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INSIDER No.521《JAPAN-US》日米同盟"深化"への模索が始まった──普天間移転は見直しが当然

 バラク・オバマ大統領が来日しての2回目の鳩山由紀夫首相との首脳会談は、全体として大人びた、穏やかで知的な雰囲気の中で行われた。先頃前触れで訪日したロバート・ゲイツ国防長官が、相変わらず日本をポチ扱いし、「まるで占領軍司令官のように」(日本側関係者の表現)振る舞ったのとは打って変わって、オバマは、お互いに利害の相反や認識の食い違いがあるとしてもそればかりをことさらほじくり返すのでなく、大局的見地に立って、21世紀的な新しい同盟関係への"深化"を模索しようとする鳩山の姿勢に理解を示した。鳩山が目指す「対等な日米関係」は少なくとも第一歩としては成功を収めたと言えるのでないか。

 マスコミは相変わらずで、普天間移転問題が最大の焦点であって一刻も早く決着しないと日米関係が危機に陥るかのことを言い立てて、その問題の検証作業が辺野古への移転という過去の合意を前提とするのかどうかについてオバマと鳩山の間に重大な食い違いがあるという石破茂=自民党政調会長の批判を大々的に採り上げたりしていた。日米の外務・防衛官僚がSACO(沖縄特別行動委員会)と2+2(日米安保協議委員会)を通じて10年間もの迷走の末にようやく到達した05年の合意を「唯一の解決策」と主張したいのは当然で、両首脳ともそのことはある程度尊重せざるを得ないが、しかし、もっとマシな方策があるならそれを俎上に乗せることにやぶさかでないという気持は持っている。そのあたりのニュアンスは、東京各紙よりも『琉球新報』11月14日付の「現行案変更に柔軟、日米首脳会談」と題した次の東京発の記事が上手に伝えていた。

「鳩山由紀夫首相は13日、初来日したオバマ米大統領と官邸で約1時間半、会談した。米軍普天間飛行場移設を含む米軍再編合意について、大統領は『政権が代わって見直しすることは率直に支持する。(見直しに伴い、米軍再編合意の)ロードマップ(行程表)の修正が必要になることもあり得る。ただ基本は守るべきだ』と述べ、現行案の変更に柔軟な姿勢を示した。今後は、来週はじめに始まる閣僚級の作業グループを通じて早期に結論を出していく方向で一致した」

「鳩山首相は、会談後の共同記者会見で『作業グループを設置し、できるだけ早い時期に解決すると言ってきており、わたしの決意を申し上げた』と普天間移設の早期解決に向けた意思を表明。日米合意も重く受け止めているとしながら『選挙で(移設先を)県外、国外とも言ってきた。県民の期待感は強まっている』と説明。だが、会談で大統領に直接、県外への移設は求めなかった」

「オバマ大統領も『作業グループで日米合意について協議する。作業は迅速に終わらせたい。目標は同じだ』と語った。基地を抱える地域住民への影響を最小限にすることにも言及した」

 オバマも、何が何でも合意の遂行が前提などとは言っていない。政治家同士の日米同盟"深化"のための対話が静かに始まったことに注目すべきである。

●同盟"深化"の方向性

 同盟はどのように"深化"すべきなのか。第1は、グローバルな課題での積極的な連携である。今回の首脳会談では、「核なき世界」と「地球温暖化対策」について共同声明が出され、その文言自体は大した新味もないけれども、核については、オバマが4月プラハ演説でやや唐突に言い放って、さあこれからどうするかという時に、日本が唯一被爆国として率先それを支持し、オバマ自身の広島・長崎訪問を働きかけることを通じて言わば情緒面から彼を励ます姿勢を採って存在感を示すことは、大いに意義がある。また地球温暖化対策に関しては、これまでの自民党政権がハッキリした態度を打ち出せず、先進=欧州と後進=米ブッシュ政権の間に挟まってウロウロしているだけだったのに対して、オバマのグリーン政策への転換に機敏に対応して鳩山が9月に「中期目標25%」をスポーンと打ち出して、日本が欧州と歩調を合わせることで米国を後戻り出来ないようにする位置取りをしたことは、なかなか巧みな戦略判断である。米国を立てつつも、日本が米国の尻叩き役を買って出るというのが同盟"深化"の1つの形である。

 第2は、グローバルな安全保障とテロ対策について、日本としてやれることとやれないことをハッキリした上で、やれることは精一杯やるというクリアな姿勢を採ることである。自民党政権では、すべてがアンクリアで、「米国から言われたらやらざるを得ないが憲法の制約があるので後方支援止まり」ということで、イラクへの陸自・空自派遣、アフガニスタンへの海自給油艦派遣、さらにやや事情は違うがソマリア海賊対策への海自・海保派遣を、特措法で合法化して実施してきたが、これらはいずれも原理的に正しくない。なぜなら、米国の要請による自衛隊の海外派遣は、集団的自衛権の発動、つまり米国の私的な戦争に対する協力であって、例えそれが後方支援に限定されていようと、日本にとっては国権に基づく国益のための対外軍事行動に当たる。特措法などでこれをすり抜けることは憲法違反の疑いが濃厚である。

 それに対して、小沢理論に従えば、国連による要請があってそれに自衛隊が参加することは、完全に合憲である。国連による公的な戦争に関わる場合、自衛隊は日本国籍の軍隊として日本が自国の利益のために行う国際法的に私的な戦争に携わるのでなく、個別国家を超えた国際公務員として国際公共の価値としての平和の形成に貢献することになるのであるから、その場合には逆に後方支援に限るなどという馬鹿な話ではなく、命懸けの戦闘行動にも参加して当然である。

 アフガニスタンの場合、ISAF(国際治安支援部隊)は国連にオーソライズされて設立されたものなので、日本が自衛隊なり文官スタッフを参加させることは、法理論的には可能である。しかし実際にはISAFは、
(1)当初は確かに、米軍の作戦でタリバン勢力はすでに打倒されたという前提で、アフガンの治安警察軍の育成・訓練や地方経済の再建などの戦後支援を行うことを想定してスタートしたものの、
(2)内乱状態が鎮まるどころかますます険悪化したため、そのスタッフを護衛するための軍部隊を派遣しなければならなくなり、
(3)そのうちに主客転倒して、そのNATOなどの軍部隊が米軍の手が届かない地域を分担してタリバン・ゲリラと戦闘を行う羽目になり、
(4)さらには米軍がNATO部隊と統合して戦う態勢が採られ、
(5)とうとう最後には米軍司令官がISAF司令官を兼ねることになって、米国の指揮下で戦闘を行う組織に変質してしまった。

 こんな訳の分からないものに日本が参加することは百害あって一利もないことで、全くありえない。

 そこで鳩山政権は、まずアンクリアな海自給油活動は「やらない」と宣言した上で、現状のISAFではなく日本独自のやり方で民生支援を行うことにして、ほとんど有無を言わせず米国を納得させてしまった。オバマにしても、鳩山から「先月は1回しか給油を行っていない」と言われれば、「それでもいいから続けてくれ」とは言えない。しかもオバマは、米軍=ISAFが今後とも内乱に割って入ってタリバン撲滅まで戦うというゲーツ国防長官案か、パキスタン北部に部隊を集中してアル・カイーダ絶滅に主力を注ぐというバイデン副大統領案か、ゲーツ案で行くにしても増派は1万か2万か4万か、苦渋の決断を迫られている真最中であり、「今それどころじゃないんだ。日本はやりやすい方法で協力してくれればそれで結構だ」という気分だったに違いなく、そこを巧く突いて、望ましい方向に問題を整理しきってしまった。これは、鳩山政権が緒戦で上げた重要な外交得点として称揚されるべきだが、守旧的な外務官僚の手先となり下がって「米国に逆らったら大変なことになる」というようなことばかり叫んでいるマスコミは、拍子抜けしたと言うか、起きたことの意味が分からずに、ほとんど沈黙を守っている。

●米軍再編の見直し

 同盟深化の方向性の第3は、在日米軍再編を今日的な戦略環境に合わせて抜本的に見直して、沖縄はじめ全土の基地負担を最小限にまで軽減し、行く行くは小沢が今年2月に言ったように「第7艦隊だけ」にまで縮減していくことである。守旧派は、そんなことを言い出したら同盟は危機に陥ると言うが、逆で、このまま過去の合意を盾に普天間基地の辺野古移転を強行し、他の基地についても米国の言いなりに存続させて手を着けないでおく方がむしろ(沖縄県民と国民の感情面から)同盟は危うくなる。不要基地を返還させ、不急基地を縮小し、あるいは日米共用・軍民共用に切り替えて有事の際には米軍の進駐・利用を保証する協定を結ぶなどし、それに伴って「思いやり予算」も大胆に縮減するためのプログラムが必要で、その意味で、普天間問題を検証する閣僚級の作業部会が設置されることになったのは大事な一歩である。

 もちろんこの作業部会自体は、辺野古への移転を現行のV字型滑走路案のまま強行するのか、辺野古にしても一時検討されたことのある遙かに小さな施設に変更するのか、あるいはこれも一時検討された嘉手納空軍基地への統合案を復活させるのか、それ以外の県内・県外の可能性はないのか等々を至急検証して、早期に結論を出さねばならない。が、面白いことに「県外」には「国外」も含まれるはずで、仮に日本側がそれを持ち出しても米国側は今の時点では取り合わないだろうが、少なくともここで日本が「在沖海兵隊の存在意義について県民と国民が納得できるような説明をしてほしい」と言っておくことが、後々への布石として意味がある。

 そもそも96年旧民主党の主要政策の1番目は「常時駐留なき安保」だった。これは、当時、大田秀昌県知事の下で吉元政矩副知事が担当して作成した「沖縄基地返還プログラム」に学びつつ、それを応援していこうというところから発想したもので、その言葉自身は横路孝弘が提案し、結成直前の政策討論合宿で新党参加予定者の全員が了承した。この吉元プログラムは、東京に任せていても基地問題は埒があかないので、沖縄県が直接米国と交渉して、1つ1つの基地の有用性や活用度を吟味し、要らないものやほとんど使っていないものは即時返還させ、そうでないものも順次整理して、10年ないし15年かけて沖縄から米軍基地をなくしていこうという計画で、まさに冷戦後の戦略環境の変化に合わせて基地のあり方を抜本的に見直そうという意欲的なものだった。

 これに対する米国の対日政策マフィア、自民党、官僚、マスコミなど旧体制側の反応は一致していて、まず第1に、そんなことをを言い出しても米国が相手にする訳がない、第2に、仮に米国が応じて米軍が撤退していけば、その分だけ日本の自主防衛力を強化しなければならず、そんなことは不可能だ、というものだった。

 それに対して当時、旧民主党は、第1に関しては、米国もまた冷戦後の状況変化に合わせて軍備配置を抜本的に見直そうとしており、交渉の余地はあると主張し、また第2の点に関しては、冷戦時代と同じ規模と性質の脅威に日本が直面しているのであればそのトレードオフが成り立つが、旧ソ連の脅威が基本的に去った後では、北朝鮮にせよ中国にせよ、日本に上陸侵攻して占領するなどという作戦シナリオを持つはずがなく、別の種類の遙かに小さな脅威に直面しているのであって、米軍+自衛隊の量と質を同じに保たなければならないということにはならないと反論した。また他方で、日本は決して日米安保条約を直ちに廃棄しようというのでなく、上述のような形で順次、基地負担を軽減することでかえって同条約を長続きさせると共に、東アジアに経済協力と安保協力の共同体を作り出して、OSCE(欧州安保協力機構)タイプの地域集団安全保障体制を築き、それが実効あるものになっていく度合いに応じて日米同盟の軍事的側面を減らしていくという考え方を採った。

 鳩山政権の安保についての発想の淵源がそのあたりにあることを知っておく必要がある。

●グアム移転の意味

 沖縄は、米軍の3つの海兵隊遠征軍の1つである第3遠征軍(*)の本拠地である。遠征軍は海兵隊の最大単位で、米本土の東西両岸に1つづつと沖縄とに計3つあり、それぞれは通常、歩兵と砲兵を中心とする師団、航空団、後方(兵站)群の各1個から構成されるが、必要に応じてより小規模な海兵遠征旅団、さらに小さな2000人程度の海兵遠征隊が編成される。在沖の第3遠征軍は、海外に駐留する唯一の前方展開・有事即応の海兵隊部隊で、第3海兵師団、第1航空団、第3後方群のワンセットと、それとは相対的に独立している第31海兵遠征隊とを持っている。兵員総数は、定員も編成も常に流動していて、米軍当局もいちいち詳細を発表するわけではないので、よく分からないが、日本政府はSACOや2+2での米軍再編協議を通じて「1万8000」と言っており、米軍当局の08年3月末の発表では「1万3200」である。

*「遠征軍」はExpeditionary Forceで、日本政府は「機動展開部隊」と訳している。各部隊の概略は、
在日米海兵隊HP(日本語):
http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/Index.html
第3海兵遠征軍HP(英語):
http://www.iiimef.usmc.mil/

 05年の2+2で、普天間飛行場の辺野古移設と第3海兵遠征軍のグアム移転、それに伴う本土を含む基地及び米軍配備の統合・再編・一部返還がパッケージとして合意されたにもかかわらず、それが自民党政権下で一向に実行に移されず、その決着が民主党政権に押しつけられた形になっているわけだが、この合意に基づいて06年5月に策定された「再編実施のための日米のロードマップ」(外務省仮訳)のうちグアム移転の部分は次のとおり(*)。

▼約8000名の第3海兵機動展開部隊の要員と、その家族約9000名は、部隊の一体性を維持するような形で2014年までに沖縄からグアムに移転する。移転する部隊は、第3海兵機動展開部隊の指揮部隊、第3海兵師団司令部、第3海兵後方群司令部、第1海兵航空団司令部及び第12海兵連隊司令部を含む。

▼対象となる部隊は、キャンプ・コートニー、キャンプ・ハンセン、普天間飛行場、キャンプ瑞慶覧及び牧港補給地区といった施設から移転する。

▼沖縄に残る米海兵隊の兵力は、司令部、陸上、航空、戦闘支援及び基地支援能力といった海兵空地任務部隊の要素から構成される。

▼第3海兵機動展開部隊のグアムへの移転のための施設及びインフラの整備費算定額102.7億ドルのうち、日本は、これらの兵力の移転が早期に実現されることへの沖縄住民の強い希望を認識しつつ、これらの兵力の移転が可能となるよう、グアムにおける施設及びインフラ整備のため、 28億ドルの直接的な財政支援を含め、60.9億ドル(2008米会計年度の価格)を提供する。米国は、グアムへの移転のための施設及びインフラ整備費の残りを負担する。これは、2008米会計年度の価格で算定して、財政支出31.8億ドルと道路のための約10億ドルから成る。

*外務省仮訳全文:
http://www.mofa.go.jp/mofaJ/kaidan/g_aso/ubl_06/2plus2_map.html

 この意味するところは、恐らく(というのも、政府もマスコミもそれを明確に説明し切れていないので)こういうことである。

(1)第3海兵遠征軍は司令部機能もろとも沖縄から撤退し、グアムとハワイにまたがって米領土内で展開する(第3海兵師団の主力歩兵のうち第4海兵連隊は沖縄のキャンプ・シュワブにいるが、もう1つの第3海兵連隊は以前からハワイに駐在している。なお第12海兵連隊は砲兵でキャンプ・ハンセンにいる)。これが兵員8000人、その家族9000人である(もっとも家族について日本政府は「8000」と言い、米軍当局は08年時点で「8200」と言っていて、「9000」というのはどこから出てきた数字か不明)。

(2)沖縄には第31海兵遠征隊が(多少とも強化された形で?)残る。

(3)また、第1海兵航空団の司令部はグアムに移るが、普天間(の代替基地)の第36海兵航空群(ヘリ3中隊、C-130輸送機など)はもちろん残り、岩国の第12海兵航空群(有翼戦闘機、普天間から移った空中給油機KC-135など、約3000人)と一体的にグアムの司令部から指揮される。

(4)そのほか基地支援部隊などが必要で、それを加えると合計5000人程度が残ることになるようだ。

(5)在沖海兵隊の現有勢力が1万3000人だとすると、8000人を差し引いてちょうど5000人で、平仄が合う。

●残り5000人も不要?

 これは、簡単に言って、在沖海兵隊の主力師団の沖縄からの「撤退」である。日本の外務・防衛官僚は、米軍が冷戦後の戦略環境変化や米国の財政事情によって在日兵力を削減・撤退させようとするのをなぜか極度に恐れていて、これが「一部海兵隊のグアム移転」であるかのように印象づけようとし、マスコミもそれに調子を合わせてきたので、国民も県民も今ひとつ何が起きようとしているか理解していないかもしれないが、これは海兵隊主力の撤退である。

 なぜこれが可能になったのかと言えば、朝鮮半島での"第2次朝鮮戦争"とも言うべき大規模陸上戦闘が起きる可能性がほぼ皆無になったためである。北朝鮮の侵略に備えてきた在韓米軍は、6年前までは陸海空3万7500人あったが、03年以降順次削減されて現在は2万8500人、その主力は、1952年の朝鮮戦争終結後もそのまま駐留し続けてきた第2歩兵師団1万7000人である。量的削減以上に大事なのは配置変更で、以前は38度線と首都ソウル=漢江ラインの間の最前線を中心に43基地を構えていたが、今ではほとんどが韓国中部・南部の16基地に縮小・移転した。もちろん韓国軍の実力が向上し、2012年には半島有事の際の作戦指揮権を韓国軍に移管することが予定されているためでもあるが、米軍が基本的に第2次朝鮮戦争は「ない」と見ているのでなければこういうことは起こらない。

 さらに今後は、在韓米軍を撤退させて平時には他の地域に転用し、有事の際には来援して韓国軍を支援するという、まさに「常時駐留なき安保」に発展させていく構想が浮上しており、19日の李明博・オバマ会談ではこれを来年秋までにまとめることが合意される見通しである。この構想は「米韓同盟未来ビジョン」と呼ばれているが、このような安保の将来ビジョンも何もなしに「米国を怒らせたら大変」とオロオロしてばかりいた日本と比べると、韓国の方が余程「対米対等外交」を実現している。

 さて、旧来のシナリオでは、北が38度線を越えて南に侵略して来た場合、まずは第2歩兵師団が韓国軍と共に立ち向かい、5〜7日以内に沖縄の海兵師団が駆けつけて支援し、米本土からの本格的な大規模来援を待つということになっていたのだが、第一線の在韓歩兵師団が要らないのであれば第二線の在沖海兵師団も要らなくなるのは当たり前ということになる。だから海兵はグアムまで引くことになった。そこまではいいとして、では残りの5000人も何が何でも沖縄にいなければならないのかどうか。

 残るのは、主として、先鋒隊的な最小戦闘単位である海兵遠征隊で、遠征隊は普通、2200人の海兵・水兵から成り、海兵は、水陸両用強襲作戦向け、特殊作戦向け、ヘリ強襲作戦向けの3中隊から成る歩兵大隊のほか、砲兵中隊、兵站部隊などで構成される。第31遠征隊は、第7艦隊傘下で佐世保を母港とする第11水陸両用戦隊(ヘリ空母、揚陸艦など)と連動するが、この戦隊には別の海兵・水兵2100〜2300人が乗り組む。遠征隊はまた、普天間(代替施設)のヘリや輸送機、岩国のハリアー攻撃機や空中給油機とも連動する。また沖縄の広大な訓練場も(一部は返還になるものの大半は)引き続き使用する。

 これまでの経緯を一切無視して素人考えで言えば、このように沖縄、佐世保、岩国に分散配置してあちこちやり繰りするよりも、それらの機能をすべてグアムに集約する方が運用性は遙かに高まるのではないか。もちろん米軍側は、60年以上にもわたって慣れ親しんできたこれらの基地を、日本の「思いやり予算」のお陰で安上がりに維持できるメリットを手放したくはないし、またいざという時に遠征軍本隊が沖縄に出張って来ることもないとは言えないから、すべてを明け渡す訳にはいかないと言うに決まっている。けれども、少なくとも日本は、「全部をグアムかハワイに移した方がかえって便利なんじゃないですか」と聞くだけは聞いてもいいのではないか。

●知恵を出せば...

 それでラッキーにも、将来はそういうこともあり得ないでもないという話になれば、普天間代替施設は、これから8〜10年もかけてサンゴとジュゴンの海を埋め立てて本格的な恒久施設を作らなくとも、移転までの期限を区切った緊急避難措置として、嘉手納空軍基地への統合、キャンプ・シュワブの陸上、勝連沖などの県内移転、あるいは吉元=元副知事がかねてから提唱しているヘリの岩国移転などの県外移転も、それぞれの地元の了解を得る道も開けるかもしれない。

 嘉手納統合に関しては、地元の反対は当然として、これまでの日米協議では空軍がヘリの受け入れに難色を示したために頓挫した経緯がある。空軍基地の隣には、それよりも遙かに27万平米の広大な嘉手納弾薬庫の敷地があって近年は弾薬貯蔵量が極めて少なくなっていることだし、空軍と海兵隊の共管でもあるので、そこに小さなヘリポートを作って、C-130やKC-135などの有翼機のみ空軍基地を利用するということも考えられるだろう。

 勝連沖というのは、沖縄本島東岸うるま市の勝連半島から沖合の津堅島にかけての一帯に海兵隊の普天間飛行場と牧港補給地区、陸軍の那覇軍港、航空自衛隊の那覇基地をまとめて集約してしまおうというもので、ロバート・エルドリッジ前大阪大学准教授が提唱している案。エルドリッジは、五百旗頭真=防衛大学校長が神戸大学教授を務めていた時にその研究室で日米関係史や沖縄問題を研究して政治学博士号を取得した米国人で、『沖縄問題の起源』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞を受賞している。彼がこの案を提唱した05年当時、海兵隊側もこれを支持していたと言われており、再検討に値するかもしれない。たまたま彼は去る9月、在沖海兵隊の外交政策部次長に就任した。

 日米双方で石頭の官僚どもを抑えて知恵を出し合えば、よりマシな打開策があるはずである▲

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コメント (1)

バラク・オバマ大統領が来日しての2回目の鳩山由紀夫首相との首脳会談は、全体として大人びた、穏やかで知的な雰囲気の中で行われた。

アホ!「子供扱い」してもらったのだ

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