを注入し、借金が限度近くに膨れ上がっている現状を考慮すると、低成長社会を是認し、180度見方を変え増税で利権構造を維持し、国債の暴落を防ぎ、国際経済特に米国の経済を維持するためにはいたしかたないという財務官僚の気持ちも理解できます。

本来的には、不公平税制を是正し、利権権益構造打破することが必要不可欠であるが、税の負担を決める人たちが税の恩恵から抜け出て国家国民サイドに立ちえないと、なかなか根本的改革が進まないと言ってよいのではないか。

総論賛成、各論反対の人たちが、「鶏が先か卵が先か」の神学論争をしていても国家の財政は改善しません。様々な副作用が出てきますが、景気の悪い時の増税がどのような結果をもたらすのか、実施してみるのも一つの思考錯誤の考え方ではないかとみています。経済が悪くなればまた減税したらよいのではないか。柔軟に考えたいのですが。

神保哲生様
 高橋洋一氏の<消費税を上げる前にするべきことがある。>
 財務官僚からこの言葉を聞きたかったですね。 
 ”それが期待できない日本であること”にこの国の衰退の主な原因があるように思えます。

 ところで、年金生活の一老女として、どうしても理解できないことがあるのですが、お教えいただけないでしょうか!?

 国家予算は何を目安に決めていくのでしょうか!?
 必要な額をどんどん上積みしていけば、ど素人が考えても、税収を上回るのは目に見えています。

 税収がこれこれだから、この範囲で納めなければならない。という発想はどこからも聞こえてこないのです。 
 もしそうなら、議員宿舎など
案にすら上るはずはないからです。 
 
 借金をしてまで国家が支払わなければならないものとは何なのでしょうか!? 借金の返済を別にして・・。
 
 税収では賄いきれない金額が国家にとって必要なら、税金そのものの額が基本的に足りないのではありませんか!?
 
 いつも、消費税など取りやすいところから増税をして、その場しのぎをしていますが、もっと根本的に税の仕組みを見直す必要があるのではないでしょうか!?
 
 そいう状況にあるなら、議員宿舎の建設や公務員給与の値上げなど論外のはずですし、天下り人事、それに付随する団体、各国にある大使館なども安い賃貸に変えるなどして、削れるところは削って、貧乏国らしい体裁に変えるべきです。東電でさえ、まだまだ削れるとところがあるということですから、国家となれば、支出を抑えるための材料など事欠かないはずです。
 
 本来の税収に見合った国家財政に近づけ・・!
 その上でお金を持っているところから税収を上げていくべきではありませんか!
 
 国民一般の犠牲の上に、政府が甘い生活を送れるほど、国に余裕がない時代を迎えてしまったということを・・自覚すべきではないでしょうか!?
 
 国中で枝葉末節のことばかり
議論しているように思えてならないのですが!!

 最低いくら税収があったら、この国は破たんせずにやっていけるのか?
 通常いくらあったら、国民がなんとか暮らしていけるのか?
 基本のところをお教えいただけないでしょうか!?
   つくば市佐藤m(_ _)m 

 

小渕政権の時、国債を100兆円発行し、金融緩和効果が出ましたが、一気にしぼんでしまいました。全国的に箱ものに投資し、インターネットバブルは記憶に新しい。ソフトバンクの株五千円があっという間に十八万円位になったのではなかったか。為替相場は1ドル150円位の円安になり、経済評論家は200円になると、もっともらしい理屈をつけていたのではないか。大企業に恩恵の及ぶ見事な虚実経済の姿であり、お金を持たない人にとっては何の恩恵もありませんでした。このような経験があるからこそ、米国のような2%程度のインフレターゲットは取りにくく、消費税増税によって、物価の安定と賃金収入減によって財政の安定化と輸出競争力を高めようとしているとみています。
新自由主義経済を信奉する人は、実経済より、虚経済、即ち数学の確率データに基づく手っ取り早い利益還元を求めがちですが、大多数の人々から一部の人々によって富を吸い上げる方式は、金融機関の破たんだけでなく、国家の破綻に発展する危険性が大きく、現実的に他国において破綻現象を起こしていることを直視すべきではないでしょうか。消費税増税か国債増発か、難しい判断を求められショック療法は確かに厳しいが、企業だけに恩恵が及びつけだけが国民に及ぶバラマキよりベターと見たいのです。

金融緩和をするならば、国民一人当たりに100万円を渡すような誰の目からも明らかに公正公平な発想じゃなければ反対。
お金を流しても結局は大きな資本を持つ者が大きな金を分捕っていくだけ。
また、今は会社の利益は株主優先で社員は後回し。
このようなシステム下では、国民が望むような効果は得られにくいだろう。

増税の前にやるべきことやる、という高橋氏の主張は至極正論。賛成です。

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神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

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