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INSIDER No.469《ASOISM》「アソイズム」というサイトを作ろうか!──KYとは「漢字が読めない」のことだとか…

 麻生太郎首相がしばしば漢字を読み間違えて、「漫画ばかり読んでいるからだ」(これは漫画に失礼だよね)とか「KYとは『漢字が読めない』の略だったのか」とか、盛んに話題になっている。

●ブッシズム

 ブッシュ現米大統領が登場してまもなく、Bushismという言葉が生まれ、それに関連したサイトが米国中に山ほども出来て、Wikipedia英文版にもその項目が載った(今もある)。ブッシズムとは、文字通りには「ブッシュ主義」だが、実は「ブッシュ流の奇妙な言い回し」というような意味で、Wikiの定義によれば「ブッシュ現大統領の公開スピーチに現れた、数多くの奇妙な言葉、フレーズ、発音、誤った言葉遣い、語義上及び言語学的な間違い」のことである。

 1つだけ有名な例を挙げれば、ブッシュは00年11月6日にアーカンソー州ベントンヴィルでの演説で"They misunderestimated me"と言った。「彼らは私を過小評価していた」と言いたかったのだが、それならunderestimatedで十分で、misunderestimateでは二重否定的になって「彼らは私を過小評価し損なっていた」という意味になってしまう。しかし、当然ながら、英語にはmisunderestimateという言葉はない。たぶんブッシュは、misunderstood(誤解した)という語と混濁したのだろう。

 ニューズウィークのマイケル・ハーシュ=ワシントン支局員は同誌11月19日号の「知性なき政治の幕が下りる」という記事で、オバマ新大統領の誕生は知性の復権を象徴する出来事で、そうは言ってもオバマが数々の難問に直面せざるを得ないことを思えば過度の期待をしてはならないという趣旨のことを述べた後に、こう言っている。

「だが、リスクはあってもオバマに賭けてみる価値はある。なにしろこの国は8年近く、戦略どころか筋の通った英語文すらろくに話せない人物が最高指導者を務めていたのだから」

 その通りなのだが、8年前からウェブやブログの世界でさんざん言われてきたことを、今頃になって大手メディアがこんな表現で語るのは、私は卑怯だと思う。初めから正面切ってそれを詰問すべきだった。

●アソイズム

 思い込みによる漢字の読み間違いというのは、多かれ少なかれ誰にも(とは言わないまでも多くの人に)あることで、驚くには当たらない。が、一国の最高指導者たる総理大臣がそれを繰り返すというのは国家の品格と総理の権威に関わる重大事態で、秘書が演説原稿に入念にルビを振るとか、漫画本を取り上げて漢字学習の家庭教師をつけるとか、麻生が国民から馬鹿にされないよう官邸が万全の対策を講じる必要があるだろう。

 しかし漢字の読み違いは、麻生における「言葉の軽さ」の問題の一部でしかない。より深刻なのは、とっさに発する言葉のいちいちが美しくなく、妙な口癖のようなフレーズを頻発するばかりか、しばしばその場やタイミングに相応しくなく、時によっては相手に無礼なほど場違いなことである。例えば、11月5日にオバマ当選が決まった後、官邸でのぶら下がり会見で「黒人発の大統領だが感想は?」と問われて、麻生はこう言った。

「日本の場合は、どなたがアメリカの大統領になられようとも、日本とアメリカの関係というのは、50年以上の長きにわたって双方で培ってきた関係。新しい大統領との間で維持していく、一番大事なところではないでしょうかね」

 また「アフガン支援を迫られるのでは?」という趣旨の問いには、

「1月20日(の政権発足)にならないとね、どういうスタッフでやるのか、よく見えてくるまでにならないと、今、うかつな話はできません。少なくともイラクの方が安定してきたんで、アフガンにその重点を移しているという、世界中がその流れだと思います。オバマっていう人も同じような方向で考えておられる。まあこれまでの発言を聞いているとそうですな」

 さらに「11月14、15日のG20の機会にオバマと会談する考えは?」と聞かれて、

「別に今、急に合わなくてはいけないというわけじゃありませんし、1月20日まではブッシュという人が大統領ということになっていますので。今は移行期間という感じですから。その間にアメリカ大統領は、今ブッシュっていう人がやっておられますので、その方が正式に大統領になられた後の話なんであって、会いに行くのはそれから後の話が基本と僕は思っていますけれどもね」

●世界の首相談話の中で一番間抜け

 1つには、「○○っていう人」という言い方がこの短いコメントの中に3回出てきて、それが彼の意識しない口癖であることが分かる。この言い方は、普通、聞いたことも会ったこともないような第3者を話題にする時に用いるもので、やや極端に言えば「○○という名前だそうだがどこの馬の骨か分からない奴」というニュアンスさえ含む。天下周知のオバマやブッシュに「っていう人」を付けるのは場違いであるだけでなく無礼だろう。ましてやオバマは、全世界注目の中で劇的な圧勝を遂げたばかりであって、日本の総理が真っ先に発すべきは「オバマ氏に心からお祝いを申し上げる。初の黒人大統領を生み出したアメリカの民主主義の力強さ、変化を求めるアメリカ国民の熱情に感動した。次の4年間を通じて日米同盟関係が新たな息吹を与えられ、一層深化していくことを期待する」といったことではないのか。小泉なら即興でこの程度のことを言っただろう。ところが麻生が最初に吐いたのは「どなたがアメリカの大統領になられようとも」「オバマっていう人」という、まるで「わしゃ知らん」とでも言いたいのかとさえ思わせるような言葉だった。

 倉重篤郎=毎日新聞編集局次長が週刊『エコノミスト』11月25日号のコラムでこのことを取り上げていて、次のように書いている。

「このやりとりをどう見るか。自民党実力者の1人は『次の大統領が決まった日に“どなたがなっても”はないだろう。世界各国の首相談話のなかでも一番間抜けに聞こえる。開票前に準備されたメモを取り違えて、そのまま読んだかの印象だ』と怒りを隠さない。『ブッシュっていう人』という言い方もいかがなものか」

 倉重はさらに続けて、上記のやりとりの2日後、7日にオバマと初の電話会談を行った後の番記者とのやりとりにも触れている。「オバマ氏と電話会談をされたが印象は?」と問われて麻生は、

(1)「印象? 顔も見ないで印象と言われても困る」
(2)「話しやすかった。テレビで見るよりも英語が分かりやすかった」
(3)「音声が悪いのかな、おたくのテレビ」
(4)「世界で最も大事な2国間関係といわれる相手側ですから」
(5)「何となく、きちんと勉強してこれからの世界に対して意欲もあるし、そういった感じでした」
(6)「短時間では分からない」

 わざと改行してナンバーを付したが、これは一連なりの発言である。(1)は、これも一種の口癖で、まず質問に「何でそんなことを聞くんだ」という調子で反発したような表現を持ってくるのが彼の常套手段で、そうやって「お前らのくだらない質問に答えてやっているんだぞ」という記者団に精神的優位を確保しようとするジャブなのだろう。電話で会談しただけなのは分かっていて、その限りの印象を問うているのだから、全く無意味なセリフである。(6)も、短時間なことは分かった上で印象を聞いているのだから意味がない。短時間の電話会談でも、アメリカの将来と日米関係の今後についてこういう確信を持った、ということを語ればいいのだ。

 (2)がその印象の内容に当たる訳だが、「英語が分かりやすくて話しやすかった」というのは中学生レベルで、ほとんど間抜けである。(3)はまた記者をからかう無用のジャブで、たぶん記者が「そうですか?」という顔をしたのに対して言ったのだろう。ジャブにもなっていない。

 (4)は意味不明。そういう相手側だから「心して電話対談に臨んだ」という意味なのか。(5)は、ここでまた有名な口癖「何となく」が出る。「何となく受けた印象では」と言いたいのだろうが、何となくでは困るのであって、総理はいつも確信を持って語らなければいけない。「きちんと勉強して世界に意欲もある」というのは、これまた無礼な話で、次期米大統領が麻生に比べて「きちんと勉強している」のは当たり前だろう。

 漢字の読み違いはまだ笑って済ませられる事柄である。が、記者とのやりとりはじめ国会での答弁や演説での意味不明は、総理としての基本的なコミュニケーション能力に関わる問題で看過できない。さらに、このような麻生の「言葉の軽さ」は、定額給付金の問題での彼自身の発言の二転三転による迷走から支離滅裂への泥沼化、その結果としての政局漂流と総選挙決行のタイミング喪失という彼の政治姿勢そのものの危うさにも繋がっている。

 何カ月か後に我々は「筋の通った日本語さえ話せない麻生とかいった人物が最高指導者を務めていた」時代があったことを振り返ることになるのだろうか。番記者の皆さんに提案:ぶら下がり会見の問答を含めて麻生のすべての言葉を公開して、言語学者の力も借りて分析し続ける「アソイズム」のサイトを作りませんか?▲

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