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INSIDER No.495《SHIMBUN》新聞もテレビも、もう要らない?──4つの雑誌の特集を拾い読む

 『リベラルタイム』7月号が「いらない!新聞・テレビ/つまらない新聞・テレビは見たくない!」、『クーリエ・ジャポン』7月号が「サヨナラ、新聞ジャーナリズム」、『週刊新潮』が先週から始めた「新聞業界最大のタブー“押し紙”を斬る!」連載、『週刊東洋経済』6月13日号が「大激震!電通vsリクルートvsヤフー」と、マスメディアの未来を占う雑誌の特集が相次いでいる。以下、主に新聞とウェブについての部分の拾い読み。

●朝日新聞は経費155億円を削減

 『リベラルタイム』によると、朝日新聞社は昨年9月中間連結決算で最終損益103億円の赤字、営業損益も5億円の赤字で、両方が同時に赤字となったのは史上初。5月14日に開かれた同紙OBの集まり「旧友会」で挨拶に立った秋山耿太郎社長は「いま今年度の予算を策定しているが、困っている」と言いつつ、次のように述べた。

(1)広告収入はこのところ、毎年100億円ずつ減少していたが、昨年のリーマン・ショックを契機に急減。08年度は200億円の減収になった。
(2)このため、今年度は経費を155億円削減する計画で、“聖域”といわれる販売経費も60億円削減する。
(3)用紙代を削減するために、新聞の頁建ても36頁から32ページに減らす。
(4)タクシーチケットを全廃したほか、ゴルフの会員権も売却中だが、年金の補填額が260億円必要で、さらなるコストカットが必要。
(5)今年夏の賞与は平均40%カット。役員賞与はゼロで、報酬も今年4月から社長は45%、常務は30%、取締役は25%、役員待遇は20%のカットを実施している。
(6)これからはOBの皆さんの年金を引き下げることになるかもしれない……。

●“押し紙”という偽装ビジネス

 『週刊新潮』の連載第1回によると、新聞各社が販売店に本当必要な部数以上に押しつけて卸している“押し紙”は平均で公称部数の約4割に及ぶ。滋賀県の大津など5市で25万世帯を対象に行われた調査では、読売18%、朝日34%、毎日と産経は57%だった。

 ある読売販売店の場合、配達する朝刊約7000部に対して新聞社が搬入する部数は8750部。残りの1750部は梱包を解かれることもなく倉庫に山積みされ、週に1度、古紙業者の4トントラックで積み出される。その1750部の分は販売収入はもちろんないが、その分も含めた卸し代金が新聞社から請求される。新聞の販売収入は、新聞社と販売店でおおむね折半するが、それで押し紙分も支払わされたのでは販売店は成り立たない。ところが販売店には折込チラシの収入がある。折込チラシの枚数は原則として新聞の公称部数と同じだから、販売店は8750部の分の料金を手にするが、実際には押し紙の分は折り込まずして料金だけを騙し取り、その分のチラシも倉庫に放り込まれる。チラシの水増し請求分と、押し紙の分の新聞とチラシの古紙回収代金が販売店の収入となり、それで新聞社に払う水増し請求分を相殺するのだが、相殺しきれない場合は新聞社が“補助金”で埋める。それが「販売経費」である(朝日がそれを60億円も削減したら、ますます押し紙が利かなくなる)。

 そうまでして新聞社が公称部数を膨らませるのは、広告媒体としての価値を高値で維持するためである。食品はじめ他の業界や企業の“偽装”を居丈高に糾弾する新聞が自分は陰でこんなことをやっているのだから話にならない。さらに、「地球環境に優しく」とか社説を掲げたりキャンペーンを張ったりしても、大量の押し紙とチラシを廃棄して紙資源をむざむざ浪費していることへの反省もない。それでいて、部数偽装のことは知れ渡っているから、公称部数で設定された正規の料金を払う広告主などいないし、不況になって広告主が激減している今はますます値崩れが激しくなって、この偽装ビジネスモデル自体が崩壊に瀕しているのである。

 筆者の黒藪哲哉は「新聞販売黒書」というサイトの主宰者で、読売新聞社との間で裁判係争中。
http://www.geocities.jp/shinbunhanbai/

●消費者に高値を強制する「再販制度」

 押し紙は主に新聞社と販売店と広告主の三すくみゲームだが、その前提になっているのは、公正取引委員会から“特殊指定”で許されている「再販制度」——再販売価格制度すなわち値引き販売禁止の仕組みによって宅配制度が維持されていることである。『リベラルタイム』でビデオジャーナリストの神保哲生は、これを「日本のメディアが抱える深刻な構造問題」の3つのうちの1つに挙げて次のように論じている。

▼商品の値段は市場原理によって決まるのが原則だが、特殊指定を受けている新聞の価格は新聞社が指定した値段で売ることが出来、そのおかげで新聞社は価格競争に晒されずに安定的な経営を行って「国民の知る権利」を担保しているのだと彼らは言う。

▼が、今の新聞社の経営を優遇すべき必然性を、どれだけの人が感じているだろうか。さらに、自由競争になればいまよりも安価で売られるべき新聞を、再販制度の下で、消費者があえて高い値段を支払うことでその経営を支えているという事実を、どれだけの消費者が知っているだろうか。

▼紙面は各紙とも大半が記者クラブ発の横並び記事で埋め尽くされ、たまに独自ネタがあるかと思えば、権力におもねる記事や、大衆を煽動するヒステリックな記事ばかり目につくと感じるのは、私だけだろうか。

▼今日の新聞社の現状は、公共的なジャーナリズムの担い手というよりも、むしろ「巨大娯楽産業」であり、特別に保護すべき正当な理由があるだろうか。

 神保は、「構造問題」として、さらに、新聞5大紙による民放テレビのキー局の系列化(多くの先進国では制限・禁止されている)、記者クラブ制度(再販=宅配制度があるから紙面で勝負しなくても売上げには関係ないので横並びに流れる)の2つを挙げ、それらが絡み合って今日の堕落を招いたと指摘している。

●急減するマス広告

 『週刊東洋経済』によると、今年4月の媒体別広告売上高は前年同月と比べて、新聞29%減、雑誌28%減、テレビ18%減、ラジオ13%減(電通調べ)という土砂降り状態となった。

 こうした中、マス広告の覇者=電通は1兆8871億円を売上げながら営業利益はわずか431億円、106年ぶりに最終赤字に転落した(3月期連結決算)。それに対してリクルートは、同じ広告を本業とすると言っても、読者の関心に絞った自社の出版媒体に販促型の広告を集めるという新しいモデルを展開、1兆0839億円を売り上げて電通の倍以上の1131億円の営業利益を上げている。またネット広告でダントツのヤフーは、売り上げこそ2657億円だが、営業利益は電通やリクルートより高い1346億円である。現在は、ネット広告も減少に転じているが、長い目で見れば将来にわたって上昇傾向が続くと見られており、企業業績が回復した際には、マス広告は少ししか回復せず、ネット広告が大きく伸びることになるだろう。

 しかしヤフーの広告ビジネスにも死角はあって、「独り勝ち」しすぎて自分の首を絞めることになりかねない。というのも、ヤフーの集客力の中心は1日200万人超を集めるヤフーニュースだが、そのコンテンツを作るのは自社ではなく既存の新聞社はじめメディア企業。彼らが収益基盤をネットに浸食されて体力を消耗すれば、コンテンツの品質が下がって客が離れていく。「ヤフーの収益力を既存媒体に還元する仕組みを強化する」ことで「共存光栄」を図ることが課題だと同誌は指摘するが、しかしヤフーが収益の一部を回したくらいでは新聞社など既存メディアが立ち直ることはないだろう。

●瀕死状態の米国の新聞

 『クーリエ・ジャポン』の特集のトップを飾るのは、ポ−ル・スター=プリンストン大学教授の米オピニオン誌『ニュー・リパブリック』への寄稿である。

 それによると、新聞業界は近年、インターネットの発展、広告収入の下落、購読者数の長期的減少によってその存立が危ぶまれてきたが、そこに今回の不況が襲って、いまや崩壊寸前に追い込まれている。昨年末時点で新聞業界の広告収入は3年前と比べて25%減少し、さらに09年に17%、10年に7.5%減る見通しである。各新聞社は編集者や記者の削減、ページ数や取り扱うニュースの幅の削減、特集記事の廃止などで対応しているが、それでも間に合いそうにない。

▼ロサンゼルス・タイムズ紙は、人員削減で記者数を半減させた。
▼同誌の親会社でシカゴ・トリビューン紙も傘下に持つトリビューン社は、昨年12月破産法適用を申請した。
▼サクラメント・ビー紙やマイアミ・ヘラルド紙など全米30紙を傘下に置くマクラッチー社も、この1年間で従業員を4分の1解雇した。
▼ニュージャージー州最大の日刊紙スター・レジャー紙は昨年10月、編集局の人員の45%を早期退職させた。
▼あのニューヨーク・タイムズ紙でさえ、手元資金が細り、信用格付けが引き下げられた。
▼新聞社の株価はこの1年間に平均で80%以上、下落した。

 特に削減の影響がが著しいのは、海外ニュース部門と政治部門である。

▼02年〜06年の間に米国の全新聞社の海外特派員の数は30%減少した。
▼この3年間に全米の新聞の3分の2が国際ニュースの扱いを減らした。
▼フィラデルフィア・インクワイラー、ボルティモア・サン、ボストン・グローブのいずれも名門3紙は、ここ3年間ですべての海外支局を閉鎖した。
▼トリビューン社は、傘下のロサンゼルス・タイムズ紙、シカゴ・トリビューン紙などのワシントン支局を1つに統合し、支局員を3分の1にした。
▼コックス・ニュースペーパーズ社は、傘下のアトランタ・ジャーナル紙など17社の記者30人がいた共同のワシントン支局を今年4月に閉鎖した。
▼ニュージャージー州のスター・レジャー紙は、州都トレントンに置いた13人の記者を4人に減らした。
▼同州で新聞6紙を発行するガネット社は、州行政担当の記者を6人から2人にした。

 さらに科学欄、文化欄、書評欄も削られる中で、各紙が少しも削っていないのは地域の出来事・情報を伝える地域欄である。この動きはハイパー・ローカリズムと呼ばれるが、街ネタしか提供しない新聞は早晩、国際ニュースや文化情報に関心を持つ比較的富裕な読者層や、その層を相手にしたい広告主から見放され、新聞のフリーペーパー化が起きるだろう。

 こうした中で、全部または一部をネットに移行する新聞も多い。

▼クリスチャン・サイエンス・モニター紙は、紙印刷は週刊とし、毎日のニュースはネットだけにした。
▼デトロイトの日刊紙2紙は、宅配を木・金・日曜だけにし、他の日はオンライン版とスタンド用のスリム版を販売している。
▼ニューヨーク・タイムズ紙も、週末だけの宅配購読の勧誘に力を入れている。

●新聞が死んだ後に

 新聞がそのままネット上に身を移して生き残ることは可能なのか。スター教授は「現時点では、紙媒体を廃止しウェブに完全に移行することは自殺的行為」だと言う。クリスチャン・サイエンス・モニター紙がそうしたのは、同紙が教会の資金で成り立っていて、特定の地域市場との結びつきがないからで、これは特殊ケースである。ウェブに完全移行すると、コストを40%削減できるが、収入の90%を失うのが普通である。

 他方、ウェブ上のニュースサイトは、新聞はじめ他のニュース媒体からニュースを集めたものがほとんどで、独自の取材で記事を書いていない。市民記者が書く場合もあるが、プロの仕事には及ばないし、特定団体のプロパガンダが混じる危険もある。プロ記者を多数抱える大手ジャーナリズムの仕事を、個人の自発的参加によるマス・コラボレーションで実現することは難しい。

 とすると、代替するものが現れないうちに新聞が消えてしまうこともありうる。1つの打開策は、政府の補助金でニュースという公共財を支えることで、例えばフランスのサルコジ大統領は18歳以上の仏国民に、好みの日刊紙を1年間無料で購読出来る計画を実施に移した。もう1つは、ジャーナリズムを「寄付で賄う」という発想で、言わば「NPOジャーナリズム」である。

 それには3つの方向性がある。第1は、新聞社を商業ベースでなくNPOに移行して寄付金ベースで存続させることで、熱心な読者の中には単なる購読料だけでなく寄付をしてでも愛読紙を支えようとする人もいるかもしれないが、これを実行したところは未だない。

 第2は、特定のジャーナリスト集団を慈善事業でサポートする方法で、有名なのは「プロ・プブリカ」である。これは、元新聞記者たちが「公益にかなう調査報道を行う独立系かつ非営利のニュース編集室」を作り、その趣旨に賛同した篤志家が個人で毎年ポンと寄付を行うパトロン型。記者たちは時間と費用をかけた調査報道記事を作成し、新聞社などに提供する。

 第3は、ウェブ環境に相応しい新しいジャーナリズムの開発に資金を提供するもので、「センター・フォー・インディペンデント・メディア(CFIM)」の場合は、資金提供者70人から集めた年間400万ドルでワシントン・インディペンデントなどのニュースサイトの運営をサポートしている。将来の成功を先取りしたベンチャー投資型と見られるが、自身の財政基盤を持たないでは、たった1回の訴訟で運営が行き詰まることにもなりかねない。

●独立系ニュースサイトの成功例

 『クーリエ・ジャポン』の特集には他にもいくつかの記事があり、そこではすでに投資資金や広告収入で維持できている独立系ニュースサイトの例がいくつか出ている。

▼ポリティコ
 銀行業で資産を築いた資産家の御曹司で新興メディア王としても頭角を現しているロバート・アルブリットンがベンチャー企業として創業した。編集の中心は元ワシントン・ポストのベテラン記者2人で、ワシントンの政治の動きについてのニュースや著名ブロガーのコメントをネットと紙媒体で繰り出していく政治専門サイトとして、オバマ選挙を通じて急伸した。08年9月のユニーク・ユーザー数は460万に達したが、選挙後はだいぶ落ちている。しかし創業者は今年中にも黒字化すると見通している。今は紙媒体の広告料が主な収入だが、今後ウェブ広告を増やしていくという。

▼ハフィントン・ポスト
 もう1つ、オバマ選挙を通じて成功を収めた政治中心のブログサイト。05年にギリシャ系女性ジャーナリストのアリアーナ・ハフィントンと元AOL役員のケネス・レーラーが立ち上げ、徹底したブッシュ政権批判と独自スクープの連発で月450万以上のユニーク・ユーザーを集めるようになった。ベンチャー投資家の資金が推進力になっている。

▼ドラッジ・レポート
 30歳までコンビニでバイトをしていた高卒ニートのマット・ドラッジが、父親に買って貰ったパソコンで98年に始めた個人サイトで、こちらは共和党支持の保守派。クリントン大統領のモニカ事件をタレコミでスクープしたり、CBSテレビの大ベテラン=ダン・ラザーが番組で暴露したブッシュの徴兵逃れの証拠文書を“偽造”だと指摘してネットで包囲網を形成、ダンを降板に追い込んだことで有名になった。ユニーク・ユーザー数は200万。

 ドラッジのケースは、幸運にも恵まれてマス・コラボレーションが成功した希有な例だが、プロ・プブリカ、CFIM、ポリティコ、ハフィントンなどは、志を持った資金元とプロのジャーナリスト集団がそれぞれ独特の形で結合して始まった実験と言える。さて、我がTHE JOURNALは日本のネット報道局として独自の展開の道を切り開くことが出来るのかどうか。▲

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