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2009年4月25日

「ヒ素は自分で呑んだ。真須美はやっていない」
真須美被告の夫・健治さんが最高裁判決の不当性を訴え

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(2009年04月25日)
「ヒ素は自分で呑んだ。真須美はやっていない」
真須美被告の夫・健治さんが最高裁判決の不当性を訴え

無料放送中

報告・神保哲生

 「ヒ素は自分で呑んだ。真須美は保険金詐欺のプロだが、殺人者ではない。」

 和歌山カレー事件で死刑が確定した林真須美被告の夫、林健治さんが、最高裁判決から2日後の4月23日、ビデオニュース・ドットコムのインタビューに応じ、真須美被告に殺人罪を適用する上で有力な状況証拠の一つとなった健治さんに対する殺人未遂事件は、実際は健治さんが真須美さんと共謀の上、保険金を詐取するために自らヒ素を呑んだもので、真須美さんが殺人未遂を犯した事実は無いと語り、最高裁判決の不当性を訴えた。

 1998年7月25日、和歌山県和歌山市郊外園部の町内会の夏祭りで出されたカレーに猛毒のヒ素が混入し、子どもを含む4人が死亡、63人がヒ素中毒の被害を受けたいわゆる和歌山カレー事件の公判では、最高裁が21日、殺人の罪に問われていた林真須美被告の上告を棄却したことで、大阪高裁が05年6月28日に下した真須美被告の死刑が確定している。
 しかし、この事件の公判では、真須美被告の犯行を裏付ける物的証拠が何一つ提出されず、また、真須美被告が一貫して犯行を全面否認していることから、殺人の動機も不明なまま死刑判決が下るという、異例の展開となっていた。
 検察は真須美被告がカレー鍋にヒ素を混入させた犯人と考えるべき根拠として、被告には過去に夫健治さんらをヒ素を使って殺害し、保険金を得ようと試みた殺人未遂の前歴があることを重要な状況証拠としてあげていた。
 しかし、夫健治さんはインタビューの中で、「真須美は保険金詐欺のプロだが、殺人者ではない」と語り、真須美さんが健治さん殺害を狙ったとされる「くず湯事件」は、健治さんが真須美さんと共謀の上、自らヒ素を呑み、重度後遺障害の保険金を詐取しようとしたもので、真須美さんの殺人未遂容疑はまったくの冤罪だと主張した。
 健治さんは同様の主張をカレー事件裁判の控訴審で証言したが、裁判所はこれが近親者の証言である上、一審では出なかった証言事実が唐突に二審で出てきたものとして、この証言を信ずるに足らないと一蹴している。しかし、健治さんは、「最初からずっとこれ(くず湯事件が自らヒ素を呑んだものであること)を主張していたが、一審では自分は保険金詐欺事件で捕まっていて法廷で証言する機会がなかった。(保険金詐取事件の)取り調べの時に担当検事にこの話をしても、全く取り上げてもらえなかった」と語っている。

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第420回(2009年04月25日)
和歌山カレー事件はまだ終わっていない
ゲスト:安田好弘氏(弁護士・林真須美被告主任弁護人)

和歌山カレー事件はまだ終わっていない

marugeki_420_yasuda.jpgマル激トーク・オン・ディマンド
第420回(2009年04月25日)
和歌山カレー事件はまだ終わっていない

プレビュー

 被告人が犯人であることは、「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」。

 最高裁判所は4月21日、和歌山カレー事件で一審、二審と死刑判決を受けている林真須美被告に対し、このような表現を使って05年6月の大阪高裁の死刑判決を支持する判断を下し、事実上真須美被告の死刑が確定した。

 1998年7月25日、和歌山県和歌山市郊外の新興住宅地の夏祭りで出されたカレーに猛毒のヒ素が混入し、子どもを含む4人が死亡、63人がヒ素中毒の被害を受けた、いわゆる和歌山カレー事件では、事件発生直後からおびただしい数の報道陣が事件現場周辺に殺到し、集団過熱報道が繰り返された。そしてその過程で浮上した一つの家族にメディア報道は集中し、それを後追いする形で、警察の捜査がその家族に向けられた。それが林真須美被告の一家だった。

 確かに、事件と林家を結びつける状況証拠は多い。真須美被告の夫・健治さんが、元々シロアリ駆除業を営んでいたために、カレーに混入されたとされるヒ素を、林家は少なくともある時点では所持していた。また、夫の健治さんや林家に出入りしていた使用人たちが、繰り返しヒ素中毒と思しき症状で入退院を繰り返し、そのたびに多額の保険金を得ていたことも、カレーに毒を盛った犯人として林家が怪しまれる理由としては十分だった。

 しかし、この裁判では疑わしいと思える状況材料はあれこれ出てきたが、これが真須美被告自身の犯行であると断定すべき確たる証拠は何一つ出てこなかった。また、何よりも、真須美被告には、カレー鍋に大量のヒ素を入れて、大勢の近隣住人を殺害しなければならない理由が見あたらなかった。公判でも、「近所との折り合いが悪かった不仲説」、「かっとなった勢いで入れてしまった激昂説」、「夫らに対して繰り返し殺人未遂を繰り返すうちに感覚が麻痺した感覚麻痺説」などがあげられたが、結局どれも動機の証明にはいたらず、最終的に殺害の動機は不明とされたままの死刑判決だった。そして何よりも真須美被告自身が、逮捕されてから11年間、一貫して犯行を全面否認していた。

 「物的証拠無し」「動機不明」「本人全面否認」の中で争われた裁判だったが、その一方でメディア報道などを通じ「平成の毒婦」とまで呼ばれた真須美被告が犯人であると確信する人は、一般市民の間でも、被害者や被害者遺族の間にも圧倒的に多く、そうした空気の中で裁判所は厳しい判断を迫られていた。

 そして今週最高裁は、物的証拠はなくても「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」し、動機は不明でも問題ないとの判断を示した。また、真須美被告が全面否認している点については、それが反省していない証拠であり、厳罰を科す理由となるとするなど、上記の3点に対する疑問をことごとく退けた上で、上告を棄却して、二審の死刑判決を支持した。

 しかし、真須美被告の弁護人を務める安田好弘弁護士は、どう考えても「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」とは言えないと、この判断を真っ向から否定し、再審請求などを通じて、今後も法廷闘争を継続していく強い意志を表明している。

 確かに、最高裁が「合理的な疑いを差し挟む余地はない」としている状況証拠を詳しく見ていくと、不審な点がいくらでも浮上してくる。真須美被告が殺人未遂の過去があるとされる根拠となった夫健治さんらに対するヒ素投与事件も、健治さん自身が保険金詐取のために自ら呑んだもので、日本生命の外交員だった真須美さんはその共犯であると主張している。公判ではこの証言は、身内を庇うためのもので信用できないとして一蹴されているが、その論理でいくと、健治さんは自分を殺そうとした妻を庇うために嘘をついていることになる。また、現に健治さんは保険金詐取で有罪判決を受け、4年あまり収監されているのだ。

 その他にも、カレーに使われたヒ素と林家にあったヒ素が一致したとされる鑑定結果や(純粋なヒ素(亜ヒ酸)が一致するのは当たり前なので、これは実際はヒ素に混入していた不純物の内容が一致したことを意味している)、真須美被告がカレー鍋の番をしている時の挙動が不審だったとする証言には疑問点も多く、真須美被告の犯行が推測されるとしている状況証拠さえもが、多くの矛盾をはらんでいると安田氏は主張する。

 もとより、真犯人でも出てこない限り、真須美被告の無実を証明する手立てなどあろうはずもないが、もともと裁判では有罪を主張する検察のシナリオに「合理的な疑い」を挟むことができれば無罪とするのが、「推定無罪」、「疑わしきは被告の利益へ」を糧とする近代法の要諦である。果たしてこれで真須美被告を殺人罪に問うことが本当に正しいことと言えるのか。

 来月21日にはいよいよ裁判員制度が始まる。私たち一般市民が、このような事件の評決(有罪か無罪か)を判断し、しかも死刑かどうかの量刑まで決定しなければならなくなるのだ。安田弁護士は、裁判員制度の下でこの裁判が行われれば、メディア報道によって作られた先入観に強く影響された市民裁判員と、公判前手続きによって厳しく絞り込まれた証拠のみの、ごくごく短期間の審議となるため、弁護側としては為す術がなくなることを懸念すると言う。

 今週は、最高裁によって死刑が確定した和歌山カレー事件で争われた論点をあらためて洗い出した上で、裁判員制度で求められることになる、一般市民の感覚で検察の提出した証拠を見た時に、果たして本当に「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」かどうかを検証した。そして、その上で、この判決の持つ意味を、安田弁護士を交えて議論した。

 (今週のニュース・コメンタリーはお休みします。)

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第269回(2006年05月24日)
私が重大犯罪の被告を弁護しなければならない理由ゲスト:安田好弘氏(弁護士)
インタビューズ (2009年04月25日)
「ヒ素は自分で呑んだ。真須美はやっていない」
真須美被告の夫・健治さんが最高裁判決の不当性を訴え

<ゲスト プロフィール>
安田 好弘(やすだ よしひろ)弁護士・林真須美被告主任弁護人
1947年兵庫県生まれ。75年一橋大学法学部卒業。77年司法試験合格、80年司法修習修了。オウム真理教麻原彰晃被告の主任弁護人、山口県母子殺害事件・被告少年の主任弁護人、和歌山カレー事件・林真須美被告の主任弁護人などを務める。著書に『死刑弁護人 生きるという権利』など。

2009年4月19日

日本の対北朝鮮政策を再考する

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マル激トーク・オン・ディマンド
第419回(2009年04月18日)
日本の対北朝鮮政策を再考する

プレビュー

 先の北朝鮮「飛翔体」騒動で迎撃態勢を整えるまで過敏に反応した日本政府は、国連における厳しい対北朝鮮非難決議の採択を目指したが、最終的には議長声明という弱い形での非難を辛うじてまとめるのが精一杯だった。しかし、この議長声明に対して北朝鮮政府は14日、日本を名指しで批判した上で、6者会談からの離脱を表明してしまった。そればかりか北朝鮮は更に、「自衛的核抑止力を強化する」と宣言し、07年7月以来停止していた核施設の封印を解いた上で、IAEAの査察チームも国外退去処分にしてしまった。

 既に実戦配備されたノドンミサイルの射程範囲内にある日本にとって、このまま北朝鮮が核開発を続け、やがては日本列島が北朝鮮の核ミサイルの射程圏内に入ることが、現在の安全保障上最大のリスクといっていいだろう。強硬路線一辺倒でやってきた日本の対北朝鮮政策は、果たして拉致、核、ミサイルなど日本が北朝鮮との間に抱える問題の解決に寄与しているのだろうか。

 朝鮮半島研究の第一人者で、慶応義塾大学法学部教授の小此木政夫氏は、北朝鮮は現在、体制の維持をかけてアメリカとの直接交渉を最優先に考えており、今回の改良型テポドン2号の発射も、そして核開発も、いずれもアメリカとの交渉を実現し、これを有利に進めるためのカードとして使っていると指摘する。

 そして、北朝鮮の挑発行為に日本が乗って大騒ぎをすることで、日本とアメリカの間の足並みが乱れてくれた方が、北朝鮮にとってはアメリカと直接交渉をしやすくなるので、日本の騒ぎっぷりを北朝鮮はむしろ歓迎しているはずだとも言う。要するに、日本の強硬路線一辺倒の対北朝鮮外交は、実は日本が北朝鮮の術中にはまり、北朝鮮の手の上で踊らされている面があるのではないかというのだ。

 確かに100年に一度と言われる金融危機や、イラク、イラン、アフガニスタン問題などを抱える中で発足したアメリカのオバマ政権にとって、北朝鮮問題の優先順位は決して高くはない。そのため、この度の北朝鮮による「発射」も、その優先順位を引き上げるための外交カードだった可能性は高い。それがわかりきっているからこそ、オバマ政権は今回の事態に冷静に対応しているように見える。

 問題は、こうした北朝鮮独特の「瀬戸際外交」に対する日本政府の対応だ。2002年9月の小泉電撃訪朝で、北朝鮮による拉致の存在が明らかになると、日本の国民感情は一気に反北朝鮮に振れ、それ以来日本の対北朝鮮外交は基本的には強硬路線一辺倒できた。今回の発射騒動での日本の騒ぎっぷりも、いくら上空をミサイルが飛び越すとは言え、かなり突出していた。

 しかし日本が強硬路線を貫く間、北朝鮮はミサイルの発射実験を繰り返し、遂には核実験まで敢行するなど、日本にとって対北朝鮮問題は一向に改善されないばかりか、むしろ年々状況が悪くなっているようにさえ見える。もちろん拉致問題も政府間では全くといっていいほど進展が見られない。

 北朝鮮が何かしでかすたびに日本は制裁を強化してきたが、既に160ヵ国との国交を持つ北朝鮮は、日本だけがどんなに強硬な制裁を行おうが、それほど効果はあがらなくなっている。現在北朝鮮との貿易は年間8億円程度の取引しか残っていない上、自国民に対して北朝鮮への渡航自粛勧告まで出している今、日本には既に制裁カードもほとんど残っていないのが実情だ。

 しかも、日本にとっては頼みの綱のアメリカが、対北朝鮮外交を微妙に軟化させ始めている。小此木氏は、ブッシュ政権の最初の6年は北朝鮮を悪の枢軸と名指しするなど、日本と歩調を合わせた強硬路線だったが、ブッシュ政権の終盤は、アメリカも政策を転換させていた。にもかかわらず日本は、拉致問題を抱えていることもあり、北朝鮮に対する強硬路線一辺倒から抜け出せないでいる。

 小此木氏は、そろそろ日本政府も日本国民も、国交正常化交渉無くして拉致問題の解決はないという現実を見据える必要があるのではないかと言う。確かに拉致は許せない国家犯罪であり、現在8名が死亡したとしている北朝鮮の説明にも不信な点は多い。しかし、これに対する怒りを単なる強硬路線という形で表出しているだけでは、拉致も、そして日本にとっては安全保障上のより大きな脅威である核やミサイル問題も、一向に解決されないだろうと小此木氏は言う。

 もはや北朝鮮は、生き残ること自体が国家目的となっていると小此木氏は分析する。そして、「生き残り」のための唯一のカードでもある核とミサイルを北朝鮮が自ら手放すことはあり得ない。しかし、北朝鮮が日米と国交を正常化することで体制の維持が保障され、経済復興も始まれば、自ずと拉致問題にも核・ミサイル問題にも、解決の糸口が見えてくるはずだと小此木氏は言う。

 小此木氏とともに、北朝鮮情勢と日本の対北朝鮮政策をあらためて考えた。

今週のニュース・コメンタリー
・僕パパ 鑑定医が秘密漏示罪で有罪
・誰のための東京五輪なのか?
・政治資金第三者委 法務省が説明拒否

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第290回(2006年10月18日)
金正日は核で何をしようとしているのか
ゲスト:武貞秀士氏(防衛研究所主任研究官)
マル激トーク・オン・ディマンド 第291回(2006年10月20日)
日本核武装論を嗤う
ゲスト:吉田康彦氏(元IAEA広報部長)
インタビューズ (2009年04月11日)
あの「飛翔体」騒動は一体何だったのか
軍事ジャーナリスト、田岡俊次氏・神浦元彰氏インタビュー

インタビューズ (2009年04月18日)
少年を殺人者のままにしておくことはできなかった
有罪判決を受けた 鑑定医・崎濱盛三氏インタビュー

インタビューズ (2009年04月18日)
法律の不備を拡大解釈で埋めるひどい判決
鑑定医代理人・高野嘉雄弁護士インタビュー

<ゲスト プロフィール>
小此木 政夫(おこのぎ まさお)慶応義塾大学法学部教授
1945年群馬県生まれ。69年慶應義塾大学法学部卒業。72~74年韓国・延世大学校大学院政治外交学科研究生。75年慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。同大学法学部専任講師、助教授などを経て、85年より現職。87年慶應義塾大学大学院で法学博士取得。著書に『金正日時代の北朝鮮』、編著に『危機の朝鮮半島』など。

2009年4月18日

少年を殺人者のままにしておくことはできなかった
秘密漏示罪で有罪判決を受けた「僕パパ」鑑定医・崎濱盛三氏インタビュー

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(2009年04月18日)
少年を殺人者のままにしておくことはできなかった
秘密漏示罪で有罪判決を受けた「僕パパ」鑑定医・崎濱盛三氏インタビュー

無料放送中

報告・神保哲生

 京都(4月16日) - 少年調書をジャーナリストに漏らしたとして、秘密漏示罪で有罪判決を受けた医師の崎濱盛三氏が判決から一夜明けた4月16日、ビデオニュース・ドットコムのインタビューに応じ、情報を漏らした理由を「少年を殺人者にしておくわけにはいかなかったから」と語った。

 精神科医の崎濱氏は、奈良・田原本町の放火殺人事件で逮捕された少年の精神鑑定を奈良家庭裁判所から依頼されていたが、鑑定結果や供述調書をフリージャーナリストの草薙厚子氏に見せたことで、医師や弁護士の守秘義務を定めた秘密漏示罪に問われていた。

 崎濱氏は鑑定の結果、少年が広汎性発達障害であることを確信したが、裁判が少年審判だったためにその内容は非公開とされ、報道などで少年が殺人者として扱われていることに、やるせない気持ちを抱いていたという。

 そうした中、少年鑑別所法務教官の経験を持ち、ジャーナリストとしても少年犯罪問題を積極的に取材していた草薙氏から情報提供を求められ、少年が人を殺すつもりはなかったことを世の中に知らせるために、情報を見せたと崎濱氏は語る。

 崎濱氏は、「少年が、家族が家の中にいることがわかっているにもかかわらず家に火をつけたのは、殺人の意思があったからではなく、家の中に家族がいることと、火をつければ家族が死ぬかもしれないことが、結びつかなかったから」と主張し、これを典型的な広汎性発達障害の症状と説明する。

 しかし、崎濱氏は鑑定調書に加え、裁判所から渡されていた供述調書まで草薙氏に見せていた。少しでも情報は多い方が、正確な記事を書いてくれると考えたからだった。ただしその際に、コピーはしない、内容はオリジナルとは変えて書く、事前に原稿のチェックをさせる、の3条件を約束していたと崎濱氏は言う。

 ところが草薙氏は、崎濱氏の承認を得ないまま「僕はパパを殺すことに決めた」を出版。その中には、明らかに供述調書とわかる引用が随所に見られ、少年や少年の家族のプライバシーまでが白日の下に晒される結果となってしまった。

 更に崎濱氏にとって悔やまれたことは、その本が広汎性発達障害に対する理解を促進させる目的とは正反対の内容になっていたことだったと言う。

 その後、少年の父親が訴えを起こしたために、崎濱氏は逮捕され、4月15日の有罪判決にいたる。

 崎濱氏は、そもそも今回秘密漏示罪で問題となっている医師の守秘義務は、あくまで医師と患者の間の信頼関係に基づくもので、鑑定人と被鑑定者との間にはその関係は成立していないとして、法律の適用自体を不当であると主張した。また、情報の漏洩も、個人的な利益のためではなく、少年の行った行為に対する社会の誤解を解く公共的な目的だったとして、その正当性を主張してきた。

 これに対して15日の判決で奈良地裁は、崎濱氏の行為を「少年の利益を図るものではない」と断定し、懲役4カ月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。崎濱さんは即日控訴している。

 崎濱氏の代理人の高野嘉雄弁護士は、この判決について、「もともと鑑定人に守秘義務を課していない現行の法律に不備があったことが問題だった」と指摘した上で、「それを取り繕うために、医師の守秘義務を持ち出してきて、秘密漏示罪に問うのは実に不当な判決」と、不満をあらわにする。高野弁護士はまた、「裁判所は広汎性発達障害を理解していない。崎濱先生は、その誤解を正すためにはこの方法しかないと考えてやった。それを逮捕までして罪に問うのは行き過ぎ」と語った。

2009年4月15日

これ以上霞ヶ関の専横を許してはいけない

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マル激トーク・オン・ディマンド
第418回(2009年04月11日)
これ以上霞ヶ関の専横を許してはいけない

プレビュー

 3月31日に閣議決定された公務員制度改革関連法案は、にわかには信じられないような内容を含んでいた。官僚人事を政治主導に変えていく決め手になるはずだった新設の内閣人事局長のポストを、内閣官房副長官が兼務することが定められていたのだ。これは、官僚制度をより国民の利益に適ったものに改革していこうという公務員制度改革の本来の趣旨と、真っ向から対立するものだった。

 「『脱官僚』『地域主権』で国民の手に政治を奪還する国民運動体」を主宰する衆議院議員の江田憲司氏は、この法案では公務員制度改革は「最悪の改悪」になってしまうと、危機感を募らせる。内閣官房副長官は霞ヶ関官僚のトップに君臨し、官僚の利益を代表するポストと言っても過言ではない。内閣人事局長は、現在省庁ごとに行われている幹部職員の人事を一元管理し、省益優先の人事を廃し、官邸の意思のもとで幹部官僚の登用を行う重責を担うポストになるはずだった。そのポストを、あろうことか官僚の大ボスである官房副長官が兼務することになれば、官僚の権益保護にその権限が使われることは目に見えている。これでは官僚制度が改革できないばかりか、スーパー官僚的な力を持つことになる官房副長官の下、霞ヶ関官僚はこれまで以上に自分たちの権益確保に走ることが可能になってしまうことが、火を見るよりも明らかだった。

 しかし、それにしてもなぜこのような「最悪の改悪」が閣議決定され、法案として提出されてしまうのか。

 自身が元通産官僚で、橋本内閣で総理秘書官を務めた後、政界に転身した経歴を持つ江田氏は、これを「ひとえに麻生総理の無関心に責任がある」と言う。麻生首相には、堕落した現在の官僚制度が日本の改革を妨害し、空前の無駄な政府を作っているという基本的な問題意識が欠落していると言うのだ。また、与党自民党も、これまで官僚制度に依存して政権維持をしてきた歴史的な経緯ゆえに、官僚制度を抜本的に改革し、政策立案上の実質的な権限を官僚から政治に取り戻すことに対して、そもそもそれほど乗り気ではないと江田氏は言う。

 戦後日本の国家運営は実質的に霞ヶ関の官僚たちが担ってきたと言っても過言ではない。彼らが戦後の焼け野原からの経済復興という国民共通の目標の達成に大きく貢献したことは紛れもない事実だ。しかし、日本が国家目標だった欧米に追いつけ追い越せを達成し、成熟期に入った今、日本には高度成長時代の残滓が様々な改革の前に立ちはだかっている。そして、日本が国としての新たな方向性を模索する中で、強大な行政権限を持つ中央官僚たちは、天下りに代表される既得権益の保持や自身の保身ばかりに奔走し、改革の最大の妨げになっていると江田氏は嘆く。

 ただし、官僚主導から政治主導へ日本を変えていく試みは、政治家が政治を牛耳るような仕組みを作ろうとするものではないと江田氏は言う。国民が選挙で選んだ内閣総理大臣が責任を持って政府を運営できる制度に変えていくことが必要で、そのためには官邸が官僚の「人事と金」をコントロールできなければならない。この度の内閣人事局構想は、その第一歩に過ぎない。政治主導を実現する試みはその第一歩から、官僚の抵抗によって完全に骨抜きにされ、むしろ以前よりも後退させられているというのが、今日の政治の実情であり、麻生政権の実情でもあるのだ。

 今週は、先に閣議決定された公務員制度改革法案の問題点を探るとともに、真に求められる公務員制度改革とはどのようなもので、これからの日本における政治と官僚の関係はどうあるべきかなどを、江田氏とともに考えた。

今週のニュース・コメンタリー
•北朝鮮「飛翔体」騒動の顛末
•麻生政権の成長戦略の柱はクール・ジャパン?
•中川元財務相はやっぱり警報を鳴らしていた
•麻生首相の読み間違いが報道されなかった理由
•赤字のGyaOがヤフーと統合 YouTubeも大赤字

関連番組
マル激トーク・オン・ディマンド 第407回(2009年01月24日)
無法地帯化する霞ヶ関
ゲスト:高橋洋一氏(東洋大学教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第359回(2008年02月16日)
官僚の思い通りにはさせない
ゲスト:渡辺喜美氏(金融担当大臣)
マル激トーク・オン・ディマンド 第316回(2007年04月19日)
天下りを無くして本当に日本は回るのか
ゲスト:林芳正氏(内閣府副大臣)
マル激トーク・オン・ディマンド 第284回(2006年09月06日)
シリーズ『小泉政治の総決算』その6
小泉劇場はなぜ飽きられなかったのか

ゲスト PART1:世耕弘成氏(参議院議員) PART2:篠田博之氏(「創」編集長)
インタビューズ (2009年04月04日)
民主党マニフェストの財源を問う
大塚耕平政調副会長インタビュー

<ゲスト プロフィール>
江田 憲司(えだ けんじ)衆議院議員
1956年岡山県生まれ。79年東京大学法学部卒業。同年通商産業省入省。87年ハーバード大学国際問題研究所特別研究員、93年経済協力調整室長などを経て、94年村山内閣で橋本龍太郎通産大臣秘書官、96年橋本内閣で首相秘書官、98年退官。01年桐蔭横浜大学法学部教授、02年衆議院初当選(無所属)。03年に落選の後、05年再選 。著書に『誰のせいで改革を失うのか』など。当選2回(神奈川8区)。

2009年4月12日

あの「飛翔体」騒動は一体何だったのか
軍事ジャーナリスト、田岡俊次氏・神浦元彰氏インタビュー

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インタビューズ
(2009年04月12日)
あの「飛翔体」騒動は一体何だったのか
軍事ジャーナリスト、田岡俊次氏・神浦元彰氏インタビュー

無料放送中

 北朝鮮の人工衛星を搭載したロケットの発射をめぐり、日本政府は万が一に備えてそれを打ち落とすための迎撃体制をとるなど、物々しい反応がみられた。
 しかし、軍事の専門家によるろ、万が一ロケットの一部が落下してきたとしても、日本の迎撃ミサイルではそれを打ち落とすことは全く不可能だと、今回の迎撃騒動を一蹴する。
 しかも、これを意味もなく大騒ぎすることによって、日本にとって最も深刻な北朝鮮の核開発問題の解決をより困難にするとの指摘もある。
 軍事ジャーナリストの田岡俊次氏と神浦元彰氏にミサイル防衛の実効性、国内の騒ぎぶり、北朝鮮の核開発などについてインタビューした。
【インタビュアー:神保哲生(ビデオニュース)】

2009年4月 4日

金融危機の本質は金融腐敗にあり

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マル激トーク・オン・ディマンド
第417回(2009年04月04日)
金融危機の本質は金融腐敗にあり

プレビュー

 約5兆ドルの財政出動にヘッジファンドとタックスヘイブンの規制の導入等々。4月1日、2日の両日ロンドンで開催された第2回金融サミットで日米欧に新興国を加えた世界20カ国・地域の首脳は、経済危機の拡大を食い止めるために、金融取引に対する踏み込んだ規制を導入することで合意したという。

 金融危機の収束に向けて世界各国が足並みを揃えて動き出したことを好感して、金曜日の各国の株式市場は軒並み続伸、ドルも対円で5ヶ月ぶりに100円台を回復した。

 しかし、『危険な話』の著者で長年世界の金融界の人脈を調査してきた作家の広瀬隆氏は、そのような弥縫策では金融危機の根を絶つことはできないと言い切る。なぜならば、広瀬氏は、今世界を覆っている金融問題の本質は「金融腐敗」にあると確信しているからに他ならない。

 広瀬氏は、現在の金融危機の起源を1970年代の先物取引の解禁に見い出す。先物という実体の無い指標の取引を認めたことで、次々と新たなデリバティブ(金融派生商品)が登場し、実体経済の規模を遙かに上回るマネー経済なる虚構が形成された。そして、それは挙げ句の果てに、昨今問題となっているサブプライムローンの証券化やCDSなどといった投機マネーの暴走を生み出した。

 そして広瀬氏は、先物取引に先鞭をつけたロバート・ルービン元財務長官やその後継者のローレンス・サマーズ氏、そして金融緩和を続けて投機マネーを生んだアラン・グリーンスパン元FRB議長の責任をことさらに強調する。

 特にルービン氏は、シカゴ先物取引市場の理事として先物市場を開拓した後、ゴールドマン・サックス証券で自ら数々のデリバティブ取引に勤しみ、ゴールドマン・サックスの会長まで上り詰めた後、クリントン政権で財務長官の座に就き、グリーンスパンFRB議長との二人三脚で、金融近代化法の制定を実現した。

 この法律によって、大恐慌以来銀行と証券の兼業を禁止してきたグラス・スティーガル法が事実上骨抜きとなり、本来は手堅い資金だったはずの銀行預金が、大挙して投機マネー市場に投入されるようになる。更にルービン氏は、サマーズ氏に長官の座を譲った後、今まさに大量の公的資金が投入され続けているシティグルーブの重役に収まり、そこで「サブプライムローンを売りまくった」(広瀬氏)、現在の金融腐敗の原因のすべてに関わっている存在だと、広瀬氏は言う。しかも、その後アメリカの財務長官の座は、同じくゴールドマン・サックスの会長だったヘンリー・ポールソン氏に引き継がれていった。
 このような腐敗の連鎖を放置している限り、少々ヘッジファンドを規制しても、焼け石に水程度の効果しかないというのが、広瀬氏の一貫した主張だ。

 一方、市民の期待を一手に背負い政権の座についたオバマ大統領は、金融腐敗を正常化することができるのかとの問いに対して広瀬氏は、サマーズ氏がオバマ政権の枢要な経済閣僚(国家経済会議委員長)の座に収まっている上、ガイトナー財務長官も、実はブラックストーン・グループ創始者でレーガン政権の商務長官だったピーター・ピーターソン氏の後ろ盾でニューヨーク連銀総裁に引き上げられた経緯があり、そのような経済人事のオバマ政権では、長年にわたり蓄積した金融腐敗を一掃することはとても難しいのではないかと広瀬氏は言う。

 そして、この金融腐敗が根絶されないかぎり、危機のたびに多少の規制強化などが行われても、投機マネーは必ずやまた行き場を見つけてバブルを形成し、そしてまた金融秩序維持という美名のもとで、一般市民の血税が「金融マフィア」(広瀬氏)によって作られた腐敗の穴を埋めるために注ぎ込まれていくことになるだろうと広瀬氏は言うのだ。

 歴史と人脈を紐解くことで見えてくる金融危機のもう一つの顔を、萱野稔人、神保哲生が、広瀬氏と議論した。

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<ゲスト プロフィール>
広瀬 隆(ひろせ たかし)作家
1943年東京都生まれ。66年早稲田大学理工学部卒業。81年『東京に原発を!』出版。著書に『アメリカの経済支配者たち』、『世界金融戦争』など。09年4月中旬に『資本主義崩壊の首謀者たち』を刊行予定。

Profile

神保哲生(じんぼう・てつお)

-----<経歴>-----

1961年東京生まれ。
15歳で渡米。コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。
クリスチャン・サイエンス・モニター記者、AP通信記者を経て独立。
ビデオジャーナリストの草分けとして、日米の放送局に映像リポートやドキュメンタリーを多数提供。
2000年1月、世界初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を立ち上げ代表に就任。
2001年4月より『ビデオニュース・ドットコム』で宮台真司氏と人気ニュース番組「マル激トーク・オン・ディマンド」のキャスターを務め、現在にいたる。
2005年4月より立命館大学産業社会学部教授を兼務。
2008年4月より、早稲田大学ジャーナリズム大学 院非常勤講師を兼務。
専門は地球環境問題、開発経済、メディア倫理、日米政治関係。

BookMarks

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ビデオジャーナリスト神保哲生のブログ
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-----<著書>-----

新刊!
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『格差社会という不幸』
2009年12月、春秋社、共著


『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』
2009年7月、ダイヤモンド社


『オルタナティブ・メディア―変革のための市民メディア入門』
2008年12月、大月書店、翻訳・解説


『教育をめぐる虚構と真実』
2008年10月、春秋社、共著


『ツバル―地球温暖化に沈む国』
2007年7月、春秋社、増補版


『ビデオジャーナリズム―カメラを持って世界に飛び出そう』
2006年7月、明石書店


『中国―隣りの大国とのつきあいかた』
2007年6月、春秋社、共著


『アメリカン・ディストピア―21世紀の戦争とジャーナリズム』
2003年9月、春秋社、共著


『天皇と日本のナショナリズム』
2006年11月、春秋社、共著


『ネット社会の未来像』
2006年1月、春秋社、共著

『粉飾戦争―ブッシュ政権と幻の大量破壊兵器』
2004年3月、インフォバーン、監訳

『プロパガンダ株式会社―アメリカ文化の広告代理店』
2004年8月、明石書店、解説

『漂流するメディア政治―情報利権と新世紀の世界秩序』
2002年10月、春秋社、共著

『地雷リポート』
1997年11月、築地書館

『ビデオジャーナリストの挑戦』
1995年11月、ほんの木

『重要政策全比較―シリウス・日本新党・平成維新の会』
1993年7月、ほんの木

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