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<尖閣沖中国漁船衝突事件>船長の逮捕・釈放は中国の進路を誤らせる大失策 »

<尖閣沖中国漁船衝突事件>
国際法上は尖閣の領有権に疑問の余地はない
横田洋三中央大学法科大学院教授に聞く

横田洋三中央大学法科大学院教授
インタビューズ
(2010年10月01日)
<尖閣沖中国漁船衝突事件>
国際法上は尖閣の領有権に疑問の余地はない
横田洋三中央大学法科大学院教授に聞く

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 尖閣諸島周辺の海域で操業する中国漁船が、日本の海上保安庁の巡視船と衝突した事件が日中両国間で大きな外交問題に発展したことで、日本政府が「領土問題は存在しない」と言い切っている尖閣諸島の領有権問題が、日中両国のみならず、国際社会でも俄にクローズアップされた。

 しかし、純粋に国際法に則った時、日中両国が自国の領土であると主張する尖閣諸島の領有権はどのような扱いになるのだろうか。また、今回の事件での日本政府がとった行動は、法的に正しかったのだろうか。

 国際法の専門家で領有権問題にも詳しい、中央大学法科大学院の横田洋三教授は、国際法上は尖閣諸島が日本の領土であることに疑いを差し挟む余地はないと話す。

 国際法ではある領域の帰属は、「領域権原」と呼ばれる、領有権の証を有する国に帰属するとされている。領域権原とは、その領域で主権を行使することができることを示す根拠を指すもので、先占、割譲、併合などがある。ある地域がそのいずれかに該当することを証明できれば、それはその国の領土と法的に認められる。

 尖閣諸島の場合は、1895年に日本が領土に編入するまで、どこの国にも属さない無主地だったところを、日本がどの国よりも先に実効支配したことが、領域権原の一つの「先占」に当たる。

 さらに国際法で帰属を確実なものとするためには、先占で取得した領域を、その後実効支配しているん必要があるが、日本政府は尖閣諸島を常に監視し、不法に上陸した人を逮捕するなどの対応を行ってきた。これは日本が尖閣諸島を実効支配をしてきたことを示す十分な根拠になると横田氏は言う。

 一方、中国は尖閣諸島の領有権を主張はしているが、明確な国際法上の根拠を示していないと、横田氏は言う。尖閣諸島が中国大陸の大陸棚の上にあるというのが、中国側の領有権主張の根拠だとみられるが、これは国際法上の領域権原には当てはまらないからだ。

 そのような理由から、横田氏は少なくとも国際法上は、尖閣諸島が日本の領土であることに議論の余地はないと説明する。

 しかし、正当な根拠の有無にかかわらず、中国が尖閣は自国の領土だと主張し、両国政府間で合意ができていない以上、何らかの合意なり調停なりが成立しない限り、その地域は不安定な状態に置かれ、紛争の火種となり続ける。本来はこうした領土問題の調停の場として国際司法裁判所があるが、日本は「領土問題は存在しない」という立場なので、調停には後ろ向きだし、もう一方の中国は、そもそも国際司法裁判所の強制管轄権を認めていない。

 唯一の超大国である米国は、この問題は日中間の問題として、あくまで静観の立場をとっているため、第三国による調停も期待ができない。となると結論としては、中国が尖閣の領有権を主張する限り、日本は実効支配を続ける、つまりこれまで通り海上保安庁などを使って領海や領域の侵犯を排除し続けることで、いずれ中国側が諦めるなり方針を転換するのを待つしかないというのが、横田氏の考えだ。

 今回の漁船衝突事件について横田氏は、国際法上明確に日本の領土である尖閣周辺の水域は日本の領海であり、そこで主権を行使して船長を逮捕・勾留したこと自体は、法的には何の問題もなかったと言う。また、日本の検察には起訴便宜主義に基づく不起訴、起訴猶予などの権限が法的に認められているため、検察の判断で船長を釈放することも、法的には問題はなかった。

 しかし、もし本当に日中の友好関係に配慮するのであれば、この問題が明らかに外交問題としての要素をはらんでいる以上、検察に判断を委ねるのではなく、政府が総合的な見地から、最終判断をすべきだたっと横田氏は言う。具体的には、仮に船長を釈放をするのであれば、検察、外務省などの意見を踏まえて、最終的には政府が、良好な日中関係を保つために釈放を決定した形にすべきであったと横田氏は言う。その場合、法務大臣の検察に対する指揮権の発動が必要になるが、「良好な日中関係を保つために」は十分に指揮権発動の根拠となりうる。そうしておけば今回の衝突事件は、日本が尖閣領域での主権、つまり実効支配の継続を証明しながら、その一方で、対中関係にも十分配慮している姿勢を見せられる好機となり得たのではないかと、横田氏は残念がる。

 中国漁船衝突事件と尖閣諸島の帰属問題を、純粋に国際法の観点からどう考えるべきかについて、神保哲生が聞いた。

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尖閣漁船衝突事件を読み解く

<プロフィール>
横田 洋三(よこた ようぞう)中央大学法科大学院教授
1940年米ニューヨーク生まれ。64年国際基督教大学教養学部卒業。69年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。法学博士。74年世界銀行法律顧問、79年国際基督教大学教授、95年東京大学教授などを経て04年より現職。国際労働機関(ILO)条約勧告適用専門家委員会委員長などを兼務。著書に『国際社会と法』、『国連による平和と安全の維持』など。

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2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
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