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INSIDER No.511《JAPAN-US》民主党政権の"対米対等外交"はすでに始まっている──普天間基地のシュワブ移転は中止か?

「米、三沢基地のF-16撤収打診、嘉手納F-15削減も、日本難色で保留」という9月11日に共同通信が配信し12日付地方各紙に載った記事が、なかなかに意味深長である。

※全文は、47news:
http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009091101001075.htm

東奥日報「米軍三沢基地」特集サイト:
http://www.toonippo.co.jp/kikaku/misawa/index.html

●米側から基地縮小を提案

 第1に、オバマ政権はすでに在日米軍基地の縮小・再編計画を進めていて、すでに今年4月の段階で、青森県三沢基地に配備しているF-16戦闘機約40機をすべて早ければ年内に撤収させること、沖縄県嘉手納基地のF-15戦闘機約50機の一部を削減させることを日本側に打診していた。

 ゲーツ米国防長官は今年4月6日に10年度国防予算の大幅な見直し計画について記者会見し、最新鋭のステルス戦闘機F-22ラプターの新規発注を中止する一方、F-16を含む旧式の戦闘機250機を一挙に退役させる方針を明らかにしていた。日本側への打診はその直後に行われたものと見られる。

 つまり、少なくとも在日米空軍基地の縮小もしくは廃止について日米間で話し合いが成り立つ余地は十分にあるということである。

 第2に、にもかかわらず、この打診を受けた「日本側」は、共同通信の表現によると「北朝鮮情勢や在日米軍再編への影響を懸念し、いずれにも難色を示して保留状態」にした上で「日米同盟関係への影響などから秘匿性の極めて高い情報として封印」したという。

 この辺に日米関係をおかしくしてきた問題点がいろいろ垣間見えていて、まずこの「日本側」とは内閣なのか外務・防衛大臣なのか官僚レベルなのか。仮にも官僚レベルの勝手な判断で大臣や首相にも伝えずに、米側に「難色を示し」た上で「封印」して「保留状態」にしたのであれば、厳罰に値する重大事件である。大臣には耳打ちはしたが閣議には持ち上げないようにしたというのであれば、官僚による内閣に対する情報操作である。閣議に上がって麻生太郎首相が難色を示し「封印」を指示したのであれば、基地負担の軽減を交渉する絶好の機会を投げ捨てた政治判断が問われることになる。

 いずれにしても、こんな風にして日本外交は自分の首を絞め続けてきたのである。「日米同盟重視」と言いながら実は日米同盟を軽視している。

 第3に、この記事が出てきたタイミングである。民主党と他の2党の党首会談が9日に開かれて「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地の在り方についても見直しの方向で臨む」との内容を政権公約に明記することで決着、連立政権を発足させることで正式合意が成り、それに対して11日、中曽根弘文外相と浜田靖一防衛相はそれぞれ閣議後の会見で、在日米軍基地の見直しについて「今まで政府間合意を見直すことなど考えたこともなかったので想像がつかない。日米同盟にとってかなり大きな問題になる」などと懸念を表明した。

 その11日に「複数の日米関係筋」が共同通信に対して上記の4月打診の事実を「明らかにした」ということは、「日米関係筋」の少なくとも「米」側に、民主党政権の基地見直し方針をむしろ歓迎する向きがあることを暗示している。

●三沢基地は空白に?

 そもそも三沢の米空軍基地は、冷戦時代には、旧ソ連の極東にある機械化師団が北海道に上陸侵攻して陸上自衛隊が戦車3000両を並べて迎え撃つということになった場合に、米軍のF-16が背後から飛び立って戦術核を含む対地攻撃を行い、あるいは対潜哨戒機で敵原潜を撃沈するための出撃基地と位置づけられていた。冷戦が終わって旧ソ連の脅威が基本的に消滅した後は、F-16の主要目標は北朝鮮にシフトされ、金正日政権が危険な動きを見せた場合に先制攻撃を仕掛ける急先鋒の任務を与えられた。ネオコンが対外政策を取り仕切っていたブッシュ政権第1期には、実際にそのような軍事オプションが真剣に検討され作戦も立案されたが、第2期には北との対話路線に転じたためその任務も薄まり、オバマ政権になると対北朝鮮の軍事オプションは完全に消えたので、F-16の存在意義はほぼ消滅したと言ってよい。

 9・11以降には、「長距離先制攻撃」と称して、三沢のF-16を長駆、イラクやアフガニスタンまで空中給油しながら飛ばして爆撃することも試したりしていたが、これは暇にしていてはもったいないし隊員の士気も落ちるから無駄を承知でやっただけの話で、どうしても三沢基地からの出撃でなければならなかった訳ではない。オバマ政権はこんな馬鹿馬鹿しいことは繰り返さないだろう。

 仮にF-16が年内にも撤退しても、後継部隊はすぐにはやってこない。F-16の後継機として米ロッキード・マーチン社を中心に国際共同開発が進められているのはF-35ライトニングというステルス戦闘機だが、早くても2013年に配備開始で、三沢にまで持ってくるのは2015年頃になるだろうが、それまでに米国が北朝鮮と国交を樹立しているのはまず間違いないところで、となるとわざわざ三沢に配備することに何の意味があるのかということが日米間の"対等外交"の交渉事となるだろう。つまり、F-16がいなくなって5年も6年も戦闘機不在の状態が続いて、その間に北東アジアの戦略環境も大きく様変わりして、結局、三沢の空軍基地と隣接の天ケ森射爆場は無用の長物となる可能性が大きいということである。

 もっとも、そうなっても米国は三沢基地そのものを返還するとは言わないだろう。同基地の奥まった一角には極東最大の通信・盗聴基地があって、その14基の巨大ドームに覆われたアンテナのうち8基は、冷戦時代の名残であるロシア国内軍事通信の傍受用だが、少なくとも4基は秘密のヴェールに包まれた米国の全世界的盗聴システム「エシュロン」用と考えられている。エシュロンは、国際商用通信衛星インテルサットを監視して、現在では特にアル・カイーダなどテロ集団の動きを嗅ぎ出すのに役立っているとされているが、それだけでなく、日本を含む各国のビジネス動向を探る"産業スパイ"の役目も果たしているとされる。

 EUは、三沢を含む世界20カ所の拠点を持つエシュロンによる産業スパイと個人プライバシー侵害を公然と非難しているが、日本は自国が盗聴されているというのに米国に言われるままに基地を提供し、その維持費用まで思いやり予算で賄っているというお人好しぶりである。"対等外交"と言うからには、仮に空軍基地と射爆場は要らないがエシュロンは必要と言われた場合も、それならエシュロンについてちゃんと情報公開しろと迫らなければならない。国民の血税が注がれている以上、米軍にはその使途についての説明責任がある。

●海兵隊航空基地は嘉手納へ?

 さて、4月の米打診で興味深いのは、嘉手納のF-15一部削減の提案である。これはどう見ても、普天間海兵隊ヘリポートの代替施設をキャンプ・シュワブ沿岸に建設する計画を断念し、嘉手納空軍基地の一角に移駐することで済ませようという考えが米側で強まっていることの反映である。

 普天間移転問題は、10年以上にわたって日米双方にとって重荷となってきた。95年9月の米海兵隊員による少女暴行事件をきっかけに在沖米軍に対する怒りが高まる中、日米はSACO(沖縄に関する特別行動委員会)を設置して一部基地の条件付き返還を協議、その中で、海兵隊8000人のグアムへの移転と普天間基地のシュワブへの移転について合意したものの、シュワブについては新たな騒音被害やジュゴンやサンゴなどが生息する貴重な海洋環境の破壊などへの懸念から地元が反対し、未だに着工も出来ないままである。

 防衛省は4月に県に対して「環境に与える影響は少ない」とする出鱈目な環境アセスメント評価の準備書を送付、県知事が10月13日までにそれに対する意見書を出して着工を急ぐことになっている。自公両党の推薦で3年前に当選した仲井真弘県知事は、代替施設の建設場所を数十〜数百メートル沖合に移すことを条件に着工に同意しようとしているが、先の総選挙では沖縄の4つの小選挙区では基地建設推進派の自公候補が全滅、県内移転に反対する民主党県連が勢いづいて知事に翻意を迫っている。沖合に移したところで、騒音は多少軽減されるかもしれないが、海洋環境破壊はさらに酷くなる。

 こうした状況で、米政府内では、シュワブ移転を断念しようという空気が強まっている。理由の第1は、そもそも沖縄に海兵隊が駐留する主な目的は朝鮮半島で陸上戦闘が起きることに備えることにあったのだが、その可能性はほとんどゼロになっていて、だからこそ8000人のグアム移転の準備も進めているのであって、シュワブに何が何でもしがみつく根拠が薄まっていることである。

 第2に、逆にそれにこだわって県民感情が悪化し、それだけでなく日米関係そのものがとげとげしくなることのデメリットを無視できない。

 第3に、地元の「北限のジュゴンを見守る会」など日米の自然保護団体が米国でペンタゴンを相手取って行った「ジュゴン訴訟」で08年2月、サンフランシスコ連邦地裁は、ペンタゴンががジュゴンへの影響などを評価・検討していないことは米国文化財保護法に違反しているとして、基地建設による天然記念物ジュゴンへの影響の回避を求める判決を下した。ブッシュ政権はこれを無視する態度を採ったが、オバマ政権はこのことも考慮に入れなければならないという認識を持っていると言われる。

 そこで、嘉手納への移転という案が浮上するのだが、これについては、ワシントンの事情に明るいニューヨーク在住のジャーナリスト=ピーター・エニスが昨年と今年、2回に渡って週刊東洋経済への寄稿で十分に可能な解決策だと指摘している。嘉手納には余った広大な敷地があり、物理的にはヘリポート移転に何の問題もない。ただ空軍と海兵隊の縄張り争いがあって、空軍がそのようなものを持ち込まれることを嫌がっているという問題があるが、それは米政府内で調整すれば済むことである。他方、日本側では、自民党建設族に繋がる地元土建業界がシュワブ建設の巨大利権にしがみつこうとするだろうが、これも政権交代が実現すれば押さえ込むことが出来るかもしれない、と彼は言う。

 民主党はかねてから「県外移転」を掲げてきたが、県外と言ってもどこなのか、何の現実性もないという批判が党内からもあって、先の衆院選マニフェストではそれを外した。が、長島昭久衆院議員らが今年3月に設けた私的勉強会は7月、普天間ヘリポートを嘉手納に移転し、同ヘリ部隊の飛行訓練は下地島にある民間パイロット訓練用の既存飛行場で受け入れる----という一種の「県内移転」の妥協策をまとめて岡田克也幹事長に提出している。

 従って、民主党が「シュワブ断念・嘉手納移転」の方向を固めて"対等外交"に打って出れば、この問題は急転直下、解決する可能性が大いにある。

 最近東京を訪れた、米民主党中枢にパイプを持つ外交専門家は次のように指摘している。

▼シュワブ断念・嘉手納移転をホワイトハウスは真剣に検討している。SACOにこだわるのは日本では外務・防衛両省の官僚であり、米国では過去にこの問題を担当したことがあるカート・キャンベル国務次官補と海兵隊出身のウォレス・チップ・グレッグソン国防次官補の2人だが、ホワイトハウスは「こんな問題をいつまでも引き摺らないで早く決着したい」という考えだ。

▼鳩山がオバマと会った時に、日米双方とも政治主導で官僚の無能と惰性を押さえ込みましょうと持ちかければ、案外話は進むのではないか。愚かな米マスコミは鳩山が"反米"であるかのことを言い、日本のマスコミもそれに従って鳩山政権への"懸念"を書き立てているけれこも、むしろ鳩山のほうからそれを言い出せば、"対等外交"は米国のためにもなることが理解されるのではないか......。

 蛇足ながら、小沢一郎がまだ代表だった今年2月に、在日米軍再編に関連し「米国もこの時代に前線に部隊を置いておく意味はあまりない。軍事戦略的に米国の極東におけるプレゼンス(存在)は第7艦隊で十分だ」と述べ、この時も自民党とマスコミが砲列を揃えて「何を馬鹿なことを言っているんだ。そんなことを言って米国を怒らせたら大変だ」といった非難を浴びせたが、小沢はおそらくオバマ政権が軍事予算の縮減と在日基地の見直しにどういう手を打ってくるかについて何らかの情報を持っていて、敢えてそのように発言したものと考えられる。民主党政権の対米対等外交の前哨戦はとっくに始まっていると見るべきである。

 もう1つ蛇足。与党3党合意の日米地位協定見直しでは、まず基地の土壌汚染など環境汚染に対する責任を明記すべきだということになるが、普天間の汚染は劣悪だと言われていて、仮に嘉手納移転が実現しても、そのままでは到底民用に活用することは出来ないと考えられている。地位協定見直しも急務である。▲

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コメント (1)

高野様

>冷戦時代には、旧ソ連の極東にある機械化師団が北海道に上陸侵攻して陸上自衛隊が戦車3000両を並べて迎え撃つということになった場合に、米軍のF-16が背後から飛び立って戦術核を含む対地攻撃を行い、あるいは対潜哨戒機で敵原潜を撃沈するための出撃基地と位置づけられていた。

この中の戦車3000両を並べて迎え撃つ、というのはいつの時代の戦術ですか。
教えていただけないでしょうか?

陸自は戦車を約1200両維持してきましたが、現在減らされています。そんな陸自が戦車を3000両も北海道に配備したことはこれまでなかったと思いますが…

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