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脱・脱官僚のすすめ

:中野雅至氏(兵庫県立大学大学院准教授)
マル激トーク・オン・ディマンド
第478回(2010年06月12日)
脱・脱官僚のすすめ
ゲスト:中野雅至氏(兵庫県立大学大学院准教授)

プレビュー

 菅直人新首相は、就任会見でも国会での所信表明演説でも、これまで民主党が一貫して主張してきた「政治主導」の言葉を一度も使わなかった。いや、むしろ菅首相は、官僚との協力関係や役割分担を強調するなど、一見、新しい政権の下で民主党は脱官僚の旗を降ろしたかに見える。どうやら菅政権にとって鳩山政権からの教訓の中に、官僚との関係修復も含まれていると見て間違いなさそうだ。

 そもそも鳩山政権の8ヶ月間、政治と官僚の関係はどうなっていたのだろうか。元厚生労働省のキャリア官僚で政治と官僚の関係に詳しい、兵庫県立大学の中野雅至准教授は、鳩山政権の8ヶ月間、中途半端な政治主導の結果、大臣、副大臣、政務官の政務三役が官僚を遠ざけて、もともと官僚が行っていた仕事の多くを政治が担おうとした結果、行政の仕事が大幅に滞っていたと指摘する。そして、それは政治家に官僚が抵抗した結果などではなく、政治から官僚に対して明確な指示が出されなかったために、官僚が動けなかったのが実情だったと、中野氏は言う。

 政策の実現には目標を設定し、利害調整を行い、執行するという3つのプロセスがある。政治の最大の役割は政策の目標を明確にすることだが、鳩山政権にはそれができていなかったばかりか、そもそも何を実現したいかがはっきりせず、明確な理念があるかどうかさえ疑わしいと官僚の目には映っていたと中野氏は言う。

 しかも、とりわけ野党時代が長かった民主党には利害調整の経験も浅いため、調整が不十分なまま最後の執行部分だけが官僚に委ねられても、官僚は動きようがなかったというのだ。

 経済界への影響を懸念する経産省の抵抗で、地球温暖化ガス削減の実効性が危ぶまれる内容となった地球温暖化対策基本法も、世界に向けて25%削減を公約した鳩山首相が、法案の作成過程でリーダーシップを発揮すれば、経産省が手を突っ込む余地はなかったはずだと中野氏は言う。少なくとも官僚の目には、この問題でも鳩山政権の対応ぶりは、、25%削減の本気度を疑わざるを得ないようなものと映っていたのだ。

 そもそも、官僚が霞ヶ関文学や修辞学を駆使して法案を骨抜きにしたり、自分達に都合の悪い政策に抵抗しているという物の言いようは、官僚の現場を知る中野氏にとっては無理があるものと映る。国民によって選ばれた政治家が明確に理念と目標を設定すれば、役人が小手先の技術でそれに抵抗することなど容易にできるものではないし、最終的に官僚は政治家である大臣に人事権を握られている。それに、そもそも官僚は本気の政治家に抵抗するだけの度胸も気概も持ち合わせていないと中野氏は笑う。政治が政治本来の役割を果たさない時に、官僚の裁量が必要以上に大きくなるというのが、中野氏の一貫した主張だ。

 自分が望む政策実現のためにそうした官僚バッシングを巧みに利用したのは小泉首相だった。しかし、政権にとって本来は身内である官僚を抵抗勢力と切り捨てて行う改革は、行革型の改革に限られる。無論行革にも一定の意味はあるが、そこからは、今日本がもっとも必要としている新しい価値や方向性は生まれてこない。官僚を叩いていても、今日の日本の問題が解決するわけではない。

 民主党政権の本質は再配分政策にあると見る中野氏は、できるだけ早く意味のない官僚バッシングは卒業し、民主党本来の理念の実現に向かうべきだと提言する。その方向性を明確に打ち出せば、黙っていても官僚はついてくるはずだと。

 官僚バッシングの結果、今官僚たちが何を考えていて、彼らのモチベーションやモラールがどのような状態にあるのか、そして、日本が目指すべき政と官の関係はどうあるべきか。政治家と官僚の最大の違いは覚悟であり決断力だと言い切る中野氏とこうした問題を議論した。

今週のニュース・コメンタリー
・内閣支持率のV字回復は本物か
・「最小不幸社会」とはどんな社会なのか?
・記者クラブアップデート 菅政権が官房長官会見オープン化の意向
・映画「ザ コーヴ」に見る2つの「自主規制」

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永田町コンフィデンシャル 第22回(2008年08月02日)
官僚と政治家の癒着関係をどう断ち切るか
ゲスト:鈴木馨祐氏(自民党・衆議院議員)

プレスクラブ (2010年06月08日)
菅首相就任記者会見

<ゲスト プロフィール>
中野 雅至(なかの まさし)兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科准教授
1964年奈良県生まれ。88年同志社大学文学部卒業。96年ミシガン大学大学院公共政策学部修士課程修了。03年新潟大学大学院現代社会文化研究課博士課程修了。89年奈良県大和郡山市役所勤務を経て90年労働省(現厚生労働省)入省。職業安定局、新潟県総合政策部情報政策課長、厚労省大臣官房国際課課長補佐などを経て04年退官。同年より現職。主な著書に『公務員大崩落』、『「天下り」とは何か』など。経済学博士。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

<中野様>
私は鳩山官邸の「政治主導」も菅官邸の「官僚の力も借りて」も、どちらも悲しいアマチュア政治家故であり、大変な危惧を抱いています。
まず、鳩山官邸は、全く機能不全に陥っていた。鳩山さんは、それなりの人脈もあり、体系化された方針もあり、その点では総理の資格はあったが、官僚を動かす装置がなかった。
平野という鳩山家の茶坊主クラスを要の官房長官にした為、官僚を動かすには、どこを誰を動かせばいいのか?総理にどの情報を上げ、判断を仰げばいいのか?すら判らない官房長官では、機能するはずもない。野党時代の役員室長位の人間に、岡田・前原・北澤その他の大臣が従うはずもなく、本来、総理が朝発言した事を夕方、担当大臣が全面否定するなど、あってはならないし、官房長官が厳重注意を行うべきが、平野氏ではできるはずもなかった。結果、政府として何が正しいのか?誰の方針が本筋なのか、すら判らない、大混乱をもたらした。
平野氏は、官邸にもたらされる大量の情報を取捨選択できず、結果、総理を情報過疎に陥らせた。いつの間にか、政治主導とは官邸主導ではなく、政務三役の政治家主導に変わり、官僚のロボットになる政務三役、稚拙な政務三役は、落とし穴にはまり恥をさらす結果になった。
おまけに、平野・松井・古川・仙谷・岡田氏により小沢さんの影響力、党は政策に口出しNGを総理自身に了承させていた為、越年になりかけた予算には助け船を出したものの、「党は黙って見ておけ」が規定路線で、約束を違えない小沢氏の性格も相まって、最後は社民党の離脱にまで発展してしまった。鳩山さんは、人事に関して全くのアマチュアだった。
さて、菅総理である。さきがけ時代の同志の悪口をめったに言わない田中氏が「菅さんは、どんな日本にしたいのか、最後まで聞いた事はなく、総理になるだけが目的の人」と言わしめた人物である。菅総理の所信表明を聞いても、今更第三の道、最少不幸社会である。体系建てた政策も人脈も鳩山さんより明らかに劣っている。私には、そもそも総理の資格ありとは思えない。
官僚を頼らずして何も決められない真空総理と映るが、杞憂ならいいのだが…。

中野雅至先生

 はじめまして、つくば市に住む
佐藤と申します。 日本は小さな国で、異民族との闘いのような大きな対立構造が存在することもありません。にもかかわらず、政治が国民生活から大きく乖離してしまった自民党政権を何とか替えたいと民主党の政権交代を応援してきました。多くの一般国民と大差ない考えかと思います。 民主党にかかわり、民意によって歴史的な政権交代を実現することができました。その過程で一般国民と政府を隔てているものの存在が見えてきました。新政権ですから族議員はまだ存在しません。 残るは≪官僚≫です。官僚との付き合い方が今後のこの国の行方を左右することは間違いのない現実だと思います。 中野先生のお説は実に説得力のあるご意見で、今後時間をかけてもそれが可能であればどんなに事態は改善されいくことでしょう。しかし政権を担ったことのない新政権に今、望むのはなかなか難しいのではないかと思います。ひとつは若い政治家達の力量不足、もう一つは自民党下での官僚的発想から抜けきれない官僚群。これを今すぐ変われと言っても無理な話で、時間を待たなければばならないことだと思います。その上で、申し上げたいのですが、官僚の登用そのもにメスを入れなければ、官僚世界をフレキシブルにすることは難しいのではないかと考えるに至りました。東大卒一辺倒の官僚世界に新しい風を吹き込むことが、今こそ必要なのではないでしょうか!? 完璧な官僚国家である必要はどこにもありません。官僚世界で力を発揮できる他の国立大卒や私大卒の存在が、旧来の官僚世界を変える大きな存在になると考えていますが、いかがでしょうか!?
       つくば市 佐藤
 

>国民によって選ばれた政治家が明確に理念と目標を設定すれば、役人が小手先の技術でそれに抵抗することなど容易にできるものではないし、最終的に官僚は政治家である大臣に人事権を握られている。それに、そもそも官僚は本気の政治家に抵抗するだけの度胸も気概も持ち合わせていない<

との、元官僚・中野さんの言葉は本心でしょうか?到底信じられなくて、政治家を口先だけで持ち上げ内心では「政治主体は無理だよ」と言ってると思うのは下種の勘繰りですかね?

フォーラム神保町での佐藤優さんの言葉の方が説得力も有る、官僚の実態を表していたように思います。

官僚とは試験を通る為の記憶力反射力だけを身につけた、感情や心情等もわからない天才集団。

無知蒙昧の国民から選ばれた同じく無知蒙昧な政治家だと見下している。

「どんなにあんた等、頑張ったって最後は官僚の考え方に戻っていく」と・・・・。

私が思っていた、官僚主体の政治打破とは、政治家が国民の生活を理解し暮らしの良くなる政策、法律を政治家自身が考えて党で容認し、最後は官僚に法律違反や不備が出ないようチェックをしていただく事。

自民党の政権では議員の能力が欠如していて全てを任せすぎていたから、天下る為に認可制度や団体、随意契約など自らの利権政治が横行してしまった。

そんな頼り切った駄目政治から政治家主体の政権運用に切り替えるのが政権交代のはずでした。

すべてが政治家が出来るなど出来るはずが無いが、立法、政策、討論など主体を政治家が行い、官僚は手助けを行うように仕事分担を変える。

これまで官僚の行ってきた利権や誤魔化しを見極められる能力が有る政治家を十数人づつ省庁に送り込みチェックするの筈・・・

諦めるのは簡単ですが、それではこの国が良く成るすべがなくなります。民主党議員さん、ふんどしの紐を引き締めて気概有る政治を行ってください。未だ3年以上有るのです、再スタートですよ。

菅総理の所信表明の3つの強い政策や最小幸福論から伺えることの私見です。確かに日本は閉塞感に包まれており、それは政治・経済に強い影響を与えている。それらを打破する事は急務である。それに対しては異論はない。
けれど、政治に対しての閉塞感を打破するものが、所信表明や内閣を初めとする閣僚・党役員の発言から今のところ聞こえてこないことに一抹の不安を覚えるのである。多くのマスメディアが、論評する「政治とお金」にクリーンであることで政治の信頼を回復するとは、私には思えない。また、政治の情報公開も必要であるが、それで良いのかといえば、それだけでも不足としか思えない。
そうした思いが強まる理由のひとつにこのコラムの「脱・脱官僚」にある。つまりは、裏の裏は表でしかなく、これまでの政治形態となんら変わらないのでないかと思えて仕方がない。
今は総論段階で、具体的な政策が見えてこない。早計に判断するのはいけないから、今後を注意深く見ていく必要はある。
多くの方は、どの様に感じていたのかは分からないが、「鳩山ー小沢」体制に私が期待していた根源は、この国の政治体制を変革して欲しい思いであった。
その1つが、官僚制度の変革です。それは、【脱官僚】という言葉で多くは表現されている。この意味するところが、ただ単に官僚を排除するという意味で多くの人に伝わっていないだろうか。
それ故、官僚の意見を聞かない・聞く論説でしか語れない。
政治主導は、政治家がイニシアチブを取ることであるが、それは政治家の発言力でなされるものではない。過去のどの政治形態においても官僚制度は存在してきた。官僚制度をコントロールできるものは法律である。
つまりは、官僚は法律によって動くものであり、官僚もその法律を逸脱することは許されないのです。
国民生活は、その都度障害が発生した時にその法律を見直し、改正してきた。
経済の閉塞感も実は、もうすでに意味を成さない法律のために起こっている面もあると思うのです。
そうした意味を成さなくなった法律の撤廃、若しくは改正を見つけることが事業仕分けでも分かったのである。
それと同様に、現行と乖離がある官僚制度を改革するためには、公務員法や給与法などの改革、これこそが脱官僚の真の意味でないかと思うのです。
また、国会の審議手順などや国会論戦が不毛でしかならないのは、国会法にも問題があるのでないかと思えるのです。
確かに強い日本と取り戻すことは必要です。
けれど、日本の政治根本を変えていかないと、過去と同じ「轍を踏む」ことにならないかと、現政権には危惧を覚え始めている。
真っ先に行なわないといけない【もの】を見誤ってはいけないとも思うのです。

官僚は既存の枠組みの中でしか物を考えられない人たちの集まりです。本来ならその枠組みを政治家が構築しなければならないのですが、現在政治家でそのような能力を持つ人はほんの一握りです。これができれば、自然に政治家と官僚の住み分けができるのです。しかし、今の菅首相チームが能力を持っていないのは明らかです。何故なら、財政が厳しいから立て直すという従来から一般的に言われている枠組みの中でしかものを考えられないからです。これでは官僚の思考形態と大差がないです。政治家としては無能と言っていいでしょう。

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Profile

神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

BookMarks

ビデオニュース・ドットコム(有料会員登録制)
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ビデオジャーナリスト神保哲生のブログ
http://www.jimbo.tv/

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-----<著書>-----

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『格差社会という不幸』
2009年12月、春秋社、共著


『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』
2009年7月、ダイヤモンド社


『オルタナティブ・メディア―変革のための市民メディア入門』
2008年12月、大月書店、翻訳・解説


『教育をめぐる虚構と真実』
2008年10月、春秋社、共著


『ツバル―地球温暖化に沈む国』
2007年7月、春秋社、増補版


『ビデオジャーナリズム―カメラを持って世界に飛び出そう』
2006年7月、明石書店


『中国―隣りの大国とのつきあいかた』
2007年6月、春秋社、共著


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2003年9月、春秋社、共著


『天皇と日本のナショナリズム』
2006年11月、春秋社、共著


『ネット社会の未来像』
2006年1月、春秋社、共著

『粉飾戦争―ブッシュ政権と幻の大量破壊兵器』
2004年3月、インフォバーン、監訳

『プロパガンダ株式会社―アメリカ文化の広告代理店』
2004年8月、明石書店、解説

『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』
2002年10月、春秋社、共著

『地雷リポート』
1997年11月、築地書館

『ビデオジャーナリストの挑戦』
1995年11月、ほんの木

『重要政策全比較―シリウス・日本新党・平成維新の会』
1993年7月、ほんの木

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