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INSIDER No.533《HATOYAMA》海兵隊の抑止力とは何かを検証せよ!──朝日オピニオン欄の柳沢協二の議論に同感する

 ルース駐日米大使は29日に早稲田大学で講演し、沖縄県の米軍普天間基地の国外移転に強く反対する考えを表明した。「海兵隊は有事に誰より早く現地に乗り込む即応部隊。日本から移されれば機動性と有効性が著しく低下する」と指摘。同県名護市の辺野古に移設する現行案は「10年以上検討し、普天間を最短で閉鎖できるベストの案だった」と語った。

「周辺のあらゆる国が在日米軍の動きを注視している。日本で実戦に近い訓練をしている姿を見せることも目に見える抑止力になる」と述べ、駐留の意義を強調した。

 しかしこれはハッキリ言って素人の意見である。「海兵隊は誰より早く現地に乗り込む即応部隊」と言うが、ではその"現地"とはどこであって、そこでの"有事"とはどのようなものなのか。「日本から移されれば機動性と有効性が著しく低下する」というような危機とは、普通に考えれば、日本が近隣から直接侵略される場合、朝鮮半島か台湾海峡で大規模戦闘が発生する場合のどちらかだろうが、それらはそれぞれどの程度の蓋然性があるのか。海兵隊は近年、対テロ作戦能力を強化しているが、アジアで対テロが必要になるのは(イスラム勢力との絡みで言えば)北東アジアより東南アジアの方で、それなら沖縄よりグアムの方が「機動性と有効性が著しく向上する」のではないか。

●率直な対等の議論を

 これとは対照的に、朝日新聞28日付オピニオン欄に柳沢協二=防衛研修所特別客員研究員(元防衛省官房長、内閣官房副長官補)が「"普天間"の核心/海兵隊の抑止力を検証せよ」と書いているのは玄人の意見である。

 彼の意見は、本論説が1月2日付で普天間問題に関して「日本として順番に米国に問うべきこと」として問1〜7を列記した際の問題意識とほぼ完全に一致する。防衛官僚の頂点を極めた人がこの段階でこういうことを発言するのも面白いし、それを朝日が載せたというのも面白い。柳沢の論点は要旨こうである。

▼普天間問題の核心は、抑止力をどう考えるかにある。鳩山首相も言及したが、問われるのは「海兵隊が沖縄に駐留することで得られる抑止力とは何か」だ。それを明らかにしなければ、普天間問題は永久に迷走する。

▼海兵隊はいつでも、世界のどこへでも出動する。特定地域の防衛に張り付くような軍種ではない。したがって「沖縄かグアムか」という問いに軍事的正解は存在しない。それを決めるのは、抑止力をいかにデザインするかという政治の意思だ。

▼抑止とは、攻撃を拒否し報復する能力と意思を相手に認識させることによって、攻撃を思いとどませることだ。相手が当方の意思を疑わなければ、個別の部隊配置は2次的問題である。

▼冷戦期、米ソは明確に敵対していた。だが今日、米・中・日は生存のためお互いを必要としている。経済の相互依存の深まりが抑止戦略をどう変化させるのか、検証が必要だ。

▼「海兵隊が抑止力」という考えの本質的な意味は、いざとなったら海兵隊を使うということだ。例えば、中国が台湾に進攻した場合、海兵隊を投入すれば米中は本格的衝突になり、核使用に至るエスカレーションに至るかもしれない。米国にとってそれが正しい選択で、日本は国内基地からの海兵隊出撃にイエスと言うのか。

▼自戒を込めて言えば官僚も政治家もこれまで、そういう深刻な戦略問題を十分に検証してこなかった。専門家は、あいまいな方が抑止力強化に役立つと言うかもしれない。だが、地元にとって基地はあいまいでは許されない現実の負担だ。

▼アジア諸国の中にも海兵隊のプレゼンスを望む声があり、米当局者もアジアの多様な課題には海兵隊が必要だと言う。だがそれは沖縄でなければならない理由にはならないし、本来の意味での抑止力でもない。

▼戦略的従属性と基地負担という2つのトゲの解消は、今なお同盟にとって最大の課題であり、結論を急がず、米国と「対等な」戦略論を展開してもらいたい...。

 賛成である。鳩山政権はこの人を内閣官房に戻して、普天間問題の対米交渉代表に任命したらどうなのか。

 まず、ポスト冷戦の時代に、とりわけ日本を取り巻く戦略環境において、有効な抑止力とは何かについて再定義が必要である。その上で、特殊的に米海兵隊が果たす抑止力とは何かについても再定義が必要になる。それを議論していくと、小沢一郎が1年ほど前に発言したように「在日米軍は第7艦隊だけで十分」という結論に行き着くかもしれないが、仮に海兵隊に託する抑止力機能があったとして、それを沖縄か県外かグアムのどこに置けばいいかの部隊配置策はさらに下位の問題である。こんな当たり前のことを議論することもなく米軍駐留の既得権益をひたすら温存させてきたのが「日米同盟」の実態である。

 参考までに、私が上記論説で挙げた「問1〜7」を以下に再録するので、柳沢の主張と読み比べて頂きたい。

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《問1》冷戦終結後に米軍内部で「海兵隊廃止」論が高まったことがあったが、この議論はすでに消滅し、近い将来に渡って再燃することはないのか。海兵隊そのものが不要ということになるのであれば、これから5〜10年の年月と1兆円にも上ろうかという費用をかけて新基地を建設すること自体が意味のないことになる。

《問2》仮に海兵隊は存続するとして、主として「第2次朝鮮戦争」とも言うべき大規模陸上戦闘が起きた場合に水陸両用で敵前上陸強襲作戦を敢行することを想定して沖縄にこう移築してきた「前方配備=緊急展開」態勢は、朝鮮半島の緊張緩和の流れを含むこの地域の戦略環境の変化と、米軍の遠隔投入能力の飛躍的向上を考えると、もはや時代遅れなのではないか。

《問3》朝鮮戦争の可能性が限りなくゼロに近づいたとは言っても、台湾有事の可能性はまだ残ると言う人がいるが、仮にそうだとしても、台湾海峡危機の際には、米第7艦隊が介入することはあったとしても、海兵隊が陸上戦闘に加わるというシナリオはあり得ないのではないか。

《問4》朝鮮有事も台湾有事もほとんどありえないとしても、特に第31遠征隊には対テロ作戦や在外米人救出作戦の機能もあるので駐留は必要だと言う人がいるが、そのような事態は北東アジアだけでなく東南アジアでも起こりえて、東南アジアの場合には沖縄にいるよりもグアムにいるほうが近くて便利ではないのか。

《問5》仮に、それでもいいから沖縄に駐留したいという場合に、陸上部隊とヘリ部隊は沖縄に、戦闘機と空中空輸機は岩国に、ヘリ空母艦隊は佐世保にバラバラに分かれていて、しかも本隊司令部はグアムにあるという4個所分散配置は運用上不便ではないか。全部をグアムに統合配置する方がかえって即応力は高まるのではないか。

《問6》それでもなお第31遠征隊を沖縄に残すとして、それは、既得権益の維持という惰性のためでないとすれば、何のためなのか。「抑止力」のためだと言う人がいて、鳩山もコロリそれに乗せられたりしているけれども、誰の何の意図にたいする抑止力なのかを明らかにすることなくその言葉をオマジナイのように唱えて済むような時代は終わったのではないか。

《問7》以上すべてに合理的な説明が与えられて、現行案通り辺野古移転が再決定され、グアム移転と辺野古基地建設の新規費用及び既存基地維持のための「思いやり予算」の負担を沖縄県民を含む日本国民が納得したとしても、時間という要素がある。防衛省が行った辺野古移転の環境アセスメントは、現在辺野古にいる主力ヘリCH46とCH53などがそのまま移転するかの誤った前提で行われており、完成時に配備されると見られるMV22オスプレイ垂直離着陸輸送機はCHヘリに比べて4〜5倍のエンジン出力を持っているので、少なくとも騒音調査については初めからやり直さなければならず、それから着工したとして今から5〜6年先になるだろう。増して、辺野古以外の県外移設の場合はまず地元理解を取り付けて、それから環境アセスを始めるのだら、巧く行って8〜10年後である。その間にアジアの戦略環境はもっと大きく変わっていて、海兵隊の存在理由や沖縄駐留の根拠も薄れている公算の方が大きいのではないか。

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●「日米危機」という幻想

 もう1つ、最近の記事で目立ったのは『ニューズウィーク』最新号(2月3日号)の「"日米関係の危機"という幻想」という同誌記者=横田孝の記事。要旨は以下の通り。

▼普天間見直しで、日米関係が悪化の一途をたどっているというのが定説になっているが、両国関係は言われているほど冷え込んでいない。北朝鮮問題では日米間の協調はこれまでになく強まっているし、核拡散防止や気候変動、テロ対策などのグローバルな課題でも、日米の姿勢に違いはほとんどみられない。日本政府がインド洋での給油活動の代わりにアフガニスタンに5年間で50億ドルの民生支援を約束したことも米政府から歓迎されている。

▼さらに日米同盟の根幹部分に関しても大きな対立はない。日米とも在日米軍の重要性を認識しているし、沖縄の基地負担を軽減すべきだという点でも一致している。

▼メディアとしては、日米間で生じた摩擦を大きく取り上げたくなるのも無理はない。特に日本のメディアは、日米関係を日本の親米保守と米国の知日派同士の仲良しクラブ的な関係と見がちで、この古い認識を捨て切れずに事を必要以上にあおっている節がある。

▼普天間問題の今年5月の期限まで、日本メディアのセンセーショナルな報道は続くだろう。だが、これを日米関係の危機だというのは大げさだ...。

 その通りである。日本が米国を"ご主人様"と崇めて言うなりになっていることが日米同盟を危機に陥れる危険を増大させてきたのであって、それを「対等」で率直に物言い合える関係にしようとする鳩山政権の姿勢が日米関係を救うのである。

●若宮啓文にひと言

 ついでに、本題とは関係ないが、上述の柳沢の主張が出ている同じ朝日新聞のオピニオンのページに若宮啓文=同社コラムニストが「"平成の革命家"の命運は/小沢氏の暗雲」という一文を書いていて、その中で、「いま小沢一郎幹事長が4億円の不自然な土地取引を問われる事態なのに......勇ましい応援団の声もあって「民主党ブレーンの高野孟氏はインターネットで『鳩山政権は検察権力の横暴と対決せよ!』。明治以来の中央集権の主役だったのは官僚権力であり『その頂点にある検察権力』と『血で血を洗う戦いに突入すすのは必然』。民主党の『革命』と、検察の『反革命』の対決だと言うのだ」と、引用して頂いている。

 第1に、小沢が4億円で土地を買って秘書という名の選挙プロたちのための寮を建てるのは、彼なりの政治活動の一環であって「不自然」ではないし、まして「非合法」でもない。

 第2に、高野が「民主党のブレーン」であるかどうかは疑わしい。私は本サイトを通じて、勝手連的に民主党政権を基本的には擁護しつつも部分的には批判もしているだけのことであって、個人的レベルでは、政権発足以来、鳩山にも小沢にも一度も会ったこともない。こういうのは普通、ブレーンとは言わないのではないか。私も、ブレーンなどというものになるつもりはない

 第3に、で、その革命と反革命のどちらに立つのか、若宮自身の立ち位置はどっちつかずである。上掲の「高野孟氏は......」の引用の後、とんでもない見方だという批判を浴びせられるのかと思えばそうではなく、「それはまたオーバーなとは思うが、『革命だ』と口にしてきたのはほかならぬ小沢氏だった」と、高野が小沢を代弁しているにすぎないことを認めた上、「革命的な政治変革が必要......という小沢氏の持論......に共感する人は多かろう」と、他人事のように言う。自分が「共感する」のかどうかは主体的には明言せずに、そういう人は「多かろう」と客観的事実であるかのように逃げを打つのが新聞記者特有の無責任な論法である。民主党が唱える「政治主導」「脱官僚」には「一理はある」が、反面、政治家が国の利益を考えずに一業界や地元に「利益誘導」する「怪しい利権政治」を行って官僚からバカにされてきたのも「事実」であって、鳩山の「平成維新」はいいけれどもその裏に小沢の「利権政治が隠れているならごめんである」と、まさにどっちつかずの結論に逃げ込んでいく。

 小沢が起訴されれば「やっぱり利権政治が隠されていた」と言い、されなければ「やっぱり革命的な政治変革は必要だ」と言うのだろう。どう転んでも自分は安全というのが新聞の「客観公正」というものである。▲

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