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日本経済の現状とベーシック・インカムという考え方

飯田泰之氏(駒澤大学経済学部准教授)
マル激トーク・オン・ディマンド
第473回(2010年05月08日)
日本経済の現状とベーシック・インカムという考え方
ゲスト:飯田泰之氏(駒澤大学経済学部准教授)

プレビュー

 先月ワシントンで開催されたG20(20ヶ国地域財務大臣中央銀行総裁会議)で「世界経済の回復は予想以上に進んでいる」という共同声明が採択された。世界各国が金融危機に端を発する世界不況からようやく抜け出そうとしているのに、日本だけは依然として深刻なデフレが続くなど、一人負けの感が日増しに強くなっている。

 マクロ経済学が専門でインフレターゲット論で知られる「リフレ派」の論客として注目を集める飯田泰之駒沢大学経済学部准教授は、日本経済が長期低迷を続ける理由は政策的な失敗だと指摘する。

 政府が行う経済政策には主に、生産力を向上させる成長政策、景気を正常化させる安定化政策、最低限度の生活を保障する再分配政策の3つがあり、それらを巧みにポリシーミックスして最善の政策パッケージを探るのが経済政策の成否の鍵を握る。しかし、日本の歴代の政権では3つの内の1つだけが重視されたり、それを実行すべき時期を外してきたりしてきたことが、結果的に有効な経済政策につながらなかったと飯田氏は言う。

 飯田氏は中でもただちに着手すべき経済政策として、安定化政策、とりわけ金融政策をあげる。新たな投資を必要とする成長政策や財源の確保が不可欠な再分配政策にとっては、まず経済状態の安定が前提条件だからだ。したがってデフレを真っ先に解消するために、まずは金融緩和などでインフレ状態を起こすべきだというのが、リフレ派飯田氏の主張だ。

 そうした中で今注目を集め始めているのが、ベーシック・インカムという新しい社会保障の考え方だ。

 ベーシック・インカムとは、すべての国民が最低限以上の生活を送れるように、一定額の現金を無条件で支給する制度のこと。生活保護とは異なり、所得調査も行わず、すべての国民、もしくは日本に住むすべての人が無条件で給付の対象となる。このたび民主党が所得に関係なく実施する子ども手当は、かなりベーシック・インカムに近い考え方だが、これを15歳未満の子どもだけではなく、対象をすべての人に広げたものがベーシック・インカムだ。

 ベーシック・インカムには最低限の生活水準が保障される他にも、社会保障制度の簡素化や行政コストの削減、景気浮揚効果など、さまざまな経済効果があるとされているが、ベーシック・インカムの提唱者として知られる飯田氏によると、今日ベーシック・インカムが注目されるようになった背景には、生活保護のカバー率の低迷があるという。現在、生活保護の有資格者の8割が、何らかの理由から給付を受けていないとみられる。

 確かにベーシック・インカムは貧困対策として社民主義的な立場から主張されることも多いが、しかし、元々この考え方は、ミルトン・フリードマンに代表される新自由主義者が提唱した制度だという。それは、政府がお仕着せで施す社会保障よりも、現金を配りそれを個人の選択で自由に使わせる施策の方が好ましいという自由主義的発想に根ざしているからだ。ベーシック・インカムの提唱者としても知られる飯田氏も、すべての人に市場競争に参加する機会を与えるという理由で、自由主義的な立場からこの制度を支持していると言う。

 しかし、働かなくても政府からお金がもらえることになるベーシック・インカムには、人々の労働意欲を損ねるなどの批判や懸念も多い。飯田氏は、一人あたり月5万円から7万円程度、つまりそれだけで生活するにはぎりぎりで少し足りないくらいの金額に設定するのが好ましいと語るが、何よりも問題は財源だ。仮に国民全員に月7万円を支給した場合、年間80兆円の財源が必要になる。現在の財政状況では望むべくもない。しかし飯田氏は、まず「納税者背番号制」の導入や「負の所得税」などを実施し、10年から30年の時間をかけて段階的にベーシック・インカムを実現させていくことは十分に可能だと主張する。

 ベーシック・インカムに実現可能性はあるのか。21世紀の公正な社会のあり方を私たちはどう考えるのか。今週は日本経済の長期低迷の原因とベーシック・インカムの2つの論点で、アメリカ取材中の神保哲生に代わり武田徹と宮台真司が、飯田氏と議論した。

今週のニュース・コメンタリー
・オバマ政権が原油流出事故の対応に躍起になる理由
・イギリス総選挙に見る2大政党制の終わり
・野中「機密費」発言の波紋が広がる

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<ゲスト プロフィール>
飯田 泰之(いいだ やすゆき)駒澤大学経済学部准教授
1975年東京都生まれ。98年東京大学経済学部卒業。03年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。駒澤大学経済学部専任講師を経て07年より現職。財務省財務総合政策研究所客員研究員。著書に『考える技術としての統計学』、共著に『経済成長って何で必要なんだろう』など。

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反動でとんでもなく逆に走ると思いますよ。
むしろインフレ時の対策を万全にと感じますが・・

ベーシック・インカム、大賛成!!

その完全実現のための導入として、「負の所得税」をやってみること、にも他称左翼である自分も大賛成。

試しにやってみたらよいのでは?とりあえず。

飯田さんのお話によると、「納税者背番号制」の導入して、相続税をしっかりとれば、財源は賄えるという。それも相続税であるから恒久性がある、と。
財源は全然大丈夫だそうです。

いいですね。冨の再分配。

相続税率もいまより、もっと大胆に上げてしまえばいいのでは?とも思います。金持ちなど少数ですからね。一般大衆はまったく反対しません。

高所得者の所得税の累進化税率を昔のように高くすればいいのではないですか。財源出てきますよ。70%するというのはどうですか。

あと、ある専門家が法人税の累進課税方式を導入すべきと主張されています。
中小零細はほとんど税金は払わずにすみ、儲かっている会社はしっかりと税金を納めてもらえばいいじゃないですか。下請けいじめ、下請け倒産も防げるのではないですかね。

証券の優遇税制もやめちゃいましょう。

金持ちは冨を蓄えて、使うことをしないので、消費となって社会に還元しないわけですから、私のような貧乏人にお金をまわせば、そのほとんどを消費に使いますよ。

社会保障体制がしっかりとしていれば、みんな安心して、お金使いますよ。

金持ちの資産をひたすら相続させていく社会システムを変えなければ、格差社会を是正せず、その格差も相続されてしまいます。硬直した社会に未来はないですよ。

のびのびみんなにやらせたら、勝手にうまくやっていきますよ。

だから、冨の再分配は大胆にやってしまうのがいちばんよいと思います。

いきなり、大胆は無理なら、
試しに、「負の所得税」をやってみるのも良いと思います。
「ベーシック・インカム」と「負の所得税」とでは、ある専門家の意見では、労働意欲という点で、後者がよいといっていますし、とりあえずやってみませんか。

民主党さん、マニュフェストにどうですか。「ベーシック・インカム」「負の所得税」。財源はどうすんだ?と自民に言われても、大丈夫ですけど、何か、といってあげればいい(笑)。
どうですか。民主党さん、検討してみてください。

いま若者のあいだでは、かなり「ベーシック・インカム」に期待がすごく高まっていますよ。
無党派の若者には「ベーシック・インカム」は、かなりうけます。
ぜひぜひ、検討してください。

「他称左翼」のパンさんが、”ベーシック・インカム、大賛成!!”とは、、、「自称ゲバラ派」の僕も”大賛成”です。趣旨も、貴殿とほとんど同じです。
『ベーシックインカムの実現を探る会』の例会に何回か出たことありますが、そこでのアンケート報告では「労働価値説」を採る日共系ではBI(ベーシックインカムの略称)には冷淡というか無視、だったと思います。あの党は、どこにいっても官僚主義で弱者(ホームレス等の)に冷たい、公務員と大企業党員が力を持つ偽善組織です。

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15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

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『格差社会という不幸』
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『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』
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