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INSIDER No.513《Administrative Vice-Minister》「地域主権国家」への工程表──斎藤精一郎の提案に(ほぼ)賛成!

 斎藤精一郎=NTTデータ経営研究所所長が『エコノミスト』9月29日号に「"失われた30年"を避けるための3つの政策」と題して、新政権が今後4年間に採るべき方向と工程を提言していて、私はこれに(ほぼ)賛成である。

 斎藤は、日本経済が90年以降「長期の停滞と閉塞」に陥っていて、このまま手をこまねいていればこの先さらに10年も浮上できずに「失われた30年」に填り込みかねない、と持論を述べた後、この長期停滞の要因について次のように述べる。

●停滞の原因は官僚統治機構

「一言でいえば、輝かしい戦後経済時代(キャッチアップ過程)が完了してすでに20年が経過しているのに、依然、官僚依存型統治構造と中央集権体制に象徴される戦後体制がそのまま居座っていることだ」

 別稿で浜規子の言説に触れた際にも同じことを指摘したが、ここで斎藤が言う「戦後経済時代」あるいは「戦後体制」は、明治以来100年余の発展途上国経済時代(体制)と読み替えるべきである。官僚主導の統治構造と中央集権体制は決して戦後になって始まったものではなく、明治憲法によって定式化されて戦後になってもマイナーチェンジが施されただけで今日まで生き残ってきたものだからである。そのように捉えれば、斎藤説は、(またまた登場して恐縮ながら)96年旧民主党の理念文書の第1節「社会構造の100年目の大転換」の次のような書き出しと完全に一致する。

「明治国家以来の、欧米に追いつき追いこせという単線的な目標に人々を駆り立ててきた、官僚主導による『強制と保護の上からの民主主義』と、そのための中央集権・垂直統合型の『国家中心社会』システムは、すでに歴史的役割を終えた。それに代わって、市民主体による『自立と共生の下からの民主主義』と、そのための多極分散・水平協働型の『市民中心社会』を築き上げなければならない。いままでの100年間が終わったにもかかわらず、次の100年間はまだ始まっていない。そこに、政治、社会、経済、外交のすべてがゆきづまって出口を見いだせないかのような閉塞感の根源がある」

 鳩山由紀夫首相や小沢一郎幹事長が繰り返し、「明治以来100年余の官僚主導体制を打破する革命的改革」こそ政権交代の中心的意義があると述べているのは、このような時代観・歴史観に裏付けられてのことであり、長期の停滞と閉塞の本質はそこにある。その点に関しては民主党政権には一点の曇りもない。

●構造疾患の3次元方程式

 次に斎藤は、その停滞と閉塞の実体として「3つの構造疾患」を挙げ、それらに順を追って対処していく工程表を持つべきだとする。

(1)生活不安症候群----雇用、賃金、年金、子育て、教育、健康、介護、福祉、住宅など国民生活の随所に穴が開き、国民を心理的不安だけでなく。生活の困窮や生命の危険に晒し始めてている。

(2)社会的衰弱症候群----商店街のシャッター街化、農村の耕作放棄、中小企業・町工場の廃業など、荒廃化現象が悪性腫瘍のように増殖しつつある。

(3)成長力喪失症候群----それらを食い止め、将来の活性化を担保するための財源が縮小しつつある。

 今後10年で日本経済を浮上させるには、この3次元方程式を解くための戦略的工程表が不可欠で、まず民主党政権は、生活不安解消のために「バラマキ全開」で応急手当を行う。次にその成果が出始める2〜3年後を狙って、地域再生による社会的衰弱の克服のため、統治構想の改革(政治主導の仕組み構築)と制度設計(地域主権改革の法制化)を大胆に進める。最も時間がかかるのが「新しい成長力」の創出で、それには長年馴染んできた「輸出立国モデル」を転換しグローバル競争力を備える先端産業立国を目指す......。

 このような考え方は、私が本欄で述べ、9月17日発行の民主党機関紙『民主プレス』に寄稿した一文(添付資料参照)でも述べたような、政権運営の基本的な方向性ともおおむね合致している。私はそれらで、民主党政権は、まずは新設した国家戦略局と行政刷新会議を基軸として精一杯、官僚主導から政治主導への転換を図りながら、しかし過去の中央集権国家の枠内ではそれには自ずと限界があって、出来ることと出来ないことが浮き彫りになっていくので、それを国民の眼前で繰り広げながら、4年後の総選挙(もしくはダブル選挙)に向かって、中央集権国家の解体と地域主権国家の樹立についての壮大なプログラムを描き上げ、それに国民の全面的支持を取り付けることに争点を絞って選挙を戦うべきであるとの趣旨を強調しておいた。

●憲法改正で仕上げ

 確かに斎藤が指摘するように、生活不安の解消は待ったなしであり、もちろん財源の組み換えなどに知恵を総動員するのであるけれども、それでも不足する分は非常手段を講じてでも何とかして手当をすることが必要だろう。それはまた、次の段階の社会的衰弱に外科手術的に取り組むための体力回復を確実にするためでもある。そこで官僚体制の壁との戦いはいよいよ熾烈さを増すだろうが、遅くとも3年後、つまり総選挙の1年前には、地域主権国家構想の骨格を明らかにし、それを実行に移すための基本的な法案を成立させながら選挙を戦う。恐らく自民党はそれと改革案を競い合うまでに再生を遂げていない公算が大きく、とすると民主党は今回以上の圧勝を得て引き続き4年間、8年間、政権を担当することになる可能性が大きい。

 その間に新しい国家デザインの細部を仕上げていきながら、最後は、それに相応しい憲法改正案を示して国民投票にかけることになるだろう。そこまでやり遂げて、この政権は歴史的使命を終えるのである。

 (3)の成長力喪失症候群への対処については、まず、成長率目標で表されるいわゆる「成長戦略」を本当に持たなければならないのかどうか、もっと別の価値観を立てるべきはないのかの議論が必要だろう。その上で、斎藤が言う「旧来型の輸出立国ではない先端産業立国」の意味するところがまだよく分からないが、私も、「モノづくり資本主義」についての論説で述べたように、ハイテク分野を中心とする高度資本財の開発・輸出が21世紀日本の世界経済との関わりの最突端と位置づけられるべきだと考えているので、そのあたりを今後深めていきたい。

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《資料》民主党政権は「縦突進」で!(『民主プレス』への寄稿)

 待ちに待った政権奪取だから、あれもこれもやりたいと思うのは当然だろう。マニフェストは総花的で、しかも民主党にはそれぞれの分野に精通した政策立案者や論客が多士済々なので、各人が気負い込んで各個バラバラに走り始める危険もないではない。しかし、政権全体の特に滑り出しで決定的に大事なのは、ラグビーに例えれば、横広がりに展開して個人技で相手を抜き去ろうとする華麗なオープン攻撃作戦ではなく、密集隊形でひたすら縦に縦にとボールを繋いで敵陣中央を突破する泥臭い縦突進型の攻撃作戦を採ることによって、この政権の歴史的な中心使命がどこにあるのかを骨太く示すことである。

 中心使命とは、小沢一郎前代表の年来の主張から言葉を借りれば「明治以来100年余の官僚主導体制を打破する革命的改革」である。鳩山由紀夫代表も衆院解散日の会見で同じ「革命的改革」という言葉を使い、それへの「国民総参加」を呼びかけた。マスコミはこの「革命的」をちょっと大げさな形容詞くらいにしか捉えておらず、そうであるがゆえに「民主党の国家ビジョンが見えない」などと見当外れの批判を繰り返してきたが、とんでもない、「的」を取ってしまって「革命」と呼んだ方がいいような事態がいままさに始まろうとしている。なぜなら、この革命的改革は結局、「地域主権国家の確立」という国家大改造の断行に行き着いていくものだからである。

 私のイメージでは、事は次のように展開する。まず最初の100日間は、来年度予算を概算要求から組み替えて可能な限り民主党の重要政策を反映させたものにすることに全力を集中する。次に、来年の通常国会ではいくつかの目玉政策を実現する法改正に取り組んで、その成果を背に夏の参院選で圧勝する。さらに2年目、3年目と着々改革を進めるのだが、それらすべては現行の中央集権国家体制の下での取り組みであって、出来ることと出来ないことが露わになっていく。その経験を踏まえて、4年後の総選挙(もしくはダブル選挙)ではいよいよ、中央集権国家を解体して「地域主権国家」を新たに樹立する全面的なプログラムを押し立てて、今回以上の圧倒的な国民の支持を取り付けて、さらに4年ないし8年かけてこのリベラル革命を遂行する。それに対して自民党は、反革命を対置するのか、別の保守革命路線を提起するのか、そこをはっきり定めなければ再生はおぼつかず、民主党の天下が当分続くことになるだろう。▲

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