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« INSIDER No.537《HATOYAMA》さあ、鳩山政権、ここが正念場(その1)──参院選勝利と小沢「辞任」問題
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INSIDER No.538《HATOYAMA》さあ、鳩山政権、ここが正念場(その2)──普天間移設問題の結着成るか?

 訪米中の岡田克也外相は日本時間今夜、ゲーツ国防長官及びクリントン国務長官と会って、沖縄海兵隊の普天間基地の移設問題について日本政府の検討状況を説明する。それに先だって岡田は記者団に、日本側が辺野古沖の現行案を含め「ゼロベース」で複数の案を検討中であることを米側に伝えるのみで、1つ1つの案の中身にまで踏み込んで議論することにはならないと語った。

 これについてマスコミは、鳩山由紀夫首相が26日の会見で「最終的には政府案を1つにまとめなければ交渉をやることにならないので、3月末を目途にまとめなければならない」と語ったことと「食い違う」と責め立てているが、これは岡田が「閣僚間では3月に1つにまとめるとは話していない。米国との調整を踏まえて5月末までにまとめるのが政府案だ」と言っているのが正しい。3月末までにまとめるのは、いくつかの有力案を交渉材料として絞るということであって、最終的に1つに絞られて公表されるのは米国側及び沖縄を含む国内地元との調整が終わった後の成案以外にあり得ない。岡田が言うように「早く一つに絞ると、米国、地元(沖縄)との関係がうまくいかなくなった段階で(案は)なくなってしまう」からである。鳩山も、3月末に絞った案を公表するかどうかについては言葉を濁し、「交渉事だから機密はあるが、一定の段階では公表して国民の理解を得たい」というような言い方をしたが、彼の物言いは全体として不正確で誤解を招きやすい。

 もう一度繰り返すが、(1)3月末までに複数の有力案を政府としてまとめるが、もちろんそれを公表することはない、(2)それらの案を持って米国側、現地側と表と裏で対米交渉と国内調整を行う、(3)5月末までに必ず交渉・調整を成し遂げ、その段階で公表するから、マスコミはああだこうだと片々たる情報を書き飛ばして政府を妨害することは止めて貰いたい----と鳩山は言えばよかったのである。

●本質は対米「抑止力」論争

 それにしても、本論説が昨年11月以来繰り返し(i-NSIDER No.521、524、とりわけ533と536で)述べてきたように、鳩山政権が「なぜ一部でなく全部がグアムに撤退できないのか」を一貫して執拗に米国側に問いかけて、「在沖縄海兵隊の抑止力とは何なのか」という論争を真正面から挑まなかったことが悔やまれる。

 それを国民の眼前でやってきていれば、仮に「5月末」でその論争に結着がつかなかった場合でも、鳩山は「我が政府としては今後も引き続きグアム全面移転を目標として粘り強く交渉を続けていく」と宣言し、それを前提に、「しかし"世界で一番危険な基地"である普天間は一刻も早く撤去しなければならないので、あくまで暫定措置ということで移転先を○○に引き受けて頂く」という説得の仕方もあったはずなのだ。ところが鳩山も岡田も、岡本行夫あたりにすっかり騙されて、早々と「海兵隊の抑止力は必要」などと口走ってしまった。

 彼らがアドバイスを受けるべきだったのは、すでに本論説がこれまでも引用しているように、例えば柳沢協二=前内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)。

「普天間問題の核心は、抑止力をどう考えるかにある。...問われるのは『海兵隊が沖縄に駐留することで得られる抑止力とは何か』だ。それを明らかにしなければ、普天間問題は永久に迷走する。...冷戦期、米ソは明確に敵対していた。だが今日、米中日は生存のためお互いを必要としている。経済の相互依存の深まりが抑止戦略をどう変化させるのか、検証が必要だ。...自戒をこめて言えば官僚も政治家もこれまで、そういう深刻な戦略問題を十分に検証してこなかった」(1月28日付朝日新聞)

 例えばジョージ・パッカード=米日財団理事長(元ライシャワー駐日大使特別補佐官)。

「今も沖縄にあれほどの基地が必要なのか。想定している敵はどこなのか。北朝鮮はどう出る、中国をどう見る。そんな掘り下げた議論をしないで、やれ離島だ、やれ既存基地だと、候補地をむやみに挙げるばかりでは、いつまでたっても解決しません」(2月17日付朝日新聞)

「そもそもなぜ海兵隊が沖縄にいるのか、彼らは何の脅威に対抗しようとしているのか、と問う人もいる。 ワシントンは鳩山新政権に普天間基地の問題を解決するために[5月末などと言わずに]もっと多くの時間を与えるべきである。しかしそのような問いにも鳩山の懸念表明にも応えようともせずに、ゲーツ国防長官は昨年10月に東京に来てただ06年合意を実行するように迫った」『フォリン・アフェアズ』3・4月号)

 このようなアドバイスに従えば、日米では次のような対話が成り立っただろう。

日「海兵隊の沖縄駐留は本当に必要なのか」
米「抑止力の維持である」
日「抑止力とはどこからのどういう脅威に対する抑止なのか」
米「日本防衛と東アジアの安定に決まってるじゃないか」
日「まず日本防衛だが、今時、大挙して日本に渡洋侵攻・占領しようとする意図と能力を持った近隣国があるのか」
米「全くないとは言えない」
日「そうとは思わない。では、96年合意で在沖縄の海兵隊のうち8000人をグアムに引いて5000人を残すというのは、どういう脅威の見積もりから出てきた話なのか」
米「他にもいろいろな危機がありうる」
日「具体的に言って貰いたい」
米「例えば台湾海峡危機だ」
日「第7艦隊は急行するが海兵隊が出て地上戦闘に加わることはないだろう」
米「北の核の危険もある」
日「大規模陸上戦闘ならともかく核の脅威と海兵隊は無関係ないでしょう」
米「海兵隊はイラクやアフガンに出撃しているし、またインドネシア災害出動やパプアニューギニア人権活動にも従事している」
日「それは沖縄から出て行かなければならないことではない」
米「...」
日「全部、グアムに移転したらどうなのか」
米「グアムの知事もこれ以上の基地負担には反対している」
日「それは米国内の問題だ」
米「...」
日「近い将来、グアムかハワイか米本土か、どこでもいいが、沖縄から海兵隊を全面撤退させることは可能ではないのか」
米「...」
日「結局あなた方は、占領・冷戦時代の惰性で、沖縄に基地を置く既得権益を守ろうとしているだけではないのか。96年合意のグアム移転費用も残存部隊の駐留費用も普天間代替基地の建設費用も、大半を日本国民の血税で負担する以上、我が政府としては国民に対して説明責任を負っている」
米「...」

●勝連沖という案は面白い

 こういう論争をやってきていれば、あくまで暫定ということで、県内にせよ県外にせよ移転先を見つけることは不可能ではなかったろう。それがないままに、政府がいきなり県内・県外の移転先を「あそこだ」「いや、ここだ」と言ったところで、そんなものが通るわけがない。何万、何十万の抗議集会が開かれて「鳩山内閣打倒」が叫ばれて一巻の終わりとなる。

 従って、まず対米交渉の基本姿勢の立て直しが求められるのであるけれども、その上で、いまあれこれと取り沙汰されている案の中では、ホワイトビーチ(勝連沖)案というのはなかなか面白く、意外や意外、最終的な落とし所となる可能性を秘めている。少なくとも、小沢一郎幹事長〜平野博文官房長官のラインはそこを睨んでいるようである。

 勝連沖案とは、「県内」には違いなく、従ってハナから無理と見る人が多いが、そのなかなかに奥行きのある中身はあまり知られていない。

 これは、勝連沖の離島一帯に1000ha以上の巨大な人口島を建設し3600メートル級滑走路2本を整備、米海兵隊の普天間基地(481ha)だけでなく牧港補給地区(275ha) 、米陸軍の那覇軍港(57ha)、海空自衛隊の那覇基地(210ha)などを集約移転させ、自衛隊管理の日米共用基地とする案で、沖縄経済界の重鎮である太田範雄=沖縄商工会議所名誉会頭が2003年頃から提唱しているものである。

▼辺野古沖現行案と比べ珊瑚礁を破壊しないで済む。というのも、この一帯ではとっくに珊瑚礁が死滅しているからである。ただし、ここは最良のもずくの漁場で、それに対する漁業補償は必要となる。

▼辺野古沖は水深15メートルで本島や周辺の山を切り崩しても埋め立て用の土砂が調達できず、皮肉なことに中国から大量輸入しなければならないので、最悪の場合総工費1兆円になるかもしれない。それに対し勝連沖は水深3メートルの珊瑚が死滅した砂地で、それを浚渫すれば現場で土砂の調達が可能となる。中国をも睨む海兵隊基地を中国から土砂を輸入して作るというのはほとんど漫画である。

▼海上基地なので辺野古沖やシュワブ陸上に比べ騒音被害は極めて少なくて済む。

▼工期は2年程度で辺野古沖に比べて短かい。

▼第2段階としてさらに嘉手納空軍基地などの再編・一部機能移転などが可能になり、それが巧く行けば、沖縄本島の米軍基地面積の4分の3が縮小される(勝連沖の人工島などの日米共用化を含むので、あくまで名目上の数字ではあるが)。

▼米軍撤退後には人工島を東アジアの民間物流拠点や航空機修理施設として活用可能で、基地なき沖縄の経済発展をも視野に入れている。

▼主唱者が太田なので沖縄経済界や地元を説得しやすい。太田は1979年に沖縄・金武湾の離島を埋め立てて政府の石油備蓄基地を誘致し、地元の反対を説得し抜いて実現した実績がある。

▼最も強力な米側賛同者はロバート・エルドリッジ=在沖縄海兵隊外交政策部次長である。エルドリッジは神戸大学の五百旗頭真(現防衛大学校校長)の研究室で日米関係、沖縄問題を研究、著書多数でそのうち『沖縄問題の起源』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞も得ている。神戸大の後、米太平洋軍海兵隊司令部グレグソン司令官の政治顧問を務め、日本に戻って大阪大学准教授に就いたが、昨年8月に現職に移った。阪大時代の05年9月にに太田と協力して勝連案を緊急提言(添付資料)、その直後の05年に太田をグレグソンに会わせて説明させている。

 『週刊現代』4月3日号によると、太田は昨年10月に小沢幹事長に会ってこの案を説明、小沢は「こんないいプランがあったとは知らなかった」と言った。以後、平野は小沢の指示でその線で動いていて、今年2月には太田が北沢防衛相にも説明している。

 というわけで、この案は、言うまでもなく沖縄が一致して求める「県外」とは背馳し、民主党の「県外、国外」の公約にも違反するが、今のところ唯一の落とし所となるかもしれない有力案となりうる。▲

---《資料》-----------------------------------------------

《ロバート・D・エルドリッヂの緊急政策提言 2005年9月24日》

沖縄の基地問題への実行性のある包括的かつ長期的な解決及び日米同盟の真の強化のために

《背景》

 ブッシュ大統領が米軍の変革と世界的な基地再編を発表してほぼ2年になるが、日本に関して、とくに沖縄に関して言えば、実際の目に見える形での進展はほとんどない。日米両政府は、先の衆議院選挙も含め様々な理由で先延ばしになってきた中間報告を10月に発表すべく、準備を進めていると報じられている。しかし筆者は、この努力が実を結び目標----実際に抑止力を維持しつつ、地元、特に沖縄への影響を可能な限り軽減するという目標----を達成できるかどうかは疑わしいと考えている。

 疑わしく思う主な理由は、交渉の結論が、1972年の沖縄返還以降、日米同盟関係を蝕んできたガンに対して効果的な手術をするのではなく、ただ応急処置をするだけのようなものになるだろうと思うからだ。土地の返還、基地の統合、新たな施設の建設、訓練の制限などといった問題を解決するためのこれまでの取り組みも、病気そのものではなく症状のみに対処する上で最善の一時的な応急処置でしかなかった。1995年から96年の沖縄に関する特別行動委員会(SACO)でさえも、重要性はあるものの、問題に完全に対処することはできなかった。実のところ、その合意の目玉であった普天間の返還は、ガンを切り離し縮小するのではなく、かえってガンが広がる結果を招いてしまった。その結果、日米それぞれのリーダー達は、世界中の人々に平和と繁栄をもたらすという、地域的・世界的な共通の目標に向けて同盟関係を発展させていくのではなく、ミクロなレベルでの同盟関係のマネージメントにとらわれてしまっており、同盟関係の可能性を十分に実現できずにいるのである。

 いま必要なのは、大手術である。過去の問題を解決する上で「正しい事」を行うためには、そしてこれが同様に重要なのだが、同盟関係を健全な基盤に置くためには、沖縄の直面する問題に対し、実行可能で、包括的、かつ長期的な解決策を見出し、同盟関係の可能性を十分に引き出すことが必要なのだ。現在我々は、分岐点にいる。返還以降初めて、沖縄が「負担」と呼ぶ数々の問題に真剣に対処しつつ、基地の構造および米軍各軍が相互に 関わる方法の両方を根本的に変えることができる地点にいるのだ。イマジネーションを働かせて刷新的な解決方法を生み出し、勇気ある大胆な決断を下すことで、このチャンスをつかまなくてはいけない。

 本提言は、様々な議論に弾みをつけるだけでなく、そのような解決策を示すために策定したものである。これが、さらなる議論を可能にするたたき台となることを期待する。本提言は特に、10月に発表が予定されている中間報告までに基地のあり方を大きく変更するための具体的な提案を行い、進むべき方向を示すことを目的としている。また、中間報告と最終報告の発表の間までに、さらなる基地の統合および閉鎖を求める。現時点から中間報告までの間、そして中間報告から最終報告までの間の二段階に分けるやり方は、現在の指導力の欠如した議論よりも現実的なアプローチであるように思われる。

 ただしここで、以下に挙げる2つの理由により、完璧な解決方法というものはないということを言っておかなくてはいけない。まず民主主義においては、お互いの要求は異なるものであり、指導者は、多くの意見を聞きそれを調整した上で、特定の個人や利益ではなく全体的な視野に立って、何がその県または国にとってベストかを判断することであるべきである。そのため、特定の問題や見解に関して「不十分な」ところもあろうが、総体的な結果は多数派の利にかなうものになる。第2に、いわゆる「沖縄問題」においては、関係者が3者いる。沖縄県、中央政府、米国である。この3者の利益は重なる部分もあるが、異なる部分もある。重要な事は、原理主義に陥るのを避け、他の二者の立場を理解し、相互理解と合意を得るということである。コンセンサスの範囲を広げれば、協力の基盤が得られる。イデオロギーにより、コンセンサスを求める必要性や、例えば自衛隊や米軍との協力を拒む者もいる。筆者はこれらの人々に対してこう言いたい:あなたも問題の一部なのだ。今や、解決策の一部となる時が来ている。

《前提》

 本題に入る前に、いくつかの前提を紹介したい。第1に、筆者は日米同盟を、近代史上最も重要で相互に有益な同盟関係の1つと考えている。日本と米国それぞれの利益、共通の利益、地域そして国際的な利益にかなうものであり、将来のためにも世界のためにも、これを足場としていくべきである。日米のパートナーシップがなければ、この地域の状態はもっと悪かっただろうし、世界全体の状態も同じであろう。もし現在日米間で行われている協議が、このまま向かっている結論に到達すれば、それは同盟関係を強化するのではなく、実際には政治的にも戦略的にも悪化させるのではないかと恐れている。

 第2に、この地域そして同盟関係における米軍の役割は、より重要になっている。米軍のプレゼンスが必ずしも「冷戦の産物」であり、冷戦終結後は必要のないプレゼンスというわけではない。それよりももっと普遍的な--特定の国の脅威よりも、不安定な危険に対処する--存在なのだ。日米同盟に関しても同じ事が言える。だからこそ、米軍、特に海兵隊は、世界各地で抑止力として貢献したり、必要とあれば侵略や自然災害・人災に立ち向かったりして、かつてないほど忙しい日々を送っている。しかしそれだけではなく、「戦域安全保障協力」として知られるプログラムの中で、他国の軍隊と協力関係を積極的に結んでいる。同プログラムは、地域の国々が協力し、防衛政策と軍事行動において透明性を保ち、能力を高め、相互に信頼と尊敬の念を培う習慣を根付かせるためのものである。この協力関係は、互いへの疑念を打ち砕き、より安定した地域を創り出す上で役立っている。

 米国主導の活動の中で、海兵隊はこの部分において主要な役割を果たしている。彼らなしでは、同プログラムの費用は増大し、頻度は減少し、効果は薄れてしまう。その結果もたらされるのは、地域の不安定さである。このような理由から、また同盟の利益を守るという伝統的な任務からも、筆者は、米軍、特に海兵隊の前方配備は、日本において特に沖縄において今後も必要だと考える。沖縄においては、その地理戦略的位置と素晴らしい施設が、必要性の理由である。(海兵隊の多面的任務に照らして見れば、数を増やす必要があると言うことすらできる)。そのため、海兵隊の削減を求める意見は、イデオロギー的な理由によるものであれば別だが、軍事問題、戦略(外交的戦略と軍事力とは強く結びついている)、海兵隊の役割といったことに対する理解が欠落していることからくると言える。しかしこれは、海兵隊が、例えばその方針において変化を一切拒むという意味ではない。海兵隊は、実は信じがたいほど柔軟な組織なのである(ほとんど知られていない事実だが)。ただ、海兵隊も数ある組織のうちの一つであり、官僚的な議論においては、直接彼らに関わる問題であっても(なぜか)多くの場合積み木の一番下に置かれてしまうのだ。そのため、海兵隊自身は状況を変えたいと願っていたとしてもその力が与えられず、沖縄では「悪者」にされてしまうことがよくある。

 第3の前提は、沖縄も含め、皆が痛みを分かち合わなくてはいけないということだ。米軍内では、再編を現実にするために各軍が地元で互いに前向きに協力しなくてはならない。

 日本政府も前向きに、資金を提供し、防衛に関して、基地の共同使用も含め自衛隊が主体的な役割を果たせるようにしなくてはいけない。沖縄側も、前向きに協力し、沖縄が言うところの負担を軽減する上での新たな責任を受け入れなくてはいけない。

 同様に、第4の前提は、多くの理由から、沖縄は様々な問題に関して「犠牲者」というよりも自ら進んでなった共犯者であり、したがって沖縄の将来は実は沖縄の手にある(これまでもそうであってきた)ということである。問題は、非常に多くの場合、相反する利害とリーダーシップの欠如により、沖縄の前進する道が阻まれてきたことである。前に進む代わりに、一方からもう一方に跳ね返っているだけのようである。今こそ、これまでのどんな時よりも、沖縄にはリーダーシップが必要であり、沖縄の直面する多様な顔を持つ問題を共に協力して解決しようという、内なる意思が必要なのだ。沖縄はこのプロセスにおいて問題児となるのではなく、パートナーとなる必要がある。

《提言の5つの柱》

 沖縄が直面する問題に包括的に取り組むための提言は、5つの柱を基にしている。規模、兵力レベル、侵略および安全に関する問題、地域社会との関係拡大と社会経済的発展、そして最後に、制度的変革である。これらは、沖縄が常に軽減を要求する「負担」を生み出している様々な要因を包括していると考える。

 沖縄はよく、基地と人員の削減を要求している。しかしその両方に関して実際に望んでいるのは、返還後に適切な跡地利用ができて、最も影響が多く摩擦を生んでいる地域を目に見える形で返還することであり、一方では、犯罪等に関わる人間を撲滅するための犯罪防止策にほとんど効果がないように見えることから、人員を削減することだと言うことができる。基地の状況を冷静に見ると、イメージが現実を上回っているようである。米側には、もっと活発な地域活動および広報プログラムが求められるが、沖縄側には、沖縄県も含め地域のリーダーシップをさらに発揮していくことが必要である。そうなれば、沖縄の社会経済的な発展のための、新しい完全な形でのパートナーシップが実現するだろう。そこでは、基地とその人員も、単なる負担ではなく財産とみなされる。最後に、基地に対して、そして日本政府の決定に対して、沖縄が歴史的に抱えてきたフラストレーションを解決するためには、地位協定の改定だけでなく、例えば日米合同委員会におけるオブザーバーの席を設けるなど、基地問題に関して、沖縄(およびその他の地域)の声を反映する方法を制度化することが望ましい。

《基地の本格的な統合・整理・縮小》

 本政策提言の第1の柱は、沖縄県内に米軍が持つ施設の面積、いわゆる足跡、の目に見える大幅な整理縮小である。本提言は、第1段階として、返還可能な11施設(9つの米軍専用と2つの自衛隊の基地)を指摘する。なお、中間報告の発表から最終報告がまとまるまでの間、それ以外の基地返還に関する評価もおそらく可能である。これは、少なくとも米軍専用施設の78%(計22万6889平方キロメートルのうち17万6683平方キロメートル)にあたる大胆な削減につながる。多くの基地返還は、開発が進んでいる沖縄本島中南部が対象となるため、沖縄県が長年望んでいる経済とインフラの発展に拍車をかけるだろう。沖縄県発行の『沖縄米軍の基地』2004年版によれば、「基地の存在が、用地の確保等の大きな障害となっており、地域振興上の制約となって」いる。本提言はこの不満に直接答えることになる。

 次に説明するとおり、統合される基地の多くは、自衛隊の施設(共同使用、自衛隊の管理下)になるため、米軍の専用施設の数とパーセンテージ両方の削減になる。これは、県が、同盟国としての日本の役割や安全保障の重要性に対する理解からではなく、やや国家主義的、主権的な立場から長年指摘してきた課題である。本提言は、沖縄が米軍、自衛隊を問わず、基地など一切欲しくないという原理主義的な意見に対する答えにはもちろんならない。しかし中央政府には国土と国民を守る義務があり、一部の反対派の意見に応え、国全体にリスクを負わせるわけにはいかない。復帰後、自衛隊に対する県民の理解が深まってきており、基地の共同使用によって地元住民との接触の機会が増えれば、支持が得られるだろう。さらに、米軍と自衛隊が生活や訓練、仕事を共にすれば、お互いへの理解、尊敬、そして信頼が生まれ、対応能力も向上する。今日の同盟にはこのような相乗効果(シナジー)が欠けている。

 本提言の中心は、以前に提案されて最近再び浮上している、米海兵隊の普天間飛行場、牧港補給地区、米陸軍の那覇軍港、および航空自衛隊那覇基地の、与勝(与那城と勝連の周辺)への集合移転である。この新しい施設は、全ての機能を果せる大きさであり、自衛隊との共同使用基地(米軍との共同で、自衛隊の管理下)になる。筆者はこの6週間、同案について研究し、現地調査を行ない、推進する関係者の意見や利用者である海兵隊や他の軍の意見を聞いてきたが、軍事的、経済的、環境面、建設工法、および戦略的な面を総合的に考えた結果、最も優れており、実現可能なだけでなく、賢明な案だと思われる。

 以上の調査で、筆者は辺野古と比べた場合、約30もの利点があると見ている。例えば、航空機の飛行経路は海上となり、現行の案のように中国から砂利を輸入する必要もなく隣接地に浚渫できるため、迅速な施設の建設も可能であり、環境への影響も最小限に抑えられ、新たに誕生したうるま市に収入源を供給し、普天間・那覇軍港・キャンプ・キンザーが連なる国道58号線の渋滞も緩和され、基本的には滑走路しかない現在の辺野古案と同程度の費用で、より良い施設が建設できる。軍事的な面で言えば、辺野古のいずれの案との差が著しくなる。すなわち、有事になった場合、嘉手納、与勝が比較的に近く、運用上、指揮・統制上、非常に速やかに対応できると考えられる。また、有事の際だけでなく、普通の通勤でも兵士らは、わざわざ辺野古という90分もあるドライブをしなくて生活ができる(主な施設から与勝までの通勤は約20分程度)。米国は、隊員(とその家族)を大事にしているので、このようなハードな生活をさせたら、士気が弱くなり、身体的なストレスになり、事故などの可能性が生じ、危機対応が劣れてしまう。(ある米海兵隊の中将は以前に、辺野古案は使い物にならない、とまで発言したことがある。)この案の唯一の弱点は、中央政府と沖縄県が、果して実現可能性のない辺野古現行案を白紙に戻し、最初からやり直す政治的な決意があるかどうかということである。(政府では、辺野古の移設は不可能と共通認識を持ちながら、再検討の作業の責任を誰もとろうとしない。)

 与勝への集合移転は、本提言のほんの第一歩にすぎない。さらに、筆者は新たな3つの 再編が必要と考えている。すなわち、(1)嘉手納空軍基地における変化、(2)他の基地における変化(多くの基地を返還し自衛隊と共同使用化)、(3)10月に予定されている再編協議の中間報告以降の調整により生じる基地の整理縮小へ向けた話し合い、が挙げられる。

 最初に、嘉手納に関しては、最近の着陸の騒音やその他の事故等を考えると、空軍の戦闘機など騒音が基準値を越える航空機を、与勝に新たに作る第2滑走路に移動すべきである。P-3や MC-130などのプロペラ機は嘉手納基地に残るが、うるさくて問題の多いジェット機を移動すれば、地元への被害が減少し負担の軽減につながる。また、自衛隊と軍民共用の那覇国際空港にある自衛隊のジェット機(F4)や将来配備予定のF15も与勝に移動し、海上自衛隊のP3Cは嘉手納に行く。利用されなくなった嘉手納基地内の土地は、要望があり可能であれば、嘉手納町、北谷町や沖縄市に返還し、その開発に協力する。嘉手納基地は自衛隊との共同使用の施設とし、自衛隊の管理下に置く。

 それ以外の整理縮小も可能である。海兵隊第3遠征軍の司令部や兵舎を置くキャンプ・コートニーを閉鎖し、住宅部分などは嘉手納やその他の基地に移した上でキャンプ・フォスター(キャンプ瑞慶覧)に統合することもできる。司令部の任務に関しては、キャンプ・フォスターへの移転により同司令部と在日海兵隊司令部との調整がより促進される。他にも可能なのが、米陸軍工兵隊事務所のキャンプ・フォスターかトリイ・ステーションへの移転や、自衛隊との共同使用に指定されるであろう北部訓練場の残りの部分の返還である。

 同様に、陸上自衛隊の那覇駐屯地も閉鎖してキャンプ・ハンセンへ移転すれば、陸上自衛隊と海兵隊とのより緊密な行動が可能になる。または、近くのキャンプ・シュワブへの移転でもよい。このような協力は、両軍の能力を高めるために必要不可欠であり、抑止力の向上と同盟関係の強化という目標を達成するための相互運用性においても重要な要素である。また、日本がその西端地域での防衛能力を高める計画を維持するのであれば、陸上自衛隊に力を増す余地を与えることができる。移転のためには、キャンプ・ハンセンの訓練施設を改修し近代化する必要があるだろう。

[エルドリッヂ私案における在沖日米基地再編の第1段階(中間報告までに決めるべき事)]

返還する施設(軍別)および面積      ......(1)
統合される施設の移転先          ......(2)
自衛隊と共同使用する(自衛隊の管理下)施設......(3)
=======================================
(1)米海兵隊普天間飛行場 481ha
(2)与勝の沖合(新設)
(3)与勝
----------------------------------------------------
(1)米陸軍那覇軍港 57ha
(2)与勝
----------------------------------------------------
(1)空海自衛隊那覇基地 210ha
(2)与勝および嘉手納飛行場
(3)嘉手納飛行場
----------------------------------------------------
(1)陸自那覇駐屯地 31ha
(2)キャンプ・ハンセン又はキャンプ・シュワブ
----------------------------------------------------
(1)海兵隊牧港補給地区 275ha
(2)与勝
----------------------------------------------------
(1)海兵隊キャンプ・コートニー 135ha
(2)キャンプ瑞慶覧および嘉手納飛行場
----------------------------------------------------
(1)海兵隊キャンプ・ハンセン 5140ha
(3)キャンプ・ハンセン
----------------------------------------------------
(1)海兵隊キャンプ・シュワブ 2062ha
(3)キャンプ・シュワブ
----------------------------------------------------
(1)米空軍嘉手納飛行場 1995ha
(3)嘉手納飛行場
----------------------------------------------------
(1)海兵隊北部訓練場 7513ha
(3)北部訓練場
----------------------------------------------------
(1)陸軍工兵隊事務所 4.5ha
(2)キャンプ瑞慶覧又はトリイ通信施設
=======================================
返還する総面積=17683ha
統合の数=約10
自衛隊との共同使用=5

 最後に、ここでは紹介していないが、この他にもより小規模の基地削減が可能だと思われる。もし上記の提案が中間報告に間に合うタイミングで受け入れられたら、中間報告と最終報告との間に、小規模施設(米軍と自衛隊)についても検討が可能だろう。

 以上を紹介するにあたって、「数字」でごまかしているという批判を受けるかもしれないが、むしろ、保守系であろうが革新系であろうが、沖縄県こそ、常に数字を使って事情を説明している。いずれにしても、撤退への抵抗の背景には、米軍にとっても自衛隊にとっても基地は必要であり、地政学的に見て沖縄が非常に重要な位置にあるということを反映している。米国は、自衛隊との共同使用を望んでおり、これは非常に良い傾向に思われる。

 先述したように、相互に良い訓練ができ、他にも相互利益になるものがあるからで、この方針は一層促進すべきである。今後10年ないし20年間、自衛隊の能力を向上することに よって、将来の米軍の削減が正に可能となる。

 在沖自衛隊の基地の数は、現在35施設である。この数字は非常に多く聞こえるだろうが、実際これは日本全国の自衛隊基地の1.2%に過ぎず、占めている面積も沖縄県の0.3%のみである。本提言が述べている通りに施設全体の数を3つ増やしても、パーセンテージの変化はごく僅かだ。なお、統合、整理、縮小によって他にも自衛隊施設閉鎖の可能性が出てくるので、35よりも確実に削減する(総面積は多くなるが)。

 全体的に言えば、米軍によって返還される土地(那覇軍港、キャンプ・キンザー、キャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、普天間飛行場、工兵隊事務所、北部訓練場、嘉手納飛行場)は、中間報告の後で出てくる可能性のあるさらなる削減を含めなくても、約1万7683ヘクタール、現在占めている土地面積の78%にも上る。このため、米軍占有施設面積の18.8%という数字は、沖縄本島の4%にまで削減される。同様に、基地の数も少なくとも10は削減される。沖縄県が好んで言及する75%という数字(日本国内の米軍占有面積のうち沖縄のそれが占める割合)は、「全基地の75%」(実際には土地面積の23%、数の上では28%)または「全兵士の75%」(実際には50%程度)と間違って使われることが多いが、これが16%にまで減少する。もし残りの全ての米軍占有施設も自衛隊の管理下に置かれれば、この数字は0%になるのだ。(米国は意外にもそれほどこの考えに消極的ではない。)

 最近までこの考えに関して協議をすることにさえ消極だったのは、むしろ防衛庁と財務省の方である。おそらく日本は、この移転と、新たに受け継ぐ施設の維持費を負担するために、30年間続いた防衛費をGNPの1%に抑えるという方針に終止符を打たなくてはいけな くなるだろう。しかし、これを真剣に検討する時期が来ているのではないか。)さらに、新たな統合施設を橋でつながっているだけの与勝半島沖の島に移せば、沖縄本島に直接に影響することもない。そのため、沖縄県が沖縄本島の基地のパーセンテージを出す際に加えるべきでないと言うこともできる。

 つまり、数字のゲームはどっちにも転ぶのだ。重要なのは数字ではなく、日米の安全保障上の要求と、沖縄の政治的懸念の両方に応えるような形で、目に見える進歩が着実に行われることである。大胆な基地削減の可能性は大きい。しかし、答えを出すべき重要な質問が3つある。中央政府はそのために必要な財政的投資を行うだろうか?返還された基地を管理するという、責任の拡大を自衛隊に認めるだろうか?沖縄県と市町村には、県内でこれらの変化を進展させたいという強い意思があるだろうか?全ての質問に対する答えが「イエス」ならば、基地の整理縮小のための長期的な解決方法に向け、大きく前進する素晴らしいチャンスが訪れる。もし「ノー」であれば、協議する理由自体を再検討すべきで ある。

《人員削減--政治的便宜よりも基地の整理縮小と任務変化》

 第2の柱である兵力レベルには、各軍の人員数の削減が関わってくる。整理縮小や施設の統合、特定の機能の移転、さらには米軍内や米軍と自衛隊との間の役割を常に再定義することによって生まれる経済的な側面があるからだ。前述のとおり、米軍の任務が増していることから、大規模な削減は賢明だとは考えていない。実際、例えば米海兵隊はすでに限界を越えていると言える。現実に、在沖海兵隊の多くが海外に派遣されているため、実際のプレゼンスは数字が示しているよりずっと少ない。したがって、自衛隊が米軍、とりわけ海兵隊の削減によって生まれる空白を本当に埋めなければ、これ以上の兵力削減は行ってはいかないと思われる。しかし、戦略的意味に反して、兵力削減に関し、沖縄県および日本政府は政治的必要性を表明してきた。

 そこで、基地の整理縮小によって最初の一歩が達成できる。つまり、整理縮小、任務の再定義、そして自衛隊の役割拡大は、兵力レベル削減への理にかなったアプローチへとつながるのである。この問題で政治的便宜は唯一の機動力であれば、危機対応の能力を致命的に弱めたことにいつの間にかに気付くが、それは場合によって遅すぎる。

《地元への悪影響の減少へ》

 基地と人員の削減を通して、周辺地域への影響が削減できる。これが本提言の第3の柱である。特に、人口の密集した宜野湾市中心にある普天間基地、最近の騒音被害が発生している嘉手納飛行場、自衛隊と民間機が共同使用する滑走路が先日(9月16日)のような一時閉鎖された那覇国際空港などをめぐる問題や危険が、一気に解決できるだろう。新たな施設では離発着のルートが完全に水上であるため、地域への危険も騒音被害もない。同様に、キンザーや那覇軍港、その他の基地の施設や、特にその機能が統合されるため、地元の道路に侵入することによる問題(騒音、事故、渋滞)も避けられる。これは、軍の視点から言っても重要である。物資や兵士などの移動に要する時間が、数時間(もしくは数日)から、数分に短縮されるのである。筆者がこうして提言を執筆している間にも、米軍(また時には自衛隊員)によって犯罪や事件が引き続き起きている。基地司令官は、地元との良い関係作りを、最優先事項にしなくてはならない。軍人は、常に、自分の所属する軍の代表としてだけではなく、米国を代表する「小さな大使」として行動しなくてはならない。

 そのため、時間とお金を投資してオリエンテーションや教育を行うことは今後も必要である。最後に、海兵隊および他の軍は、能力維持などの訓練を島の外で行える可能性を模索し続けなくてはならない。日本も、そのために資金を提供し、船や航空機などで物理的にこれを支援しなくてはならない。これは、双方にとって有益である。なぜなら、自衛隊は各軍統合の訓練だけでなく、米軍と合同訓練を行う機会が持てるからである(例えば海上自衛隊の船が陸上自衛隊員と海兵隊員を訓練場に輸送する)。

《沖縄の長期的な社会経済的発展》

 本提言の第4の柱は社会経済的発展であり、ここで提案されている根本的な変化を持続可能にするための鍵である。そして発展の鍵は、あらゆる政党の地域指導者と米軍(そして自衛隊)との、また沖縄の指導者と日本政府との信頼、友情、協力に基づく関係を回復することである。

 基地の与える影響が地域にとって負担であることは確かだが、基地とその人員は、沖縄県がアジアや世界経済と張り合うためにより競争力のある基盤を求める上での資産ともなりうるものである。そこにはあらゆることに幅広い興味を持ち、幅広い人脈を持っている才ある人材がおり、それを引き出すべきである。政治的、イデオロギー的観点から、基地を拒否し基地の人々との協力を拒否することによって、今日ある沖縄の競争の機会を失い、未来における子や孫の競争の機会を失うことになるのである。

 地元でこそ、米軍基地司令官、自衛隊幹部、教育界や経済界、外務省、米国人経済界(米商工会)、県や市町村の職員、その他の関係者が、共通の利益や問題について、また沖縄の将来のビジョンについての話し合いを始める必要がある。ネットワークが広がれば広がるほど、相乗効果(シナジー)は高まる。米海兵隊によって進められている沖縄英語教育構想、および多くのボランティアプログラムは、その先駆けとしても素晴らしいものだ。さらに多くのこのような活動が推進されるべきであり、沖縄側からの提案や招致が行われるべきである。そのためには、狭義なイデオロギーによる米軍や自衛隊、および日本政府に対する抵抗は克服されなくてはならない。

 これをさらに促進するため、(沖縄本土復帰への道を示した)1969年の京都会議をひな型とする、沖縄の将来についての2者(3者)会議を開催する必要がある。(筆者はこの考えをG8サミットが開かれた頃の2000年に最初に提案したが、残念ながら沖縄側や日本政府側がほとんど興味を示さなかった。)

 同様に、日本政府、特に現首相は、沖縄問題に関して見識も浅く、人脈も不足していると見られている。1960年代の「沖懇」のような沖縄問題諮問機関が政府への助言のために必要かもしれない。諮問機関は又、まだ沖縄に対し関心をもち、関わりをもっている元米国外交官や米軍人などをメンバーとすることも可能である。

 メディアの果たす役割もある。それが単なる批判ではなく、肯定的なものであってほしいと願う。建設的批判は有益だが、批判のための批判は悪意のあるもので破壊的である。

 基地の整理のためには、それによって影響を受ける業者や軍用地主の協力は欠かせないものであり、また労働組合の協力も必要である。基地の整理によって影響を受ける人々に 対する研修プログラムがあれば、移行もしやすくなるかもしれない。非効率的に使われて いる借地料は、返還された土地の開発にあたり地主を支援するために、より生産的に活用 されるべきである。

 つまり、沖縄の未来のためには、沖縄にいる一人一人が互いに力をあわせなければなら ないのだ。沖縄の人々がこれまでの意見の食い違いに終始する歴史を乗り越え、沖縄の直 面する多くの問題を根本的に解決する「千載一遇のチャンス」に、共に力を合わせていく ことを望む。この機会を逃せば、日本や沖縄--政府、政治家、そして人々を含め--が沖縄 の懸念に本当に対処する気があるのか、その誠実さを疑わざるをえない。

《構造上の変化》

 本提言の5つ目、かつ最後の柱は、沖縄に影響を及ぼす基地問題について沖縄がもっと意見を言えるような、構造上・制度上の変化を導入しなくてはならないということだ。日米合同委員会に、沖縄やその他直接利益に影響を受ける地域のために、オブザーバーの席を設けることも、プロセスの透明性を高めるための一つの手段ではないか。45年の歴史をもつ地位協定を改正し、現状に合わせた形にして政治的圧力を軽減することも必要だろう。ただしそれらの変更は、地位協定改正を主張する人々が考えるほどの利益はもたらさないかもしれないが。日本にとってより厳しいものになる可能性もある。

《結論》

 地政学的な現実で米軍および自衛隊が沖縄に配備している。というのは、東アジアは3つの時代を共に生きている。すなわち、朝鮮半島の分断や台湾海峡問題という冷戦時代、1990年代にみられる国家破綻になりそうな国々の存在(北朝鮮やアジア太平表地域の諸国)、および「テロとの戦い」の現在だ。このような状況が大きく変わらなければ、大胆な人員削減は望ましくないだろう。沖縄の地元へのインパクトは、戦略的賢明でない政治的便宜の兵力削減の呼びかけではなく、基地の配置や訓練などのあり方の変化による求めるべきである。

 基地、つまりその施設とそこに駐留している兵員らは、県にとっての資産になり得る。沖縄が協力したいという手を出すかしないかは、ほかの問題と同様に、県のリーダーシップとその県民次第だ。新しい協力環境が生まれるまで、日米両国、とりわけ日本政府は、 沖縄での不満解消をはじめ、日米同盟の強化につながるように、米軍の足跡の大きな変化 をもたらすために努力しなければならない。

 本政策提言は、日米の議論を向上させ、新しい方向付けるために行ったものだ。具体的 な例を挙げたが、その他のことも無論考えられる。今がチャンスと思われる。このような機会が再び訪れる30年後を待ってはいけない。実際再びにチャンスが来るかどうかさえ誰 も知らないからだ。▲

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