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INSIDER No.509《BUREAU CRAZY》農水省の"改革偽装"を叩き潰せ!──地方農政事務所廃止の裏事情

 農水省が地方の出先機関を大幅に縮小する組織改編案を、31日発表の「10年度組織・定員要求の概要」に盛り込んでいたことは、これまでもチョロチョロとは報じられていた。例えば1日付朝日は「農水の地方拠点、346から65に集約/職員数は変わらず」と題したわずか20行ほどのベタ記事で次のように伝えた。

「農水省は来秋、地方農政事務所や統計・情報センターなど全国346の地方拠点を、65の地域センター(仮称)に集約する。...昨年秋に発覚した事故米の不正転売事件で、ずさんな検査で不正を見過ごし、あり方が問われていた39カ所の地方農政事務所は、北海道農政事務所を除き廃止する。ただ、職員数は再編後もほとんど変わらない見込みだ。また、農水省各部署の業務や政策をチェックする60人規模の『農林水産行政監察・評価本部(仮称)』も来秋、新設する」

 どうやら、事故米の不正転売を見逃してきたことへの懲罰として、地方農政事務所など地方拠点の数を5分の1以下に削減しようとしているらしく、これなら国の出先機関の「原則廃止」という民主党マニフェストの方向にもおおむね合致していて結構なことではないかと思ってしまう。が、それでいて「職員数は再編後もほとんど変わらない」というのはどういう訳なのか。この記事ではその肝心なところが分からない。

●焼け太りで組織温存

 そこを謎解きしたのが3日付読売夕刊「農水"肥満"逆戻り?」という社会面の半分ほどを費やした大きな記事。それによると、8地方農政局等、38農政事務所、308の地域課や統計・情報センターのうち農政事務所と地域課など446拠点を来年10月をめどに廃止し、700人程度の職員を削減するが、同時に、65カ所の「地域センター」を新設し、その下にはさらに「駐在」事務所を置いて、米トレーサビリティ制度の実施に取り組む。これには約1100人が必要で、削減した700人を吸収するほか、他部門の合理化で400人の人員を浮かして投入するのだという。

 米トレーサビリティ制度は、事故米事件をきっかけに法制化されたもので、精米だけでなく酒、せんべいなどすべての米加工品を扱う業者に取引相手、数量、産地などの記録を義務づけるほか、原料となる米の原産国も表示させ、違反すれば罰金を科す制度。来年10月からスタートする。対象業者数は「米穀卸から加工業者や小売店、飲食店まで全国160万業者に及び、担当職員からは早くも『全業者をチェックするのは難しい』との声が漏れ」ているという。

 当たり前だ。事件の原因がごく一部の悪徳業者と農水出先のなれ合いと癒着にあるというのに、国民の不安を逆用して新たな制度と組織を作って人員を温存しようとすること自体、問題のすり替えにすぎない。なおかつ、米飯を提供する末端の飲食店までも含む膨大な数の業者に記録や表示を義務づけて過大な負担を強いつつ、米と米加工品の全流通過程を国の監視下に置こうというその「ジョージ・オーウェルの世界」的な発想が狂っていて、本当にそんなことをしようとすれば何万人もの職員が必要になろう。民主党が過去にこの制度創設に賛成したのかどうかは知らないが、このような愚劣な超管理主義的な制度は徹底的に見直すべきではないか。

●国家公務員の65%が地方に

 読売によると、農水省は03年7月の食糧庁廃止に伴い、その出先機関である全国47の食糧事務所も廃止した。ところがそれと同時に、その直前に起きたBSE問題を口実に、食の安全を担うとして「消費・安全局」を新設、食糧事務所にいた約8000人の職員をそのまま現在の農政事務所に異動させた"実績"がある。

 消費・安全局があるなら、そこで米トレーサビリティも扱えばいいのではないか。あるいは、その機能を「消費者庁」に移して、そこに少数精鋭の米ポリスを配置して、米穀卸業界の名だたる悪徳業者やその予備軍を集中的に監察すれば事足りるのではないか。いずれにせよ、民主党は8つの地方農政局そのものを廃止するだろうから、農水省の姑息な生き残り策は成り立たないはずだ。

 また地方分権との関わりでは、自民党と公明党は「道州制の導入」を掲げてきたが、安易にそれをすると中央省庁は現在の地方農政局などのブロック別の出先機関を国と道州とのブリッジとして存続させようと画策するに決まっている。まず国の出先を「原則廃止」した上でないと、道州制は導入すべきでない。だから民主党は道州制は要らないとは言わないが、それを地域主権国家づくりの起点にしようとはしていないのである。

 農水に限らず、組織の数だけ減らして人員は減らさず、また事件が起きると権限を拡大して新たな組織を作って人員を横滑りさせるという官僚機構の"改革偽装"は、徹底的に叩きのめす必要がある。国家公務員約33万人のうち約65%は地方出先機関にいて、その全部とは言わないが、かなりの部分は専ら税金の無駄遣いを仕事にしている。出先を廃止すれば自動的に国家公務員数は3分の1に減る。その人件費だけでなく、福利厚生と称して高価なマッサージ・チェアを買ったりハイヤー・タクシーを使い放題にしたりする途方もない無駄遣いや、さらに周辺の外郭団体や関連企業に湯水のごとく金を垂れ流している泥沼構造を断ち切れば、財源などいくらでも沸いてくる。いくつかの試算によると、その総額は20〜30兆円に及ぶと推計されている。

 官公労を支持基盤の一部とする民主党にそんなことが出来るのかと訝る向きもあるけれども、一方では民主党はそこに踏み込めないなら「地域主権国家」論を掲げている意味はないし、他方では官公労は自ら内発的=自己切開的に改革を推進しないのであれば、単なる既得権益擁護の退嬰的集団として追い詰められて、かつての国労のようにミジャミジャに解体されることは見えているので、結局は民主党主導の国家公務員削減に追随せざるを得ないだろう。▲

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