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2009年9月27日

温室効果ガスの25%削減は十分可能だ

飯田哲也氏マル激トーク・オン・ディマンド
第442回(2009年09月26日)
温室効果ガスの25%削減は十分可能だ
ゲスト:飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)

プレビュー

 「温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減する」。

 鳩山首相が国連気候変動サミットで表明した国際公約は、世界各国から称賛された。国際舞台で日本の政治家の発言がこれほど高い評価を受けるのは、一体いつ以来のことだろうか。

 長年地球温暖化問題に取り組んできたNPO環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、環境分野に限らず、日本が国際政治を前に動かす原動力となったのはおそらく初めてのことであり、日本国民にとっても有意義な出来事だと、これを高く評価する。

 しかし、こうした国際舞台での歓迎ムードとは裏腹に、国内では「現実的でない」「不可能だ」「負担が重過ぎる」と、25%削減目標に対する否定的な発言ばかりが報道されている。なかでも批判の論拠となっているのが、90年比25%削減が実行された場合、「国民負担が一世帯当たり年36万円増加する」という、「経産省試算」なるデータだ。

 しかし、飯田氏はこの数字には悪意に満ちた巧妙なトリックが隠されていると言う。ここで言う「36万円の負担増」とは、この先日本が地球温暖化対策を何も行わなかった場合と25%削減した場合を比べたとき、2020年の時点で家計負担に36万円の差額が出るという話であり、何も各家庭が実際に36万円を負担しなければならないという話ではない。実は、90年比25%減を実現した場合でも、現在(2005年時点)より家計所得は76万円増えるのだ。それを、あたかも今より家計負担が36万円も増えるかのようにメディアを使って印象操作をするのは、温暖化対策をしたくない勢力によるたちの悪い脅迫だと飯田氏は批判する。

 このようなネガティブキャンペーンが横行する中、飯田氏は、25%削減は決して無理な数字でもなければ、過度な負担を国民に強いるようなものではないと説く。むしろ、既に先進国が約束している最低基準でもある25%の削減が、国民にとって重い負担にならないようにするためには、今から様々な対策を行っておく方が賢明ではないかと言うのだ。

 では、25%削減をいかに実現するか。

 そもそも日本のCO2排出量を増加させた最大の原因は石炭火力発電の増加にあると、飯田氏は指摘する。しかも、日本は2023年まで石炭発電所を増やす計画だという。飯田氏は、まずはこれを凍結した上で、短期的には石油や石炭よりCO2の排出が少ない天然ガスにエネルギー源をシフトさせ、中長期的に太陽光や風力などの再生可能エネルギーに転換していくことが、25%削減を実現するための必須条件になるという。

 そして、それを可能にするツールが、環境税(温暖化対策税)、排出量取引、固定価格買取制度の3点セットだ。しかし、民主党は先の衆院選のマニフェストでこの3つの実現を公約しているのだ。

 事業者のCO2排出量に応じて課税をする環境税は、削減努力に経済的メリットが生じるため、既に温暖化対策としての有効性が欧州で証明されている。

 新たな金融商品を生むだけと批判されることの多い排出量取引は、最初にキャップ(総量規制)をかけて、総量を抑えることに主眼がある。現在日本が試験運用しているような総量規制を設けないキャップレス・トレードではCO2は減らないことは当然のことと飯田氏は言う。

 そして、25%削減の決定打となることが期待される再生可能エネルギーについては、電力会社に対して全ての再生可能エネルギーを固定価格で買い取ることを義務づける「フィード・イン・タリフ」と呼ばれる制度を実現できるかどうかが、成否を握っていると言っても過言ではない。これは事業者や家庭が風力や太陽光などの再生可能エネルギー発電を独自に行ったとき、その全量を一定の価格で買い取ることを電力会社に義務づける制度で、この価格設定を8年程度で採算があう水準に合わせれば、発電事業に乗り出す事業者や個人が爆発的に増えることが期待できる。ドイツやスペイン、中国など再生可能エネルギー先進国はすべて、この固定価格買取制度によって飛躍的に自然エネルギー市場を拡大させているが、日本では電力会社と経産省の抵抗が強く、未だに固定価格買取制度は実現していない。

 実はこの11月から、政権交代直前に経産省が滑り込みで導入した擬似固定価格買取制度が始まるが、飯田氏はこれもまた「民主党政権が本物のフィード・イン・タリフを導入するのを阻止するために、経産省が投げたくせ玉」に過ぎないと、これを一蹴する。実はこの制度は、太陽光以外の再生可能エネルギーは一切除外した上に、個人のみを対象にした制度となっていて、一旦この制度が導入されてしまうと、対象を他のエネルギーに広げたり、事業者を買い取り対象に含めることが難しくなるように、意図的に設計されていると言うのだ。民主党政権は、まず本物のフィード・イン・タリフ導入の邪魔になるこの制度をストップすべきだと、飯田氏は言う。

 いずれにしても、25%削減を実現するには、この3本柱のうちの一つでも欠けると、実現は難しいだろうと飯田氏は言う。逆に言えば、ドイツなどの成功例を見ても、この3点セットをしっかりと導入することができれば、国民生活に大きな負担を与えることなく、25%削減は十分に可能になると、飯田氏は言い切る。

 25%削減の処方箋と、その実現の前に立ちはだかる抵抗勢力をいかに打ち破るかを、飯田氏と考えた。

今週のニュース・コメンタリー
・外務省が官邸に先駆けて会見を開放へ
・密約問題の落としどころと非核三原則
・またまた民主党議員立法「原則禁止」の怪
・民主党の政権準備不足の理由

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第379回(2008年07月05日)
炭素税はCO2排出削減の決め手となるか
ゲスト:足立冶郎氏(NGO「環境・持続社会」研究センター事務局長)
マル激トーク・オン・ディマンド 第372回(2008年05月17日)
日本が再生可能エネルギーを推進すべきこれだけの理由
ゲスト:飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)
マル激トーク・オン・ディマンド 第368回(2008年04月19日)
これでいいのか、日本の排出量取引ゲスト:諸富徹氏(京都大学大学院経済学研究科准教授)

<ゲスト プロフィール>
飯田 哲也(いいだ てつなり)環境エネルギー政策研究所所長
1959年山口県生まれ。83年京都大学工学部原子核工学科卒業。同年神戸製鋼入社。電力中央研究所勤務を経て、96年東京大学大学院先端科学技術センター博士課程単位取得満期退学。00年NPO法人環境エネルギー政策研究所を設立し、現職。92~06年日本総合研究所主任研究員を兼務。90~92年スウェーデンルンド大学環境エネルギーシステム研究所客員研究員。著書に『北欧のエネルギーデモクラシー』、編著に『自然エネルギー市場』、共著に『日本版グリーン革命で雇用・経済を立て直す』など。

2009年9月20日

空腹力が人類を救う

marugeki_441_ishihara.jpgマル激トーク・オン・ディマンド
第441回(2009年09月19日)
空腹力が人類を救う
ゲスト:石原結實氏(医師・イシハラクリニック院長)

プレビュー

今週のニュース・コメンタリーPART1無料放送中

 食欲の秋というが、今週の丸激のテーマは「空腹力」。

 「空腹力」とは、文字通り空腹状態に耐える力のこと。その名づけ親である医師の石原結實氏は、今日先進国に住むわれわれを悩ませているあらゆる病気の原因に、単純な「食べ過ぎ問題」があるとの前提に立ち、われわれが健康な生活を取り戻すためには、食べないことに耐える力、すなわち空腹力を鍛えることが不可欠であると主張している、実は知る人ぞ知る断食界のカリスマだ。

 そもそも300万年前に発祥したと言われる人類の歴史は、そのほとんどが飢餓との戦いに費やされてきた。人間は飢餓を乗り越えて生き延びるために、飢餓に対応するありとあらゆる防衛機能を備えるようになった。それがあったからこそ、恐竜を始めとする多くの動物が滅亡する中、今なおわれわれ人類は地球上で生き延びていると言っていい。

 飢餓防衛能力の一つが、例えば皮下脂肪だ。摂取した栄養は人体の機能を維持するために代謝に回されるが、余った分は将来の飢餓に備えて、皮下脂肪そして体内に蓄えられる。

 また、血糖値が下がると人はすぐに空腹を感じ、万難を排してでも何とか食べ物を口に入れようとするが、食べ物を口に入れてからそれが消化されて満腹を感じるまでに1時間ほどのタイムラグがあるために、放っておけば人間は必ず食べ過ぎるように作られている。

 しかも、余分に食べたものはすぐに脂肪になって貯蔵されるが、一方この脂肪が、簡単には燃焼されないようになっている。ダイエットが苦しいのも、それが原因だ。

 いずれも、将来の飢餓に備えるために人間が300万年かけて身につけてきた高度な飢餓防衛能力なのだから、こればかりはしかたがない。

 飢餓にはこれだけ高度な防衛能力を持つ人間なのだが、その一方で、過食に対しては、何ら防衛機能を持っていない。いや、むしろ人間の本能は過食を促す方向に作用するようになっていると言っても過言ではないのだ。

 今日の先進国のように、飢餓の脅威がなくなり、その気になればいくらでも食糧が手に入るようになった今、皮肉にも飢餓ではなく過食が人類の命を脅かすまでになっている。石原氏によれば、現在予備軍も含めて日本に2200万人もいるという糖尿病をはじめ、高血圧、心筋梗塞、脳疾患、ガンに至るまで、全てが食べ過ぎに少なくともその原因の一端があると言う。

 「恐竜もマンモスも皆、大きくなりすぎて滅びた。人間もこのままでは大きくなり続け、最後には滅びる運命にある」と石原氏は言う。

 そこで石原氏が言うように、空腹力を鍛えよ、となる。

 石原氏の提唱する空腹力とは、端的に言えば空腹を我慢する力のことだが、それは何も空腹の苦しみに耐える力をつけろと言っているわけではない。人間は血糖値が下がった時に分泌されるホルモンによって空腹を感じるため、血糖値が上がれば本来は空腹は収まる。しかし、われわれの多くが、幼少時からきちんと食事を摂らなければならないときつく教え込まれているため、実際に食事で胃袋を満たさないと空腹は収まらないものと信じ込んでいる。つまり、空腹力とは、そうした呪縛から自らを解放し、血糖値を正常にコントロールすることで、例えば1日1食か2食で苦痛を感じずに十分やっていけるような力を付けることを意味する。

 空腹力を鍛えれば、例えば、石原氏が提唱するニンジンとリンゴを混ぜたジュースやショウガ入り紅茶で血糖値を上げておくだけで、まったく空腹を感じずいられるようになるのだと石原氏は言う。

 石原氏自身が、朝、昼はニンジン・リンゴジュースを3杯ずつ飲み、合間にショウガ紅茶を飲む他は、1日1食だけで、しかも毎日ジョギングやウエイトリフティングに勤しむ生活を、30年以上続けているそうだ。

 石原氏自身は医師ではあるが、氏のこうした考え方は、東洋医学の発想に基づいている。解剖学を基礎とし、腫瘍や潰瘍など器質的な変化などの目に見える症状を治療の対象とする西洋医学に対し、気の流れなど目に見えないものに働きかけることで生命の本質に迫ろうとするのが東洋医学だと、石原氏は言う。しかし、理論的な裏付けのない東洋医学は医学の世界において主流とは成り得ず、ともすればオカルト扱いを受けたりする。目に見える形で説明できないものは科学ではないと否定されてきたのだ。

 しかし、「空腹力」は、西洋医学的にも証明できると石原氏は言う。また、実際に西洋でも先端医療の世界では、西洋医学の限界を知った医師たちが、東洋医学的な治療を行っているところは多いと言う。

 食欲の秋、現代の過食社会に警鐘を鳴らす「空腹力」について、石原氏とともに考えた。

今週のニュース・コメンタリー
・首相就任会見が開かれなかった背景
・次官会見廃止の意味
・新閣僚発言に見る公約実現の本気度
・自民党総裁選始まる

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第343回(2007年10月28日)
私がデブをやめた理由
ゲスト:岡田斗司夫氏(作家・評論家)
マル激トーク・オン・ディマンド 第148回(2004年01月24日)
メディアが変われば日本も変わる?!

<ゲスト プロフィール>
石原 結實(いしはら ゆうみ)医師・イシハラクリニック院長
1948年長崎県生まれ。75年長崎大学医学部卒業。長崎原爆病院勤務などを経て、81年長崎大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。82年イシハラクリニック開業。 85年、断食指導のための「ヒポクラティック・サナトリウム」を開設。著書に『空腹力』、『「一食抜き」健康法』など。

2009年9月12日

「対等な日米関係」のすすめ

marugeki_440_magosaki.jpgマル激トーク・オン・ディマンド
第440回(2009年09月12日)
「対等な日米関係」のすすめ
ゲスト:孫崎享氏(元外務省国際情報局長)

プレビュー

 民主党は「対等な日米関係」という表現を好んで使う。民主党はマニフェストにもそれを盛り込んでいるし、民主、社民、国民新党の連立合意文書にも「緊密で対等な日米同盟関係」という文言が盛り込まれている。先日物議を醸した鳩山論文でも「対等」が強調されていた。

 しかし、「対等な日米関係」とは何を指しているのか。そもそも現在の日米関係は本当に対等ではないのか。

 日本の安全保障の根幹を成す日米同盟は、これまで何度か変質を繰り返してきた。著書『日米同盟の正体』で日米関係の現状を批判している元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、変遷を繰り返した結果、現在の日米同盟は60年の日米安保条約締結当時とは全く異質なものになっていると指摘する。

 日米の同盟関係は、警察予備隊の創設や思いやり予算の導入、日米共同軍事演習の開始など古くから多くの変質を遂げてきたが、孫崎氏はその中でも最も重要な変化が、92~93年の日米安保の再定義と2005年の2+2合意だったとの見方を示す。

 92~93年は、それまで日本に対してさしたる軍事的役割を求めてこなかったアメリカが、日本の自衛隊をどう使うかという発想へ大きく方針転換したと孫崎氏は言う。それまで冷戦体制の下でソ連の脅威への対応に専念してきたアメリカが、新たな脅威として北朝鮮やイラン、イラクといった不安定な国家を念頭に「国際環境を改善するために軍事力を使う」戦略へと切り替えた。

 その結果、日本の米軍基地の役割も変化し、アメリカにとっての自衛隊の位置づけも変わった。日米安保の対象が日本の国防から徐々に拡大され、その対象地域も拡大の一途を辿ることになる。

 また、外務省で情報畑を歩んできた孫崎氏は、ソ連の崩壊後、日本の経済力がアメリカにとって真の脅威となったことも、日米同盟の変質を促す要因となったと言う。アメリカの軍事力にただ乗りしながら、軽武装で経済に専念することで、経済的にアメリカを脅かすまでになった日本の国力を殺ぐために、その頃からアメリカは、自国の国際的な軍事戦略に日本を巻き込むためのさまざまな工作を行うようになった。

 それが実を結んだのが、安保成立当時からの明確な「縛り」だった極東条項を「周辺地域」にまで広げ、事実上日米安保の地理的概念を取っ払うことに成功した97年の日米新ガイドライン合意であり、99年の周辺事態法の成立だった。

 そして、アメリカの日本巻き込み戦略の集大成とも呼ぶべき成果が、05年に両国の外務・防衛大臣(アメリカは国務長官と国防長官)の間で合意された、いわゆる2+2合意「日米同盟:未来のための変革と再編」だった。孫崎氏はこの合意によって、日米同盟は締結当時とは全く異なる代物に変質したと言い切る。それは、元々日本の防衛のために存在したはずの日米安保が、遂には全世界の秩序維持のための協力関係へと変わってしまったからだ。

 2+2合意は、日米安保の根幹を成していた国連憲章の尊重も放棄し、国際安全保障環境を改善するために日米共通の課題に取り組むことが掲げられている。そして作戦、戦略、運用、訓練と全ての分野において細かく定められた規定によって、米軍と自衛隊との部隊レベルでの一体化が既に進んでいるという。

 05年の2+2合意はそれだけ重要な安保政策の転換を意味するものでありながら、国会でもほとんど議論されず、マスコミでもその意味を解説する記事は皆無だったと孫崎氏は言う。日本の安全保障の根幹を成す日米同盟に本質的な変更を加える政策転換が、一握りの外務官僚とその重要性をほとんど理解していない政治家によって実行されていたことになる。

 いずれにしても、日米同盟関係はもはや、「日本がアメリカから守ってもらっている」などという牧歌的な次元を遙かに超えた、世界規模の軍事協力関係にあることだけはまちがいないようだ。

 しかし、それでも多くの日本人が、「日本はアメリカに守ってもらっているのだから、日米関係が対等なはずがない」と感じているとすれば、それはなぜだろうか。孫崎氏は、それは長年に渡るアメリカの「情報戦」の成果だと言う。日本にはアメリカのためになることが日本の国益に資すると信じて疑わない人が多くいるため、アメリカは日本に対して簡単に情報戦を仕掛けられる立場にある。本人が自覚しないまま、結果的にアメリカの情報戦略の片棒を担いでいる日本人がたくさんいるというのだ。

 そもそも日米同盟は、アメリカが日本を守るための軍事力を提供する代わりに、日本は米軍に基地を提供することで、バーターが成立していると孫崎氏は言う。以前にこの番組でケント・カルダー氏が指摘したように、アメリカにとって日本ほど重要な軍事拠点は他になく、アメリカも既に日米同盟からは十分な対価を得ている。日米関係は決して「日本がアメリカに守ってもらっている」だけの関係ではないのだ。

 しかし、元々対等と言ってもいいような互恵関係にありながら、あたかも日本がアメリカに隷属しているかのようなイメージを定着させ、日本をアメリカの意向に従わせるのが情報戦の目的だとすれば、日本は情報戦においては、アメリカに完敗していると言わざるを得ないだろう。今回の選挙で民主党の「対等な日米関係」が国民の支持を集めたことが、そのイメージに対する反発の結果だったとすれば、情報戦がうまくいきすぎたために国民の反発を招いたことになり、皮肉な結果だったとしか言いようがない。

 日米関係の変遷と現状を検証し、民主党の掲げる「対等な日米関係」の意味を孫崎氏と議論した。

今週のニュース・コメンタリー
・民主党政権に一抹の不安
・なぜ反対意見ばかりが報じられる 中期目標25%減の不思議
・自民党の苦悩は続く

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第385回(2008年08月16日)
なぜ日本には米軍基地があるのか
ゲスト:ケント・カルダー氏(ジョンズ・ホプキンス大学大学院教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第370回(2008年05月03日)
思いやり予算、そろそろやめませんか
ゲスト:田岡俊次氏(軍事ジャーナリスト)

<ゲスト プロフィール>
孫崎 享(まごさき うける)元外務省勤務・元防衛大学校教授
1943年旧満州国生まれ。66年東京大学法学部中退、外務省入省。英国、ソ連、米国、イラク、カナダの大使館勤務を経て、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学校教授を歴任。09年3月退官。著書に『日米同盟の正体 迷走する安全保障』、『日本外交 現場からの証言』など。

2009年9月 5日

高速道路無料化のすべての疑問に答えます

marugeki_439_yamazaki.jpgマル激トーク・オン・ディマンド
第439回(2009年09月05日)
高速道路無料化のすべての疑問に答えます

プレビュー

 いよいよ民主党政権が始動することとなった。実質的に半世紀ぶりの政権交代でもあるので、課題が山積していることは言うまでもないが、まずは何と言っても民主党が公約に掲げた政策を実現し、日本に真の変化をもたらすことができるかどうかに注目が集まっている。

 そこで選挙明け最初のマル激では、民主党の目玉政策のひとつである高速道路無料化を取り上げ、無料化の元祖提唱者であるシンクタンク代表の山崎養世氏に、高速道路無料化に対するさまざまな疑問を徹底的にぶつけてみた。

 高速道路無料化は、2003年の総選挙から民主党が主張している主要政策だが、依然として財源や渋滞を招くのではないかという懸念、CO2発生の増加による地球環境への影響などを理由に、無料化に反対する声が根強い。

 しかし、山崎氏はこうした批判をいずれも、的外れだと一蹴する。それはこうした批判がいずれも、「前提から間違っている」からだと言うのだ。

 まず、無料化が受益者負担の原則を壊し、ただでさえ火の車状態にある財政をさらに悪化させるのではないかとの懸念には、山崎氏はこう答える。

 既に高速道路ユーザーは年間2兆3千億円の通行料金の他に、ガソリン税などを通じて年間2兆円にのぼる税金を支払っている。無料化に必要な財源は高速道路ユーザーの支払う税金で十分に賄えるため、一般国民の税金が投入されることはない。つまり、無料化こそ受益者負担の原則に戻ることであり、逆にガソリンで税金徴収した上に、高速道路ユーザーからも1キロあたり25円もの高い通行料金を徴収し、その二重取りしたお金で無駄な道路を作りづつけている現在の道路システムこそ、受益者負担の原則に反していると山崎氏は言う。

 もともと日本では高速道路は無料だった。東名・名神高速の建設の際、建設に費やした借金の返済のために有料化されたが、返済を終えたら無料に「戻す」約束だった。しかし、1972年に田中角栄首相により料金プール制が導入され、他の路線の建設に回すため永遠に通行料金を取り続けることが可能になってしまった。その時初めて、高速道路は有料が当たり前になったのだ。それ以来、二重取りした財源を道路に注ぎ込み続けた結果、今や日本の道路支出は、英仏独伊の欧州の主要4カ国の合計額に匹敵するほど莫大なものとなっている。日本は教育費や子育て支援費ではそれらの国々の足下にも及ばないにもかかわらず、こと道路だけは世界に冠たる超大国になってしまったのだ。

 山崎氏によると、現在進行している民営化策では新たな借金で道路を作り続けるスキームが残されているため、無駄な道路は作られ続けることが可能だと言う。それをやめさせるには料金収入を断ち切るしかない。つまり、無料化こそが有効な財政再建策になると、山崎氏は説く。

 無料化すると高速道路が渋滞するという懸念も、山崎氏は真っ向から否定する。地方では、高速道路は料金が高過ぎるために、地域の人々はこれを気軽に利用できる状況にはない。そのため、地方を走る高速はほとんどがガラガラで、むしろ周辺の一般道路が混雑しているのが実情だと言う。ならば、高速を無料にして一般道を走っている車を高速道路に乗せることで、高速も一般道も渋滞はなくなる。

 麻生政権の経済対策で高速道路を1000円にした際に高速が大渋滞した問題は、そもそも行楽のピークの道路がもっとも混む時期に値下げを行ったことの影響であり、期間を限定しない無料化であれば、あのような事は起きないと説明する。

 また、環境面から懸念されるCO2排出量の増加についても、混雑する東京の首都高や大阪の阪神高速は無料化の対象から外れるため、交通量が増えることはない。地方では一般道から高速に車が移動するので、より燃費の高い走行が可能になるうえ、一般道の渋滞は解消されるので、むしろCO2は減るはずだと山崎氏は言う。

 さまざまな批判や疑問に一つひとつ丁寧に答える山崎氏だが、しかし、そもそもこれらの批判は、大前提が間違っていると山崎氏は言う。

 財政負担についても、高速道路の無料にすることの経済効果は7兆8千億円もあり、道路の無料化による歳入の減少分を埋めて余りあるメリットが期待できる。料金徴収が不要になれば、料金所が不要となるので、出入り口を低コストで容易に増やせるようになる。出口が増えれば、自動車の流れがもっとスムーズで快適なものとなり、高い料金のために無用の長物となっていた高速道路は地域の生活道路に生まれ変わり、多大な経済効果も見込めるという。

 また、環境に対する懸念も、それは現在の内燃式のガソリンエンジン車を前提にした話であり、高速道路の無料化は車のエコ化を前提としなければ、意味のない議論になると山崎氏は言う。

 つまり、高速道路の無料化論は単なる利益や便益の向上を目的としたものではなく、これまでの外需中心の工業化社会から、地域振興、農林水産業の発展、観光、教育の充実など、内需主導のポスト工業化社会へ移行することを前提としているし、それを意図している。現在の体制を前提とした批判は、それ自体に意味が無いというのが、山崎氏の基本的な考え方だ。

 日本がこれから豊かな先進国になっていくためには、工業化の象徴とも言うべき東京一極集中を解消し、人を分散させ、時間と空間にゆとりを持たせることが不可欠であり、そのようなグランドデザインを実現するために高速道路の無料化があると山崎氏はいうのだ。

 山崎氏は、高速道路の無料化を実現する上での最大のハードルは、われわれ国民が無意識の間に受け入れてしまっている誤った「常識」と「想像力の欠如」だとの見方を示す。そもそも高速道路がタダになることは、本来であれば誰にとっても喜ばしいことであるはずだ。にもかかわらず、多くの国民がそれに懸念を表し、反対までするのは、無料化で既得権益を失う道路官僚や道路政治家たちが、それがあたかも悪いことであるかのようなネガティブキャンペーンを張り、マスコミもそれを垂れ流ししてきたことにも一因はある。しかし、多くの国民が自分の頭で考えることをせずに、それを受け入れてしまっていることで、われわれ一人ひとりの中に「そんなことできるはずがない」とか「そんなうまい話があるはずがない」といった「常識の壁」ができてしまっている。それこそが、高速道路無料化の最大のハードルだと山崎氏は言う。

 山崎氏の話は、高速道路の無料化が実現した後の課題となる、石油をベースとする経済体制から太陽をベースとする「太陽経済」への移行へと広がっていった。

今週のニュース・コメンタリー
・鳩山外交論文の謎
・カーチス教授の見た総選挙と政権交代
・比例のブロック制は問題あり
・最高裁国民審査で「一票の格差」にNO

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第234回(2005年09月17日)
それでもあえて郵政民営化を問う
ゲスト:山崎養世氏(シンクタンク山崎養世事務所代表)

<ゲスト プロフィール>
山崎 養世(やまざき やすよ)シンクタンク山崎養世事務所代表・一般社団法人「太陽経済の会」代表理事
1958年福岡県生まれ。82年東京大学経済学部卒業。88年カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)でMBA取得後、大和證券に入社。94年米・ゴールドマン・サックス本社に移り、98年日本法人ゴールドマン・サックス投信(現ゴールドマン・サックス・アセット・マネージメント)社長、米・ゴールドマン・サックス本社パートナー(共同経営者)に就任。02年山崎養世事務所を設立。著書に『日本「復活」の最終シナリオ「太陽経済」を主導せよ!』、『道路問題を解く』など。

Profile

神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

BookMarks

ビデオニュース・ドットコム(有料会員登録制)
http://www.videonews.com/

ビデオジャーナリスト神保哲生のブログ
http://www.jimbo.tv/

マル激!メールマガジン
↓ ↓ ↓


-----<著書>-----

新刊!
↓ ↓ ↓

『格差社会という不幸』
2009年12月、春秋社、共著


『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』
2009年7月、ダイヤモンド社


『オルタナティブ・メディア―変革のための市民メディア入門』
2008年12月、大月書店、翻訳・解説


『教育をめぐる虚構と真実』
2008年10月、春秋社、共著


『ツバル―地球温暖化に沈む国』
2007年7月、春秋社、増補版


『ビデオジャーナリズム―カメラを持って世界に飛び出そう』
2006年7月、明石書店


『中国―隣りの大国とのつきあいかた』
2007年6月、春秋社、共著


『アメリカン・ディストピア―21世紀の戦争とジャーナリズム』
2003年9月、春秋社、共著


『天皇と日本のナショナリズム』
2006年11月、春秋社、共著


『ネット社会の未来像』
2006年1月、春秋社、共著

『粉飾戦争―ブッシュ政権と幻の大量破壊兵器』
2004年3月、インフォバーン、監訳

『プロパガンダ株式会社―アメリカ文化の広告代理店』
2004年8月、明石書店、解説

『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』
2002年10月、春秋社、共著

『地雷リポート』
1997年11月、築地書館

『ビデオジャーナリストの挑戦』
1995年11月、ほんの木

『重要政策全比較―シリウス・日本新党・平成維新の会』
1993年7月、ほんの木

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