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2011年5月28日

フェアトレードで被災地支援を

渡辺龍也氏
マル激トーク・オン・ディマンド
第528回(2011年05月28日)
フェアトレードで被災地支援を
ゲスト:渡辺龍也氏(東京経済大学現代法学部教授)

プレビュー

 東日本大震災は東北地方を中心に未曾有の被害をもたらしたが、震災発生直後から被災地には多くのボランティアが結集し、資金面でも多額の義援金が集まっている。
 しかし、ボランティアや寄付に加えて、もう一つ誰にでもできる被災地支援がある。それがフェアトレードの考え方を利用した「買い物による被災地支援」だ。

 甚大な被害を受けた被災地が、復興までに長期にわたる支援を必要としているのに対し、ボランティアや義援金は震災発生直後には大いに盛り上がりを見せるが、一過性に陥りがちな欠点がある。しかし、フェアトレードは持続可能な支援となる可能性を秘めているという点で、大いに注目に値する。

 元来フェアトレードは、大資本や多国籍企業などの搾取に苦しむ発展途上国の農業生産者を守るために考案された理念であり手法でもある。しかし、単に貧しい途上国の生産者に援助を与えて支援するのではなく、彼らが生産する産品を正当な価格で購入することで、彼らが生産者として本来持っている権利を守ると同時に、彼らの尊厳を守り、生産活動の持続性を支援するところに力点が置かれている。支援される人々の尊厳を守りながら、彼らとの連帯を重んじるのが、フェアトレードの特徴と言っていいだろう。

 フェアトレードは最終的には先進国の消費者の購買活動によって支えられることになる。消費者が、公正な価格で生産者から購入されたことが証明されたフェアトレード商品を買うことで、生産者に正当な対価が保障される仕組みだ。消費者は国際的な認定を受けたフェアトレード団体によって認証した商品を買うことで、これに参加することができる。

 NPO論や国際開発協力論が専門でフェアトレードに詳しい東京経済大学現代法学部の渡辺龍也教授は、このフェアトレードの仕組みを被災地支援に活用することを提案している。元々、フェアトレードが、弱い立場にある途上国の人々の生活の改善や自立を、買い物を通じて支援する「連帯活動」であることから、フェアトレードには被災地を支援し、被災地の人々と連帯していく上で応用可能なノウハウが、多く含まれていると考えるからだ。

 まず、一般市民にとって一番身近なフェアトレード的被災地支援方法は、個人個人もしくは小規模な共同購買グループを作って、被災地で生産された産品を直接買い支えることだ。フェアトレード本来の考え方では、購買グループの代表者が一度被災地に入り、生産者との直接対話を通じて定期購入の関係を構築することが望ましいとされるが、それだけの時間と手間をかけずとも、インターネットを使えば容易に被災地の生産者を見つけることができるはずだ。

 また、スーパーやコンビニなどが店の一角に被災地産品コーナーを常設すれば、消費者は容易に被災地支援が可能になる。ヨーロッパのスーパーにはフェアトレード商品のコーナーが常設されているところが多いが、日本でもまずは被災地でこれをスタートさせ、いずれは本来のフェアトレード商品にまで広げていくのも一案だ。

 その他、政府や自治体が学校給食などで被災地調達を増やしたり、レストランや企業の社員食堂などによる被災地支援メニューの導入はどは、既に方々で始まっている。

 フェアトレード団体の認証を受けることでフェアトレード産品であることを証明するフェアトレードラベルも、被災地支援に適用できるかもしれない。NGOなどが明確な基準を作り、ある商品が被災地産品であることを証明するラベルを考案すれば、消費者は被災地産品を容易に知ることが可能になる。類似した2つの商品がある時に、片方にだけそのラベルが付いていれば、多少値段が高くても、そちらを優先的に買おうと考える人も少なくないだろう。

 フェアトレードとはどういう考え方でどのような仕組みになっているのか、欧米先進国と比べて日本でフェアトレードの普及が遅れているのはなぜか、フェアトレードを被災地支援に活用する手段としては、どのような方法が考えられるのかなどを、渡辺氏と考えた。


今週のニュース・コメンタリー
•刑事司法の欠陥を全てさらけ出した布川事件
解説:青木理氏(ジャーナリスト)

•福島報告
子供を放射能から守るための教育現場の苦悩
解説:藍原寛子氏(医療ジャーナリスト)

関連番組

特別番組 (2011年03月16日)
東日本大震災

ニュース・コメンタリー (2011年05月21日)
福島報告続報
校庭の土壌除去を行った郡山市の英断と政府の無為無策
報告:藍原寛子氏(医療ジャーナリスト)

プレスクラブ(2011年05月25日)
布川事件再審判決後の記者会見

プレスクラブ(2011年05月10日)
福島原発巨大事故 今何が必要か

<ゲスト プロフィール>
渡辺 龍也(わたなべ たつや)東京経済大学現代法学部教授
1952年東京生まれ。1977年東京大学教養学部教養学科卒。1989年タフツ大学フレッチャー国際法外交大学院修士課程修了。NHK記者、国際協力NGOセンター調査研究主幹、日本国際ボランティアセンター(JVC)ラオス事務所長などを経て、2000年より現職。著書に「『南』からの国際協力」、「フェアトレード学」など。

2011年5月21日

この震災を日本衰退の引き金にしないために

広瀬弘忠氏
マル激トーク・オン・ディマンド
第527回(2011年05月21日)
この震災を日本衰退の引き金にしないために
ゲスト:広瀬弘忠氏(東京女子大学名誉教授)

プレビュー

 2万人を超える死者・行方不明者と25兆円とも言われる被害をもたらした東日本大震災は、既に日本史に残る大災害となることが確実だが、とは言え日本もまた世界の他の国々も、過去に様々な歴史的大災害を経験してきている。当時のヨーロッパの人口の半分を奪った14世紀のペスト禍やロンドン市街の全域をほぼ焼き尽くした1666年のロンドン大火、10万人以上が亡くなった1923年の関東大震災などはそのほんの一例だ。

 災害心理学が専門で国内外の大規模災害を多く研究してきた広瀬弘忠氏(東京女子大名誉教授)は、大規模災害がその社会が潜在的に内包していた社会変革を大幅に加速することが、過去の災害のケーススタディを通じて明らかになっていると指摘する。

 つまり、潜在的な成長力を秘めていた社会の場合、大地震、大津波、大洪水、大火災などの大規模災害が、その成長の重しになっていた古い体制や古い仕組みを一気に洗い流してしまうことで、急激な成長が実現したり、イノベーションが一気に進んだりする場合もあるが、もともと衰退傾向にあった社会では、逆に、災害によって衰退が加速する可能性もあるというのだ。

 例えば、1923年の関東大震災は首都東京に壊滅的な打撃を与えたが、復興の過程で東京は震災以前よりも大きく成長し、他の世界の主要都市と肩を並べる大都市に変身を遂げたと広瀬氏は言う。震災前は大阪と肩を並べる程度の経済規模しかなかった東京が、震災を機に、当時の政府が国策として首都に富を集中させる政策を実施したため、震災は東京を大きく脱皮させるきっかけとなったという。

 しかし、1906年のサンフランシスコ大地震のように、災害が社会の衰退のきっかけとなる場合もある。まだゴールドラッシュの熱冷めやらぬ20世紀初頭、アメリカ西海岸最大の都市だったサンフランシスコはカリフォルニアの政治、経済、文化の中心として繁栄していた。しかし、この年の4月にサンフランシスコを襲ったマグニチュード8.3の巨大地震のために、この都市の機能は完全に破壊され、その後復興は果たしたものの、カリフォルニアの政治・経済の中心の座は南カリフォルニアのロサンゼルスに完全に奪われてしまったまま、今日に至っている。

 同じようなことが1995年の阪神淡路大震災後の神戸にも当てはまると広瀬氏は言う。神戸も形だけは見事に復興を果たしたかに見えるが、破壊された港湾施設が復旧するまでの間に、神戸の港湾都市としての機能は韓国の釜山や東京に吸収され、復興後も神戸港の荷揚げ量や積み出し量が、震災前の水準に戻ることはなかった。そして、港湾都市としの神戸の衰退は、実際は震災以前から徐々に始まっていたものが、震災によって決定的に加速したものだったと、広瀬氏は言う。

 広瀬氏は過去の大震災のケーススタディなどから、大震災がその社会にマイナスに作用するかプラスに作用するかは、被災地となった社会が元々持っている潜在的な活力に加え、その周辺の社会が被災地に対してどのような内容の援助をどれだけの量行うかにかかってくると指摘する。この場合の周辺の社会とは、被災を免れた日本の他の地域やそこで事業を営む企業、そして国のことを指す。また、場合によっては外国資本や外国政府がその役割を果たすこともあり得る。

 今回の東日本大震災が東北地方に与えた打撃は甚大で、しかも地域の活力は震災前から高齢化や人口減少に喘ぐなど、低下傾向にあった。しかし、その地域に国や今回被災を免れた日本の他の地域がどのような資本の投下を行うかによっては、この震災が地域の衰退傾向を転換する千載一遇の機会にもなり得ると広瀬氏は言う。ただし、その場合は相当の痛みを伴うことが避けられないだろうとも。

 震災のエキスパート広瀬氏と、歴史的な考察を交えながら、この震災を日本衰退の引き金にしないために、今われわれが何をしなければならないかを考えた。

今週のニュース・コメンタリー
•福島原発事故続報1
なぜ根拠なき楽観シナリオを垂れ流し続けるのか
•福島報告続報
校庭の土壌除去を行った郡山市の英断と政府の無為無策
報告:藍原寛子氏(医療ジャーナリスト)

関連番組

特別番組 (2011年03月16日)
東日本大震災

スペシャルリポート(2011年05月19日)
核燃料露出の1号機は既に人類未体験ゾーンへ
解説:小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)

スペシャルリポート(2011年05月19日)
依然として最大の脅威は内部被曝のリスク
ゲスト:矢ヶ崎克馬氏(琉球大学名誉教授)

<ゲスト プロフィール>
広瀬 弘忠(ひろせ ひろただ)東京女子大学名誉教授
1942年東京都生まれ。68年東京大学文学部心理学科卒業。70年同大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。同大学助手、東京女子大学助教授などを経て、83年同大学教授。2011年4月より現職。文学博士。著書に『生存のための災害学』『巨大地震ー予知とその影響』(編著)、『人はなぜ逃げおくれるのか』など。

2011年5月14日

ゴジラ+鉄腕アトム+田中角栄=原発大国への道

武田徹
マル激トーク・オン・ディマンド
第526回(2011年05月14日)
ゴジラ+鉄腕アトム+田中角栄=原発大国への道
ゲスト:武田徹氏(ジャーナリスト)

プレビュー

 日本は地震国で津波も多い。海に囲まれた国土は狭く、平地面積も少ないため、もしもの時に逃げる場所がほとんどない。その上、日本はそもそも世界で唯一の被爆国として、原子力の恐ろしさを誰よりも知っている。よりによってその日本が、なぜこともあろうに原発大国への道を選んだのか。この謎はそう簡単には解き明かせそうにない。

 しかし、マル激の司会でお馴染みのジャーナリスト武田徹氏は、著書『わたしたちはこうして「原発大国」を選んだ』の中で、ゴジラ、鉄腕アトムから大阪万博を経て田中角栄の電源三法、そして今日の福島に至る道のりを丁寧に辿っていくと、なるほどどうして今日日本が、54基もの原発を抱える世界有数の原発大国になっていったのか、少なくともその道程が見えてくると言う。

 今週のマル激は武田氏をゲストに迎え、その謎解きに挑んでみた。

 まず武田氏は、日本は被爆国であるが故に、原子力の威力を日本ほど痛感している国はないと指摘する。日本国憲法の起草の過程で、GHQのホイットニー准将が「戦争放棄」の条文を含んだGHQの憲法草案を呑ませるために、吉田茂外相ら日本の交渉団に対して口走ったという「原子力の日光」の一言は、当時唯一の核保有国だったアメリカの権勢を象徴する一言として、戦後の日本の針路に決定的な影響を与えることになる。

 水爆が生んだとされる怪獣ゴジラや原子力で動くロボットの鉄腕アトムなども、今では単なる特撮映画や漫画のキャラクターとしてお馴染みだが、実はそのオリジナルのストーリーでは、当時の日本人の原子力に対する複雑でアンビバレントな感情を色濃く反映していると武田氏は言う。

 しかし、原子力の威力も怖さも知っている日本が、最初に原子力開発への第一歩を踏み出したきっかけは、どうやらアメリカの意向だったようだ。1951年にサンフランシスコ講和条約が締結され、アメリカのアイゼンハワー大統領が国連演説の中で原子力の平和利用を提唱した1953年、日本では原子炉建造予算2億3500万円が国会で可決しているが、その予算案を改進党の中曽根康弘代議士が提出したのは、何と日本の第五福竜丸が被爆したアメリカによるビキニ環礁の水爆実験の二日後だった。

 当時日本では科学者たちは、被爆国である日本が原子力開発を進めるべきか否かについて、激しい論争が繰り広げられていた。その頭越しに、しかもアメリカの水爆実験の直後に国会で原子力予算が計上されたのは、ひとえにアメリカの意向を汲むものだった。そして、アメリカがそこまで日本に原子力発電を奨めた理由は、冷戦下における自由主義陣営に原子力の果実の分け前を与えることで、日本などの同盟国の共産化を防ぐ意図があったのだろうと武田氏は言う。

 畏怖と憧れが同居する中で、予算だけが先行して計上される形で歩みを始めた日本の原子力に対する感情を大きく変化させたのが、大阪万博だった。日本の高度成長と技術の進歩に対する自信の回復を象徴する大阪万博は、そもそも原発から電力が供給されていたが、そこではもっぱら技術が人類にもたらす輝く未来が強調され、その陰やマイナス面に人々は目を向けようとしなかった。日本でも1960年代から続々原発の建造が始まっていたが、既にこの段階で原発は様々な問題を起こしていた。しかし、そこから生まれる大きなエネルギーがもたらす豊かさに人々は目を奪われ、その負の遺産に気づかなかったか、あるいは気づいていても見て見ぬふりをしてしまった。

 ビデオニュース・ドットコムで毎週福島原発の現状を解説している京都大学原子炉実験場の小出裕章助教が、東北大学で原子力を志し、そしてその矛盾に気づいたのも、ちょうどこの頃のことだった。『マル激トーク・オン・ディマンド第524回(2011年04月30日)原子力のこれまでとこれからを問う』

 そして、田中角栄首相の登場で、原子力政策は決定的な変質を迎える。日本列島改造論の一翼を担う形で実施された電源三法(電源開発促進法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法)は過疎地への原発の誘致が完全に利権として定着するきっかけを作ってしまった。

 これもまた、自民党で脱原発を明言する数少ない政治家の一人、河野太郎衆議院議員が、4月30日のマル激の中で語った「自民党の原発関係の勉強会や部会には、原発を誘致した地元の議員しか来ていないため、エネルギー政策の議論を終ぞしたことがない」と符合する。『マル激トーク・オン・ディマンド第524回(2011年04月30日)原子力のこれまでとこれからを問う』

 それ以降、日本の原子力政策は、エネルギー政策という表の顔のほか、地元への利益誘導や過疎地への再分配政策という裏の顔を併せ持つ形で、今日まで推進されてきたことになる。

 今回のマル激では更に、原子力政策の安全保障面での妥当性についても議論を試みた。

今週のニュース・コメンタリー
•1号機メルトダウンで工程表は振り出しに
•政治の声は福島に届いているか
報告:藍原寛子氏(医療ジャーナリスト)
•ビンラディン殺害劇に見るアメリカの異常性
解説:菅原出氏(国際政治アナリスト)

関連番組

特別番組 (2011年03月16日)
東日本大震災

マル激トーク・オン・ディマンド 第524回(2011年04月30日)
原子力のこれまでとこれからを問う
ゲスト:(PART1):小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)
    (PART2):河野太郎氏(衆院議員)、武田徹氏(ジャーナリスト)
    (PART3):細野豪志氏(原発事故対策統合本部事務局長)

マル激トーク・オン・ディマンド 第337回(2007年09月14日)
なぜ地震大国の日本が原発なのか
ゲスト:田中三彦氏(元原子炉製造技術者)

マル激トーク・オン・ディマンド 第317回(2007年04月27日)
見えてきた原発政策の限界
ゲスト:伴英幸氏(NPO法人原子力資料情報室共同代表)

マル激トーク・オン・ディマンド 第178回(2004年08月20日)
美浜原発事故を関電問題で終わらせていいのか
ゲスト:槌田敦 名城大学教授 (熱物理学・環境経済論)

スペシャルリポート(2011年05月12日)
空焚き1号機は溶融した核燃料が圧力容器の外に
小出裕章・京都大学原子炉実験所助教に聞く

インタビューズ(2011年03月20日)
予言されていた"原発震災"
広瀬隆氏インタビュー


プレスクラブ (2011年05月13日)
福島原発事故対策統合本部記者会見

プレスクラブ (2011年05月10日)
福島原発巨大事故 今何が必要か

<ゲスト プロフィール>
武田 徹(たけだ とおる)ジャーナリスト
1958年東京都生まれ。82年国際基督教大学教養学部卒業。89年同大学大学院比較文化研究科博士課程修了。84年二玄社嘱託として編集・執筆を担当、89年よりフリー。著書に『殺して忘れる社会』、『私たちはこうして「原発大国」を選んだ』など。07年より恵泉女学園大学文学部教授を兼務。

2011年5月 7日

増税なき復興計画のすすめ

岩田規久男
マル激トーク・オン・ディマンド
第525回(2011年05月07日)
増税なき復興計画のすすめ
ゲスト:岩田規久男氏(学習院大学経済学部教授)

プレビュー

 日本が未曾有の大震災から復興するために、どのような、そしてどの程度の規模の復興対策が必要になるのか。

 先の震災は総額にして20兆円を越える被害を、日本経済にもたらしたと推定されているが、学習院大学経済学部の岩田規久男教授は、復興のためには向こう5年間で40~50兆円規模の政府による復興対策が必要になるとの見通しを示す。

 まずは被災者の食料、医療などの緊急な援助や被災者の住居の確保、瓦礫の撤去や道路、港湾、空港など破損したインフラの修復などの緊急的な復興費予算として10兆円程度が今年度予算で必要となるが、しかし、震災の影響は地震や津波による直接的な破壊に限らないことを岩田氏は重視する。平成11年度の実質GDP成長率は余生予算の効果を織り込んでも-0.9%~-1.7%に低下する(BNPパリバ証券)ことが予想されている。岩田氏の試算では、これは最大で22.6万人の失業者を新たに生む結果を招くという。

 そのような震災による経済へのマイナス効果を防ぐためにも、まず来年度予算で10兆円の緊急対策を実施した上で、更にその後4年で30~40兆円規模の復興費の支出が必要になると岩田氏は言うが、問題はそれだけの資金をいかに調達するかだ。

 巷では、震災の復興のためには増税やむなしの論調が目立ってきているように見える。具体的には復興税と称する新たなエネルギー課税や消費税の増税などが提唱されているようだが、岩田氏はこうした増税案を言下に否定する。日本経済や長期のデフレ状態の下にあり、デフレの最中に増税によって内需が減少すれば、一層のデフレになることが避けられない。デフレが呼ぶ円高が輸出産業にも打撃を与えることを考えると、結果的に増税をしても、税収の増加につながらないし、雇用も回復しないというのが、その理由だ。

 しかし、増税なくして50兆円もの財源を確保するためには、国債を発行するしかない。要するに必要な資金を借金で賄おうということだが、言うまでもなく日本の財政赤字は既に危機的な水準に達している事が指摘されて久しい。11年3月末の債務残高は中央政府分だけでも667兆に及び、債務のGDP費も172%と先進国中最高水準に達している。そうした中で日本政府が更に向こう5年間で50兆円もの国債を発行すれば、いよいよ財政破綻のリスクが高まることはないのか。

 岩田氏は震災発生以降、長期国債金利はむしろ低下傾向にあり、これが急騰することは考えられないことを指摘した上で、当面、国債価格が暴落し長期金利が急騰する心配はないと言う。その上で、復興のために発行する40~50兆円の国債を一般の国民や投資家ではなく、これを全額日銀が引き受ける施策を提案する。こうすることで、市中の資金供給量を増やし、インフレ率を2%程度で安定させることで、日本経済の名目成長率を先進国並みの4%程度に引き上げることができる。その結果税収を拡大させることが、復興財源の捻出方法としては最も合理的だと岩田氏は説く。

 復興計画の実施が急がれる今こそ、かねてから主張してきたインフレターゲット論を実行に移すべきだと主張する岩田氏に、震災からの経済復興のあり方、考え方を、神保哲生と宮台真司が聞いた。

今週のニュース・コメンタリー
•子供に年間20mSvは許されるのか
解説:小出裕章氏(京都大学原子炉実験所助教)
•なぜハッカーたちはソニーを狙ったのか
ゲスト:高木浩光氏(産業技術総合研究所主任研究員)


関連番組

特別番組 (2011年03月16日)
東日本大震災

マル激トーク・オン・ディマンド 第277回(2006年07月20日)
日銀がゼロ金利を解除した本当の理由とは
ゲスト:岩田規久男氏(学習院大学教授)

<ゲスト プロフィール>
岩田規久男(いわた きくお)学習院大学経済学部教授
1942年大阪府生まれ。66年東京大学経済学部卒業。73年同大学院経済学研究科博士課程修了。76年~78年カリフォルニア大学バークレー校客員研究員。83年上智大学教授などを経て、98年より現職。専門は金融・都市経済学。著書に『経済学的思考のすすめ』、『日本銀行は信用できるか』、『デフレと超円高』など。『経済復興―大震災から立ち上がる』を今月発売予定。

Profile

神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

BookMarks

ビデオニュース・ドットコム(有料会員登録制)
http://www.videonews.com/

ビデオジャーナリスト神保哲生のブログ
http://www.jimbo.tv/

マル激!メールマガジン
↓ ↓ ↓


-----<著書>-----

新刊!
↓ ↓ ↓

『格差社会という不幸』
2009年12月、春秋社、共著


『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』
2009年7月、ダイヤモンド社


『オルタナティブ・メディア―変革のための市民メディア入門』
2008年12月、大月書店、翻訳・解説


『教育をめぐる虚構と真実』
2008年10月、春秋社、共著


『ツバル―地球温暖化に沈む国』
2007年7月、春秋社、増補版


『ビデオジャーナリズム―カメラを持って世界に飛び出そう』
2006年7月、明石書店


『中国―隣りの大国とのつきあいかた』
2007年6月、春秋社、共著


『アメリカン・ディストピア―21世紀の戦争とジャーナリズム』
2003年9月、春秋社、共著


『天皇と日本のナショナリズム』
2006年11月、春秋社、共著


『ネット社会の未来像』
2006年1月、春秋社、共著

『粉飾戦争―ブッシュ政権と幻の大量破壊兵器』
2004年3月、インフォバーン、監訳

『プロパガンダ株式会社―アメリカ文化の広告代理店』
2004年8月、明石書店、解説

『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』
2002年10月、春秋社、共著

『地雷リポート』
1997年11月、築地書館

『ビデオジャーナリストの挑戦』
1995年11月、ほんの木

『重要政策全比較―シリウス・日本新党・平成維新の会』
1993年7月、ほんの木

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