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今の霞ヶ関では日本をパンデミックから守れない

marugeki_435_kimura.jpgマル激トーク・オン・ディマンド
第435回(2009年08月08日)
今の霞ヶ関では日本をパンデミックから守れない

プレビュー

 この冬もし豚インフルエンザが再び日本を襲った場合、日本はただでは済まないかもしれない。なぜならば、日本は感染症に対する体制が全く整っていないからだ。いや、この春の感染拡大で、日本には体制が整っていないことが明らかになっていながら、それに気づかなかったり、それを修復しようとしていないからだと言った方が、より正確かもしれない。

 今年の春メキシコで発生した豚インフルエンザは、またたく間に世界中に広がり、最終的な感染者数は既に13万人を超えた。日本では4月に最初の症例が報告されて以来、7月24日時点で4986人の感染が確認されており、これはアメリカ、メキシコ、カナダ、チリ、イギリス、オーストラリアに次ぐ世界で7番目の多さとなった。問題は、日本は早くから水際作戦を展開し、空港での徹底した検疫を実施した上に、多くの大学や学校を閉鎖し、マスクが日本中で売り切れるほど徹底的に対策を施したにもかかわらず、最終的に世界でも有数の感染者数を出してしまったことだ。

 日本の水際作戦について、医師で厚生労働省の現役検疫官を務める木村盛世氏は、厚労省が実施した検疫強化や水際阻止は、全くのナンセンスだったと一蹴する。アメリカで公衆衛生学を学んだ木村氏は、もともと潜伏期間や発熱の度合いの個人差などを考えると、サーモグラフィーなどを使って感染者のすべてを水際でせき止めることなど、もともと不可能だったと言う。不可能なことに多大な資源を投入するよりも、国内感染が始まった後の対応に力を入れるべきだったと、木村氏は自らが所属する厚労省の対応を厳しく批判する。

 実際、水際作戦は物々しい防護服を身にまとった検疫官が、空港で機内検疫に向かうシーンなどがテレビで放送され、それが逆に国民の不安を必要以上に煽り、学級閉鎖やマスクの品切れなどを招いた。しかも、いざ国内感染が広がり始めると、その後の対応は後手後手の連続で、世界から日本がいかに感染症に対応する体制ができていないかを露呈する結果となったと、木村氏は残念がる。

 日本は感染症対策後進国と言ってはばからない木村氏は、その理由として、厚生労働省の危機意識の希薄さと使命感の欠如を指摘する。実際、アメリカの大学院を卒業後、厚労省に医系技官として入省した木村氏は、これまで繰り返し厚労省の組織の論理の壁にぶつかってきた。問題があると思った時に局長に直談判したり、国際会議に積極的に出席し、海外とのネットワークを強化したりする木村氏の行為は、役所の上司からはことごとく忌み嫌われ、繰り返し「左遷」の憂き目に遭う。現在の羽田空港の検疫官のポストも、「島流しポスト」(木村氏)であり、不祥事を起こしたわけでもないキャリア待遇の医系技官が就くポストとしては、本来はあり得ないものだという。

 しかし、木村氏は「自分が声をあげていかなければ、何も変わらない」と、左遷や嫌がらせ、降格を覚悟で、役所の体質や日本の感染症対策の問題点をこれからも指摘し続けたいと言う。その木村氏の使命感を支えているのは、厚生労働省こそが、国民の健康を守ることができる唯一の政府機関であるとの自負だと言う。

 厚生労働省を変えるために著書「厚生労働省崩壊」を出版し、日本の感染症対策の無策ぶりを指摘する木村氏と、パンデミックに対応するために日本がしなければならないこと、そして霞ヶ関を機能する機関に変えていくために何が必要になるかを議論した。

今週のニュース・コメンタリー
・法廷の傍聴席は誰のためのものか
・報じられなかった裁判員裁判の懸念点
オリコンが損害賠償請求を放棄
・「国是」は法に勝る?

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第390回(2008年09月20日)
新型インフルエンザとのつきあい方
ゲスト:山本太郎氏(長崎大学教授)
これでいいのか裁判員制度
プレスクラブ (2009年04月22日)
雑誌にコメントした評論家に賠償命令会見

<ゲスト プロフィール>
木村 盛世(きむら もりよ)医師・厚生労働省医系技官
1965年生まれ。90年筑波大学医学群卒業。97年米国ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院疫学部修士課程修了。米国CDC(疾病予防管理センター)多施設研究プロジェクトコーディネーター、結核予防会、厚生労働省大臣官房統計情報部などを経て、08年より現職。著書に『厚生労働省崩壊』。

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理系をトップに据える必要がある組織は多いと思います。厚生部門はその代表です。民主党政権になれば、政治家を官庁に投入するだけでなく、文系(東大法学部)支配の構図を変えて言って欲しいと思います。企業では理系出身のCEOというのは珍しくないと思います。政治にも理系頭脳を注入して発想のChangeをしないといけないと思います。

ビデオニュース見ました。

木村さんの議論は聞いていて痛快でした。

この木村さんこそ官僚としてポストに付べき人だ。又村木さんですか、国民の為を思って頑張っている人をはじき出す霞ヶ関は解体すべきです。己の出世の為、こう云う人たちを煙たがる官僚は首にすべきです。官僚全てが悪い訳では無い。官僚の出来上がった組織が悪いのです。小生の友人も同じです。机に向って数字眺めているのが仕事だそうで、現場(国民レベル)に入り込んで情報収集等優先していると怒られるそうですね。
それと高級官僚の殆どが東大法学部という学閥は許せませんね。

H.Miyauchi様
 ご意見に賛同いたします。戦前は軍官僚が、戦後は経済官僚と法務官僚が初期の成果を奢って独善に走り、結局は日本を衰退に導いて行ったと思います。何故、学業優秀とされるエリートが国民を不幸にしてしまうのでしょうか? 私は残念ながらそれを明快説明できる精緻な論理建てができませんが、我が国ではエリートが組織的に腐敗し、国民に不幸をもたらしたという動かしがたい歴史の事実があります。
 私は中国科挙の制度に根ざした、人民支配の為の官僚選抜法のもたらす必然の結果と見ています。従って、国民主権の民主主義国家を作るには官吏養成機関の象徴である東大法学部の解体は避けて通れないと思っております。

 わたしには多くの誤った認識が気になります。まず、頑張ったがこんなにも流行を拡大させたという表現ですが、これは間違っています。そもそも流行は防げない、拡大は防げないのに、防げるような表現で神学的体系の幻想を流布させたことに間違いがあるのです。そして、とにかく流行しますが、大切なことはひとつです。重症例への備えがどうか、ということです。
そしてもうひとつの誤解です。理科文系の議論は医療にはみあいません。医学部はおおむね文系のようなもんです。あえていえば、官僚は現場を、そして現実を知らないので、問題施行型の解決を意図できないということではないでしょうか。木村氏も、おそらく医療現場での臨床的能力は期待できないでしょう。

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2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
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