INSIDER No.343《HORIEMON》藤原正彦の「市場原理主義」批判は間違っている——官僚支配の爆砕なくしては日本は前に進まない
私は藤原正彦の『国家の品格』という本は高く評価していて、「懐かしさ」とか「もののあわれ」とかいった日本的情緒や「武士は食わねど高楊枝」的な武士道精神の復興が、日本自身の再生の鍵であるばかりでなく、それを通じて21世紀の世界を救う役目を果たすことが出来るというその結論に、基本的に賛成である。しかし、本誌前号でも吟味の対象としたライブドア事件についての藤原の新聞でのコメントや、それをさらに詳しく敷衍した『文藝春秋』3月号の巻頭論文「愚かなり、市場原理主義者」を読むと、彼が、日本的情緒・精神vs米国的市場原理主義という二律背反的な荒っぽい思想的対立軸にすべてを還元してしまって、それはそれとして問題提起としては意味のないことではないけれども、現今の日本の政治的対立軸がどこにあるのかについて完全に音痴であるために、結果としては、明治以来の発展途上国型の中央官僚専横の体制やそれにあぐらをかいた既得権益企業・集団を擁護し、またその随伴物である旧自民党的な馴れ合いによる隠微な利害調整や平等原理に名を借りた欲得づくのバラ撒き政治の手法を擁護する役割を引き受けてしまっている。こんな形で文春はじめ旧体制メディアで寵児のように扱われるのは藤原にとって不幸なことだと思う。
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