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2009年4月30日

INSIDER No.488《OZAWA》小沢が応援した河村がなぜ名古屋市長選で圧勝したのか?──千葉と秋田の県知事選は小沢のせいで負けたはずなのに…

 マスコミの挙国一致的な論調によれば、あらゆる世論調査で「小沢一郎代表は辞任せよ」の声が6〜7割を占めていて、にもかかわらず小沢が辞めずに居座っていることが民主党に影を落としていて、千葉と秋田の県知事選で同党推薦候補が“連敗”したのはそのせいだということになっていた。だとすると、26日投開票の名古屋市長選に小沢を先頭に鳩山由紀夫幹事長や菅直人代表代行がこぞって応援に入って河村たかし=前民主党衆院議員が圧勝したのはどういう訳なのか。

 27日付読売は河村勝利を「連敗ストップ、民主安堵/小沢氏進退“先送り”の声」との見出しで、党内に「小沢問題の影響は少なく衆院選もこのまま戦える」vs「衆院選で接戦になれば党首のイメージが当落を左右するので早く交代を」という意見対立があると伝えている。また産経は「小沢秘書が逮捕・起訴された後、千葉、秋田両県知事選で敗れた民主党は連敗に歯止めをかけた……ものの、小沢氏の代表進退問題は引き続き、同党に影を投げかけている」と論評した。毎日も同じで「連敗していただけに一息ついた形」だが、小沢辞任論の沈静化にプラスと見る執行部と、もともと勝てる選挙で、みそぎにはならない」という若手の意見が分かれていると指摘している。

 つまりマスコミは、小沢が応援に行ったにも関わらず(?)河村が圧勝したのは何故なのか——河村は十分な個人的魅力があって「もともと勝てる選挙」だったので、小沢が応援に行って多少とも票を減らすことがあったとしてもやっぱり勝ったのか、小沢が行かなければもっと票を取ったのか、それとも小沢のお陰で多少とも票を増やしたのか、どちらでもなく小沢効果はプラスにもマイナスにも働かず関係なかったのか等々について何ら真剣な分析も評価もしないまま頬被りして、それでもなお民主党内に「小沢辞任論」がくすぶっていることを取って付けたように必ず付け加えて、何とかして小沢辞任への流れを絶やしたくないという思いを紙面に滲ませたのだった。

●何でも小沢のせい?

 そもそも、千葉と秋田の県知事選は民主党にとって「もともと負ける選挙」だったのであり、勝てる選挙だったのに小沢問題のせいで負けたしまった訳ではない。

 千葉の場合は、千葉市やそれ以西の市川、習志野、松戸、柏など東京ベッドタウン的な各市の“千葉都民”が県人口の8割ほども占めていて、その人々の間で圧倒的知名度を誇る森田健作が圧勝するであろうことは最初から予測されていた。それに対して民主党千葉が迷走の末に擁立したのは、ローカル鉄道を立て直した経営者で、立派な人物ではあるが地元以外はほとんど知られておらず、及ぶべくもなかった。

 秋田の場合は、自民党、社民党、連合が支援した佐竹敬久前秋田市長が勝利したが、民主党は本来、佐竹を擁立してしかるべきであったのが地元事情でそうならず、民主党と連合・社民党とがネジレてしまう形となり、結果は見えていたのであって、小沢問題で負けた訳ではない。

 ところがマスコミは、産経を例にとれば「秋田県知事選で民主党県連が支持した候補が敗れたことで、同党にとっては先の千葉県知事選に続く大型地方選での“連敗”となった。西松建設の巨額献金事件が、選挙戦に影を落とした格好だ。小沢氏の進退問題は、党の屋台骨を揺らし続けている。野党分裂選挙となったため、小沢一郎代表の辞任論が直ちに噴出することはないとみられるが、次期衆院選への悪影響への懸念は根強い」という調子で伝えた。

 ここでもマスコミは、両知事選が民主党にとって「もともと負ける選挙」であったことには触れず、従って小沢問題が本当のところどう影響したのかについてきちんとした分析をすることもなく、ただ何となく「小沢のせい」で負けたかのような印象を作り出そうと腐心したのである。小沢問題がそれほど「選挙戦に影を落とし」、従って「党の屋台骨を揺らし続けている」ほどであるのだとすれば、名古屋市長選ではその点はどうだったのか説明しなければ辻褄が合わないのではないか。

 改めて産経はじめマスコミに問いたい。千葉・秋田の“連敗”に小沢問題が「党の屋台骨を揺るがすほど」の深刻さで「影を落とし」ていたというのが本当ならば、名古屋市長選では何故そうではなかったのか。これにまともに答えられないのであれば、今後一切、単なる気分だけで、何もかも「小沢のせい」であるかに言うのを止めて貰いたい。

●民主優勢の地合いは不変

 実際には、民主優勢、自民劣勢の趨勢の下で政権交代を賭けた総選挙に向かっているという政局の流れは、基本的には変わっていないのではないか。

 3月29日の都下・小金井市議選では、民主公認3人全員が上位当選、得票率を10.6%から13.4%に伸ばした。「逆風はほとんど感じなかった」と当選者。また4月5日と12日、小平と日野の市議補選でも民主党系候補が勝利している。これについて都政新報社の吉田実編集部長は「サンデー毎日」5月3日号で「小沢秘書逮捕の影響は限定的で、むしろ麻生政権への不満から政権交代を望む有権者が予想以上に多いことが裏付けられた。小沢アレルギーはほとんどなく、民主には依然追い風が吹いている」と指摘した。

 朝日新聞20日付の「地方選党勢分析」によると、今年1月から4月12日までの44市議選で、自民公認は86から79へ議席を減らし、無投票を除く得票率も0.1ポイント減らしたのに対し、民主は40から54に議席を増やし、得票率も2.6ポイント伸ばした。もちろん個々には、民主党が苦戦もしくは伸び悩みを示した選挙もあるが、全体として、小沢問題が同党の「屋台骨を揺らしている」と見るべき証拠はどこにもない。

 その延長で7月都議選を上述「サンデー毎日」が予測したところでは、自民=現有48議席→45議席、公明=22→23で与党計=70→68に対し、民主=34→42、共産=13→12、生活者ネット=4→3、その他=4→2で野党合計=55→59で、与野党逆転はないが議席差は15から9に縮まる。さらに「週刊朝日」5月8日号の衆院選予測では、森田実は自民=304→220、公明=31→30で与党計=335→250に対し、民主112→195で野党計=135→221、政権交代なしと見るが、もう1人の野上忠興は自民=304→203、公明=31→30で与党計=304→230、民主=112→217で野党計=241と、与野党逆転ありと見ている。

 さすがに、今年1〜2月に麻生内閣支持率が急落した頃のように「民主、単独過半数もありうる」といった予測は成り立ち得ないが、それ以前、昨年11〜12月頃に言われていた、民主が相対第1党となり自公は合計しても過半数は確保できないかもしれないという力関係は今も基本的に維持されていると見るべきである。ましてや、仮に自公が健闘して過半数を確保した場合でも、衆院再議決に必要な280議席を得ることは100%あり得ず、政権は麻痺状態に陥っていくのが目に見えており、全体として自民党が追い込まれる中での総選挙となることに変わりはない。

●世論調査の怪しさ

 マスコミの「小沢辞めろ」コールの有力根拠となっているのは世論調査だが、その世論調査の怪しさについて24日付朝日が自ら検証する編集委員2人と宮崎哲弥の座談会を載せている。それによると、

▼回収率がひどく下がっていて、80年代半ばまでは80%あって当たり前だったのが、今は面接調査でも60%、RDD(コンピューターでランダムに番号を抽出する)方式の電話調査では不在だった世帯をも分母に加えた実質的な回収率は50%に満たない惨状で、これでは誤差の計算も出来ない。
▼RDDでは家庭用の固定電話しか対象に出来ないので、携帯しか持たない人が多い若者層の回答に隔たりが出る。
▼対象者が知らないことを突然質問することが多く、そのため質問の前に長々と説明するが、そこに誘導的な言葉が入り込む危険があり、結果を操作しうることになる。
▼あいまいな回答をした人に「重ね聞き」して無理にイエスかノーに振り分けてしまうのも一種の誘導になる。
▼質問の表現1つで対象者の心理に影響を与えることもできる。「このたび福田内閣は改造しました。あなたは福田内閣を支持しますか」と尋ねた場合と、前置きなしに「福田内閣を支持しますか」と尋ねた場合を比べると、前者の方が「改造」への評価が加わってどうしても支持率が高く出る。
▼前の質問が次の質問に影響を与える「残留効果」もある。

 ——などの問題点が指摘されている。だから「調査をする側も調査結果を受け止める側も、数字の表面だけ見て右往左往することのないよう心掛けなければならない」と朝日は言うが、麻生内閣支持率急落という場合も、小沢辞任要求急増という場合も、自社の主張に都合のいいような数字を世論調査に求め、結果が出るといかにも客観的データであるかに装って一面トップで大々的に扱い、それに煽られるようにして主張をさらに強めていくといった自慰的なスパイラルに嵌っているのは新聞自身ではないのか。

●オロオロするな民主党

 こういう時こそ民主党はしっかりと戦略的な大局観を持って、政権交代の実現に立ち向かうべきである。小沢は「明治から100年の官僚体制を打破する。それを私は革命的改革と言っている」と宣言している。官僚体制の裏も表も知っている小沢にそれこそ剛腕を発揮してそれを断行して貰うことこそ政権交代の大目的なのであって、それが小沢抜きの政権交代になってしまっては意味は半減する。そのことを、国民の大多数とは言わないが、少なくとも意識の高い人々がよく理解していることは、「THE JOURNAL」はじめ「Yahoo!みんなの政治」や小沢一郎公式ページなどへの書き込みを読めば分かる。

 逆にネットでは、小沢辞任反対論、検察・マスコミけしからん論が溢れ返っていて、それへの反論がほとんど出て来ないことに一種の偏りも感じられるけれども、しかしこの人たちは突然かかってきた世論調査の電話で用意された質問に○×で答えているのでなく、ネット上のそれなりのステージを選んで自分でアクセスして、それなりに論理を立てて意見を述べているのであって、民主党はこういう能動的な世論をこそ支えにしなければならないだろう。新聞の世論調査ごときに騙されてオロオロするなど愚の骨頂である。▲

2009年4月 6日

INSIDER No.487《NORTH KOREA》政府・マスコミ一体のテポドン大騒動のお粗末──「発射」誤報2回で日本の信用はガタ落ちに

 北朝鮮は5日11時30分頃、「人工衛星打ち上げ」用と称するロケットを打ち上げた。まだ正確な追跡データは公になっていないが、ロケットは、ほぼ事前予告通り、37分頃に秋田県の西の沖約280キロに第1段目を落下させた後、第2段目が39分頃に東北地方上空を通過、48分を過ぎて岩手県の東の沖2100キロ以上の太平洋に落下したものと見られる。第2段目の先端に本当に試験用通信衛星が装着され、実際に発射されたかどうかは今のところ不明である。

●ロケットかミサイルか

 同日夕の朝鮮中央通信は、「3段式の運搬ロケット『銀河2号』で人工衛星『光明星2号』を軌道に進入させることに成功した」として、要旨、(1)銀河2号は5日午前11時20分、咸鏡北道花台郡の東海衛星発射場で打ち上げられ、9分2秒後に光明星2号を軌道に正確に進入させた。(2)光明星2号は40.6度の軌道傾斜角で、地球から最短で490キロ、最長で1426キロの楕円軌道を1時間44分12秒の周期で周回している。(3)光明星2号からは「金日成将軍の歌」と「金正日将軍の歌」の旋律と観測データが470メガヘルツで電送されており、UHF周波数帯で中継されている——などと発表した。ロシア外務省筋は「周回軌道に乗った人工衛星を確認した」と語ったが、これは公式発言ではない。

 他方、同じく同日夕に米加合同の北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)と米北方軍司令部は、北ロケットの「第1段目は日本海に落下し、残りの部分は先端部も含めて太平洋に落ちた」と発表、何も衛星軌道に入らず人工衛星打ち上げは失敗だったとの判断を明らかにした。またこの発射は「北米やハワイに対する脅威ではない」と判断し、ミサイル防衛による迎撃などの対応措置は取らなかったことを明らかにした。

 北は衛星が軌道に乗ったと主張するが、米国は打ち上げ失敗と断定するというのは、98年8月のテポドン1号による「人工衛星打ち上げ」の時の図式と全く同じである。米国でさえ捕捉できないものを他の誰かが捕捉できる訳もなく、北が強がりを言っているだけである可能性は高いが、それはともかく、日本にとって最大の懸念であった、本体もしくはその一部が日本領土に落下するといった事故もなく、従ってそれをはたき落とすための海上・陸上のミサイルが発射されることもなく終わったのは何よりだった。

 発射の瞬間、私はちょうど「サンデー・プロジェクト」出演中で、しかもこの日の番組はこの問題1本で、中川昭一前財務相(事件後TV初出演)、民主党の前原誠司副代表、田中均元外務審議官、田岡俊次=軍事ジャーナリスト、森本敏夫拓殖大学教授らをゲストに迎えた討論の最中というタイミングのよさだった。数分後、政府発表に基づいて「発射した模様」とのテロップが流れたので討論は中断、画面が報道局のニュースルームに切り替わって、アナウンサーが息せき切った様子で「北朝鮮が弾道ミサイルを発射した模様です。今のところ日本に着弾したという情報はありません」と述べた。もうほとんど番組時間が残されていない中で「一言どうぞ」と促されたので、私は「先ほどのニュースのように、初めからミサイルと決めつけて、まだ着弾していないというような言い方はよくない」ということだけを指摘した。

 事前に米国防総省筋は「あらゆる観察結果からして人工衛星打ち上げ用のロケットである」と断言し、韓国政府も「ロケットと呼ぶ」と呼称を統一しているというのに、日本だけは政府もマスコミも「ミサイル」と言い続け、しかもこのTV朝日のアナウンサーのように「まだ着弾していない」というような言い方をすれば、「核弾頭でも装着したミサイルが日本に向かって発射されたがまだ命中していない」かのような切迫感溢れる印象を醸し出すことになる。そこに、政府発表と一体化しながら、意図的なのか善意の無知ゆえなのか、不正確極まりない言葉を使って無闇に危機感を煽り立てるマスコミの馬鹿騒ぎぶりの一端が露呈していた。

●日本だけが騒ぎすぎ

 そもそもここに至るまでの日本政府の対応とそれと一体化したマスコミによる煽り立ては度が過ぎていて、ここでもまた西松建設事件でも見られた政府とメディアが一体となって大衆心理を操作しようとする大政翼賛報道のパターンが繰り返されてきた。

 第1に、北が発射しようとし、また実際に発射したのは「人工衛星打ち上げ用のロケット」である。米国も韓国もロシアも、監視データや内部情報に基づいて早くから「人工衛星打ち上げ」であるとの判断を下しつつ、それでもなお何らかの事故によって落下物が自国領土もしくは警戒区域に降りかかってくる事態に備えて事故防止策は怠らなかったものの、日本のように「迎撃だ!」などという大騒ぎは演じていない。宇宙ロケットの発射それ自体は、米国はもちろん、日本、イギリス、フラン
ス、ロシア、中国、インド、イスラエルが繰り返し行っており、さらにイランも今年2月に通信衛星「オミド(希望)」を成功裏に打ち上げていて、北朝鮮だけが行ってはいけないという法はない。しかも今回、北朝鮮は予め、宇宙条約・宇宙物体登録条約に加盟した上、実験期間と予想落下地点を国際民間航空機関(ICAO)と国際海事機関(IMO)に通告するという国際ルールに基づく手続きを踏んでいる。

 第2に、人工衛星であったとしても使われるのはテポドン2もしくはその改良型と見られ、実質的にはミサイル実験であると言えばその通りである。しかし、宇宙ロケットの技術が軍用ミサイルに転用可能なのは当たり前で、それは何も北の場合に限ったことではない。例えば日本が宇宙ロケットの実験をしても軍用ミサイルに転用出来る技術を蓄積することになるのは同じで、ただそれを転用する政治的意図があるかないかの違いがあるだけである。

 第3に、仮に「人工衛星打ち上げ」というのが全くの偽装で、実際には衛星など装着されていないミサイル実験そのものであったとしても、ミサイル実験は、前米ミサイル防衛局長のヘンリー・オベリングによれば「昨年、米国を除き世界で100回ほどのミサイル実験が行われ」ていて(3月27日付朝日、それにしても米国は何度やったのか?)、言わば日常茶飯事で、それ自体は国際法にも国際常識にも反することではない。北の場合、06年7月のミサイル連射(テポドン2は失敗、中短ミサイル速射は成功)に対して国連安保理が出した「ミサイル関連技術開発の禁止」決議への違反ではあるが。

 第4に、何で日本の上空を断りもなく通過するのかという素朴な怒りがあって、それが北朝鮮は危険な国だという前々からの反感をさらに増幅させている。確かに、断りもなく上空を通過させるのは無礼千万だが、一般に宇宙ロケットは、東回りに自転する地球の速度を利用して衛星を周回軌道に乗せるための秒速7.5〜8キロの速度を得るので、東向きに発射するのが普通で、日本も東向きに打ち上げる。またその場合に他国の上空を通過することがあったとしても、領空とは「高度100キロまで」とされていて、それより上を通過するのは国際法的に違法ではない。それにしても挨拶があってしかるべきだし、また思わぬ事故で日本に被害が及ぶ場合に備えて自己破壊装置を取り付けておくくらいの責任感はないのかという問題は残る。

 これらの点を冷静に検討すれば、米韓露がそうであったように、警戒感を持って厳しく監視しつつ、万が一の事故防止策は怠らないという態度をとれたはずである。ところが、発射準備の情報が伝わった途端に自民党のタカ派の中に「撃墜してしまえ!」という過剰反応が噴出、それに煽られる形で麻生太郎首相が率先、05年の法改正で盛り込まれた自衛隊法第82条2の3項に基づく「破壊措置命令」を発動する方向で検討を命じたために、事が大きくなった。麻生には恐らく、ここで毅然たる姿勢を示すことで支持率を回復したいという政治的狙いがあり、当初は迎撃と言われても自信がなく乗り気でなかった防衛省にも、まあ実際には万が一にも日本領土には落ちてこないし、それでPAC3やイージス艦によるミサイル防衛体制がPR出来て世論的に認知されるなら結構なことだという判断があったのだろう。両者の思惑一致にマスコミの面白がりが共振して、今にも北が日本に核弾頭か通常弾頭かを装着したミサイルが撃ち込まれようとしていてそれをどう迎撃するかのような報道や解説が懇切丁寧な絵まで添えて誌面や画面に溢れかえることになった。

 日本をターゲットに軍用ミサイルが撃ち込まれるのを迎撃するという話と、宇宙ロケットが太平洋をターゲットに発射されて万が一にその本体か脱落部品かが日本領土に落下する場合にそれをはたき落とすための事故防止策を取るという話とは、次元が全く異なる。しかも、発射後数分で日本に到達する北のミサイルを迎撃するのは、鴻池祥肇官房副長官が「政府筋」として匿名で語って問題になったように「(事前予告がなければ、ミサイル発射から)7〜8分たったら、浜田靖一防衛相から麻生太郎首相の所に報告に行ったら終わってる。鉄砲をバーンと撃った時にこっちからも鉄砲でバーンと撃って(弾と弾が)当たるか? 当たらないと思う。口開けて見ているしかない」というのが本当で、まことに難しい。発射直後に軌道や初速を瞬間的に計算して迎撃しようとしてもまことに難しいのに、それが軌道を外れたり事故を起こして不可測の動きをして降ってくるという場合に、それを空中で迎えて首尾良く粉々に破壊して地上に被害が出ないようにするなど、ほとんど神業に近いことで、実際には不可能である。現実には迎撃にせよ事故防止にせよほとんど難しく「口を空いて見ているしかない」のが本当であるというのに、マスコミは北朝鮮と日本が「開戦前夜」であるかの絵空事を勇ましく報道し続けた。

 笑えない実話として、地方に住む老人が本気で北のミサイル攻撃を心配して、市ヶ谷の防衛省に「しっかりしろ。国民を守るために頑張れ」と電話をし、その直後に東京にいる息子に「今防衛省に激励の電話をした。お前は大丈夫か、何も変わりはないか」と電話してきたという。マスコミの馬鹿騒ぎが国民の間にこういう迷走的な不安心理を作り出しているのである。

●世紀の大誤報の恥さらし

 この政府・マスコミ一体による大騒動の戯画性は、北朝鮮の発射予告期間の初日である4日に起きた世紀の大誤報事件によって一層浮き彫りになった。

 北朝鮮が4日には人工衛星打ち上げロケットを発射しなかったにもかかわらず、日本政府・防衛省の早期警戒・情報伝達システムが2度にわたって「発射された」との誤報を流すという大失態を演じた。この有様は即刻海外メディアにも報じられ、5日付日新聞に載った危機管理コンサルタント=浅利眞によれば「『日本は危機管理ができていない国だ。とても共同スクラムを組むことはできない』と、信頼を一気に失いかねないほど深刻な事態」となった。ロイター通信は「この失敗は低支持率にあえぐ麻生政権に困難をもたらすかもしれない」と指摘した。

 誤報の第1弾は、同日10時48頃に陸上自衛隊幕僚監部の指揮所がメールで全国の部隊の約900の端末に「発射」情報を流し、秋田県では県庁に詰めていた陸自の連絡官がそれを県側に伝え、一部地域では防災無線などで住民にも放送されたが、その後の県から陸自への確認で誤報と判明した。

 第2弾は、12時過ぎ、千葉県旭市の新型ガメラレーダーが別の飛行体(北の発射基地周辺のミグ戦闘機か?)をロケットと誤認して東京都府中市にある空自航空総隊司令部に通報、(たぶん同司令部が隣にある在日米空軍司令部に確認しないまま、もしくは米軍も衛星で発射を確認したと思い込んで?)12時16分に中央指揮所に通報、指揮所の担当官が「発射」とアナウンスし、それをモニターしていた首相官邸の危機管理センターの防衛省の連絡官も「発射」をアナウンス、官邸が直ちに「発射された模様です」と発表、数分後には誤報と訂正したが、すでに日本だけでなく韓国のテレビでも「発射か」の第一報が流れていた。

 第1弾のほうは単純なコンピューターの誤操作によるものと考えられるのでまだしも(しかしこんな時に誤操作を起こすな!)、第2弾のほうは、ロケット点火を赤外線探知で捉える米軍の早期警戒衛星システムも、より前線に配備された2隻の海自イージス艦のレーダーも、何も探知していないのに、それらとのクロスチェックも出来ないままに首相にまで誤報が届いてしまうという、まさにシステムとして欠陥だらけのものであることを露呈した。ここで止まったからよかったものの、そのままガメラレーダーが他の飛行体の航跡を追っていてそれに対して撃墜命令でも出ていたら取り返しのつかないことになった可能性もある。逆に北朝鮮はこの有様を見て、ロケットないしミサイル発射基地の周辺でミグ戦闘機などをダミーとして飛ばして日本の探知システムを攪乱することが出来るという教訓を学んだかも知れない。

 5日の本番ではシステムは順当に作動し事なきを得たが、大騒ぎの末のハイテク日本(?)の失態の傷は深い。

 今後、外交の焦点は国連安保理での非難決議採択に移るが、それを何が何でも実現したいのは日本だけで、米国は口先だけ、中露は慎重で、決議より1ランク下の議長声明さえまとまるかどうか見通しは暗い。▲

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