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自由貿易を考えるシリーズ2
TPPは「社会的共通資本」を破壊する

宇沢弘文氏(東京大学名誉教授)
マル激トーク・オン・ディマンド
第515回(2011年02月26日)
自由貿易を考えるシリーズ2
TPPは「社会的共通資本」を破壊する

ゲスト:宇沢弘文氏(東京大学名誉教授)

プレビュー

 今週、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)参加に反対する超党派の国会議員らが、「TPPを考える国民会議」を設立した。代表世話人を務めるのは、東京大学名誉教授の宇沢弘文氏だ。「TPP参加で日本は本当に幸せになれるのか」を考えるシリーズの第二弾は、宇沢氏がTPPに反対する理由を聞いた。

 宇沢氏は、1970年代の著書「自動車の社会的費用」で、当時の日本の高度経済成長の牽引役だった自動車が社会に与えるコストの大きさを指摘するなど、「社会的共通資本(Social Common Capital)」の重要性を一貫して主張してきた。

 社会的共通資本とは、ゆたかな経済・すぐれた文化・人間的な魅力のある社会を持続的に維持する山、川、森林などの自然環境や、道路や鉄道など社会的なインフラ、教育や医療、ジャーナリズムなどの制度資本を指す。これまで経済学に組み込まれてこなかった自然や社会環境の価値を、共通財産として位置付ける考え方だ。

 宇沢氏は、TPPが謳う無条件の自由貿易は、各国が持つ固有の社会状況を無視して、全ての国を同一のルール上で競争させることを前提とするもので、これは社会的正義に反すると主張する。その上で、あらゆる貿易障壁を撤廃すれば全ての国が得る利益が増大するという自由貿易の基本的な考え方には、生産手段の完全な私有制などいくつもの前提条件があり、それは現実には存在しない反社会的な条件であることを忘れてはならないと言う。

 宇沢氏はまた、自由貿易の思想的背景となっている市場原理主義の危険性にも警鐘を鳴らす。市場原理主義の思想のもとでアメリカはベトナム戦争時、「限られた予算で多くのベトコンを殺す」ために一人のベトコンを殺すのに何ドルかかるかを数量化した「キル・レイシオ(kill ratio)」なる概念を導入し、これを最小化する政策を目指したことからもわかるように、市場原理主義はもっぱら効率だけを追求し、社会的共通資本の破壊という自由貿易が持つ外部性を一切無視する。それがTPPの源流にある間違った考え方だと宇沢氏は指摘する。
 さらに宇沢氏は社会的共通資本としての農村や農業の重要性を強調し、農業政策は個々の農家を対象にするのではなく、農村をコモンズ(社会的共通資本)の一つと位置付け、これを村落単位で守っていく必要があると言う。

 TPPを「第三の開国」と位置づける菅首相について宇沢氏は、「一国の総理として考えられないこと」と酷評する。それは宇沢氏が、第一の開国を、治外法権を認め関税自主権を放棄し、最恵国待遇をアメリカに与えたことでその後の日本を長きにわたって苦しめた日米修好通商条約の締結を、第二の開国を、敗戦からの経済復興のかたわらで、日米安保体制を通じて日本が「アメリカの僕」と化していく過程を指すと考えるからだ。

 激動の20世紀を生き、人間の心や自然環境に価値を見出す経済学によって社会問題を分析してきた宇沢氏に、自由貿易の問題点を神保哲生・宮台真司が聞いた。

今週のニュース・コメンタリー
•なぜリスクの高い米原発計画に日本政府が融資するのか
•リビアは分断国家状態に
解説:水口章氏(敬愛大学教授)
•全面可視化のために法改正も視野に
枝野長官が部分可視化導入を受けて言及

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第512回(2011年02月05日)
自由貿易を考えるシリーズ
TPPに見る「自由貿易の罠」

ゲスト:中野剛志氏(京都大学大学院助教)

マル激トーク・オン・ディマンド 第503回(2010年12月04日)
TPPは農業へのショック療法となり得るのか
ゲスト:鈴木宣弘氏(東京大学大学院教授)

マル激トーク・オン・ディマンド 第502回(2010年11月27日)
検察改革はかくあるべし
ゲスト:指宿信氏(成城大学法学部教授)

マル激トーク・オン・ディマンド 第427回(2009年06月13日)
グリーン革命に乗り遅れる日本
ゲスト:飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)

マル激トーク・オン・ディマンド 第372回(2008年05月17日)
日本が再生可能エネルギーを推進すべきこれだけの理由
ゲスト:飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)

ニュース・コメンタリー (2010年11月06日)
菅政権はTPP参加を決断できるか

インタビューズ (2011年02月26日)
高橋洋一氏インタビュー

<ゲスト プロフィール>
宇沢 弘文(うざわ ひろふみ)東京大学名誉教授
1928年鳥取県生まれ。51年東京大学理学部数学科卒業。経済学博士。スタンフォード大学助教授、カリフォルニア大学助教授、シカゴ大学教授、東京大学経済学部助教授などを経て、69年同教授。89年退官。著書に『自動車の社会的費用』、『「成田」とは何か』、『経済学と人間の心』、『社会的共通資本』など。

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私は、TPPには基本は賛成。

なぜなら、自分の仕事や今後の生活を考えたら、メリットの方が多そうだから。
ちなみに仕事は輸出ではない。が、輸出企業の業績が良くなると二次的、三次的に波及してくると思う。

知人で農業をやってる人がいる。昔は兼業、今はサラリーマンをやめたので、片手間で専業だが、農業やってる最大の理由は、そこが「農地」だから。TPPをきっかけに、なにがしかのメリットや必要性があれば、農業をやめて、農地を、より真剣に農業をやりたい者に拠出することはOKな感じ。(というか、農業をやめれるきっかけを待ってるともいえる)

ただし、TPPは、業種によって悪影響が大きい場合があったり、食糧自給を心配する声が上がることは、理解できる。
本当の国益を考えたうえでTPPの是非を判断し、やる場合に利害調整をするのは政治の役割。

条約の特例措置とかが必要なら交渉し、勝ち取れないなら、やめるという手もある。

ここの議論を読むと、「菅がやるから反対」と聞こえるものが多い。私も菅は大嫌いだが、TPPやらないなら、なにをやるべきかも考えないと、単なる野党的なんでも反対にすぎなくなる。
日本の状況はとにかくひどい。手を打たなければならないし、残された時間は、そう長くは無いと思う。

社会的共通資本の考え方、肯定も否定もしません。一部では納得でき、一部では納得できないからです。

この考え方で、一番問題になることは、物事は全て変化し進化するという普遍的真理に、どのように適応していくのか言う経時的観点の論議的深化が不足しているように思っています。

次には、この社会資本関係で生活する人たち生活の保障をしなければならないことです。国民は大きな負担を覚悟しなければならないでしょう。

社会共通資本などの考え方の出てくる基盤は、生活上の安定が確保された人が始めていえることではないか。

私は、人間が生きていくための「衣食住」が基本ではないかと考えてきます。「衣」に関しては見事に国内産業は壊滅的打撃を受けました。「住」については、外国資本、特にアメリカ資本が、多くの物件を売買し、その影響力は大きく不動産市場を実質的に支配しています。「食」も同じ様に、アメリカの長期的政策が効果を顕著に現しています。食生活の欧米化は浸透し続けています。

現時点にあっては、社会共通資本の整備というよりも、コメに代表される農業を今のまま残せるかどうかが一番重要なことではないか。

私の近くの農地は、見事に農道というより、宅地化を前提にした新しい道路が、年々整備され、いつの間にか何時宅地化されても不思議ではない状況になっています。
農業についている方たちの利権構造が露骨に出ています。

このような利権構造を断ち切るために小沢氏は予算を半減化しましたが、農業で生活できる構造を作り出さない限り、TPP反対を唱えても、言葉だけで終わり、農作放棄、宅地化が進むだけでしょう。

げげげ外道さん

貴方には、よい方向のようですね。
それを言えると言う事は、いかがでしょう、
反面、TPPで「損」をする人たちがいるんじゃないかと思いませんか。
決してゼロサムではないのですが、作用・反作用は有るものです。

私には、このマイナスの面が、より多く出てきそうに思えてなりません。
私は、絶対にプラスになるように力を尽くしますが・・。

さて、このマイナスが大きくなった時の最大の問題は、私は「治安の悪化」だと思っています。

現在でも、日本の治安は悪化の一途をたどっております。これは、この20年間の日本経済の停滞というよりも、「後退」と同時進行で、酷くなってきてると言える筈です。

そんな事無いと言われたら、それっきりです。
無駄な文章を書いたと後悔するだけです。

TPPは、貧困を生む、または拡大する可能性に満ち溢れている。
国民経済の劣化は、治安の劣化を伴う。
いかがでしょう。

番組を見ればすぐにわかりますが、宇沢氏が日本の農業の抱える問題をものの見事に完全スルーしたことは非常に残念。
プラスがマイナスがとかゼロサムかどうかとか治安の劣化(笑)とか陳腐な話はどうでもいいが、今TPPを性急に導入することの是非と、日本の農業に解決しなければいけない問題が山積していることは全く別の次元の問題です。
こういう話題には小沢信者さんが全くと言っていいほど寄り付かないことが世相を反映していると言えなくもないですが、TPP早期参加を退けることで自民党政権下から続く農業利権が温存されることには断固反対します。
反対派も賛成派ももっと本質的な議論を。

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Profile

神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

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ビデオジャーナリスト神保哲生のブログ
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『格差社会という不幸』
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『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』
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2007年6月、春秋社、共著


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『粉飾戦争―ブッシュ政権と幻の大量破壊兵器』
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『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』
2002年10月、春秋社、共著

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1995年11月、ほんの木

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