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なぜ日本経済の一人負けが続くのか

野口悠紀雄氏(早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授)
マル激トーク・オン・ディマンド
第475回(2010年05月22日)
なぜ日本経済の一人負けが続くのか
ゲスト:野口悠紀雄氏(早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授)

プレビュー

 08年の金融危機から世界経済が着実に回復へと向かう中、日本だけが取り残されている。経済危機の震源地だったアメリカが、2007年から2011年までの間に3.6%の成長を見込む一方で、日本はその間2.7%ものマイナスの成長となっている。これは他の先進国と比べても特に低く、日本一人負けの様相と言ってもよい。

 かねてより日本経済の構造問題を指摘してきた早稲田大学大学院ファイナンス研究科の野口悠紀雄教授は、この最大の理由は、日本経済が依然として輸出依存型製造業中心の古い構造から抜け出せてないからだと言い切る。

 たしかにリーマンショック後の金融危機における日本企業の傷み方は、アメリカ以上に大きかった。企業利益の落ち込みは、米国企業が3割だったのに対し、日本は7割以上にも及んだ。

 2002年以降の日本の好景気は、アメリカの消費拡大に伴う自動車などの輸出増に大きく依存していた。そして、アメリカの自動車販売の好調ぶりは、経済危機の原因とされたサブプライムローンなどの住宅ローンと密接に関係していた。多くのアメリカ人が、住宅価格が値上がりを続ける中で、住宅を担保にしたローンで自動車を購入していたからだ。これは住宅価格が暴落すれば一気に萎むバブルに過ぎなかったと野口氏は言う。

 経済危機は各国を等しく襲うが、製造業の占める割合が高い日本は、経済危機で輸出が冷え込むと、たちまち設備過剰となる。しかし、製造業の設備過剰は簡単に解消することができないために、日本経済の回復が遅れているのだと野口氏は指摘する。

 一方、危機の震源地のアメリカの回復が早かった理由は、アメリカがすでに産業構造の改革に成功しているためだ。野口氏によれば、アメリカは70年代、80年代に日本の工業製品が大量に入ってきたことで、脱製造業化を余儀なくされた。その過程で貿易摩擦や失業などの痛みは伴ったが、現在は製造業の比率が日本の半分ほどしかない脱工業化経済を達成している。組合が強く政治力のある自動車産業だけは、構造改革に失敗したため、金融危機で致命的な痛手を受けているが、脱工業化の結果生まれてきた金融業やIT産業など世界の先端産業の成長が、アメリカ経済の回復を支えている。製造業を守り、経済構造改革に失敗した日本と、既にそれを完了していたアメリカの差が、ここに来て両国経済の明暗を大きく分けていると野口氏は言う。

 90年代以降、韓国、台湾、中国などの新興国が次々と工業化し、賃金の安いそれらの国と製造業で競争しても勝負にならないことは明らかだった。ちょうど日本から攻め込まれたアメリカが脱工業化を図ったのと同じように、そこで日本は脱工業化・産業構造の転換を図る必要があったが、日本は金融緩和、円安、緊縮財政で輸出依存型の製造業を保護する政策をとった。要するに古い産業構造を延命させたということになる。その間政権の座にあった小泉内閣は、構造改革政権と呼ばれることが多いが、野口氏はこれを言下に否定する。小泉・竹中路線は構造改革などではなく、むしろ旧来の産業構造を守る政策だったと、これを一蹴する。

 日本経済が復活するためには、真の産業構造改革が必要だが、それはまさにアメリカが経験したような、厳しい痛みを伴うと野口氏は言う。日本人が自らの手で痛みの伴う構造転換を図れないのなら、日本は一度廃虚にならなければ、新しいものは生まれない。 そう言う野口氏が提言する、日本経済復活のための処方箋は苛烈だ。しかし、将来世代のためにもいま大転換をしなければ、日本の未来はないと言い切る。

 日本経済が生き返るためには何をすべきか、日本の進むべき道はどこにあるのか、構造改革論の大御所と称される野口氏と議論した。

<今週のニュース・コメンタリー>
口蹄疫は適正な対策でも感染拡大が止まらない異例の事態
小沢一郎氏に再度不起訴処分で意義が問われる検審制度
ネット選挙運動解禁議論は依然迷走中

<関連番組>
マル激トーク・オン・ディマンド 第473回(2010年05月08日)
日本経済の現状とベーシック・インカムという考え方
ゲスト:飯田泰之氏(駒澤大学経済学部准教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第464回(2010年03月06日)
PIGS問題は本当に対岸の火事なのか
ゲスト:井堀利宏氏(東京大学大学院経済学研究科教授)
ニュース・コメンタリー (2010年05月01日)
小沢一郎氏に検察審査会が起訴相当の判断
ゲスト:郷原信郎氏(元検事・弁護士)

<ゲスト プロフィール>
野口 悠紀雄(のぐち ゆきお)早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授
1940年東京都生まれ。63年東京大学工学部卒業。72年エール大学経済学博士号取得。64年大蔵省(現財務省)入省。主計局、一橋大学教授、東京大学先端工学研究センター長などを経て01年退官。スタンフォード大学客員教授などを経て05年より現職。著書に『1940年体制』、『経済危機のルーツ』、『世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか』など。

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今、この時もヨーロッパの株式市場は下げております。
アメリカの先物市場も、とりあえず下がっているようです。
今日の日本市場は、世界の市場の中で唯一と云っていいくらいの弱さでした。

日本のマスゴミは、世界の金融動向には、あまり関心がなさそうです。
あすの朝刊も、結果を書くだけでしょう。
そして、つまらない評論家の「意見」を載せておしまいです。

野口先生が、ことのほか優れた経済学者だとは思いませんが、優れた観察者だとは感じております。
日本には、数少ない冷静な観察眼をお持ちです。

もっと、大きな場所での発言を期待したいのですが、日本のマスゴミには先生の価値は解らないでしょう。

世界は、変化しようとしています。
日本も、そろそろ変化のスピードを上げないといけないのですが、つまらない事に足を取られて身動きできない状態に陥ろうとしています。
残念な事です。
せめて、「失われた世紀」にならない事を望むばかりです。

神保さんには誠に申し訳ないですが、私は野口某を「世間を善き方向に導くべく経済を分析し論ずる者」としては全否定して来ています。
賢いのは解りますが、賢明ではない。

1.今を去る20数年前、バブル崩壊に至る迄の数年間の非合理的な熱狂を、特に不動産バブルを煽り立てて当時のジャーナリズムで露出を誇っていた人物二人の内の一人です。
曰く、「此処で今、不動産を買わない人達はバカだ」と言わんばかりに・・。
(あとの一人は、社会的には姿を消しました。ご自分の不明を恥じてのことかどうかは知りませんが・・。)

2.野口某は当時の反省も総括もしないままに生き永らえて、何時の間にかジャーナリズムでの露出を増やしている。久し振りにどのような意見を吐いているのかなあ?と本編を見聴きしました。
為替や経済に永く生きて来た私には、野口某の間違い(※注)が其処此処に目に付きました。
例えば、
1)日本の外需依存過多は、彼がいう2000年代のことでは全くない。卑近な例を挙げれば、AmongOthers、1985年のプラザ合意の背景には「日本の外需依存過多」があったことは学術的にも自明の事実として確認されている。
2)曰く「日本の貿易黒字がアメリカに還流して、日本からの自動車輸入に回り、日本の自動車産業が潤った」。
日本の貿易黒字は米国債購入としてアメリカに還流しているのは正しいが、それが日本の自動車産業を潤わせたと結論付けるに至っては、「風が吹けば桶屋が儲かる」式の落語でしかない。経済学者の台詞ではないでしょう。

  (※注)この低次元のことは、経済学者としては「間違い」ではなく、明らかに「意図的な嘘」だと断じています。

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ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

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『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』
2002年10月、春秋社、共著

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