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2010年3月27日

元通産官僚が明かす「霞ヶ関文学」という名の官僚支配の奥義

岸博幸氏(慶應義塾大学大学院教授)マル激トーク・オン・ディマンド
第467回(2010年03月27日)
霞ヶ関文学入門
ゲスト:岸博幸氏(慶應義塾大学大学院教授)

プレビュー

 民主党政権が目指す「政治主導」がどうも思わしくない。公務員制度改革関連法案では肝心の天下り規制や人件費の2割削減が先送りされてしまったし、地球温暖化対策基本法案も民主党の選挙公約から大きく後退してしまった。一見政治主導を装いながら、どうも鳩山内閣の政務三役が、霞ヶ関官僚に手玉に取られている感が否めない。
 そこで今週のマル激では、民主党が唱える脱官僚・政治主導が実現できない原因の一つとして、官僚が政治や立法過程をコントロールするために駆使する霞ヶ関の伝統芸とも呼ぶべき「霞ヶ関文学」に注目してみた。

 霞ヶ関文学とは、法案や公文書作成における官僚特有の作文技術のことで、文章表現を微妙に書き換えることで別の意味に解釈できる余地を残したり、中身を骨抜きにするなど、近代統治の基本とも言うべき「言葉」を通じて政治をコントロールする霞ヶ関官僚の伝統芸と言われるもののことだ。

 霞ヶ関文学では、たとえば特殊な用語の挿入や、「てにをは」一つ、句読点の打ち方一つで法律の意味をガラリと変えてしまうことも可能になる。また、特定の用語や表現について世間一般の常識とは全く異なる解釈がなされていても、霞ヶ関ではそれが「常識」であったりする。若手官僚は入省後約10年かけて徹底的にこのノウハウを叩き込まれるというが、明確なマニュアルは存在しない。ペーパーの作成経験を通じて自然と身につけるものだといわれるが、あまりに独特なものであるため、政治家はもちろん、政策に通じた学者でも見抜けないものが多いとも言われる。

 通産官僚として約20年間霞ヶ関文学を駆使し、その後竹中大臣の政策秘書官として、官僚の霞ヶ関文学を見抜く役割を果たしてきた岸博幸慶應義塾大学大学院教授は、そもそも霞ヶ関文学の出発点は日本語を正確に定義して書くという、行政官僚に本来求められるごく当然のスキルに過ぎないと説明する。しかし、法律や大臣の国会答弁の文章を明確に書き過ぎると、自分たちの裁量が狭められたり、官僚が何よりも重んじる省益を損なう内容になる場合に、官僚の持つそのスキルが、本来の趣旨とは異なる目的で使われるようになってしまった。そして、そのような意図的な書き換えを繰り返すうち、法案や大臣の国会答弁で使われる単語や表現の意味が、一般常識とはかけ離れたものになってしまったと言うのだ。

 ほんの一例をあげれば、道路公団や郵政改革でよく耳にする民営化という言葉があるが、「完全民営化」と「完全に民営化」とが、霞ヶ関文学では全く別の物を意味すると言う。「完全民営化」は株式と経営がともに民間企業に譲渡される、文字通りの民営化を指すが、「完全に民営化」になると、法律上3パターンほどあり得る民営化のどれか一つを「完全」に実現すればいいという意味になるというのだ。つまり、「完全に民営化」では、一定の政府の関与が残る民間法人化や特殊法人化でも良いことになるという。しかも驚いたことに、霞ヶ関ではそれが曲解やこじつけではなく、ごくごく当たり前の常識だと言うのだ。

 岸氏が竹中平蔵大臣の補佐官として政府系金融機関改革に取り組んでいたとき、官僚が滑り込ませてきた、この「に」の一文字に気づき、法案を突き返したことが実際にあったという。政府系金融機関が「完全民営化」されることで天下り先を失うのを嫌った官僚が、政治決定の段階では入っていなかった「に」の一文字を、法案の中に潜り込ませてきたのだ。

 他にも、全く同じ文章でも、句読点を打つ場所を変えることで意味が変わったり、単語の後に「等」をつけることで、事実上何でも入れられるようにしてしまうなど、確かに霞ヶ関文学は伝統芸と呼ばれるだけのものはある。

 そして、霞ヶ関文学はそれを熟知した官僚もしくは元官僚にしか見破ることができないが、現在の民主党政権にはそうしたノウハウを熟知した上で官僚を使いこなせる閣僚が少ないため、官僚に取り込まれるか、あるいは無闇に官僚と対立する結果行政の停滞を招くなど、間違った政治主導になっていると、岸氏は苦言を呈する。

 自民党時代の官僚政治を支えてきた霞ヶ関文学の実例を挙げながら、権力の行使において言葉が持つ重要性や、政治主導の実現のために何をすべきかを岸氏とともに議論した。

今週のニュース・コメンタリー
•google中国撤退で追い詰められた中国
 解説・佐々木俊尚氏(ジャーナリスト)
•北朝鮮最新情勢とよど号犯人の今
 報告・青木理氏(ジャーナリスト)
•憲政史上初のオープン首相会見の中身

関連番組
ニュース・コメンタリー (2010年03月06日)
温暖化対策基本法案に見る霞ヶ関文学の功罪

マル激トーク・オン・ディマンド 第407回(2009年01月24日)
無法地帯化する霞ヶ関
ゲスト:高橋洋一氏(東洋大学教授)

プレスクラブ (2010年03月26日)
鳩山内閣総理大臣記者会見

<ゲスト プロフィール>
岸 博幸(きし ひろゆき)慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
1962年東京都生まれ。86年一橋大学経済学部卒業。02年コロンビア大学経営大学院修了、MBA取得。86年通商産業省(現経済産業省)入省。同省産業政策局、内閣官房IT担当室、竹中平蔵経済財政政策担当兼金融担当相補佐官、同政務秘書官などを経て06年退官。07年より現職。著書に『ブレインの戦術』、『ネット帝国主義と日本の敗北』、共著に『脱藩官僚、霞ヶ関に宣戦布告!』など。

2010年3月20日

なぜわれわれは社会の敵を求めるのか

弘中惇一郎氏(弁護士)
マル激トーク・オン・ディマンド
第466回(2010年03月20日)
なぜわれわれは社会の敵を求めるのか
ゲスト:弘中惇一郎氏(弁護士)

プレビュー

 ロス疑惑の三浦和義、薬害エイズの安部英、鈴木宗男から加藤紘一、村上正邦、そして武富士の武井保雄から中森明菜、野村沙知代、叶姉妹、堀江貴文、そして今注目を集めている厚生省の村木厚子元局長。いずれも世間を賑わした著名な事件の主人公ばかりだが、この錚々たるメンバーの代理人を務める一人の弁護士がいる。カミソリ弘中との異名をとる弘中惇一郎氏だ。しかも弘中氏は、あたかも検察とメディアがタッグを組み、社会全体からのバッシングに晒された、いわば「社会の敵(パブリック・エネミー)」のような存在となった彼らに、多くの無罪判決や勝訴をもたらしているのだ。

 現在、弘中氏が弁護人を務める人物の一人が、厚労省が絡む郵便制度悪用事件で逮捕・起訴された村木厚子元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長である。人望もあり、事務次官候補の呼び声が高かった村木氏は、健康保険福祉部の企画課長だった2004年、実態のない障害者団体に対して郵便割引制度の適用団体と認める偽の証明書を部下に命じてつくらせたとして、虚偽有印公文書作成・同行使の罪に問われている。

 しかし、この公判では、村木氏から指示を受けたとされる部下をはじめ、出廷した証人が次々と捜査段階の供述を覆し、村木氏の事件との関わりを否定するという異例の展開となっている。弘中氏は、村木氏にはそのような不正を働く動機がなく、まことしやかに報じられた政治家からの働きかけも公判で否定されていることを指摘した上で、この事件はそもそも検察が描いた構図に最初から無理があると言い切る。

 そもそも今回の事件は、障害者郵便割引制度を悪用し大量のダイレクトメールを発送して不正な利益を得た企業や団体関係者が逮捕・起訴された郵便法違反事件に端を発する。しかし、郵便法違反ではたかだか罰金刑で終わることを面白くないと見た大阪地検特捜部が、政治家と官僚トップを巻き込み、最初からシナリオありきでつくられた事件ではないかと弘中氏は見る。その背景には東京地検特捜部に対するライバル意識、特捜という看板を掲げるが故に、常に特別な事件をあげなければならないという気負いがあるとも指摘する。

 しかし、「事件をつくる」のは何も検察に限ったことではない。ロス銃撃事件も薬害エイズ事件もメディア報道が先行し、世論が感情的に吹き上がり、それらに後押しされた捜査当局が追随した事件だった。海外を自由に往来し、ブランド品に高級外車などバブルを先取ったような派手な生活を送る三浦氏、血友病の権威であり、特異な話しぶりや振るまいが高圧的に映る安部氏、聖域とされたマスメディア企業の買収に手を染め、社会規範に対する挑発的な言動がエスタブリッシュメントの反感を買った堀江氏。彼らはいずれも、マスコミや世間から容赦のないバッシングを受けつづけた挙げ句に、刑事訴追まで受けるという経過を辿っている。

 特に薬害エイズ事件に関しては、エイズという得体の知れない怖い病気で実際に多くの被害者が出ているという時期に、社会の不安を拭い去るためには、誰かを悪者にして、そこに原因を帰属させることで安心感を得たいという空気が社会全体を覆っていたと弘中氏は言う。

 しかし、現実には血液製剤による薬害エイズ問題は世界各国で起きており、海外では誰一人として臨床医の刑事責任など問われていないと弘中氏は言う。日本で安部氏がマスコミ報道や世間から叩かれて起訴されたのは、まさに人々の不安を静めるためのスケープゴートにされたに過ぎないと弘中氏は主張するのだ。

 しかし、それにしても最近の日本は、社会の共通の敵を見つけることに甚だ熱心のように見える。まずマスメディアがその先導役を務め、どこからか感情のフックを備えたネタを見つけてくる。そして、さんざん祭を盛り上げた上で、最後は真打ち登場とばかりに検察が現れ、悪者を退治して社会正義を貫徹する。それによって社会は溜飲を下げると同時に安堵感を得る。自由人権協会の代表幹事も務めた弘中氏の戦歴は、単に著名な刑事被告人を弁護してきたというだけでなく、著名人でありなおかつ目立つ存在であるが故に、社会が安心を得るための道具に使われた個人の人権を守ってきた歴史でもある。

 その弘中氏は、そうした正義の貫徹にやたらと検察や司直が入ってくる原因として、立法府や政治の機能不全を挙げる。社会の変化に立法システムが対応できず、人々の不全感や不安感が高まる中で、司法が本来の領域を超えて、それを手当する役割まで担うようになっている、あるいはそれを担わざるを得なくなっているというのだ。しかし、本来は立法が果たすべき機能を、逮捕権や公訴権を持った検察や警察が担うようになれば、無理な刑事捜査や人権侵害のリスクを招くことが避けられない。昨今の検察批判は同時に、政治の機能不全にも向けられなければならないということになる。

 「社会の敵」を弁護し、有罪率99.9%といわれる日本の刑事裁判において無罪を勝ち取ることで、検察の行き過ぎをチェックしてきた辣腕弁護士の弘中氏と、検察、司法、メディア、そしてそれらを取り巻く社会状況について議論した。

今週のニュース・コメンタリー
•東京都青少年健全育成条例が継続審議に
 なぜ「非実在青少年」の規制が無理筋なのか
•保坂展人氏の八ッ場ダム取材報告
 隠されたヒ素汚染と公共事業中止の対価

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第458回(2010年01月23日)
検察の捜査について、これだけは言っておきたい
ゲスト:堀江貴文氏(株式会社ライブドア元代表取締役CEO)
マル激トーク・オン・ディマンド 第269回(2006年05月24日)
私が重大犯罪の被告を弁護しなければならない理由
ゲスト:安田好弘氏(弁護士)
マル激トーク・オン・ディマンド 第242回(2005年11月09日)
鈴木宗男は何と戦っているのか
ゲスト:鈴木宗男氏(衆議院議員)
マル激トーク・オン・ディマンド 第16回(2001年06月22日)
報道被害を生むものとは何か
ゲスト:三浦和義氏

<ゲスト プロフィール>
弘中 惇一郎(ひろなか じゅんいちろう)弁護士
1945年山口県生まれ。68年東京大学法学部卒業。70年弁護士登録。ロス疑惑事件の三浦和義氏、薬害エイズの安部英氏の主任弁護人を務める。現在、2009年7月、虚偽有印公文書作成容疑で逮捕・起訴された村木厚子元厚生労働省雇用均等・児童家庭局長の主任弁護人に就任。自由人権協会元代表理事。共著に『薬害エイズの真実』、『刑事裁判と知る権利』など。

2010年3月14日

マル激スペシャルウィークin沖縄

マル激
マル激トーク・オン・ディマンド
第465回(2010年03月13日)
マル激スペシャルウィークin沖縄

 今週のマル激トーク・オン・ディマンドは、マル激スペシャルin沖縄と称して、神保、宮台の両キャスターが沖縄を訪れ、現地のキーパーソンたちとシリーズで「普天間基地移設問題」を始めとする沖縄をめぐる様々な論点を議論した。

 まず、トップバッターとして、神保、宮台両キャスターは沖縄出身の民主党衆議院議員の玉城デニー氏を、沖縄市に訪ねた。一年生議員ながら、名護市長選の結果を「斟酌」する必要は無いと発言した平野官房長官に噛みつくなど、物申す沖縄選出議員として知られる玉城氏は、沖縄からみた「東京政治」のおかしさを厳しく指摘した。米兵と日本人女性の間に生まれ、父親を知らずに育ったという自身の出自にも触れながら、政府が沖縄に基地負担を求めるのであれば、それがどのような安全保障論に基づくものなのかをはっきりさせることが必要だと主張する。さしたる明確なビジョンもないまま、単に負担だけを沖縄に強いる現在の米軍基地のあり方が沖縄からいかに不合理なものに見えるかを、玉城氏の歯に衣着せぬ発言が浮き彫りにする。

 次に、マル激は、建築家ながら平和運動家として長年にわたり独自の活動を続けてきた真喜志好一氏の那覇の事務所を訪れた。真喜志氏は辺野古に新たな海兵隊の基地が建設された時、米軍はそこにオスプレイという新型の航空機を配備する計画があることを、独自の調査で突き止めた。しかし、真喜志氏がその事実を明らかにした直後に、その情報は米国防総省のホームページから削除され、実際には今日にいたるまで、米側からも日本政府側からも、オスプレイの配備計画は発表もされていないし、確認もされていない。しかし、オスプレイはこれまで事故が多く、騒音も従来のヘリコプターよりも大幅に大きくなるため、オスプレイ配備が事前に明らかになれば、沖縄で大反対運動が起きることは必至だ。そうした重大な事実を隠したまま、今も続く「普天間の代替地探し」の虚構に、沖縄の人々はとうに気づいていると真喜志は言う。

 真喜志氏はまた、米国防総省は既に1960年代から辺野古に軍港を含む大型の基地を建設する計画を持っており、この「普天間基地移設計画」は、米側から見れば、老朽化した普天間をかねてから希望していた辺野古の新しい基地へと差し替える良い機会に過ぎない、と指摘する。にもかかわらず、日本政府はこれを、危険な普天間基地の返還を実現するためのやむを得ない代償として国民に説明してきた。

 真喜志氏は更に、沖縄本島北部の東村高江で進められている米軍ヘリパッド建設も、オスプレイの練習施設になることを、豊富な資料をもとに説明する。

 その後マル激は、元『噂の真相』の編集長で、6年前に同誌を休刊させた後、沖縄に移り住んだ岡留安則氏を、岡留氏が沖縄で居城としている那覇の居酒屋「瓦屋」に訪ねた。沖縄移住以来、ゴルフ三昧の悠々自適な生活を送っているという岡留氏だが、今や伝説の雑誌となった噂の真相亡き後、メディアの劣化が更に進み、いよいよタブーに挑戦するメディアが一つも無くなったと嘆く。

 その後インターネットやツイッターなど新しいツールの登場で、噂の真相と同じようなことが、遙かに安価にできるようになったことを指摘する岡留氏は、いずれ何らかの形で噂の真相を復活させる計画にも触れる。

 続いて神保、宮台両キャスターは、今回の基地移設問題の発端となった普天間基地を抱える宜野湾市に伊波洋一市長を訪ねた。伊波氏は独自の調査で、アメリカが沖縄駐留中の海兵隊をほぼ丸々グアムに移す計画を持っていることを、アメリカの様々な公文書を通じて明らかにしている。普天間の海兵隊を移す先として辺野古に基地が必要とする日米両政府の主張は、実は中身が空っぽなのではないかというのが、伊波氏の主張だ。実は伊波氏はそのことを民主党政権の中枢に伝えるために、12月に上京しており、その際にビデオニュースでも短い緊急インタビューを行っているが、このたびその話をより詳しく聞いた。

 真喜志氏の話と伊波氏の話を併せて聞くことで、現在の「普天間基地移設問題」がいかに虚構に満ちているかが、次第に明らかになっていった。

 同じ日の夜、われわれは沖縄音楽をベースに世界に向けて新しい音楽を発信し続けるりんけんバンドのリーダー照屋林賢氏を北谷の林賢氏のスタジオ「アジマー」に訪ねた。照屋氏が語る沖縄音楽とそのルーツへの熱い思いに、自分たちの音楽と共同体を守り通して来た沖縄への誇りと、それをとうの昔に失ってしまった本土が、様々な不合理な要求を突きつけている構図の背後にある、憧憬と差別の混じった感情を感じ取らずにはいられなかった。

 佳境を迎えた沖縄取材は、少女暴行事件に端を発する沖縄の激しい怒りを背景に、当時の橋本政権がアメリカから普天間基地の返還の合意を取り付けた当時の沖縄県知事大田昌秀氏を氏の那覇の事務所に訪ねた。

 知事時代、米軍用地の強制収容の代理署名を拒否して沖縄の意思を明確に示した大田昌秀氏は、普天間返還が決まったその瞬間から、政府はその代替基地を提供することを念頭に置いていたのではないかと推測する。大田氏の懸念は的中し、その後普天間返還問題は辺野古への代替施設建設問題へと大きくシフトし、大田氏の知事選落選によって沖縄県が新基地計画を受け入れた結果、今日に至っている。

 大田氏は歴代の自民党政権は、最初から普天間に変わる海兵隊の基地を提供するつもりだったとの見方を示す。そして、アメリカ側は既に沖縄に兵力を置いておく必要性が無くなっているが、日本側がそれを強く望んでいるために、まだ一定の勢力が沖縄に残っているのではないかと主張する。それが思いやり予算であり、辺野古への新基地建設だと言うのだ。

 大田氏に知事時代に遡り、普天間移設問題が辺野古新基地建設問題にすり替わっていった経緯を聞いた。

 沖縄取材を締めくくる最後に、いわゆる沖縄密約の存在を裏付ける文書を米公文書館で発見した我部政明教授を那覇の琉球大学に訪ねた。

 奇しくもその2日前、日米密約問題に関する外務省有識者委員会の調査報告書が9日に公表され、4つの密約のうち3つが「密約」と認定されたところだったが、我部教授は密約が必要だった理由として、当時の日本政府の二枚舌外交を指摘する。つまり、日本はアメリカの軍事力にはすがりたいが、日本の世論がそれを許さないため、その間に齟齬ができる。そこを密約という形で、アメリカには「どうぞやってください」と言う一方で、日本国民に対しては「それはできないことになっている」と説明する、そんなことを繰り返してきたというわけだ。

 しかし、結局それは嘘をいかに隠すかということに他ならない。我部氏は、外務官僚が「国民をいかに騙すか」の一点にその能力を傾注してきたことに、怒りを隠さない。そして、その嘘をつき通す大前提に「最後は全部沖縄に押しつければいい」とする安直な考えがあったのではないか。

 我部氏に密約問題が露わにする日本外交の暗部と、沖縄問題との接点を聞いた。

マル激スペシャルウィークin沖縄

現在放送中>>> (2010年03月11日)
沖縄密約と普天間移設問題の接点
我部政明氏(琉球大学法文学部教授)

現在放送中>>> (2010年03月11日)
普天間問題のボタンのかけ違いはここから始まった
大田昌秀氏(元沖縄県知事)

現在放送中>>> (2010年03月10日)
照屋林賢が語る 沖縄音楽とそのルーツ
照屋林賢氏(りんけんバンド・リーダー)

現在放送中>>> (2010年03月10日)
普天間返還に代替基地は不要
伊波洋一氏(宜野湾市長)

現在放送中>>> (2010年03月09日)
タブーに挑まずに何のためのメディアか
岡留安則氏(元『噂の真相』編集長)

現在放送中>>> (2010年03月09日)
もう沖縄は騙されない  普天間移設問題の真相
真喜志好一氏(建築家)

現在放送中>>> (2010年03月09日)
『東京政治』への不信感の根底にあるもの
ゲスト:玉城デニー氏(衆議院議員)

今週のニュース・コメンタリー
•マル激スペシャルin沖縄から見えてきたもの
•密約が露わにした日本の二枚舌外交の限界
•温対法、痛み分けのなぜ?
 官僚、産業界、組合のどれにも弱い民主党政権の限界


関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第459回(2010年01月30日)
なぜ普天間問題がこじれるのか
ゲスト:鈴木宗男氏(衆議院外務委員長)

マル激トーク・オン・ディマンド 第246回(2005年12月07日)
アメリカ依存から卒業するためにも憲法改正は必要
ゲスト:石破茂氏(元防衛庁長官)

マル激トーク・オン・ディマンド 第156回(2004年03月19日)
『噂の真相』的ジャーナリズム論と日本メディアの衰退
ゲスト:岡留安則さん (『噂の真相』編集長)

永田町コンフィデンシャル 第10回(2007年08月07日)
沖縄の声は、未だ届かない
ゲスト:下地幹郎氏(衆議院議員)

ニュース・コメンタリー (2010年02月27日)
保坂展人リポート 普天間移設問題は普天間移設問題に非ず

ニュース・コメンタリー (2009年12月12日)
アメリカは本当に怒っているのか
普天間移転問題で抜け落ちている論点

2010年3月 6日

PIGS問題は本当に対岸の火事なのか

井堀利宏氏(東京大学大学院経済学研究科教授)
マル激トーク・オン・ディマンド
第464回(2010年03月06日)
PIGS問題は本当に対岸の火事なのか
ゲスト:井堀利宏氏(東京大学大学院経済学研究科教授)

 現在国会で審議中の2010年度予算案は、一般会計総額92兆円余り、うち国債発行額が44兆円超と、ともに過去最大規模となった。それに対して税収は1985年以来最低水準の37兆円にとどまる。国債発行額が税収を上回るのは何と1946年以来のことだという。

 国と地方を併せた債務残高が対GDP比で190%(OECDデータ)に達する日本の財政事情は、すでに先進国中最悪の水準にあり、数字上は先のG7でも財政難が懸念されたPIGS諸国(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペイン)をも凌ぐ。特に日本の純債務残高の大きさは突出しており、2010年には対GDP比でイタリアを抜いて日本が世界一になるといわれている。少なくとも数字を見る限り、先頃暴動にまで発展したギリシャの深刻な財政危機も、対岸の火事と暢気に構えてはいられそうにない。

 こうした不安に対して、経済学者で財政学が専門の井堀利宏東京大学大学院教授は、景気が多少悪化しても物価や金融システムが安定している日本では、もともと経済的に立ち遅れているPIGS諸国のように、直ちに危機を迎えるような状況にはないと言う。日本の国債の信用度はまだ十分に高いし、消費税が先進国の最低水準の5%に過ぎない日本にはまだ増税の余地がある。また、国債の国内保有率の高さや1400兆円にも上る家計部門の貯蓄残高の高さなども、PIGS諸国とは条件が異なる。
 しかし、日本には、そうした優位性を打ち消して余りある決定的な悲観材料が、一つあると井堀氏は指摘する。それは、日本の高齢化のスピードが諸外国と比べてケタ違いに速いことだ。実は日本の財政悪化も急激な高齢化に負うところが大きく、その意味で日本の財政状況は相当に厳しいと言わざるを得ない。今後、経済成長も期待できない上に、団塊世代の高齢化で社会保障費が爆発的に増大するとなれば、財政破綻に見舞われる可能性も否定できないと井堀氏は言うのだ。
 もし日本が財政破綻した場合、井堀氏は、かつてアルゼンチンで起きたようなデフォルト(債務不履行)は先進国の日本では起きないとしながらも、国債の信用度が急落し、買い手がいなくなるために金利が急上昇するという。そのため、それまで国債発行で賄っていた予算が新たに組めなくなり、急激な大増税や大胆な歳出カットをせざるを得ない状況に追い込まれる。サービスの低下や年金給付削減に加えて急な大増税ときたら、ギリシャのような社会不安を招きかねない。これが先進国における財政破綻の典型的な事例だと井堀氏は警告する。
 団塊の世代が医療費の中心受給者となる10年後までに、できるだけ早く財政再建に着手し、財政健全化を図る必要があると言う井堀氏は、そのためにはムダの削減だけでは不十分であり、消費税の増税は避けて通れないと言う。
 とはいえ、日本国内では消費税増税に対する異論は根強い。中でも、全消費者から浅く広く税を徴収する消費税には、低所得層の負担が相対的に大きくなる逆進性の問題があるからだ。
 これに対して井堀氏は、一部の商品に対する税率を軽減したり、給付付き控除を導入することで、低所得者に対する逆進性を手当する方法はいくらでもあり、それだけで消費税を導入しない理由にはならないと説く。
 悪化する日本の財政の現状を検証し、財政を再建するために何をしなければならないかを、井堀氏とともに考えた。

今週のニュース・コメンタリー
•温暖化対策基本法案に見る霞ヶ関文学の功罪
•波紋呼ぶ原口総務相のツィッター
•枝野行政刷新相が脱記者クラブ会見

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第462回(2010年02月20日)
「政治とカネ」特集
民主主義のコストと利益誘導政治の境界線はどこに

ゲスト:富崎隆氏(駒澤大学法学部准教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第438回(2009年08月28日)
これでもあなたは投票に行きませんか
ゲスト:森川友義氏(早稲田大学国際教養学部教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第401回(2008年12月06日)
後期高齢者医療制度は必要だ
ゲスト:土居丈朗氏(慶応義塾大学准教授)
インタビューズ (2010年03月06日)
津田大介氏(メディアジャーナリスト)インタビュー

<ゲスト プロフィール>
井堀 利宏(いほり としひろ)東京大学大学院経済学研究科教授
1952年岡山県生まれ。74年東京大学経済学部卒業。81年同大学大学院経済学研究科博士課程退学。同年ジョンズ・ホプキンス大学大学院でPh.D取得。東京大学経済学部助教授、同学部教授を経て96年より現職。著書に『「小さな政府」の落とし穴』、『誰から取り、誰に与えるか』など。

Profile

神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

BookMarks

ビデオニュース・ドットコム(有料会員登録制)
http://www.videonews.com/

ビデオジャーナリスト神保哲生のブログ
http://www.jimbo.tv/

マル激!メールマガジン
↓ ↓ ↓


-----<著書>-----

新刊!
↓ ↓ ↓

『格差社会という不幸』
2009年12月、春秋社、共著


『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』
2009年7月、ダイヤモンド社


『オルタナティブ・メディア―変革のための市民メディア入門』
2008年12月、大月書店、翻訳・解説


『教育をめぐる虚構と真実』
2008年10月、春秋社、共著


『ツバル―地球温暖化に沈む国』
2007年7月、春秋社、増補版


『ビデオジャーナリズム―カメラを持って世界に飛び出そう』
2006年7月、明石書店


『中国―隣りの大国とのつきあいかた』
2007年6月、春秋社、共著


『アメリカン・ディストピア―21世紀の戦争とジャーナリズム』
2003年9月、春秋社、共著


『天皇と日本のナショナリズム』
2006年11月、春秋社、共著


『ネット社会の未来像』
2006年1月、春秋社、共著

『粉飾戦争―ブッシュ政権と幻の大量破壊兵器』
2004年3月、インフォバーン、監訳

『プロパガンダ株式会社―アメリカ文化の広告代理店』
2004年8月、明石書店、解説

『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』
2002年10月、春秋社、共著

『地雷リポート』
1997年11月、築地書館

『ビデオジャーナリストの挑戦』
1995年11月、ほんの木

『重要政策全比較―シリウス・日本新党・平成維新の会』
1993年7月、ほんの木

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