Calendar

2011年1月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

« 2010年に壊れたものと2011年に作り出すもの
メイン
イギリスにできてなぜ日本にできない英のイラク戦争検証から何を学ぶか »

アメリカはどこへ向かうのか

渡辺靖氏(慶應義塾大学環境情報学部教授)
マル激トーク・オン・ディマンド
第510回(2011年01月22日)
アメリカはどこへ向かうのか
ゲスト:渡辺靖氏(慶應義塾大学環境情報学部教授)

プレビュー

 アメリカ史上初のアフリカ系大統領の誕生で、長年分断されてきたアメリカは党派の枠を越えて一つになるはずだった。しかし、オバマ政権の発足以来、保守とリベラルの対立はむしろ深刻化しているようだ。アメリカに何が起きているのか。

 就任演説で党派や人種対立の融和を呼びかけたオバマ大統領は、大型の景気刺激策や国民皆保険を目指した医療保険改革などを強行し、政府の介入を嫌う保守派から猛反発を受け、与党民主党は昨年の中間選挙で深手を負った。結果的に政権発足後オバマ政権が実施した主要な施策の多くが、「大きな政府」を目指すものだったために、オバマが乗り越えようとしていた保守とリベラルの分裂は、いっそう激しくなった。今月8日にアリゾナ州で起きた下院議員を標的とする銃の乱射事件も、党派対立が色濃く投影されていると見られている。犠牲者を追悼する式典の演説で、オバマ大統領はあらためて融和を訴えたが、ワシントンに戻れば、下院では共和党が過半数を制する議会との厳しい交渉が待っている。

 アメリカ研究を専門とする慶應義塾大学の渡辺靖教授は、まだ詳細は明らかになっていないが、アリゾナの銃乱射事件は、アメリカの保守のあり方の根底に関わる事件だったと分析する。アリゾナ州は保守色が強く、中間選挙ではティーパーティ運動が躍進した州だ。また、違法移民を厳しく取り締まる法律を通した州でもあり、銃についても、政府の規制に最も激しく反対している。渡辺氏は、その思想の根底には連邦政府への警戒心があると言う。アメリカの保守思想の根底には、本来のアメリカを連邦政府から取り戻さなければならないとの思いが根強い。

 渡辺氏は、建国以来、アメリカの底流には保守思想が流れていると指摘する。ただし、この場合の「保守」はヨーロッパにおける保守とは異なり、人間が自由であることを前提とした上で、それを脅やかす存在として政府を警戒するのが、アメリカの保守思想だ。渡辺氏は、アメリカでは人間が自由であることを大前提とした上で、政府をその自由のために役に立つ存在と見るか、脅威と見るかが、リベラルと保守の境目になると見る。一見、理にかなった政策を実施しているかに見えるオバマ政権に保守派が激しく反発するのは、自分たちの生活に政府が介入すること、つまり自由を脅かす政府への反発だと言うわけだ。

 アメリカでは1929年の世界大恐慌を立て直すべく1932年に政権についた民主党のルーズベルト大統領以降、1980年にレーガン大統領が誕生するまでの約半世紀、リベラル派がワシントンで主導権を握ってきた。大恐慌からの復興や第二次世界大戦からの再建のためには、大きな政府による積極的な財政出動が不可欠だったからだ。しかし、渡辺氏はこのリベラル派の半世紀は、アメリカ史においてはむしろ特殊な時代であり、レーガン政権誕生以来続いている保守政治こそが、本来の政治思想と考えるべきだろうと言う。

 しかし、その保守政治もブッシュ政権下で起きたイラク戦争の泥沼化やテロとの戦いにおける人権を無視した数々の施策、そしてリーマンショックに見られる金融モラルの崩壊などで限界が見え始めた。そしてオバマ政権が誕生し、議会でも上下両院で民主党が過半数を占有するに至った。こうしてアメリカが再びリベラル政治にシフトするかと注目されたが、どうやらそれは早合点だったようだ。

 今後、オバマ大統領はクリントン政権のように議会共和党と妥協を見いだし、中道路線をいくのか、それとも、保守と対決するのか。今後はその駆け引きが見どころとなると渡辺氏は言う。

 アメリカにおける党派対立の歴史的経緯や、アメリカとヨーロッパや日本社会との違いを考察しつつ、屈指のアメリカウォッチャーの渡辺氏と、今アメリカで何が起きているかを、神保哲生・宮台真司が議論した。

今週のニュース・コメンタリー
•誰のための著作権なのか
 場所を提供するサービスが著作権違反になる不思議
•薬害イレッサ訴訟に見る「日本に薬害がなくならない理由」

<ゲスト プロフィール>
渡辺 靖(わたなべ やすし)慶應義塾大学環境情報学部教授
1967年北海道生まれ。90年上智大学外国語学部卒業。92年ハーバード大学大学院東アジア地域研究科修士課程修了。97年同大学大学院人類学部博士課程修了。社会人類学博士。ケンブリッジ大学、英オックスフォード大学、ハーバード大学客員研究員などを経て、06年より現職。著書に『アメリカン・センター アメリカの国際文化戦略』、『アメリカン・デモクラシーの逆説』など。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.the-journal.jp/mt/mt-tb.cgi/7786

コメント (2)

■コメント投稿について編集部からのお願い

《THE JOURNAL》では、今後もこのコミュニティーを維持・発展させていくため、コメント投稿にルールを設けています。投稿される方は、投稿前に下記のリンクの内容をご確認ください。

http://www.the-journal.jp/contents/info/2009/07/post_31.html

ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

アメリカにおける相対立する社会構造に関する考察でしょうか。保守とリベラルの切磋琢磨する社会構造は、民主主義が一歩一歩進歩していくための当たり前の姿なのでしょう。

足して二で割る妥協的産物では、お互いの相互的成長にはつながらず、中途半端な相互批判の土壌を育成するのみです。民主主義といえども、本来のあり方は、激しい闘争の中から生まれてくるもので、権利義務が問われる自立した社会で始めて可能性が出てくるのではないでしょうか。

日本などは、アメリカ、官僚、政治家、企業、マスコミの相互不可侵の権益利権構造に護られた社会であって、その根幹を揺るがすようなことは、他の利権団体の団結による排除の論理の餌食になってしまう。

このような日本における排除性によって、また、均一的民族性によって一方向に一気に流されてしまうことである。

ことのよしあしでなく、当局の流す情報を鵜呑みにして、全く疑わないのである。考えてみると、わが民族の情緒的思考は極めて危険であり、民主的思考への転換をどうしたら進められるか、熟慮すべきであるが、その前提は、利益共存関係を如何にしたら断ち切れるかであろう。

其のことができないのであれば、アメリカの属国化であるが、一国家としては、恥ずべき国家ということができ、どこの国からも尊敬されないのです。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

※[投稿]ボタンをクリックしてから投稿が完了するまで数十秒かかる場合がございますので、2度押しせずに画面が切り替わるまでお待ちください。

Profile

神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

BookMarks

ビデオニュース・ドットコム(有料会員登録制)
http://www.videonews.com/

ビデオジャーナリスト神保哲生のブログ
http://www.jimbo.tv/

マル激!メールマガジン
↓ ↓ ↓


-----<著書>-----

新刊!
↓ ↓ ↓

『格差社会という不幸』
2009年12月、春秋社、共著


『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』
2009年7月、ダイヤモンド社


『オルタナティブ・メディア―変革のための市民メディア入門』
2008年12月、大月書店、翻訳・解説


『教育をめぐる虚構と真実』
2008年10月、春秋社、共著


『ツバル―地球温暖化に沈む国』
2007年7月、春秋社、増補版


『ビデオジャーナリズム―カメラを持って世界に飛び出そう』
2006年7月、明石書店


『中国―隣りの大国とのつきあいかた』
2007年6月、春秋社、共著


『アメリカン・ディストピア―21世紀の戦争とジャーナリズム』
2003年9月、春秋社、共著


『天皇と日本のナショナリズム』
2006年11月、春秋社、共著


『ネット社会の未来像』
2006年1月、春秋社、共著

『粉飾戦争―ブッシュ政権と幻の大量破壊兵器』
2004年3月、インフォバーン、監訳

『プロパガンダ株式会社―アメリカ文化の広告代理店』
2004年8月、明石書店、解説

『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』
2002年10月、春秋社、共著

『地雷リポート』
1997年11月、築地書館

『ビデオジャーナリストの挑戦』
1995年11月、ほんの木

『重要政策全比較―シリウス・日本新党・平成維新の会』
1993年7月、ほんの木

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.