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INSIDER No.526《HATOYAMA》日米間のどこでどうやって情報が歪められるのか?──駐米日本大使とクリントン長官の「異例の会談」

 《THE JOURNAL》上の二見伸明ブログへのコメント欄でも話題になっているが、藤崎一郎駐米日本大使が21日、クリントン米国務長官から「異例の呼び出し」を受け、普天間基地移設を現行案通り履行するよう迫ったという日本での報道は、相当大きく事実とかけ離れており、在米大使館・外務官僚とマスコミが結託した"情報操作"の疑いが濃い。

 新聞によってニュアンスの違いがあるのは当然だが、1つの典型として産経ワシントン特派員の記事をMSN産経ニュース22日付から全文引用する。

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●駐米大使にクリントン長官から異例の呼び出し 普天間問題で米国の立場は不変

 【ワシントン=有元隆志】クリントン米国務長官は21日昼(日本時間22日未明)、藤崎一郎駐米大使を国務省に呼び、日米関係の現状についての米政府の見解を伝えた。焦点の米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題をめぐり、キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市)への移設という日米合意の早期履行を求める米政府の立場を伝えたとみられる。日本の駐米大使が国務長官から急遽会談を求められるのは異例だ。

 藤崎大使は会談後、記者団に対して「(鳩山由紀夫首相や岡田克也外相に)報告する必要がある」として会談内容を明らかにしなかったが、普天間移設問題に関し、現行計画を推進する米政府の立場に変化はなかったとの認識を示した。米側の危機感の表れかとの質問に対しては、「重く受け止めている」と語った。

 藤崎大使によると、クリントン長官からは21日朝に会談の要請を受け、約15分間会談した。長官は「日米関係を重視する立場から、日米関係全般についての考え方を伝えたい」と述べたという。

 会談にはキャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)らが同席した。米側から会談に関する発表はなかった。

 クリントン長官は17日夜(日本時間18日未明)に国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)に出席した際、鳩山由紀夫首相と晩餐会で隣席となり、意見交換した。この席で、首相は普天間移設問題について、現行計画に代わる新たな選択肢を検討するとの方針を説明するとともに、「(結論を)しばらく待ってほしい」と要請した。

 首相は記者団に対して、「(クリントン長官に)基本的に理解してもらった」と述べたが、米政府内には結論先送りへの不満は強い。このため、クリントン長官は改めて米政府の立場を藤崎大使に伝えたとみられる。

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 まず1つはっきりしていることは、コペンハーゲンでの鳩山発言は軽率で、黙っていた方がよかった。恐らくクリントンとの宴席での会話で鳩山は、「普天間移設の現行案だけでなく新たな選択肢を含めて時間をかけて検討していきたい」と述べ、長官は「米政府としては現行案がベストだという考えは不変だが、交渉を継続することには同意する」というようなことを言ったのだろう。それはそれとして胸に収めておけばいいことで、最高指導者がブラ下がり会見的な立ち話で口にすべきことではない。案の定、日本のマスコミが「本当にクリントンが"理解"を示したのか?」という調子でこれを伝え、余計なハレーションを引き起こした。

 21日のワシントンでの出来事の真相はもちろん分からない。恐らくは、キャンベルが鳩山発言がそのような形で報じられたことについて、藤崎大使に電話で「どういうことなんだ?」くらいのことを言ったので、藤崎が慌てて「ではこちらから説明に伺いましょう」ということになったのではないか。それでキャンベルの部屋に行くと、「今長官も在席だから一緒に話をしよう」ということになり、恐らく藤崎は「鳩山総理は普天間移設を捨てている訳ではない。それを含めてあらゆる選択肢を検討する協議を続けていきたいというのが真意だ」というようなことを弁解口調で説明した。すると長官らは「米政府としてはあくまで現行案がベストだという考えに変わりはないが、今後とも協議には応じる。ただし出来るだけ早く結論を得たい」と言っただろう。

 藤崎は、公的には鳩山政権の立場を表明しなければならないが、私的には「米国を怒らせたら大変」と思っている旧式外務官僚の典型である。その矛盾をナイフでこじ開けるようにして、記者が「米側の危機感の表れか?」と質問し、藤崎が「重く受け止めている」と答えると、記者側はたちまち「クリントンが怒り狂って大使を呼びつけた」というフィクションを描き上げてしまう。

 さて翌22日のクロウリー次官補(広報担当)の定例記者会見では、この日本での報道ぶりが話題となった。米国務省HPで公開されている会見の様子は次の通りである。

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●クロウリー次官補の12月22日定例記者会見の該当部分の全訳

質問 昨日の国務長官の日本大使との会談について何か資料があるか。長官が普天間について話し合うために大使を呼んだと聞いているが。

クロウリー 日本大使がカート・キャンベル次官補代理に会うために立ち寄り(came by)、クリントン長官のところにも立ち寄った(stopped by)のだと思う。この会談を通じて、大使は我々に、基地合意に関連する問題で折り合いをつけるにはなお時間が必要だという考え(indication)を伝えた。我々は依然として、現行案が最善の道だと信じているが、この問題について日本との議論を続けて行くつもりである。

質問 「立ち寄った(stopped by)」とおっしゃった。彼は呼び出されたのではないと言うのか。

クロウリー はい、私は...。

質問 その日は役所は閉まっていて...。

クロウリー 彼は、つまり、呼び出されたのではないと思う。実際は、彼が我々に会いに来たのだと思う。

質問 日本の新聞に出たいくつかの記事では、[鳩山]総理がコペンハーゲンで行った発言に対して長官が異議を唱えたのだろうとされている。総理は、普天間問題について[の総理の考えに]長官が理解、もしくは基本的な理解を示したというようなことを言った。確認できますか?

クロウリー 私は長官と共にコペンハーゲンに行った。長官が総理と接触したのは、2人が会議場に移動する間の廊下でと、デンマーク女王主催の晩餐の席でだと思う。2人の議論がどのようなものだったのかについて、私は特に承知していない。明らかなことは、この問題は我々にとって引き続き重要であり、我々は今後も日本政府と検討作業を続けて行く(continue to work with)ということである。

[中略]
質問 (聴取不能)すいません、普天間についての質問(聴取不能)...。(聴取不能/日本政府は、か?)米国にとって適切な期限までに普天間問題の決定を下すと思うか。

クロウリー 何度も言ってきたように、日本側は昨日も含めてこの間、この問題に折り合いをつけるのに若干の追加的な時間が必要であると主張してきた。そして我々は彼らとの議論を続けるつもりである。

質問 そうすると、(聴取不能)米日関係は?

クロウリー つまり、日本には新政権が誕生した。政権移行に困難が伴うであろうことは我々は理解している。我が国も政権交代したばかりだ。そこで、我々は日本との検討作業を続けて行くつもりである。そして明らかに、現行案の履行期限がやってくることのインパクトについては我々は潜在的には懸念を抱いているが、しかし我々は、それ[現行案]が持っている問題を解決することを助けるために日本と緊密に検討作業を続けて行くつもりである。

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 見るとおり、大使は呼び出されてはいない。私の推測では、キャンベルが電話で何かを言ったので大使が吹っ飛んで行ったというようなことはあるかもしれないが、少なくとも長官が大使を呼びつけたというのは事実に反する。

 鳩山とクリントンの対話も、藤崎とクリントン及びキャンベルとの会談も、おそらく中身は同じで、クロウリーが説明しているようなことである。繰り返すが、日本側は普天間移転の現行案を捨てている訳ではないが、グアム全面移転を含めてあらゆる選択肢を時間をかけて検討したいという立場であり、それに対し米側は、現行案で早期決着することがベストであるという考えに変わりはないが、交渉には応じるという立場であって、ここで重要なのは、米側が現行案に固執していることではなくて(それは立場上当たり前だ)、それでもなお「交渉を続ける」ことに同意しつつあるという事実である。ところが、産経を典型とする新聞は、前者だけを強調して後者は無視する。何が何でも現行案で強行せよと日本の報道が米国政府を煽っている形となる。

 だから、上に全文を引用したクロウリーの22日の会見についての報道も、おかしなことになっていく。これは23日付の読売新聞記事である。

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●「現行案の期限内実施に懸念」米国務次官補

 【ワシントン=小川聡】クローリー米国務次官補は22日の記者会見で、米軍普天間飛行場移設問題をめぐる日本政府の決着先送り方針について、「現行案の期限内の実施に悪影響を及ぼしかねないと懸念する」と述べた。

 ただ、「日本自身が疑問を解決する手助けを緊密に続ける」とも述べた。

 21日のクリントン国務長官と藤崎一郎駐米大使の会談については、「もう少し時間がかかるとのメッセージを伝えられた」と説明した。

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 上のクロウリー会見は間違いなく全文だから(言い間違いや言い直しも含めてそのまま載せているし、録音で聴取不能だった個所はそのように断りを入れている丁寧さである)、一体どこからどうやってこの記事が導き出されるのか。明らかにクロウリー次官補は、繰り返し「日本と検討作業を続けて行くつもりである」ことを強調していて、そこが"ニュース"であるというのに、「懸念」という一言だけを捉えて見出しを立てる見え見えの作為である。何も知らずにこれらを読んだ国民は、間違いなく「クリントンは鳩山に怒り狂っている」という印象しか抱かない。危機なのは日米関係でなくマスコミの報道姿勢である。▲

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