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INSIDER No.452《INDIAN OCEAN》タンカー護衛?というすり替えを許してはならない!──麻生幹事長の妄言

 麻生太郎自民党幹事長は5日、報道各社の共同インタビューに応えて、海上自衛隊によるインド洋での対米補給活動を1年間延長する「新テロ対策特別措置法改正案」の扱いについて、

▼国際社会の関心がイラクからアフガニスタンに移って、NATOもアフガニスタンに増派するときに日本だけ撤退というのはいかがなものかということになる。
▼日本が輸入する原油の9割はアラビア海からインド洋を経由して来る。現実に海賊による被害が出ていることを考えると、日本が何もしないわけにはいかない。どうしても補給(目的での法案の延長)が難しいと(公明党や野党が)いうのなら、油送線を防衛するなどいろいろな方法がある。
▼こうした自衛隊の海外活動は、長期的には恒久法で対応すべきだ。

 と語った。読売新聞6日付は、これを「タンカー護衛案浮上/公明党との調整難航で」という見出しで報じ、笹川尭総務会長も「給油活動主体ではなく、日本へ向かう船舶の安全を守っていく必要がある」と同調したと伝えている。

 はっきり言って麻生や笹川の発言は錯乱的で、こんな屁理屈を罷り通させてはならない。

 第1に、一般論として、すべての軍事作戦は極めて抑制的に、ということは、予め設定され承認された明確な戦略的達成目標を安易に逸脱することなく、遂行されるべきであって、その点を曖昧にすると必ず手痛い失敗に遭う。日本のかつての満州・中国侵略、米国のベトナム侵略やイラク侵略は、次から次へと戦略目標をエスカレートさせて泥沼に填った典型例である。

 第2に、そもそも米国の対アフガニスタン戦争そのものが正当性に疑問があり、そのことを十分吟味することもなしに小泉政権が特措法を仕立てて押っ取り刀で馳せ参じたこと自体が間違いであり、その正当性と有効性に数々の疑問が指摘されていたにもかかわらず昨年安部〜福田政権が無理矢理、同法を延長したことが間違いの上塗りであり、まして今回、その再延長が公明党と野党の了承を得られそうにないからと言って、目標を「給油活動」から「タンカー防護」にすり替えてでも海上自衛隊のインド洋でのプレゼンスを継続しようというのは、給油活動の是非をもう一度この時点できちんと検証して進退を決めることなく何が何でも海自のプレゼンスを継続しようとする手段と目的の転倒であるという意味でも、「タンカー防護」となれば作戦の性格も範囲も全く別のものになって現在の特措法を明らかに逸脱するという意味でも、二重三重に錯乱的である。

 もう一度確認しておくが、米・多国籍軍はインド洋上で主にアフガニスタンを本拠とするテロ集団による武器・麻薬の密輸や戦闘員の移動などを防止する洋上監視作戦に従事していて、それは当然にもテロ集団との銃撃戦をはじめ戦闘が起きる可能性を含んでいるために、日本は直接それに参加することなく給油という“後方支援”活動に任務を限定して間接的に参加することになったが、それさえも憲法および自衛隊法上、合法性に疑念が生じるのでわざわざ特措法を立法して艦船を派遣したのである。タンカー防護となれば、アフガン沖のテロ集団だけが相手ではなく、ソマリア沖などで頻々と出没する海賊を含めてシーレーン沿いのすべての脅威に対処するための洋上監視作戦ということになり、武力行使を前提とした数隻ではすまない大規模な艦隊派遣が必要となる。

 第3に、さらに「タンカー防護」とは日本が広く公海での「シーレーン防衛」に乗り出すという一般原則を採択することに繋がる。現在の作戦範囲である「アフガニスタン沖」で、特別にタンカーが攻撃を受けやすい状況が存在するならともかく、そうでなければそこでのみタンカーを防護することには何の意味もないわけで、やるならペルシャ湾からインド洋、マラッカ海峡を経て台湾沖まで、全シーレーンを防護しなければならないし、さらには北米、中南米、豪州などとのシーレーンは防護しなくていいのかという話になる。

 こうしたイロハを無視して、「輸入原油の9割を中東に依存する日本はシーレーンの安全を他国に委ねていていいのか」などという粗雑で短絡的な議論がすぐに出てくるのが日本のマスコミである(例えば7日付読売解説欄の勝股秀通編集委員)。ならば、アフガン戦争以前に中東とのシーレーンを日本独自でインド洋まで出張って防衛しなければならないという議論はあったのか。そうでないとすれば、最近急にその必要が出てきたのか。必要があるとして海上自衛隊にその能力があるのか。「他国に委ねる」のが恥だというが、どこの他国が過去も現在もシーレーン防衛の任務に当たっているのか。そもそも全世界に広がる貿易路のすべてを自国の武力で防衛することなど出来るのか。

 もちろん、ソマリア沖の海賊対策について国連が海洋PKOを創設する方針を打ち出しているし、マラッカ海峡の海賊に関してもASEANで同様の多国間協力の模索があり、こうした国連あるいは多国間ベースでの集団安全保障措置に日本が参加することは充分にあり得ることだし合法的でもあるが、それと新テロ対策特措法は何の関係もない。出鱈目な議論の横行を許してはならない。(この記事は《ざ・こもんず》からの転載です)▲

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