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INSIDER No.479《KANPO》鳩山邦夫は旧郵政官僚の操り人形ではないのか?──「かんぽの宿」売却問題の怪しい背景

 15日のサンデー・プロジェクトでは、郵政民営化推進の立役者だった菅義偉=自民党選対副委員長(当時総務副大臣)とそれに反対して自民党を離党することになった亀井静香=国民新党代表代行との対論がメインだったが、その中で、コメンテイターの財部誠一が「かんぽの宿」の一括売却問題を巡る鳩山の言動について「3月の郵政民営化見直しの期限にタイミングを合わせて旧郵政官僚が西川の首を掻くことを狙って仕掛けた陰謀ではないのか」という趣旨のことを問うたのに対し、菅は番組中では「背景には色々な動きがある」と奥歯に物が挟まったような答え方をしたものの、番組終了後には財部に近寄って「あれは陰謀ですよ」と明言した。

 鳩山邦夫総務相が“正義の味方”であるかのようにメディアからも野党からも持ち上げられているが、実は彼は、総務省=旧郵政省官僚の郵政民営化への恨みに根ざした日本郵政=西川善文社長に対する意趣返しと改革の揺り戻しの手先として操られているだけではないのか。そうだとするとこの一件は、麻生太郎首相自身の「元々反対だった」発言と表裏一体の、「官から民へ」の改革の流れに逆行しようとする麻生政権の反動性の現れでしかない。民主党はじめ野党が揃って鳩山大臣に調子を合わせているのは「笑っちゃうくらい」の話ということになる。

●陰謀のシナリオ?

 田中良紹がTHE JOURNAL2月7日付「かんぽの宿のイヤな感じ」で「鳩山総務大臣の個人の正義感だと思うほどおめでたい人間は政治の世界にはいないだろう。その意図が何かを突き止める事が先決である。総務省と日本郵政の内部にシナリオを書く者がいる。鳩山大臣はそれに振り付けられて躍っているだけだ」と述べている。実際に誰がシナリオを書いたのかについて証拠はないものの、旧郵政省の総務省官僚や旧郵便局の職員の中に、民営化そのものに激しい反感を抱き続ける者がいて、自民党内に昨秋発足した民営化反対=造反組を中心とする議員連盟「郵政研究会」とも連動してこの騒動を仕掛けたという推測は大いに成り立ちうる。

 昨年10月10日の郵政研究会の初会合では、最高顧問に就任した川崎二郎が「郵便局会社と郵便事業会社を本当に分ける必要があったのか。いつの間にか4つの会社に分かれたが、見直していいんじゃないか。株の持ち合いをきちんとしないと持たなくなるという議論もあった。合わせて検証していきたい」と挨拶、郵便局会社と郵便事業会社の一体的な経営の確保、日本郵政・ゆうちょ銀行・かんぽ生保の株式上場の“弾力化”(つまり政府が100%保有する株式を2010年を目途に上場・売却する方針の凍結)と相互株式持ち合いによる連携強化などを求めていくことを決議した。彼らとて、今更郵便事業を国営に戻すことが出来るとは考えていないだろうが、4分社化を中心とする民営化スキームを大幅に修正して組織を再々編し事実上の官営事業として存続を図ろうとしているに違いない。

 これを受けて11月には自民党政務調査会が正式の党機関として「郵政民営化推進に関する検討・検証プロジェクトチーム」(座長=中谷元・元防衛庁長官)を発足させた。正式機関だけに、民営化推進派にも配慮してあくまで「民営化推進」の立場からの検討という形を採っているが、そこでの議論も4分社化の再検討を中心とする揺り戻し路線であることに変わりはない。

 実際に見直し内容を決定し首相に意見を述べるのは、郵政民営化法に定められた「郵政民営化委員会」(委員長=田中直毅・国際公共政策研究センター理事長)であり、田中はじめ5人の委員は言うまでもなく小泉・竹中が任命した人たちであって、自民党や総務省が何を言おうと受け付けない公算が大きい。そこで、かんぽの宿問題をスキャンダルに仕立てて西川善文日本郵政社長を叩き、あわよくば首を取る一方で、鳩山総務相と麻生首相を巻き込んで民営化推進の流れに歯止めをかけようとする陰謀シナリオが描かれたのだろう。

●粗雑すぎる鳩山の議論

 鳩山の主張の第1は「オリックスの宮内会長は規制改革会議の議長をやり、郵政民営化の議論もそこでなされた。そこに一括譲渡となると、国民が出来レースではないかと受け取る可能性がある」というにある。

 確かに宮内は規制緩和の急先鋒であり、その関連の政府審議会の長を10年以上にわたり歴任している。小泉・竹中時代には「総合規制改革会議」の議長だったが、オリックスの1月7日付プレスリリースによると、同会議でも、その04年3月廃止後に設けられ引き続き宮内が06年9月まで議長を務めた「規制改革・民間開放推進会議」でも、答申中に「郵政民営化」のテーマは出て来ていない。また竹中平蔵も1月19日付産経の「ポリシー・ウォッチ」で、「郵政民営化のプロセスに規制改革会議が関係したことはない。基本方針を決めたのは経済財政諮問会議であり、制度設計は内閣官房の準備室が行った。その際にいくつかの委員会も作られたが、宮内氏がそのメンバーになったことはなかった。同氏が郵政民営化にかかわったというのは、ほとんど言いがかりのようなものである」と述べている。

 竹中はさらに次のようにも言う。

「より重要なのは、民間人が政策過程にかかわったからその資産売却などにかかわれない、という論理そのものに重大な問題があることだ。今や政策決定における民間人の役割は極めて大きなものになっている。経済財政諮問会議や各省の審議会・委員会にも民間人が関与する。しかし、いったん政策が決められたとして、それに関係する経済活動がその後できないとなると、民間人はだれも政府の委員会メンバーになどならなくなる。郵政民営化の枠組みを決めた諮問会議の民間議員は、郵政の株が売却される際、それを購入してはいけないのか…。これは、政策決定における民間人排除の論理に等しい」

 その通りで、宮内は広い意味の小泉・竹中人脈の一角には違いないが、直接に郵政民営化の議論に加わったわけではないし、仮に議論に加わっていたとしても事後的にこのような契約の当事者となるのは、公正な手続きを経てさえいれば何の問題もない。これがダメだと言うなら、例えば医師の診療報酬などを決める厚生労働省の審議会に初めから利害当事者である医師会代表が加わっているのはもってのほかだということになる。

 鳩山の言い分が罷り通れば、竹中が多用して成果を上げた、民間有識者を審議会等に入れてバンバンと提言ペーパーを繰り出して官僚の保守・保身を押さえ込むという手法が、最終的に息の根を止められる。官僚の思うつぼである。

 鳩山の主張の第2は「なぜ一括売却しなければならないのか」ということである。

 一括については、そうするより仕方がなかったのではあるまいか。70施設のうち黒字なのは10程度と言われており、他はトントンか赤字で、07年度の日本郵政の赤字負担は40億円に上る。2012年9月末までに売却すると法で決められている中で、1件ずつ買い手を探しているのでは到底時間的に間に合わないし、しかも事業の継続と雇用の維持を条件にしている以上、黒字施設はすぐに売れても赤字施設には買い手が付かず、売却が難航することが予想される。だからこそ比較的優良な施設とそうでないものを抱き合わせにしてパッケージにし、一括して引き受けて貰う以外に方法がなかったのではないか。事業を廃止し雇用も放棄するのであれば、残った土地・建物を単なる不動産として売却するのだから、109億円よりだいぶ高く売れるかもしれないが、それでは、元々簡保加入者の保養・福祉施設だった時代からの愛用者の利益も従業員の生活も守ることが出来ない。鳩山は、これが事業譲渡であって不動産売却ではないということを理解していないように見える。

 鳩山の主張の第3は「土地取得代・建設費2400億円の70施設がなぜ109億円で売られるのか。少しでも高く売却出来るようにするのが私たちの務めだ」ということである。

 「2400億円で作ったものをたった100億円で?」という言い方も粗雑に過ぎていて、まさにこれを不動産売却と混同していることを示唆している。事業譲渡である以上、赤字施設の価値はゼロであって、それを作った積算費用がいくらであるかは関係ない。野党議員の中にも、「簡保は加入者はじめ国民の財産であり、それをこんな値段で…」などという者がいるが、それを言うなら、そもそも旧簡保がその国民の財産を2400億円も費消してほとんどが赤字の施設を100近くも作って簡保幹部の天下り先にしてきた、そのデタラメ経営の責任こそ改めて問うべきだろう。

 他方、109億円が高いか安いかというのはそれだけで計ることが出来ず、オリックスにせよどこにせよ引き受けた企業は、当分の間、年間40〜50億円の赤字の補填の他に恐らく数百億円を注ぎ込んで赤字施設の黒字転換を図らなければならないはずで、そこまで含めて是非を評価すべきである。

 ここまで大騒ぎをしてストップをかけた以上、鳩山と総務省は西川に対して別の名案を示さなければならなくなった。しかも2012年の売却期限に間に合うように。どんな案が出てくるのか見物である。

●民営化の本質はどこへ?

 さて、このかんぽの宿問題は実のところ瑣末な話であって、郵政民営化を巡って今問い直さなければならない最大の問題は、日本最大の銀行(ギガバンク)となろうとしているゆうちょ銀行を日本の21世紀金融戦略の中でどう位置づけるのかということである。

 元々郵貯民営化の本質は、日本国民が明治から100年かかって築き上げてきた郵貯・簡保350兆円という世界最大の国営銀行にして日本最大の銀行を、旧大蔵官僚のやりたい放題の管理下から解き放って民間金融の体系に組み込むという、まさに「官から民へ」の世紀の大手術にあった。

 本誌がしばしば述べてきたように、旧大蔵省は発展途上国型の官僚主導の心臓部であった。「財政・金融一体」のスローガンの下、一方では税のほとんどを中央に吸い上げて省庁縦割りの予算として配分し、また郵貯・簡保を原資として財政投融資として旧公社・公団・財団などに注ぎ込み、あるいは国債を買わせ、他方では銀行はじめ証券・保険も含めた金融界を「護送船団方式」と呼ばれたほどに緊縛して右へ行け左へ行けと支配することを通じて、財政・金融両面から日本経済の血液たるマネーの循環の元栓を握ってきたことである。

 ところがその金融における政官業癒着の体制が、バブルの創出とその破裂を生み、不良債権問題という100年来最悪の金融スキャンダルを引き起こした。日本経済を10年以上にもわたって苦しめた不良債権問題の主犯は疑いもなく旧大蔵省のデタラメ金融行政にあったのであり、それに対する政治的な懲罰として、98年の金融庁の発足と旧大蔵省の看板引き下ろし=財務省への改編、そして日銀法の改正による介入権限の制限という革命的な改革の第一歩が踏み出されたのだった。ちなみに、これも本誌が前に書いたことだが、この時、最後の大蔵事務次官、最初の財務事務次官として「財政・金融分離」に徹底的に抵抗した筆頭が武藤敏郎であり、そんな人物を福田康夫前首相が日銀総裁に据えようとしたのは、98年の財金分離革命を台無しにする行為であって、野党がそれに反対して潰したのは当然だった。

 しかし不良債権の処理は長引いて、結局は小泉政権下で竹中が強権を用いてケリをつけた。そこで小泉・竹中コンビが間髪を入れずに着手したのが、郵政民営化だった。その意味するところは、金融の機能を奪われて半身になった財務省の徴税と予算、郵貯・簡保と財政投融資という2大財政機能のうち後者を同省から剥奪するにあった。350兆円が官僚とそのOBたちの食い物にされているのを放置するのでなく、民間金融の中で生き生きと自由に活用されるように大転換を図ることが出来れば、21世紀の日本経済は金融面から大いに元気を与えられることになる。これこそが、98年に続く革命的改革の第2弾となるはずだった。さらに付け加えれば、財務省のもう1つの重大な機能、すなわち徴税・予算の権限を剥奪するのが「地方分権」もしくは「地域主権国家への転換」で、これが革命的改革の第3弾となることが期待されている。

 革命的改革の第2弾を実現するためには、一方では、不良債権処理を終えた後の日本の金融のあり方について構図を描き上げ、他方では、これから民営化される郵貯・簡保をその中にどう位置づけるかの大議論を巻き起こすことが必要だった。ところが自民党内からは「郵便局の数が減ったら大変」とか「ハゲタカファンドに食い物にされたらどうするんだ」といった低次元極まりない反対論が高まって、議論は完全に本質から外れた方向に流れていって、挙げ句の果てに「民営化に賛成か反対か」という単純化された争点による郵政総選挙、刺客騒動となってしまった。

 その結果、今日もなお日本の金融の将来像は不明確なままで、一体ギガバンクを日本の金融体系の頂点に位置づけるのか、いや貸し出しも取り立ても運用もろくにやったことのないゆうちょ銀行を頂点に置くわけにいかないから3つのメガバンクの横か斜め上あたりに置くのか、それともかつて京都大学の教授たちが提言したように地域分割してローカル・バンキング(地銀、信金・信組)のバックアップをしながら「銀行とは何か」を学ぶようにするのか、何も定まっていない。これではせっかく民営化しても日本の金融に大元気をもたらすきっかけにはならない。メガバンクの大物経営者出身の西川社長に問うべきは、まさに世界の金融が大変調に陥っている中での日本の金融戦略の方途とその中でのゆうちょ銀行の位置づけであって、過去の不良資産の売却の仕方などという枝葉末節ではないはずである。

●絶好のチャンスなのに

 10〜12月の四半期GDP速報で年率換算12.7%のマイナスというのも、金融資本主義の暴発が必要以上に実体経済と人々の生活を傷つけていることが主な原因であり、財政出動による目先の景気対策よりも、長期的な成長戦略とそれに沿った金融再建方策こそが危機脱出の決め手となると考えられる。

 いま政治が知恵を注ぐべきはそのことなのに、郵政民営化問題は4分社化か3分社化かなどというまたもや瑣末なところに流れ、加えてかんぽの宿騒動となって、何をしているのか分からなくなっている。

 15日のサンプロで私は亀井に「今なお民営化反対と言うが、では350兆円を大蔵官僚の手に委ねておいた方が良かったということですか」と問うたのは、少しでも議論を本質に引き戻したいという願いからだった。彼の答えは「いや、私は財務省と戦う立場だ。ただハゲタカに食われると…」などとハッキリしない答えだった。他方、菅に対しては、「民営化は正しかったが、その先、日本の金融体系の中にギガバンクをどう位置づけるのかの構想が小泉にも竹中にもなかったことが欠陥だ。菅にはあるのか」と質問したが、「これからしっかりやっていく」というような話だった。

 米国はじめ世界の金融資本主義が倒壊している中で、日本こそが「モノづくり大国」としての生き方とそれに相応しいカネがカネを生むのでないまっとうな金融のありかたについて新しいモデルを提示しうる絶好のチャンスが訪れているというのに、政治がこれではせっかくのチャンスを生かすことが出来ない。▲

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コメント (1)

私は高野さんの意見に賛成できない。

 私事ながら、3月に父が亡くなり、簡保の払い戻しが来た。掛け金は、毎年数千円程度で20年だったと思う。
 保険金額:10万円、配当金:45万円、合計55万円 だった。

 父や母が、なけなしの生活費からコツコツと掛けていたお金であろう。

 最大1千万円までしか貯金できなかったけど、”安全・安心”の貯蓄が、郵便貯金だった。

 金融のビッグバン以降、銀行、保険、証券が、”投機的なバクチ金融”にのめりこむなか、郵貯はまだ、貧乏な国民の信頼できる拠り所であった。

 郵貯で問題だったのは、財政投融資の財源として、官僚や族議員に、食い物にされたことである。

 これは、特別会計制度によって国民がチェックする権利を奪われていた結果でもある。また、自民党の利権の温床として機能し、それをチェック・コントロール出来る状態(或いは立法化)に無かった政治の力関係にある。
 この解決は、単純な民営化ではない。民の効率的なノウハウを導入するのは、誰も反対すまい。しかし、小泉、竹中で進められたのは、米国型のメガバンクへの脱皮であった。
 今、米国のAIG始め、リーマンなどなど、いかさま金融の実態が明らかになり、破綻の尻拭いとして、巨額の税金投入がなされ、
世界の国民生活を凶暴につぶしまくっている。
 日本においても、オリックスを始め、アメリカ後追いのビジネスモデルを指向している。出遅れただけ、傷が浅いだけの話である。
 350兆円の金には、目が向くが、郵便貯金を頼りに生きている弱者に目の行かない”民営化”も、”官僚支配”もNOである。
 郵便貯金が果たした、”庶民の生活の守り手”としての役割は、セーフテイネットが壊れ、4割の世帯が僅少の貯蓄で、日々の生活を送っている現実を考えたら、”西川氏の出来レース続投”など、とんでも無い話である。
 ”小泉=竹中の民営化”の延長線上での続投は、決して許せないことである。
 高野さんの”難しい理論”はわからないが、庶民からすれば、生活を守る砦が”へりくつ”付けて無くなり、誰かが掠め取るだけの話にしか見えない。郵貯に、地銀並みの”数兆円”の資金しかなかったら、原理原則だからと言って、民営化を高野さんは主張されたでしょうか。巨額の資金があるから、”国家のため”と言う、”国民不在”の発想になるのではありませんか?
 高野さんの意見で賛成することも多いのですが、この件だけは失望です。

 

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