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広島・長崎の教訓を今われわれは活かせているか

マル激トーク・オン・ディマンド
マル激トーク・オン・ディマンド
第538回(2011年08月06日)
広島・長崎の教訓を今われわれは活かせているか
ゲスト:沢田昭二氏(名古屋大学名誉教授・原水爆日本協議会代表理事)

 原発事故の収束の目処が立たないまま、今日、日本は66回目の広島・長崎の原爆の日を迎えた。

 被爆国の日本が、なぜここまで原発に依存することになったかについて、われわれは説得力のある説明を持たない。しかし、原子爆弾が後にもたらす放射能被曝の恐ろしさを身をもって知る国として、今回の原発事故への対応に、われわれはその経験を活かせているだろうか。また、それができていないとすると、それはなぜなのか。

 自身が66年前の広島で爆心から1.4キロの地点で被爆した経験を持ち、その後、核兵器廃絶運動に参加した名古屋大学の沢田昭二名誉教授は、今、福島で起きていることと、自身も体験した広島で原爆投下後の状態に、強い共通点があると指摘する。

 広島で原子爆弾が爆発した際、その爆風と熱、そして爆発の際に飛び散った放射線によって、多くの人命が失われた。しかし、その後、キノコ雲から広い地域に降り注いだ放射性物質によって、何キロ、あるいは何十キロにもわたって多くの人が低線量被曝や内部被曝をしている。その状況は今の福島の状況と共通点が多いと沢田氏は語る。

 しかし、原爆を投下したアメリカは、原爆の爆風や放射能を直接浴びた近距離初期放射線による外部被曝者のみを原爆の影響の及ぶ範囲と定義し、遠距離の低線量被曝や内部被曝の影響は無視したと沢田氏は言う。広範囲に広がる低線量被曝や内部被曝も考慮に入れなければならなくなると、原爆の一般市民への影響はあまりにも大きくなり、その使用が国際法上も人道上も正当化できなくなるからだ。結果的に原爆の爆発後、キノコ雲から広範囲に降り注いだ放射性物質によって爆心から遠く離れた場所で被曝した人や、原爆が投下された後、救助などのために広島に入り被曝した人たちは、調査の対象ともなっていないため、実態も把握できていないと沢田氏は指摘する。そして、そのことが、原爆症の認定問題でも、後々多くの人を苦しめることになる。要するに、日本政府は66年前の原爆についても、未だにその影響の全体像を把握できていないのだ。

 世界で唯一原爆の被爆経験を持つはずの日本が、原発事故やその後の放射能汚染への対応がいたってお粗末だったことの理由の、少なくとも一端は、そこにあるのかもしれない。日本は66年前に、今の福島と同様の経験をしていたにもかかわらず、その総括ができていないことのツケが、こういう形で回ってきていると、言い換えることも可能かもしれない。

 非人道性や非倫理性を理由に核兵器を批判し、この廃絶を訴える沢田氏は、同じ理由で原発にも反対の立場を取る。仮に原発が効率的に電力を供給する手段であったとしても、一旦事故が起きれば、これだけ広範囲に深刻な被害をもたらす原発は、やはり非人道的なものと断じざるを得ないからだ。

 そして、自身が素粒子を研究する科学者でもある沢田氏は、とりわけ科学者の責任を強調する。原爆を開発したアメリカの科学者たちの多くは、ナチスドイツの前にアメリカが原爆を持たなければ大変なことになると考え、その力をマンハッタン計画の下、ロスアラモス研究所に結集させた。しかし、ドイツが無条件降伏した後、プロジェクトに参加する科学者の多くが原爆開発の中止を訴えたにもかかわらず、アメリカ政府はこれを却下し、様々な戦略上の判断から日本にこれを投下した。ルーズベルト大統領に原爆開発を進言する書簡を出したアインシュタインは、そのことを後世にわたり我が身の恥としたという。

 元々原爆の副産物だった原子力発電についても、1950から60年代にかけて、科学はこれを無限の可能性を秘めた夢のエネルギーと位置づけ、世界中で熱心に研究・開発が進められた。しかし、度重なる事故で原発が当初考えられていたほどいいものではないことがわかったあとも、日本を含む一部の政府はこれを推進し続けた。そして、そこには常に政治の意思と、政治の意を汲んだ御用学者の後押しがあった。

 個々の科学者の意図の如何にかかわらず、科学が常に政治利用されることは歴史が証明している。沢田氏は科学者の責任として、人々を信頼し、常に社会にとって重要な情報を提供することの意義を強調するが、原爆投下から60余年がたった今、われわれはそれができているだろうか。

 原水協の世界大会に参加中の沢田氏を広島に訪ね、広島・長崎の教訓が福島で活かされているかを議論した。

今週のニュース・コメンタリー
・セシウム牛は全頭検査でいいのか
解説:夏堀雅宏氏(日本動物高度医療センター院長・放射線科科長)

・福島報告
夏休みを境に転校が急増する見込み
報告:藍原寛子氏(医療ジャーナリスト)

関連番組

特別番組
福島第一原発事故

<ゲスト プロフィール>
沢田昭二(さわだしょうじ)名古屋大学名誉教授・原水爆日本協議会代表理事
1931年広島県生まれ。55年広島大学理学部卒業。61年広島大学大学院理学研究科博士課程修了。66年名古屋大学理学部教授。95年名古屋大学名誉教授。2003年より原水爆禁止日本協議会(原水協)代表理事。著作に『核兵器はいらない!知っておきたい基礎知識』、共著に『共同研究広島・長崎原爆被害の実相』、『素粒子の複合模型』など。

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神保 様

広島、長崎の教訓が生かせるかどうかは、核保有国の良心にかかっており、おかしなことに国際社会全体の総意としての意思表示ができない国家と、二段構造の国家群に分けられています。

オバマ大統領が核軍縮、不拡散戦略を理想として掲げたが、現実的政略は核削減を進めていくことであって、具体的削減計画が提示されたわけではなく、理想と現実のギャップが解消されたわけではない。

一方、核のエネルギー利用である原発は、本質的には核利用であって、核爆発によって生物を無差別に大量に殺戮する核兵器と異なるところがない。

人間の知恵によって、瞬間的に巨大な爆発を引き起こし殺戮兵器化するか、核分裂をコントロールすることによって計画的にエネルギーを供給すると言うように、あくまでも人間のコントロールの完全性に委ねられているのである。人間が神でない限り、未来永劫に亘って爆発を回避することなど不可能なことであって、もし、この真理を無視する傲慢さが出れば、どこかで国家破滅的な報いが避けられない気がしています。

特に、使用済み燃料棒を現在原発を売り込んでいる国から引き取るなど考えられない条件を提示しているのは、あきれてものが言えない。企業の輸出に国家が安全を保障するなど、いつから国家が企業の引き起こす事故の責任を負わなければならなくなったのか、疑問点が多すぎる。国外で企業の起こす事故の賠償問題まで国民に降りかかってくるとしたら、とんでもないことです。

現在の福島の事故が収束していないのに、輸出する愚かさを内閣が認めたような報道がされているのに、異論をとなえないマスコミはどこかおかしいのですが。国家全体がどこか麻痺しているのではないか。

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2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
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