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INSIDER No.507《ELECTION》民主、300議席に迫る勢いで最終盤へ──自民は壊滅・分解の危機に直面

 公示と同時に終盤戦に突入した総選挙だが、各紙誌の最終予測はおおむね一致していて、民主優位の流れは残り10日間では覆りようもなく、300議席に迫る勢いのまま投開票日を迎えるだろうと見ている。

 20日付朝日新聞は1面トップで「民主、300議席うかがう勢い/自民苦戦、半減か」と最新の調査結果を伝えた。全国300の小選挙区から都市型・中間型・地方型の3類型のバランスを考慮して各50ずつを選んで電話で聞き取り調査をしたもので、その結果、民主は単独過半数を大きく超えて300議席台をうかがう勢いであるのに対して、自民は選挙前の300議席の半数にも届かず、それよりさらに大きく後退する可能性があることが分かった(詳細は21日付)。

 また19日発売の週刊文春では、特に終盤の予測が的確なことで定評のある宮川隆義=政治広報センター社長が「民主291議席vs自民128議席」という数字を弾いており、朝日の結果とほぼ一致する。もちろん選挙だから何があるか分からず、実はその数字も、民主=291+40−70、自民=128+67−41、すなわち民主が220前後に止まり自民が200近くまで巻き返す可能性も絶無ではないことを示しているが、しかしそのような逆流が生じる可能性はほとんど皆無であり、仮に生じたとしても自民は200に届かないということである。もはや政権交代は必至と言える。

●10道県で自民全滅?

 宮川の予測では、「自民全滅県」は北海道、岩手、福島、山梨、新潟、長野、愛知、滋賀、岡山、沖縄の10道県に達する。北海道では、12の選挙区のうち10区で小林千代美(民主)が△、町村信孝=元官房長官が▼で劣勢ながら争っているだけで、他の11選挙区ではすべて民主候補が○となっている。福島県では、2区の話題の"刺客"大田和美(民主)はじめ3〜5区まで民主が○で、1区のみ民主△、自民▼である。岡山県では、1区の逢沢一郎はじめ5区までの自民全員が▼もしくは×で、3区では平沼赳夫=元経産相も▼である。

 全滅は免れても全県で1議席確保がやっとかもしれないというところも少なくない。宮城県では、1〜6区のうち3つで民主が○、2つで△で、6区だけは自民が社民を抑えて○となっている。栃木県では、自民は5区の茂木敏充=元金融相だけが○で、1区で船田元が×で民主の石森久嗣に○を譲っている。2区も民主○、3区はもちろん渡辺喜美=元行革相が事実上の無競争で○、4区の山岡賢次=民主党国対委員長も「一度やらせてみて下さい!」と訴えて○である。群馬県も、自民で安泰なのは5区の小渕優子=現少子化担当相だけで、1区の尾身幸次=元財務相が▼、2区の笹川尭=自民党総務会長が×、3区の谷津義男=元農水相は▼と、大物が軒並みピンチで、4区の福田康夫=元首相でさえ▼である。

 大物もしくは有名人ということで言えば、東京都では、1区の与謝野馨=財務相が×、2区の深谷隆司=元通産相が×、3区の石原宏高=慎太郎三男が×、5区の佐藤ゆかり=元自民党副幹事長はもちろん×、自民党総裁の座を争ったことのある8区の石原伸晃=自民党幹事長代理、10区の小池百合子=元防衛相でさえも▼である。石川2区の森喜朗=元首相は民主の刺客=田中絵美子に追われて▼。岐阜1区では野田聖子=消費者担当相が×。静岡7区では、城内実(平沼G)△、斉木武志(民主)▼の争いとなっていて、片山さつきはすでに脱落で×。京都1区では伊吹文明=元幹事長が×、同5区でも谷垣禎一=元財務相が小原舞(民主)に煽られて▼。広島4区では中川秀直=元幹事長が▼。九州に飛んで、福岡2区の山崎拓=元自民党副総裁、3区の太田誠一=元農水相はすでに×で、7区の古賀誠=自民党選対本部長代理は▼、8区の麻生太郎=首相も○ではなく△に止まっている。長崎2区では久間章生=元防衛庁長官が×。

 公明党を見ると、東京12区の太田昭宏代表は俄仕立ての民主の刺客=青木愛に攻められながらも△。大阪16区の北側一雄=幹事長は▼、兵庫8区で田中康夫の挑戦を受けて立った冬柴鐵三=国交相はすでに×で田中が○。こうした状況で、公明党は前回8小選挙区で持っていた議席を3議席程度にまで落とす可能性があり、その分を比例で多少挽回しても選挙前31議席を3議席程度減らすことになりそうである。

 その他の党派は余り大勢に影響がない。宮川予測では、共産は2増の11、社民は7で現状維持、国民新は1減で4、新党日本は田中に加え東京11区で△の有田芳生が上がれば0から2に。みんなの党は渡辺のみ、平沼Gは平沼本人が▼で当選は城内1人かもしれず、いずれも政界再編のインパクトになるにはほど遠い。改革クラブは0、「幸福」はもちろん0である。

●20年は立ち直らない?

 宮川隆義は、この予測についてのコメントで述べている。「自民党は政権に復帰できるでしょうか」と自民党議員や関係者から聞かれることが多いが、私の答えは決まっていて「できません。少なくともあと20年はムリです」。本当を言うと20年どころか、このまま自民党が露と消えるかもしれない、とさえ思っている、と。

 これは負けすぎである。檄論檄場TVでの対談で二木啓孝が言っていたように、自民党にとっての防御ラインは180議席で、その程度の負け振りであれば、気を取り直して4年後に捲土重来を期そうということにもなるが、150を大きく割り込むのでは、その気が起きないどころか、バランバランになって事実上の解体し「露と消える」ことすらありえよう。これは「政権交代可能な政治風土を醸成する」という時代の課題から見て望ましいことではなく、自民党としては、せめて150程度は確保して、しかも保守再生に必要な中堅・若手を中心とした人材を比例重複でも何でもいいから1人でも多く残すような「負けの形」を作ることが、最終版の唯一の戦略となる。

 こういうことになってきた要因の第1は、麻生の不決断である。当初の想定通り、就任直後の昨年10月に解散を断行していれば、再生が危ぶまれるほどの負けに陥ることはなかっただろう。宮川の指摘で興味深いのは、田中角栄=元首相が「連続当選の途中で落っこちた奴は、総理にしちゃダメだ」と語ったというエピソードである。落選経験のトラウマがある政治家は、土壇場で足が竦(すく)み、解散に踏み切れないで道を誤る危険があることを角栄は見抜いていた。「麻生首相は戦後初めて、『途中で落っこちた』経験のある首相だった」(宮川)。それを助長したのが、"迷軍師"と言われる菅義偉=自民党選対副委員長の一貫した「解散先送り」論に基づくアドバイスであったことは言うまでもない。延ばせば延ばすほど酷い結果となることは、客観的には明らかだったが、麻生や菅にはそれが見えていなかった。

 第2に、自民党の支持基盤の驚くべき劣化である。同党の伝統的な支持基盤である郵便局長会が一挙に民主・国民新支持に転じたり、医師会が茨城県で丸ごと民主に乗り換えたり、農協の一部が自民離れを起こしたり、目を覆わんばかりの状態を呈している。本論説で前に述べたように、自民党は93年宮沢政権で一度死んだが、翌年、自社さ政権という奇計を以て蘇生し(ゾンビ1)、01年森政権でもう一度死にかけたが小泉=田中真紀子の変人・奇人コンビで再蘇生したものの(ゾンビ2)、そこではもはや自民党総裁自らが「自民党をブッ壊す」と呼号する以外に政権維持の方策はなかった。その後には、小泉が残した「300議席」の遺産を活かしつつ、小泉改革の疑似性を克服してそれをまともな軌道に乗せて行くことで21世紀に生きる道筋を見いだすべきだったにもかかわらず、実際には、安倍の偽改革、福田の非改革、麻生の反改革と退嬰化を重ね、麻生に至っては「小泉改革を否定し、元の自民党に戻す」と公言する有様で、これでは国民が自民党を見放して改革の旗を民主党に委ねようと思うのは当たり前である。その意味では、小泉の疑似改革性がはらんだ矛盾がこのような形の破綻を招いたとも言える。

 第3に、小選挙区制の効果である。4年前の郵政選挙の総括で、INSIDERは「今回自民党に起こったのと同じことが4年後には民主党に起こる」と指摘したが、まさにその通りのことが起ころうとしている訳で、驚くことは何もない。前回、小泉マジックに騙されて自民党に投票した無党派層ばかりでなく自民党支持層も、恐らくは3割が自民離れを起こして民主に入れることは、週刊現代の分析モデルからも、都議選や静岡県知事選の結果の解析からも、明らかであって、それはこの選挙制度の下では、雪崩現象を引き起こすに十分すぎるほどの票の移動となる。

 民主党にとっては勝ちすぎが問題となる。安倍・福田・麻生3代の反改革の流れを逆転させる後始末の策を次々に打ち出しつつ「最初の100日間」を突っ切ること、来年の参院選で再び圧勝して政権の基盤を盤石にすること(宮川は、民主党政権は次の国会で参院の定数是正を行い、2人区を1人区にし、その「新1人区」を民主が独占するので、自民は立ち直れないほど壊滅する、と言っている)、そして4年後にはたぶん、中央集権国家の解体と「地域主権国家」への大変革のプランを掲げてそれを中心争点とした総選挙でさらに圧勝することが課題となるだろうが、その間、大勝に驕って下らない事件などを引き起こせば、細川政権の二の舞に終わる。その鍵は、鳩山が小沢をどう使いこなすかで、小沢には当面、直ちに参院選準備に取りかかりつつ、100人を超えて出てくる「小沢チルドレン」の教育を担当して貰いながら、小沢流「日本改造計画」と旧民主党以来の鳩山流「友愛革命路線」とを巧みに接合して「地域主権国家」すなわち日本的な市民社会創造の一大変革プランへと昇華していくことが必要になろう。民主党が「地域主権国家」ビジョンを掲げれば、公明党は同調することになる。▲

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