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メディアが権力に屈する時

マル激トーク・オン・ディマンド
マル激トーク・オン・ディマンド
第553回(2011年11月19日)
メディアが権力に屈する時
ゲスト:高田昌幸氏(ジャーナリスト)

 北海道警察の裏金問題を追及し、数々のジャーナリズム賞を受賞してきた道新のエース・高田昌幸氏が、この6月、北海道新聞を退職した。高田氏は退職の理由をあくまで一身上の都合としているが、一度は警察の不正を徹底的に追及していたはずの道新が、やがて警察と手打ちを行い、攻めの姿勢を失っていったことに対する落胆を、高田氏は隠そうとしない。

 道警裏金事件とは、架空の捜査協力者に対する謝礼を報償費として計上し、それをプールした資金を幹部らが私的に流用していた事件で、その金額は道警だけで少なくとも4億5千万円にのぼるとみられている。捜査を口実に国民の税金を騙し取る、悪質な横領行為に他ならない。当時、北海道以外でも、全国の警察で裏金がプールされていたことが明らかになっていたが、その中でも道新の道警に対する追及は厳しく、2003年11月に裏金問題が発覚してから、道警がその存在を認めるまでの約1年の間、道警の裏金問題は道新の紙面を飾り続けた。その間、道新が裏金問題を扱った記事の数は1000本にのぼると高田氏は言う。

 高田氏はデスクとして、裏金問題の取材班の陣頭指揮に当たっていた。同じ頃、各地で警察の裏金問題が報道されていたが、その多くは警察がその事実を否定し、それ以上メディアによる追及が行われないまま、事件が収束していた。しかし、高田氏を始めとする道新の記者達は、自分たちだけは警察がその事実を認めるまで徹底的に不正を追及し続ける意気込みでこの問題に挑んでいったと高田氏は言う。

 しかし、ある時期を境に、他の地域と同様、道新の報道姿勢も変わっていく。

 そもそも通常の日本の警察報道は、大手マスメディアが記者クラブを通じて警察からの非公式な情報提供を受けることで成り立っている。メディアが警察の不正を追及するのは、異例中の異例と言っていい。道新が警察の裏金問題を追及していた約一年間、道新は警察からのリーク情報をほとんどもらえなくなっていたと高田氏は言う。そして、その中には事件や事故に関する基本的な警察情報も含まれていた。つまり、日本の報道機関は警察から情報をもらえなくなると、報道機関としての基本的な機能を果たしていくことができない欠陥構造があるということになる。

 道新は幹部の人事交代を機に、警察との関係修復に乗り出す。道警の元総務部長が道新を名誉毀損で訴えた裁判の過程で、道新と道警の幹部が36回にもわたり関係修復のための会談を繰り返していた事実が明らかになった。また、高田氏は自身の処遇については多くを語ろうとしないが、未曾有の警察不正を暴き、2004年の日本新聞協会賞以下、ジャーナリズムの賞という賞を総なめにした取材班を率いたエースの高田氏に対して、道新はその後警察とは一切関係のない部署を転々とさせている。退職時の高田氏の役職は本社運動部次長だった。

 警察との関係が修復されるのに呼応して、道新の攻めの報道姿勢は失われていったと高田氏は言う。

 これは警察に限ったことではないが、行政機関の内部にジャーナリズムが取材拠点を持つことは、市民社会が権力を監視する上での大きな財産となり得るものだ。しかし、現実の記者クラブでは、それが権力との癒着を生み、記者の取材力を低下させるなど、本来の目的とは逆に作用している。高田氏はこの問題を改善するためには、記者クラブの取材拠点を維持しつつ、それをより開かれたものにしていく必要があると提言する。

 裏金問題をめぐる道新と道警の関係の推移を通じて権力とメディアのあるべき関係を、当事者としてそれをつぶさに見てきた高田氏と考えた。

今週のニュース・コメンタリー
•予防原則の常識を根底から覆すイレッサ逆転無罪判決
•エネルギー関連有識者会議続報
 架空の未来を前提とした議論で溝埋まらず

関連番組
ニュース・コメンタリー(2010年10月30日)
道警名誉毀損訴訟は"訴えの価値"を満たしているか
高田昌幸氏(道警名誉毀損訴訟被告・北海道新聞記者)に聞く

<ゲスト プロフィール>
高田昌幸(たかだ まさゆき)ジャーナリスト
1960年高知県生まれ。85年法政大学法学部政治学科卒業。86年北海道新聞社に入社。本社報道本部次長、ロンドン支局、東京支社国際部次長、本社運動部次長などを経て、2011年からフリー。共著 に『権力 VS 調査報道』、『日本の現場 <地方紙で読む>』など。

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地に足の付いた『情報公開法』が有れば、

このような馬鹿げた状況には陥っていない。

権力有る官僚等公務員システムが巨大なせいでもある。

個人情報保護法より情報公開法が優先されるべきである。

これら全て政治家たる者の資質が官僚退職者等で補われている現状、政治家たる政治家がほとんど見受けられない事が原因の一つである。

神保 様

高田氏の記事は何度かこのジャーナルで拝見していますので感慨深く、虚しさが湧き出るのを禁じ得ません。

まれにみる純粋な方で好青年のイメージがにじみ出た方で、お金を抜きにして物事を追求しようとする姿勢が如実に出ていましたので、非常に残念な気がします。

道新が一年に亘り、道警の記事を1,000本も掲載したということは驚きです。一般的な新聞と比較するとかなり革新的な新聞であると見ていますが、高田氏の処遇をみると、権力に屈した新聞社に堕落しているのであるから、高田氏が退職を決意したのは必然の成り行きと理解しています。

メディアは、政治、企業に関する記事は、官僚機構、企業に依存しなければ記事が書けないのです。官僚機構、企業が国民に対するディスクローズを真剣に考えていなければ、真剣に国民に向き合う気持ちがなければ、利害を超えた公僕としての奉仕の精神がない限り、永遠にメディアの本質論は展開できないと言える。

現在のように広告に依存せず、宗教色のない、イデオロギーの顕在化しないメディアは記者クラブのような閉鎖的規制から排除され、民主主義社会とは名前ばかりであって、実質的権力規制社会と改めた方が正しいのではないかと言う気がしています。

このような異質な一部権力が社会を支配する国にあって、競争主義を組み入れることは、権力者のもとで被支配民である国民が利権を争い格差を助長して行くのであって、多くの国民にとって好ましいことではないのに、TPPに賛成する人が半数近くいるのは驚きでしかない。自分のことが全く分かっていないと言ってよいのである。

高田氏が道新を退職されどのような道を歩まれるかわからないが、持っておられる反権力の魂がつぶされることなく戦ってほしいと願う一人です。一度しか体験できない人生においてご自分の主張を通す人生の方が、権力に阿る人生より何倍も勝っていると考えています。今後の御活躍を祈ります。

メディアが情報提供機関としての役割がある。
けれど、企業である以上利益を求めなくては存続できない背景がある。
情報を提供する側とすれば、何らかの見返り、金銭的でないにしても、批判される場合は、自己保全の立場から情報提供されなく場合もある。
自己矛盾を抱えていると言ってよい。
けれど、社会問題を提起できるのもメディアである。
近年ネットの発達により、秘匿個人として、社会問題と個人で提言できるようになり、メディアの環境も変わりつつあるのかもしれない。
とは言え、個人では、権力組織や広範囲な情報を直接に収拾することは出来ない。
メディアとネット情報の融合、今これを模索している時代と言えるのかもしれませんね。

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Profile

神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

BookMarks

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ビデオジャーナリスト神保哲生のブログ
http://www.jimbo.tv/

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-----<著書>-----

新刊!
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『格差社会という不幸』
2009年12月、春秋社、共著


『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』
2009年7月、ダイヤモンド社


『オルタナティブ・メディア―変革のための市民メディア入門』
2008年12月、大月書店、翻訳・解説


『教育をめぐる虚構と真実』
2008年10月、春秋社、共著


『ツバル―地球温暖化に沈む国』
2007年7月、春秋社、増補版


『ビデオジャーナリズム―カメラを持って世界に飛び出そう』
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『中国―隣りの大国とのつきあいかた』
2007年6月、春秋社、共著


『アメリカン・ディストピア―21世紀の戦争とジャーナリズム』
2003年9月、春秋社、共著


『天皇と日本のナショナリズム』
2006年11月、春秋社、共著


『ネット社会の未来像』
2006年1月、春秋社、共著

『粉飾戦争―ブッシュ政権と幻の大量破壊兵器』
2004年3月、インフォバーン、監訳

『プロパガンダ株式会社―アメリカ文化の広告代理店』
2004年8月、明石書店、解説

『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』
2002年10月、春秋社、共著

『地雷リポート』
1997年11月、築地書館

『ビデオジャーナリストの挑戦』
1995年11月、ほんの木

『重要政策全比較―シリウス・日本新党・平成維新の会』
1993年7月、ほんの木

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