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クジラ肉裁判から見えてきたもの

星川淳氏(グリーンピース・ジャパン事務局長)
マル激トーク・オン・ディマンド
第492回(2010年09月18日)
クジラ肉裁判から見えてきたもの
ゲスト:星川淳氏(グリーンピース・ジャパン事務局長)

プレビュー

 「この裁判では日本の民主主義の質が問われている」。国際環境保護団体グリーンピースのクミ・ナイドゥ事務局長は、グリーンピース日本支部の職員が、調査捕鯨船乗組員による鯨肉の横領を告発する目的で、倉庫から鯨肉を持ち去った「鯨肉窃盗事件」の判決を前にこう語り、裁判の不当性を訴えた。しかし、6日、青森地裁は単純な窃盗事件として執行猶予付きの有罪判決を言い渡した。

 ナイドゥ事務局長が声を大にして訴える点は、そもそもこの裁判は捕鯨という国策を争点とする裁判であるがために、裁判自体が不公正なのではないかという疑問だ。

 「なぜ総額で5万円ほどの鯨肉の窃盗事件に、75人の捜査員が早朝乗り込んできて、事務所や職員の自宅を家宅捜査する必要があるのか」と繰り返しナイドゥ氏は首を捻る。実際に強制捜査に入った75人の捜査員の半分以上は、警視庁公安部の警察官だった。

 日本が政府の方針として続けている調査捕鯨が、国際的にもまた国内でも、大きく意見の分かれる問題であることは論を俟たない。また、グリーンピースという環境団体が、日本の捕鯨に反対する運動を展開してきたことも周知の事実だ。しかし、仮にそうだとしても、だからといってこの裁判がいい加減なものであったり、不公正なものであっていいはずはない。いやむしろ、そのような意見の分かれる問題だからこそ、司法はより慎重に公正を期す必要があった。

 グリーンピースの職員が運送会社の倉庫に侵入し、捕鯨船から送られる途中の鯨肉を無断で持ち出したことが、窃盗とされたが、その目的が鯨肉の横流しの告発にあったことは明らかだ。鯨肉を持ち出した直後にグリーンピースは記者会見を開き、その事実を公表しているし、その後、東京地検に鯨肉の横領を告発し、持ち出した鯨肉も証拠品として提出している。

 裁判では自ずと、別の犯罪を告発する目的で、犯罪行為の証拠を押さえるために倉庫から物品を持ち出すことが、果たして「単純な窃盗」という犯罪行為として罪に問われるべきなのかが、争われた。

 グリーンピース・ジャパン事務局長の星川淳氏は、この裁判では調査捕鯨という税金を投入して行われている、いわば公共事業で得られた鯨肉が、私的に流用されるという「鯨肉横流し疑惑」と、その告発のために倉庫に入り横流しが疑われる鯨肉を入手した「窃盗疑惑」の2つの行為を天秤にかけた場合、どちらを裁くことがより公共の利益に資するのかが、問われるべきだと主張する。実際、被告たちも公判でそのような主張を展開したが、裁判所はその2つを全く別の独立した事件として扱い、前者は「ろくに捜査もせずに」(星川氏)不起訴、後者は被疑者を26日間も勾留した上に大量の捜査員を動員して強制捜査まで行い、起訴・有罪の判断を下した。

 星川氏は問う。社会に不正や犯罪行為の存在が疑われる時、市民がその証拠を押さえる所まで行うことは逸脱した行為なのか。そうしたことは全て警察にまかせるべきなのか。「ではグリーンピースが通報すれば警察や検察は動いたのか」。

 星川氏は青森地検の取り調べの中で、検察官から「捜査機関さえ令状がなければできないことをNGOの分際でやったのは絶対に許せない」と言われたことを明らかにし、公僕であるべき警察や検察が、自分たちが、国民の上にいると勘違いしているのではないかと感じたという。政府も司法機関も、国が税金を使って行っている調査捕鯨に対して最大限厳しくあるべきであるのに、まったく逆のことが起きていると憤る。つまり、調査捕鯨という公共事業の中で行われている不正には非常に甘く、その不正を告発しようとした市民の行為には断固たる対応を取っているというのだ。

 また、判決では、グリーンピースが、検察に提出する前に証拠品である鯨肉を記者会見で公表した行為が、窃盗にあたると判断されている。同じ行為を行った場合でも、もっぱら検察に訴える目的であれば許され、それをメディアや社会に訴えると「不法領得」となり違法となるという裁判所の判断に、星川氏は疑問を呈する。警察や検察にとってはその方が好都合かもしれないが、善悪の判断の全てを警察や検察、そして司法に委ねる社会が、健全な社会と言えるのか。

 このように裁判の論点は多岐にわたるが、とは言え、この事件の背後に激しく意見が分かれる捕鯨をめぐる立場の対立があり、グリーンピースが反捕鯨団体であるという事実が、さまざまな形で裁判にも世論にも影響をしていることは無視できない。

 しかし、意外にも星川氏はグリーンピース・ジャパンは、捕鯨や鯨肉を食べることが文化であり、それが尊重されるべきものであることは認めていると言う。国際捕鯨委員会(IWC)でも、デンマークなどの先住民族に対して沿岸捕鯨を認めている。グリーンピースの主張は、実質的な商業捕鯨の疑いがかけられている、意図も目的も不明確な南極海での調査捕鯨はやめるべきというもので、もし日本が南極海の調査捕鯨を中止するのであれば、現在も日本が行っている沿岸捕鯨は尊重できると、星川氏は説明する。

 検察や裁判所の判断に疑問が投げかけられる事件が相次ぐ中、良くも悪しくもこの事件は、いろいろな意味で、今日の日本の司法の現状を映し出す鏡となった。と同時に、より大きな意味で日本の社会や民主主義がどうあるべきかを考えるためのヒントが、たくさん詰まっているのではないか。

 そもそもこの事件は単純な窃盗事件として裁かれるべきだったのか。捕鯨をめぐる対立を背景とするこの事件は、検察や裁判所によって公正な取り扱いを受けていたのか。あえて火中の栗を拾う形で5年前にグリーンピース・ジャパンの事務局長に就任し、今年11月に退任して屋久島に戻る星川氏と、グリーンピースという国際環境団体の日本支部のトップの立場から見た鯨肉窃盗事件裁判の顛末、日本の調査捕鯨問題、そして日本の民主主義の現状を議論した。

※事実関係に誤りがあったため、一部訂正いたしました。
正)デンマークなどの先住民族に対して沿岸捕鯨を認めている
誤)デンマークやアイスランドなどの先住民族に対して沿岸捕鯨を認めている


関連番組
ニュース・コメンタリー (2010年09月04日)
世界が「鯨肉窃盗裁判」判決に注目する理由

インタビューズ (2010年09月16日)
郷原信郎氏インタビュー

プレスクラブ (2010年09月17日)
菅首相記者会見

<ゲスト プロフィール>
星川 淳(ほしかわ じゅん)グリーンピース・ジャパン事務局長
1952年東京都生まれ。71年九州芸術工科大学芸術工学部環境設計学科中退。82年より屋久島に定住し作家・翻訳家活動を行う。05年末より現職。著書に『日本はなぜ世界で一番クジラを殺すのか』、『魂の民主主義』。訳書に『一万年の旅路』など。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

鯨肉裁判を知る人は少ない。調査捕鯨のことすらよく知らない。
グリーンピースの妨害だけは大きく取上げられる。この問題は偏った報道が多く、正直事実が分からない。グリーンピースは鯨は日本の食文化ということは、認め、尊重すべきだという。
日本が行っている調査捕鯨に問題点があるという。正当性があるのであれば、窃盗容疑という矮小かした犯罪にするのでなく、この裁判を通じて、国が税金を使って行っている事業の重要性を明らかにすることが国際的にも理解されることになる。証拠品がなければ、公共事業の調査捕鯨という名をかりた私的横流しを告発できない。そして、それを告発の証拠品にしても窃盗罪になる。権力側の大きな罪は見逃すが、訴えるための小さな罪には厳罰とする。根底にお上が一番偉いという意識が、このところの冤罪事件にもつながっている。
日本の司法の不備を早急に変える時期にきている。

窃盗容疑で捕まった結果の裁判なのだから、それに対しての司法判断は当然でしょう。鯨肉のことを問題にしたければ、別に民事裁判を起こすべきであり、窃盗容疑の裁判に他の案件を持ち込むのは、筋違いも甚だしい。司法の判決はごもっともだ。

 グリーピース・ジャパンの支部長の方は、「鯨漁」も「鯨食」も、日本文化だから認めてくれるらしいけれど、僕に言わせてもらえば『文化』として認めてもらう必要など、微塵も無い。
 
 そもそも、文化ならば何でも許されるものではない、売春は文化だし、奴隷制度もユダヤ人差別も、あるいは食人も、過っては、文化だったし、女性差別などは、今も、イスラム世界では、あたりまえの文化だ。

 つまり、文化であろうと、神様や預言者のご託宣であろうと、ろくでもないものは、ろくでもないし、上等なものは上等なのだ、従って、文化だからという事は、何を正当化する論拠にもならないし、何を弁護する理屈にもならない。

 だから、文化などと言うものではなく、それが必要かどうかという事で、鯨漁を考え、鯨食を考えなければ、何の意味も無いのだ。

 「鯨の頭がいい」などという理屈は、もし今も、欧米社会の中で鯨の油が必要不可欠なものならば、歯牙にもかけられない屁のような理屈だろう。

 そして、必要と言う観点で見れば、和歌山県の大地町に於いては、痩せた土地で農業も出来ない土地に於いては、鯨であろうとイルカであろうと、鯨肉は絶対必要な蛋白源だったのだ。

 そして、今も、さしたる産業の無い大地町に於いては、漁業は、必要な産業であり、イルカも鯨も、漁民ににとっては、大切な魚を捕食する「害魚」であり、これを捕獲する事は、稲や作物に害をなす、雀やイナゴを取るが如く、当然に、必要な作業であり、雀やイナゴを食べるが如く、あたりまえに、これを食べているのだ、その事のいったい何を非難できると言うのだろう。

 これを非難すると言うのなら、グリーンピースや環境団体屋動物愛護団体は、彼らの生活と誇りをいかにして保障するのか、その覚悟があっての非難であるるか、それを問うてみたい。

 勿論、戦後まもなく『鯨肉』によって、必要な蛋白源とした多くの日本人にとっても、鯨食はあたりまえのことであり、懐かしくも美味な『食物』以外の何物でもない。

 また、鯨が増えれば増えるほど、現在の世界の漁業そのものが、魚資源の減少を招き、漁業そのものの破滅を招くのは明らかであリ、この点からも「捕鯨」は当然の作業なのだ。

 勿論、鯨肉が、牛肉業者や豚肉業者にとって、極めて危険な競争相手であるという事は理解できるし、彼らにとっての必要の観点から、彼らがグリーンピースを利用し、センチメンタルな環境論者や動物愛護団体を利用する事は、十分に理解できる。

 しかし、人間にとって、真の必要のために、『鯨食』をすることと、単なる食肉業者の金儲けのために『鯨は頭がいい』などと言う屁理屈で、馬鹿な動物愛護団体を利用する事の、果たしていずれが、人として上等か、良く考えてみるが良い。

追記

 「鯨裁判」で、民主主義を云々するのは、こじつけもよいところだろう、こんな事で、グリーンピースの屁理屈に、騙されてはいけません。

 日本の検察や司法に問題があって、近代化が必要なのは、あたり前の大問題ではあるけれど、それは「小沢騒動」や「村木裁判」、数多くの冤罪事件で、語られるべき問題であり、欧米の「食肉業者」の犬によって、利用されるほどに、貶められるべき課題ではない。

この事件だけに限りませんが、警察・検察・公安に蔓延する歪んだナショナリズム(被害妄想的で攻撃的な愛国精神)にはウンザリしますね。菅首相が、岡崎トミ子氏を国家公安委員長に任命した気持ちがわかる気がします。

盗人にも三分の理とはいうけれど、今回の事は盗人猛々しいと言う方が当たっている。
環境保護や、エコは寄付を集めやすいから、過激な行動を取ることで注目を集めて、同時にお金を集めやすいからと正直に言えないものでしょうかね?
そもそも、グリーンピースの捕鯨反対の主張自体に正当性があるのかが疑問なのに、その主張に沿った窃盗行為が正しいと言うのは無理がありすぎる。
言いかえれば。こいつは悪い奴だと思ったから殺したのだから、殺人も許されるということもできる。そうなれば、自分の主義主張に合わない人間は皆殺しにしてもいいのだと言うに等しく、人の愚かな歴史がそれを証明している。

IWC自体が、捕鯨と全く関係ない国が増えて、単なる利害関係で日本と同じ1票を投じている。だのにIWCの主張が正しいという理屈をグリーンピースが主張するのも、同じ穴の狢のようで正当性が理解できない。

もともとは、鯨油の為にクジラを乱獲したアメリカ、オーストラリア、ヨーロッパが時代が変遷して鯨油が不要になって、クジラをとる必要がなくなったことで鯨保護をわめきたてる無責任さが滑稽としか見えないし、鯨を資源として保護することが必要なのは論をまたないが、それも他の漁業資源としての範囲を超えるものではない。
捕鯨も海洋資源の一部を人間が自然からの恵みとして頂く物で、すべからく漁業であり、沿岸だから、文化だから認めますというのは保護の名に値しないエゴである

星川淳様
クミ・ナイドゥ様
神保哲生様

> 「なぜ総額で5万円ほどの鯨肉の窃盗事件に、75人の捜査員が早朝乗り込んできて、事務所や職員の自宅を家宅捜査する必要があるのか」と繰り返しナイドゥ氏は首を捻る。実際に強制捜査に入った75人の捜査員の半分以上は、警視庁公安部の警察官だった。<

 それ以前の問題として、グリーンピースという団体が、職員を運送会社の倉庫に侵入させて、捕鯨船から送られる途中の5万円ほどの鯨肉を『窃盗(他人の財物をひそかに盗み取ること)』させたことが問題でしょう。

 グリーンピースに窃盗団の疑惑があれば、事務所や職員の自宅を家宅捜査するのに75人の捜査員が早朝から乗り込む必要はあるし、グリーンピースが窃盗行為を正当化するような危険思想を持つ集団ならば、必然的に公共の安全の維持を目的とする警視庁公安部の警察官も捜査するでしょう、たぶん。

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神保哲生(じんぼう・てつお)

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1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

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『オルタナティブ・メディア―変革のための市民メディア入門』
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2002年10月、春秋社、共著

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1993年7月、ほんの木

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