Calendar

2009年9月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

Recent Entries

Recent Comments

« INSIDER No.511《JAPAN-US》民主党政権の"対米対等外交"はすでに始まっている──普天間基地のシュワブ移転は中止か?
メイン
INSIDER No.513《Administrative Vice-Minister》「地域主権国家」への工程表──斎藤精一郎の提案に(ほぼ)賛成! »

INSIDER No.512《HATOYAMA》"未来志向"の鳩山外交、好発進──「鳩山カラー」とは何か?

 国会で国民に対して所信表明演説をする前に、いきなり国連気候変動首脳級会合で世界に向かって演説し「温室効果ガス25%削減」の中期目標を公約して絶賛を浴びるという、異例のデビューを果たした鳩山由紀夫首相だが、いつも粗探しのようなことばかり書いているマスコミも、「"鳩山カラー"全開で外交デビューを飾った。......国連の各会合での演説も、高い理想を掲げる"鳩山カラー"が彩る」(23日付読売)と、好意的なに報じている。

●未来からの風

 「鳩山カラー」というものがあるとすると、その最大の特徴は、"未来志向"と言うか、まず将来へ向かっての大きな目標を掲げてしまって、それをどうしたら実現できるかは後から考えればいいという、あっけらかんとした割り切り方である。これは実は、鳩山個人の性分によるというよりも、旧民主党以来の同党の政策の根本にある発想方法である。前原誠司国交相が取り組んでいる八ッ場ダム問題で、まず「中止」という動かぬ目標を設定して、それから地元の説得の仕方を模索するというのも、岡田克也外相が担っているインド洋の給油問題で、「単純延長はない」と結論を明言した上で、代替のアフガン支援策を米国と話し合おうとするというのも、みな同工異曲である。

 度々の引用で恐縮だが、96年旧民主党の結党文書は、第1節で「100年目の大転換」を言い、第2節でそのための政策の立て方として「2010年からの政策的発想」について述べていた。

-----------------------------------------------
   私たちは、過去の延長線上で物事を考えようとする惰性を断って、いまから15年後、2010年にこの国のかたちをどうしたいかに思いをめぐらせるところから出発したい。するとそこでは、小さな中央政府・国会と、大きな権限をもった効率的な地方政府による「地方分権・地域主権国家」が実現し、そのもとで、市民参加・地域共助型の充実した福祉と、将来にツケを回さない財政・医療・年金制度を両立させていく、新しい展望が開かれているだろう。

 経済成長至上主義のもとでの大量生産・大量消費・大量廃棄の産業構造と生活スタイル、旧来型の公共投資による乱開発は影をひそめて、技術創造型のベンチャー企業をはじめ「ものづくりの知恵」を蓄えた中小企業経営者や自立的農業者、それにNPOや協同組合などの市民セクターが生き生きと活動する「共生型・資源循環型の市場経済」が発展して、持続可能な成長とそのもとでの安定した雇用が可能になっているだろう。

 国のつごうに子どもをはめ込む硬直化し画一化した国民教育は克服され、子どもを地域社会で包み込み自由で多様な個性を発揮させながら共同体の一員としての友愛精神を養うような、市民教育が始まっているだろう。

 そして外交の場面では、憲法の平和的理念と事実にもとづいた歴史認識を基本に、これまでの過剰な対米依存を脱して日米関係を新しい次元で深化させていくと同時に、アジア・太平洋の多国間外交を重視し、北東アジアの一角にしっかりと位置を占めて信頼を集めるような国になっていなければならない。

 私たちは、そのようなあるべき未来の名において現在を批判し、当面の問題を解決する。そしてたぶん2010年までにそれらの目標を達成して世代的な責任を果たし、さらなる改革を次のもっと若い世代にゆだねることになるだろう。

 私たちは、未来から現在に向かって吹きつける、颯爽たる一陣の風でありたい。

-------------------------------------------------

 「2010年」というのは、当時は前世紀中に政権を獲って、21世紀の最初の10年間を通じて大転換を進め、新しい国家像の骨格が出来上がったところで、鳩山も菅も仙谷も皆65歳前後になるので、それを次の世代に手渡そうというつもりだったので、そうなっている。政権を獲るのが10年も遅れたので、今で言えば「2020年」ということになる。

 旧民主党結成までの政策論議で大きなテーマの1つとなったのは、当時、大田昌秀=沖縄県知事の下で吉元政矩=副知事が策定した「基地返還プログラム」だった。これは、2010年ないし2015年までに沖縄にあるすべての米軍基地を返還させるべく、1つ1つの施設を俎上に乗せて米軍と交渉して、その機能や使用状況を確かめて、不急不要のものから順次、返還させたり取り敢えず縮小させたりしていくというもの。旧民主党としては、この沖縄のプログラムを支持するにとどまらず、この考え方を本土の米軍基地にも適用して、全土の米軍基地を縮小・返還させ、一部は日米共用化・軍民共用化するなどして、全体として、日米安保条約そのものは維持するけれども、在日米軍は出来るだけ縮小し、その代わりいざという時にはグアムやハワイや本土から飛来して基地を使えるようにする協約を結ぶという「常時駐留なき安保」を基本政策の1つとして掲げることになった。

 余談だが、これには米国政府も驚いたようで、当時ワシントンの防衛分析研究所研究員で後にホワイトハウス日本・朝鮮部長になった対日安保政策マフィアのマイケル・グリーンが東京に吹っ飛んできて、「民主党にこんなことを言わせたのはお前か」と私を詰問したりした。

 そこから議論はさらに発展して、この15年ないし20年先のあるべき国の姿をイメージして目標を定め、そこから手前に向かって段階論を考えるという方法を、普遍的な政策的発想法として採用しようということになった。保守vsリベラルの2大政党制と言っても、成熟先進国ではどこでもそうであるように、右か左か、白か赤かという対抗軸はもはや成り立たず、ほぼ同じ方向を目指す狭い政策選択の幅の中で、むしろその深度やスピードや回路や手法を競い合うことになる。とすると、旧来の自民党的政治では、超現実主義的に、今より少しマシな改善を、手前から、官僚体制や業界団体などの間で合意できた限りで、積み上げていくのが当たり前であるのに対して、登場すべきリベラル新党は、超理想主義的に、まず遠くのあるべき目標を明示して、そこから手前に向かってブレークダウンして、10年間ではここまで変える、そのためには5年間ではこことここだけはメスを入れる、だとすると今現在直面する問題に対してはその5年後に繋がるような対処の仕方をしよう----という具合に思考するのである。

 ちなみに、この議論を通じて、「常時駐留なき安保」というネーミングを含め、この未来からの政策的発想の重要性を強く主張してリードしたのは横路孝弘であり、それを真っ先にサポートしたのは私と、もう1人、鳩山邦夫だった(アハハ!)。

 この結党文書の一節が「私たちは、未来から現在に向かって吹きつける、颯爽たる一陣の風でありたい」というなかなか文学的な決め言葉で終わっているのは、実は宮沢賢治の「生徒諸君に告ぐ」という詩からのイメージ借用で、元は「諸君はこの颯爽たる,諸君の未来圏から吹いて来る,透明な清潔な風を感じないのか」である。

●やれば出来る

 政治は未来への挑戦であり、「やれば出来る」と思わなくては始まらない。言ってしまえばやらざるを得ず、それで出来なければ責任を取って辞めればいいのである。官僚は逆に過去へのこだわりが命であって、その延長で「出来ることしかやらない」。政治が官僚に従属するのが致命的に拙いのはまさにそこで、その政官関係の120年の惰性をブチ破る革命的改革の党は未来から手前に向かって物を考えて当然である。

 地球温暖化について言えば、そもそもCOPの考え方は1つのイデオロギーであって、地球はむしろ寒冷化に向かっているという説を唱える学者が少なからずいるし、また温暖化を認めるとしてもその原因は必ずしもCO2など温室効果ガスではないとする論者もいる。さらに温室効果ガスのせいだとしても、2050年と言わず2025年でも石油生産のピークが過ぎてもはや脱石油が焦眉となっていることは確実で、その時に、石油利用がいつまでも続くかのような前提に立って「うちの商売に差し支える」などと言っている電力業界や製鉄業界を慮ってしみったれた目標を掲げ続けることなど愚劣である。そこをポーンと飛んで、「25年=25%削減」と言ってしまったのは鳩山の卓見で、さあどうしようかと言っている内に石油枯渇が始まり、CO2説も温暖化説も見直し機運が高まるかもしれない。

 東アジア共同体とその核となるアジア共通通貨体制も、外務官僚に言わせれば、ヨーロッパは各国の経済格差も小さくキリスト教という共通の文明基盤もあるがアジアにはそれがないことに加えて、米国が「アジアから排除しようと言うのか」と反対するに決まっているので「出来るはずがない」ということになるが、出来ない理由を並べ立てるのが官僚の仕事で、日本のトップが言い出せば中国も韓国もASEANも喜んで議論に応ずるだろう。10月の日中韓首脳会談がその始まりとなる。米国の過剰な懸念に対しては、東アジア共同体と並行もしくは先行して日中米の戦略協議体を設営すれば足りる。

 普天間移転問題とインド洋給油問題をマスコミが腫れ物に触るようにビクビクして、鳩山はオバマに持ち出さなかったとか、岡田がクリントンに言ったら必ずしも話し合いを拒否しなかったとか、一喜一憂するが如くに語っているのは滑稽である。普天間移転を含む在日米軍基地の再編については、ポーランドなどへのミサイル防衛網設置をあっさり止めたのと同様、ゼロベースでの見直しが始まっていて、SACO(沖縄に関する特別行動委員会)の合意は必ずしも絶対ではなく、9月16日付本論説でも書いたように、ホワイトハウス内で嘉手納移転による早期決着の考え方が選択肢の1つとして検討されている。

 インド洋給油について言えば、オバマ政権ははっきり言ってそんなことはどうでもいいという気分であって、その延長を拒めば日米関係が大変なことになるかのように言っているのは外務省とそれに脳髄を冒された日本のマスコミだけである。

 オバマは選挙運動中から、イラクは早期に撤退するがアフガニスタンは兵力を増強すると言い続けてきて、私に言わせればそれが間違いの元である。イラクだけでなくアフガニスタンの戦争も初めから間違っていて、それはさんざん指摘してきたように、(1)そもそも軍事力で、ましてや国家間戦争で、テロリストは撲滅できないし、(2)国家間戦争でイラクやアフガニスタンの国体を破壊してしまえば果てしのない内戦に陥って収拾がつかないことになるのは分かりきっていて、(3)そうなってから米軍をいくら投入しても泥沼状態が深まるだけだからである。

 オバマは就任早々、公約通りアフガン増派を表明したが、米国の議会も世論もそれには批判的で、オバマの支持率低下の一因にもなっている。とりわけ、先頃のアフガニスタン大統領選挙でカルザイ現大統領派による大掛かりな不正投票が国際監視団から指摘されたことで、米国のカルザイへの信頼は地に落ちてしまった。その中で、ホワイトハウスではアフガニスタン戦略の根本的な見直しが始まっていて、9月13日に正副大統領、国防・国務両長官、安保担当補佐官、統合参謀本部議長が列席して開かれた第1回アフガン戦略会議では、バイデン副大統領が「アフガニスタンでタリバンと戦って治安を回復する」ための内戦鎮圧作戦の放棄、主にパキスタン山岳部にいると言われるアルカイーダに対する米特殊部隊による掃討作戦への集中、つまり「パキスタンでアルカイーダと戦ってテロリストを撲滅する」という戦略目標の大転換を主張、公約を守りたいオバマが難色を示し、またクリントン国務長官は「アフガニスタンでタリバンを退治しなければ結局、アルカイーダがアフガニスタンに戻ってくる」と反対論を述べたという。

 このアフガン見直し会議はさらに数回開かれる予定だが、いずれにせよ、アフガニスタンを作戦領域として放棄するかどうかの根本問題までホワイトハウス中枢で激論となっている状況で、本論説が初めから指摘しているように、軍事的には全く無意味なインド洋監視作戦とそれへの日本自衛隊による給油活動の継続など、ほとんどどうでもいいような話なのである。

 間違っていることは、いくら米国が言って来てもやらない。それが同盟国としては当たり前で、そういう鳩山政権の姿勢を米国は尊重するだろう。▲

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.the-journal.jp/mt/mt-tb.cgi/5978

コメントを投稿

※[投稿]ボタンをクリックしてから投稿が完了するまで数十秒かかる場合がございますので、2度押しせずに画面が切り替わるまでお待ちください。

Profile

現在、INSIDERニュースレターの内容は、ご覧の《THE JOURNAL》内でブログの形で公開されております。
誰でも無料で閲覧し、またそれについて感想や意見を書き込むことが出来るようになっておりますが、従来通り、お手元に電子(Eメール)版配信もしくは印刷版郵送の形で講読を希望される方は、引き続きEメール版:年間6,300円(税込)、ペーパー(紙)版:年間12,600円(税込)をお支払いください。[法人購読の場合は年間105,000円(税込)になります]
ウェブ上で無料で閲覧できるものが、Eメール版・ペーパー(紙)版が有料なのはどういうわけだと思われるかもしれませんが、後者の場合、読者名簿管理と請求の事務、配信と郵送の手間が必要であり、とりわけ印刷版の場合は紙代、封筒代、印刷代、郵便代のほか宛名を印刷して封筒に貼り、印刷されたものを三つ折りして封入し、糊付けし、紐で束ねて郵便局に運び込むのに膨大な手間とコストがかかっていることをご理解下さい。
また、無料で閲覧できるならそちらに切り替えたいという方もおられると思いますが、残余の購読期間は引き続きEメール版もしくはペーパー(紙)版を配信させて頂き、購読料を途中返還することは致しませんのでご了解下さい。

BookMarks

TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

INSIDER(インサイダー)
http://www.smn.co.jp/insider/

当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.