Calendar

2008年8月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

Recent Trackbacks

« 2008年7月 | メイン | 2008年9月 »

2008年8月31日

INSIDER No.456《ISHIHARA BANK》新銀行東京のずさん融資の裏にブローカーが暗躍──読売がスクープ!

 31日付読売新聞一面トップ「新銀行東京、融資にブローカー暗躍、都議に口利き依頼も」は、新聞界久々のクリーンヒットという感じのスクープである。東京都が1400億円を注ぎながらずさん極まりない融資の乱発で破綻寸前のイシハラ銀行だが、そのずさん融資の陰に「少なくとも5人のブローカー」が介在し、「政治家に顔が利くので簡単に融資が下りる」などと中小企業経営者などに持ちかけ、実際に自民党都議の名前を出したり、都議会の公明党控室に都庁の新銀行担当課長を呼びつけて支店を紹介させたりして、出資法が定める上限5%を超える手数料を融資先から受け取ったりしていた。

 イシハラ銀行を食い物にしたのは石原慎太郎知事の周辺や自公両党の都議であるという噂は、問題が表面化した当初から囁かれていたが、ブローカーを介在させた具体的な手口が明らかにされたのは初めてのこと。折しも同銀行は金融庁が検査に入っている最中で、今後、これを氷山の一角としたそのデタラメな実態が暴かれていくことになろう。

 来年7月の都議選の焦点はまさにこれになるはずで、それでなくとも苦しい選挙となる自公両党は、薄氷を踏む思いでこれからの10カ月を過ごすことになろう。本誌前号で書いたように、都議選大事でそのために総選挙を早くやりたい公明党だが、その都議選の方が危なくなってきているのは相当頭が痛いだろう。

読売記事:
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080830-OYT1T00796.htm

 ちなみに、YOMIURI ONLINEに出ているのは一面トップの記事全文。本紙では社会面でもより具体的なブローカーの暗躍ぶりと背景解説が出ているので必読です。やっぱり新聞は紙で読まないと。▲

2008年8月25日

INSIDER No.455《ELECTION》200議席割れ確実な自民党──それでも早期解散に追い込まれる?福田グズ内閣

 内閣改造も、臨時国会召集も、何をやってもスパッと決められないのが福田内閣で、自民党内からさえも「グズ内閣」という酷評が出始めている。

 政治には勢いが必要で、どうせやらなければならないことは遅滞なく片付けて前へ進む、要所要所で分かりやすい鮮やかなメッセージを発して方向感覚を是正する、時には政界ばかりでなく世の中の機先を制して思い切った決断に出て求心力を高める——といったことを節目ごとに演出して局面転換を図ることなしには、政局の流れを作り出すことが出来ない。小泉内閣は逆にはったりばかりの過剰演出に溺れて中身が伴わない傾きがあったし、安部内閣は小泉を半端に真似しようとして自滅した。それに対する反動からなのか、人柄ゆえなのか、しゃべり方が悪いのか、福田康夫首相にはその要素が絶無で、登場以来一貫して「何をしたいのか分からない」と言われ続けてきたが、洞爺湖サミットでの発信不発、それを挽回するための内閣改造もやるのかやらないのかハッキリしないまま先延ばしした挙げ句にズッコケ人事、秋の国会の日程も自民党内および公明党の思惑の錯綜を様子見ばかりしてなかなか決められず、とうとうグズ内閣とまで言われるようになった。北京五輪の日本の成績は全体として曇り時々晴れのようなスッキリしない結果となったが、思えばこれも、日本代表団に対して福田が「せいぜい頑張って下さい」という、何とも心のこもらない激励(なのか?あれが!)の仕方をしたことが大きな原因ではないか。リーダーがグズだと日本中がグズグズになってしまう。

●心中回避を決断した?公明党

 福田は秋の臨時国会で、(1)インド洋への海上自衛隊派遣を延長する新テロ特措法改正、(2)消費者庁の設置、(3)景気対策のための補正予算を、その優先順位で実現して政権浮揚のきっかけを掴みたいと考えてきた。それには、国会を8月下旬に召集して会期をたっぷりとらなければならず、とりわけ新テロ特措法改正案が参院で否決されることが確実で、何が何でも通すには「60日ルール」を使って衆院で3分の2で再可決しなければならないことを思えば、なおさら日程に余裕が必要で、8月下旬がダメでもせめて9月上旬、ギリギリで9月中旬の前半(月半ば)の召集で最低80日程度の会期を確保することが必須となる。

 ところがこれに真っ向から異を唱えたのが公明党で、「9月下旬召集、会期幅は60日程度」と主張して今なお譲らない。ということは、新テロ特措法改正案は通らなくても構わないということで、7月の日米首脳会談で同法延長を対米公約してしまっている福田へのあからさまな造反である。伊吹文明前幹事長は福田の立場に立って公明党を説得しようとしていたが、彼が閣内に去って後を襲った麻生太郎は、どちらかと言えば公明党に同情的で、召集日について「9月21日過ぎからというのも1つの選択肢だ」などと平気で発言している。福田と町村信孝官房長官は22日、麻生と大島理森国対委員長を官邸に呼んで「会期を早急に決めろ」「公明党の言う日程では、補正予算案だけ処理して、消費者庁の設置法案もインド洋給油活動の延長もやらないと宣言するに等しい。国政怠慢のそしりを免れない」(町村)と怒ったが、麻生・大島は公明党を説得しきる覚悟を示さなかった。

 公明党がここまで強硬態度を採るのは、第1に、同党の支持母体である創価学会には元々インド洋への海上自衛隊派遣に反対する空気が強く、これを昨秋に続いてまたもや3分の2で再可決を強行したのでは、総選挙や来年6月末ないし7月の都議選を戦えないという判断があるからである。

 第2に、その総選挙について同党は年末ないし年始と決めていて、太田昭宏代表はテレビで「年末・年始は一番最初に出てくる選択肢だ」と明言している。というのも、都議選は創価学会の政治進出の第一歩となった公明党にとっての原点であることに加えて、イシハラ銀行の乱脈への自公両党都議の関与問題や築地魚市場の移転強行などでかつてなく苦しい選挙になることが必至で、そのため同党はこれまで以上に活動家・支持者を全国から東京に集中させる態勢をとろうとしている。学会員に住民票を移動させて東京で票を増やす作戦を採れば、前後3カ月ずつ——つまり4月初から9月の任期切れまでの間に総選挙が行われることは避けたい。となると、古賀誠自民党選対委員長が最近言っているような「7月都議選後の総選挙」はありえず、福田の胸の内にあると言われる予算案通過後の「4月総選挙」もありえず、それ以前の2〜3月の予算審議中の解散は常識的にあり得ないから、どうしても年末ないし1月ということになる。となると、新テロ特措法改正案の再可決直後の総選挙ということになって非常に戦いにくくなるので、同改正案は捨てる。

 もちろん自民党としては、新テロ特措法そのままの延長でなく、新しい内容を付加するとか、自衛隊海外派遣の恒久法に切り替えるとかして、民主党の協力と世論の納得を取り付けるという方策はありえなくはないが、その新しい内容が麻生が言うような「タンカー警備」というトンチンカンなものでは到底成功しない。

 第3に、公明党が会期短縮を望む理由の1つには、矢野絢也元公明党委員長の国会喚問を通じて矢野が創価学会から脅迫と誹謗中傷を受けたとして訴訟を起こしている一件が大きくクローズアップされ、それが池田大作創価学会名誉会長の喚問に道を開くようなことになることを恐れていることもある。

 第4に、大きな背景事情として、公明党はすでに福田を見限っていて、福田と心中することだけは避けたいと考えているということがある。自公連立の9年間を通じて、公明党は「イヤよイヤよ」と言いながら結局は自民党に妥協して付き従い続けてきて、「公明党は自民党の下駄の雪か」とまで言われてきたが、いよいよ民主党に政権を奪われて野党に転落するかどうかの正念場を迎えて、さすがに自民党と一定の距離を置かざるを得なくなってきた。恐らく公明党首脳の心中は、(1)福田が臨時国会で景気対策だけやってサッサと解散・総選挙を打つならそれはそれでやむを得ないが、(2)新テロ特措法が延長できないなど政局が行き詰まって福田辞任、麻生の手で総選挙ということになればその方がまだマシだ、(3)それで与党が負けても、今から自民党との距離を置いていれば、民主党との連立に道が開けるかもしれない、ということだろう。もっとも、私の見るところ(3)の可能性は絶無で、結局、公明党にとっては福田と麻生とどちらで総選挙を迎えるのが打撃が少ないかという負の選択しか残されていないのだが。

 自民党がこうした公明党に強い態度で立ち向かえないのは、自民党参院のドン=青木幹雄元参院議員会長が言うように「いまや自民党に公明党・創価学会の協力なしに勝てる議員はほとんどいない」、つまりこの9年間に自民党は完全に創価学会中毒に侵されてしまって、自公協力なしには選挙を戦えない体質になってしまっているからである。私が「インサイダー」等で度々指摘してきたように、選挙を通じての正々堂々の政権交代が可能になる政治風土の醸成をめざして93年に小選挙区制の導入が決まり、翌94年に細川政権の下でそのための法案が成立して以降、自民党は、野党がテンデンバラバラに離合集散を繰り返している状況を利用して、あれこれの政党を連立に引き込んでは食い殺すというやり方で政権交代を防いできた。社会党、さきがけ、自由党、保守党がそのようにして次々に消滅して、最後に残ったのが公明党であり、しかしこればかりは簡単に食い殺されず、逆に自民党の方が体質がボロボロになって破滅に陥るかもしれない、と。今始まっているのはまさにそのような自公連立の終わりをめぐってどちらがより少ないダメージで生き残るかの暗闘であるけれども、今や自公連立=選挙協力の解消は、公明党にとっては、連立していればこそ唯一の“中政党”として振る舞えている同党が共産党か社民党並みの“小政党”になることを覚悟すればいいだけの話だが、自民党にとっては、他の伝統的な支持団体が壊滅状態に陥っている中で最後のほとんど唯一の支持団体である創価学会を失って文字通り壊滅的な打撃を被って当分は立ち直れないほどになる危険がある。そのために自民党はひたすら受け身に回るしかなく、ジリジリとやりたくもない年末・年始総選挙の方向に追い込まれ始めているのである。

●今の時点で総選挙をやれば

 こうした中で、週刊誌は恒例の「衆院全選挙区当落予測」を出し始めている。『週刊朝日』8月22日号の福岡政行白鴎大学教授の予測と『週刊文春』8月28日号の宮川隆義政治広報センター社長の予測を比較すると次のようになる(*福岡は無所属を与党系と野党系に分けている)。

現有勢力 予測議席数
選 比 計 選挙区 比例区 計

自民 229 76 305 福 133±8 56±5  189±13
宮 142+113−63 56+6−1 198

公明 8 23 31 福 5+3−1 22+1−2 27+4−3
宮 6+2−1 24±1 30

無所属* 1 1 2 福 0+1 − 0+1

与党小計 238 100 305 福 138+12−9 78+5−6 216+17−15
宮 148+115−64 80+7−2 228

民主 54 60 114 福 147±12 79±5 226±17
宮 141+61−110 84+1−7 225

社民 1 6 7 福 2±1 5±1 7±2
宮 2+1−2 5+1 7

国民 2 2 4 福 3+2−1 4+2−1 7+4−2
宮 2±1 0 2

大地 0 1 1 福 0 1 1
宮 0 1 1

日本 0 0 0 福 0+1 1+2 1+3
宮 0 1+1 1

無所属 5 2 7 福 10−4 − 10−4
宮 7+3−4   0 7

共産 0 9 9 福 0+1 12+1−3 12+2−3
宮 0 9+1−2 9

野党小計 62 80 142 福 162+9−12 102+6−5 264+15−17
宮 152+66−117 100+4−9 252

合計 300 180 480 300 180 480

 分析手法の違いはあるが、結論は似たようなもので、自民党は現有の305議席に対して100以上減らして200議席を割る大敗となって、30程度の公明党と合わせても過半数に達せず、他方民主党は現有114に対して100以上増やす大勝をするものの単独では過半数に達しない、ということである。

 もちろんこれは、現時点での話で、実際に総選挙が行われるまでにはいろいろな変数がある。政策的な要因としては、第1に、月末にも概要が発表される景気対策とその実体化のための補正予算および来年度予算の編成がどれほど与党にとって効果を発揮するか、またそれとの関連で消費税アップを含む税制改正の方向付けがどうなるか。第2に、国民の怒りの元である年金崩壊、後期高齢者医療制度の修正もしくは廃止、原油・食料高騰対策などについてどれだけ説得的な施策を打ち出せるか。第3に、「消費者庁」設置が目玉となるか。第4に、新テロ特措法を再可決強行なしに延長できるか……等々。消費者庁については、(1)各省庁にバラバラに設けられている消費者対策の担当部局が実は統廃合も人員削減もされず、消費者庁は単に屋上屋を重ねただけの存在に終わるのではないか、(2)決定的に重要なのは市町村レベルの現場の相談窓口の人員と予算の充実、中央省庁の出先機関の無能と怠慢を飛び越えて政府が直接、迅速な判断を下し対策を講じる体制作りだが、地方への補助金を多少増やす程度のことでお茶をにごそうとしているのではないか、といった疑念が湧いている。野党がこれらの点を徹底的に追及した場合、政府法案は成立しない可能性もある。消費者庁設置が通らず、新テロ特措法も延長できなければ、その時点で福田辞任もあり得る。

 政治的な変動要因としては、第1に、自民党支持層の間の“反自民”感情がどれほどかが計測できないことがある。小泉純一郎元首相は8月14日に開かれた衆院当選1回組の懇親会で「どんな言葉を使っても『民主党に一度やらせてみたら』という言葉を覆すことは出来ない。この重みは凄いぞ。今回は自民党に頼らず、自分党で選挙をやれ」と語ったが、事実、一度政権交代をしないと自民党は治らないと思っている人は自民党支持層の中で驚くほど増えていて、それが実際に選挙にどう現れるかはあらゆる専門家の予想を超えるものがある。第2に、自公選挙協力がどこまで効果を発揮するかは、これまでの実績からは予測できない。形だけは協力体制をとるが実際にはそれほど動かないといったケースが続出するのではないか。第3に、民主党の選挙態勢は、まだ候補者未定の選挙区が残るなど、遅れていて、これがどこまで進むか、など。

 この秋の展開次第では、福岡や宮川が今予測するよりもさらに激しい変動が起きる可能性もあると見るべきだろう。▲

2008年8月21日

INSIDER No.454《GEORGIA》グルジア紛争で“どん底”に転げ込むブッシュ外交──遅ネオコンの負の遺産としての「ロシア包囲網」戦略の破綻

 イラクとアフガニスタンの戦況はますます悪化して収拾がつかず、それに替わるせめてものクリーンヒットを狙った北朝鮮の核問題も見通し定かならない中で、ブッシュ政権はグルジア問題をめぐってまた新たな外交政策の破綻に直面することになった。そうでなくともブッシュは、これほどまでに米国の世界的評価にダメージを与えた大統領は史上存在しなかったと指摘されていたというのに、これによってその最悪評価は確定的になったと言える。

●米国とグルジアがロシアを挑発した

 H・D・S・グリーンウェイは米紙ボストン・グローブのコラム「米国がグルジアを台無しにしている」で、「このグルジアとロシアの短く激しい戦争は後世、米国の冷戦後のパワーと影響力のどん底として記憶されることになるだろう」と書き、さらにこう述べている。

▼米国は、グルジアが米国の保護下にあるかのように思い込ませるよう同国を仕向け、イスラエルの若干の助けを借りてグルジア軍を建設して訓練を施し、この地域で最大の大使館を建ててそれを米国のコーカサスへの影響力のセンターに仕立て、そして、民間からの反対があったにもかかわらず、同国への永遠の支援を公式に声明した。

▼そして今、米国の得意先(であるグルジア)は鼻血を流して立ち尽くしている。グルジアの市街や田舎が破壊されたが、それよりももっと完璧に破滅したのはブッシュの政策である。

▼グルジアのサーカシュヴィリ大統領は、米国の曖昧なシグナルを読み誤って、米国の後押しがあれば、南オセチアとアブハジアをグルジアの支配下に組み込むために熊(ロシア)の檻を揺さぶっても大丈夫だと判断した。彼はアメリカ・カードを切ったのだが、それで悪運を呼び込んだだけだった。

▼ロシアは、この地域で存在感を示したいと思っていて、サーカシュヴィリがその機会を与えてくれた。米国は、こうなった今こそ彼を支えなければならないが、しかしこれが終わってロシア軍が引き上げた後に、彼は袋叩きに遭うに違いない……。

 実際、今回の事態を招いた発端がどちら側にあるかは不明だし、それを究明しようとすることは余り意味がない。1990年末に始まった南オセチア自治州内の多数派であるイラン系オセット人の対グルジア独立→ロシア編入を求める民族運動が流血の事態に発展し、グルジアとロシアの関係は緊張したが、92年に停戦合意が成立し、以後は、度々紛争は起きたけれども、ロシア・南オセチア・グルジアによる合同平和維持軍の停戦監視活動の下、南オセチア内のオセット人とグルジア人はおおむね平和的に共存して暮らしてきた。が、04年にナショナリズム色が強く力による国土統一を公言するサーカシュヴィリがグルジアの大統領に就いて以来、次第に緊張が高まり、8月に入って住民同士の衝突で死者が出たのをきっかけに7日、グルジア軍が大規模な部隊を南オセチアに派遣、それを92年の停戦合意の一方的破棄とみなしたロシアが8日、南オセチアに陸上部隊を増派しただけでなく、10〜11日にはグルジア領内にまで進軍・空爆してグルジア軍を南オセチアから撤退させた。

 最初の住民衝突自体にロシア側の挑発が含まれていた可能性はなしとしないが、それにしてもグルジアの大規模侵攻が、ロシアの言うとおり、停戦合意に基づく合同監視という国際協約を無視した一方的な行動だったことは疑いなく、その背景にはグルジアに勘違いをさせるような米国の曖昧なメッセージがあった。

 だから、例えば18日付毎日で小谷守彦特派員がトビリシから報じている「許せぬ市民への攻撃」という報告を典型として、マスコミが簡単に「ロシアが悪い」と決めつけるかの報道をしていることには眉に唾して見なければならない。確かに、南オセチアの州境を超えたロシアの空爆でゴリ市内で「100人を超える市民が死亡し……ロシア軍の侵攻で市中心部にいた数十人が犠牲になった」のは事実だろう。が、それをもって「軍と軍との戦いというよりも、武器を持つ者による無抵抗な市民への暴力ではなかっただろうか」などと言うのは軽率に過ぎる。ならば、それに先立つグルジア軍の南オセチア侵攻はどんな実態だったのかの検証が必要だろう。もちろん彼は記事の後のほうで「グルジア人も民間人への暴力に手を染めた。……グルジア軍による南オセチアでの無差別攻撃はロシア軍以上に容赦のないものとされる」と付け加えてはいる。しかし彼はゴリは取材したがツヒンバリは訪れてはおらず、そこでグルジア人が何人のオセット人を殺したかは述べていない。

 グリーンウェイが予測したように、グルジア国内では早くもサーカシュヴィリへの批判が湧き起こっており、有力女性政治家で現大統領を生んだ03年「バラ革命」の立役者の1人だったブルジャナゼ前国会議長は20日、読売新聞8月21日付でインタビューに答えて、「ロシア軍の撤退後、新しい政党を作って野党連合とも手を携え、親欧米路線に立ちながらもロシアとの関係正常化による問題の平和的解決を目指す」と、ポスト・サーカシュヴィリへの展望を語っている。

●ネオコンの悪しき遺産

 米国の側に視点を移せば、この事態はブッシュ政権第1期に米外交政策を支配したネオコンとその裏にいたイスラエル右派による「世界民主化」計画の誇大妄想という悪しき遺産を上手く精算できないできたことの結末である。ネオコンは、イラクを手始めに中東全域に米国式民主主義の花を移植する「中東民主化」(によるイスラエルの安全確保)という漫画的な構想を抱くと共に、それと並行して、冷戦に“敗北”して今や戦意喪失状態にあるロシアをターゲットにして、その元の勢力圏である東欧、バルト、コーカサス、中央アジア、そしてついにはロシアの盟友=ウクライナまでをも民主陣営に引き込んでロシアを決定的に孤立させる「世界民主化」計画に乗りだした。

(1)NATOの東方拡大の加速——NATOはすでに99年にポーランド、ハンガリー、チェコを加盟させていたが、04年になってルーマニア、スロベニア、バルト3国、ブルガリア、スロバキアの7カ国を一気に加盟させた。またアルバニア、クロアチア、マケドニアについても加盟希望を受け入れることを明示した。その上で米国は、欧州には慎重論が残っているにもかかわらず、ロシアに直接国境を接するCIS傘下のグルジア、アゼルバイジャン、そしてウクライナをもNATOに引き込む積極的な工作に着手した。

(2)コソボ独立支援——米欧は、セルビア人とその背景にあるロシアの反対を押し切って、今年2月、コソボを無理矢理に独立させた。コソボが独立できて、南オセチアやアブハジアが独立してはいけない理由がどこにあるのかというロシアの問いに米欧が答えるのは難しい。

(3)チェコとポーランドへのミサイル防衛網設置——(1)の直接的な帰結として、イランのミサイル攻撃の危険に対処するとして、2012年を目処にミサイル防衛網をチェコとポーランドに設置する計画を強行し、チェコとは先月、同国内にレーダー網を建設する合意に調印、ポーランドとはよりによってこの騒動の最中、8月20日にライス国務長官がワルシャワを訪れてミサイル迎撃ミサイル10機とそれを運営する数百人規模の米軍部隊の駐留、またポーランド自身がロシアの(?)攻撃に対処するための地対空パトリオット・ミサイル供与についてパッケージ合意に調印した。NATOは今年4月の首脳会議で、米国のチェコ、ポーランドへのミサイル防衛網計画を(渋々ながら)承認しているが、欧州の世論は懐疑的で、「そもそも何でイランがヨーロッパにミサイルを撃ち込むのか。米国のイラン恐怖症から来る幻覚に付き合うなどもってのほか」という論調が多い。

(4)ウクライナへの勧誘——その上で米国は、ロシアとその歴史的盟友であるウクライナとの間を引き裂くことに全力を挙げた。04年末の大統領選では、元々文化的に親西欧的でカトリック教徒が多い西ウクライナを基盤とするユーシェンコ元首相が、親ロシア的な東ウクライナの工業地帯を背景とするヤヌーコビッチを僅差で破ったが、その影には米国の支援があったとされている。欧州には、ウクライナをEUに加盟させるのはともかく、NATOにまで引き込むのはロシアを刺激しすぎるとの考え方が強いが、米国はNATOとウクライナの「パートナーシップ協定」締結を推進し、来年夏のNATO理事会でウクライナの加盟を決定しようとしている。それに対してロシアの反応は自制的ではあったが、旧ソ連の軍産複合工場が集中する東ウクライナからの総引き上げに着手した。

(5)アゼルバイジャンへの勧誘——同時に米国は、カスピ海からアゼルバイジャンを経てトルコの港に至る天然ガス・パイプラインの監視を強化するとして、この地域の海空警備計画を同国に立てさせ、それに伴う同国の軍艦建設や海軍技術の供与を申し出た。ロシアはこれを「この地域におけるロシアの影響力を弱めるのが狙い」と判断し、逆に同国とロシアの合同の海域警備体制を作るよう働きかけている。

 米国のグルジアへの肩入れは、これらすべてに並行して行われてきたもので、もちろんその間、米国はNATOに対してもロシアに対しても、米国の行動がロシアをターゲットにしたものではなくテロ撲滅を含む「21世紀型の安全保障」のためのものだと繰り返し説明し、またその証として02年には、従来の「NATO・ロシア合同常設評議会」を格上げして「NATO・ロシア理事会」を設置、ロシアをNATOの準加盟国とした。それに対して、ロシアは自制的に対応してきたものの、旧ソ連・東欧圏を外堀から内堀と埋めていってロシアを孤立させるというネオコン構想に腹の中は屈辱で煮えくりかえるようになっていたのは明らかで、その鬱積を米国は甘く見ていたと言える。

●ライス国務長官の錯乱

 ブッシュ第2期の国務長官であるライスは、全体としてはネオコンによる米政策の極端な偏向から外交を救い出そうと努力してきた。グルジアをめぐっても、チェイニー副大統領やネオコン系の残党はグルジアのイラクへの部隊派遣を高く評価、「グルジアこそ民主化のモデルである」と主張し、とりわけスティンガー地対空ミサイルはじめ武器の同国への輸出に血道をあげてきた。それに対しライスはじめ国務省は、そのような売却はロシアに刺激的すぎるとして反対してきた。とはいえ、彼女も、極端な行動をとってロシアを刺激することに反対してきただけで、NATOを通じてロシアに圧力をかけ続けること自体には賛成だった。今年2月のコソボ独立に続く3月のサーカシュヴィリのワシントン訪問、4月のNATO首脳会議へのプーチン招待と翌日のクリミア半島ソチでのブッシュ・プーチン会談という一連のプロセスを通じて、今にして思えばプーチンは、米国がこのままのやり方を続けるならロシアとしても我慢の限界を超えるぞと暗に警告を発していたにもかかわらず、ネオコン系はもちろんライスもそれを無視し続けることになった。

 ライスは18日ブリュッセルに飛んで、翌日グルジア情勢を協議するためのNATO外相会議を招集した。同地に向かう前の米TVインタビューでの彼女の言動は常軌を逸したもので、

▼率直に言って、ロシアを責任ある国家とする見方は崩壊した。

▼NATOとロシアとの安全保障協力を停止し、NATOに対しロシア軍のグルジアでの行動を監視するNATO要員の派遣を提案する。

▼ロシアの主要8カ国首脳会議からの排除、ロシアのWTO加盟延期も検討している……。

 こんな馬鹿げたことを欧州が受け入れるわけはなく、事実外相会議はろくな合意もなく終わったが、それにしても米国の外交責任者が怒りにまかせて、ロシアとの全面対決、国際社会からの排除まで口走るとは驚きである。恐らくは、政府部内のネオコン系の圧力と闘いつつも、ブッシュに対して「まだ圧力を加えても大丈夫」との判断を伝え続けてきた自分の立場を失って錯乱的な心理状態に陥ったのだろう。ブリュッセルからワルシャワに飛んだライスは、上述のように、ポーランドとのミサイル防衛を中心とするパッケージ合意に調印したが、これも、何もこのまっ最中にわざわざやる必要のない愚行だった。

 こうして、ブッシュ外交はいよいよ訳の分からないところに填りつつある。グリーンウェイが言うように、ここがどん底で、次期米大統領が這い上がらなければならない外交再建の壁はなおさら高くそびえることになった。まず最低限必要なことは、ゴルバチョフ元大統領が忠告しているように(21日付ヘラルド・トリビューン)、コーカサス地方はまれに見る複雑な民族の錯綜地域であって、そこでは「ここは我々の領土だ」とか「我が領土を解放する」とかいった主張自体が無意味であり、従って武力で何事かが解決するなどとは思わないことである。▲

2008年8月18日

INSIDER No.453《TERRORISM》今頃になって「戦争ではテロを防げない」だと……──遅きに失した米「ランド・コーポレーション」の最新レポート

 ペンタゴンに直結する米シンクタンク「ランド・コーポレーション」がこのほど発表した研究レポート「テロ集団はいかにして壊滅するか」によると、1968年から2006年までの期間に世界中に存在した648のテロ集団のうち同期間内に消滅した268組織についてその原因を調べたところ、43%は政治的プロセスへの参加(交渉など)、40%は警察や情報機関による主要メンバーの逮捕・殺害、10%はテロリスト側が勝利して目的達成などの理由によって消滅しており、軍事作戦が奏功して壊滅させたケースはわずか7%だった。その結果に基づいて同レポートは、政治的解決が可能なのはテロ集団の目的が限定されていて妥協しやすいケースがほとんどで、アルカイーダのような規模が大きく重武装して活動範囲も広い組織に対しては、戦争でなく、警察と情報機関による作戦を中心に対処すべきであって、「対テロ戦争」という言葉はもう使わないほうがいいと米政府に勧告している。「テロを解決できる戦場は存在しない。軍事力は通常、その狙いとは正反対の効果をもたらす」と。

RANDCorp.:
http://www.rand.org/

同レポートの記者発表:
http://www.rand.org/news/press/2008/07/29/

 今頃になって何を言ってるんだ。そんなことは『インサイダー』が最初っからさんざん書いているじゃないか。

「テロはあくまで『犯罪』の一種であり、従って基本的に警察的手段で予防し解決すべきものであって、軍隊が出動して軍事的手段を用いてよりよい結果が得られる保証は何もない。少なくとも、長期的な国際警察協力と緊急かつ(対テロ作戦としては)異例の軍事作戦とを区別と統一において捉える視点が必要だろう」(インサイダー01年9月17日号、高野『滅びゆくアメリカ帝国』P.21)

「テロの定義は……面倒だが、いずれにせよ、国家間の外戦や国家内の内戦とは違って、基本的には非国家組織(NGO!)による犯罪行為であり、まずもって国際的な捜査協力を通じて司法的に解決を求めるべき事柄であって、ただしその特異な暴力的性格からして、その予防・対処・解決に当たっては狙撃兵や特殊部隊などの準軍事的(パラミリタリー)な手段を動員することもありうるということだろう」(同誌01年10月1日号、同書P.41)

 さらに『インサイダー』はその後も、田中明彦という東大教授がアルカイーダとの戦いは戦争なのだ」と言っているのを批判しながら、もっと詳しくこのことを論じている(同誌02年9月16日号、同書P.103〜107)。

 アフガニスタンとイラクの2つの戦争に米国を引きずり込んだ張本人であるラムズフェルド前国防長官は、そのポストに就く前はランドの理事だった。ランドの研究員がもう少し早く(01年9月の段階で)このレポートを出していたら、米国はこれほど酷い失敗をしなくて済んだかもしれない。

 コラムニストのニコラス・クリストフは8月11日付『インタナショナル・ヘラルド・トリビューン』の論説「戦争ではなく外交をやろう」で、このランドのレポートを引用しつつ、「次期大統領はこの教訓を学んで、対外政策の第一の手段として外交を再活用すべきだ」と論じている。

同コラム:
http://www.iht.com/articles/2008/08/10/opinion/edkristof.php

 彼によると、米国は明らかに軍事に過剰投資し外交に過小投資していて、例えば、

▼米軍の軍楽隊に属するミュージシャンの数は米国の外交官の数より多い。
▼今年だけで、米陸軍は約7000人の新兵を採用したが、その数は外交サービスに従事する者の総数より多い。
▼人員不足により1000以上の外交官ポストが空席のままだが、狭量な議会は新規雇用の予算を拒否している。C-17軍用輸送機1機の値段で1100人を雇えるのに。

 そこで、最初の第一歩として、米国にとって外交官は軍楽隊員と同じくらいプライオリティを与えられてしかるべきだという合意をつくりあげようではないか、と彼はそのコラムを結んでいる。(この記事は《ざ・こもんず》から転載しました)▲

INSIDER No.452《INDIAN OCEAN》タンカー護衛?というすり替えを許してはならない!──麻生幹事長の妄言

 麻生太郎自民党幹事長は5日、報道各社の共同インタビューに応えて、海上自衛隊によるインド洋での対米補給活動を1年間延長する「新テロ対策特別措置法改正案」の扱いについて、

▼国際社会の関心がイラクからアフガニスタンに移って、NATOもアフガニスタンに増派するときに日本だけ撤退というのはいかがなものかということになる。
▼日本が輸入する原油の9割はアラビア海からインド洋を経由して来る。現実に海賊による被害が出ていることを考えると、日本が何もしないわけにはいかない。どうしても補給(目的での法案の延長)が難しいと(公明党や野党が)いうのなら、油送線を防衛するなどいろいろな方法がある。
▼こうした自衛隊の海外活動は、長期的には恒久法で対応すべきだ。

 と語った。読売新聞6日付は、これを「タンカー護衛案浮上/公明党との調整難航で」という見出しで報じ、笹川尭総務会長も「給油活動主体ではなく、日本へ向かう船舶の安全を守っていく必要がある」と同調したと伝えている。

 はっきり言って麻生や笹川の発言は錯乱的で、こんな屁理屈を罷り通させてはならない。

 第1に、一般論として、すべての軍事作戦は極めて抑制的に、ということは、予め設定され承認された明確な戦略的達成目標を安易に逸脱することなく、遂行されるべきであって、その点を曖昧にすると必ず手痛い失敗に遭う。日本のかつての満州・中国侵略、米国のベトナム侵略やイラク侵略は、次から次へと戦略目標をエスカレートさせて泥沼に填った典型例である。

 第2に、そもそも米国の対アフガニスタン戦争そのものが正当性に疑問があり、そのことを十分吟味することもなしに小泉政権が特措法を仕立てて押っ取り刀で馳せ参じたこと自体が間違いであり、その正当性と有効性に数々の疑問が指摘されていたにもかかわらず昨年安部〜福田政権が無理矢理、同法を延長したことが間違いの上塗りであり、まして今回、その再延長が公明党と野党の了承を得られそうにないからと言って、目標を「給油活動」から「タンカー防護」にすり替えてでも海上自衛隊のインド洋でのプレゼンスを継続しようというのは、給油活動の是非をもう一度この時点できちんと検証して進退を決めることなく何が何でも海自のプレゼンスを継続しようとする手段と目的の転倒であるという意味でも、「タンカー防護」となれば作戦の性格も範囲も全く別のものになって現在の特措法を明らかに逸脱するという意味でも、二重三重に錯乱的である。

 もう一度確認しておくが、米・多国籍軍はインド洋上で主にアフガニスタンを本拠とするテロ集団による武器・麻薬の密輸や戦闘員の移動などを防止する洋上監視作戦に従事していて、それは当然にもテロ集団との銃撃戦をはじめ戦闘が起きる可能性を含んでいるために、日本は直接それに参加することなく給油という“後方支援”活動に任務を限定して間接的に参加することになったが、それさえも憲法および自衛隊法上、合法性に疑念が生じるのでわざわざ特措法を立法して艦船を派遣したのである。タンカー防護となれば、アフガン沖のテロ集団だけが相手ではなく、ソマリア沖などで頻々と出没する海賊を含めてシーレーン沿いのすべての脅威に対処するための洋上監視作戦ということになり、武力行使を前提とした数隻ではすまない大規模な艦隊派遣が必要となる。

 第3に、さらに「タンカー防護」とは日本が広く公海での「シーレーン防衛」に乗り出すという一般原則を採択することに繋がる。現在の作戦範囲である「アフガニスタン沖」で、特別にタンカーが攻撃を受けやすい状況が存在するならともかく、そうでなければそこでのみタンカーを防護することには何の意味もないわけで、やるならペルシャ湾からインド洋、マラッカ海峡を経て台湾沖まで、全シーレーンを防護しなければならないし、さらには北米、中南米、豪州などとのシーレーンは防護しなくていいのかという話になる。

 こうしたイロハを無視して、「輸入原油の9割を中東に依存する日本はシーレーンの安全を他国に委ねていていいのか」などという粗雑で短絡的な議論がすぐに出てくるのが日本のマスコミである(例えば7日付読売解説欄の勝股秀通編集委員)。ならば、アフガン戦争以前に中東とのシーレーンを日本独自でインド洋まで出張って防衛しなければならないという議論はあったのか。そうでないとすれば、最近急にその必要が出てきたのか。必要があるとして海上自衛隊にその能力があるのか。「他国に委ねる」のが恥だというが、どこの他国が過去も現在もシーレーン防衛の任務に当たっているのか。そもそも全世界に広がる貿易路のすべてを自国の武力で防衛することなど出来るのか。

 もちろん、ソマリア沖の海賊対策について国連が海洋PKOを創設する方針を打ち出しているし、マラッカ海峡の海賊に関してもASEANで同様の多国間協力の模索があり、こうした国連あるいは多国間ベースでの集団安全保障措置に日本が参加することは充分にあり得ることだし合法的でもあるが、それと新テロ対策特措法は何の関係もない。出鱈目な議論の横行を許してはならない。(この記事は《ざ・こもんず》からの転載です)▲

2008年8月 2日

INSIDER No.451《AGRICULTURE》農業政策の議論を深化させないと──所得保障と補助金バラマキは違う

 7月20日のサンプロでは、最初の「民主党代表選挙」にからむ議論で、山岡賢次=同党国会対策委員長の「すべての農家に所得補償を」という同党政策についての発言に対して、財部誠一が「バラマキだ、社会主義に戻るのか」と批判し、「この後の特集を見て下さいよ」と言った。後の特集とは、財部がリポーターを務めた「農業」シリーズ第2弾「日本農家はドバイを目指す!」で、そこでは農水省に頼らず自力で農産物の海外輸出の道を切り開くたくましい農家集団の姿が描かれていた。これはこれで誠に面白かったのだが、このように自立した農業経営者が出てきているのに、やる気のない非効率的な零細農家まで所得補償で救済しようとするのはバラマキだというのは、財部が少々荒っぽすぎる。

●価格補助金から所得保障への転換の意義

 第1に、政府が品目ごとの公定価格で農産物を買い上げる価格保証の補助金制度は、確かに一律平等の社会主義的=反市場原理的なバラマキ政策で、農家の経営努力へのインセンティブを押し殺す役目さえ果たしてきたが、それに替わるものとしてEUが10年以上前から(米国も部分的に)導入しつつある所得補償制度は、それとはむしろ原理的に正反対で、基本的にはWTOの農業自由化の流れに沿って農業を市場原理に委ねつつも、しかし農業は本質的に市場原理に馴染まない特殊性があるため、その部分を公的に(税金などで)支えることで農業の市場原理への適合を促そうとするところに狙いがある。日本では、07年度から「品目横断的経営安定対策」なるものが実施され、これは(1)従来の品目別のマル公価格による買い上げを止めて、(2)個別農家の場合4ヘクタール(北海道は10ヘクタール)、集団営農組織の場合20ヘクタール以上の規模を持つ“担い手”に対象を絞って、(3)過去5年間の米、麦、大豆(北海道の場合は甜菜と馬鈴薯を含む)を合わせた標準収入(実際には両極端を除いた3年分の平均)より収入が下回った場合に、下回った額の9割を国や生産者積立金から個別の農家に直接支払う——というもので、一応は、一律価格保証から個別所得補償へという世界的トレンドに沿った転換ではある。両者の違いを知らずして所得補償制度を過去と同じバラマキ政策として批判するのは、初歩的な間違いである。

 第2に、農業が本質的に市場原理に馴染まない特殊性とは、(1)農業は天候に左右されることが甚だしく、僅かな生産量の増減がレバレッジ的に大きな価格変動をもたらす(例えば前年比10%の収穫増が40%の価格下落を引き起こす)ことが日常茶飯で、工業と違って合理的な経営計画が立ちにくい、(2)平地の大規模経営と山岳地帯(日本で言う中山間地)の小規模農家との経営環境の違いが大きすぎて、同じ競争条件で市場に立ち向かうことは不可能である、(3)しかし山岳・中山間地の小規模農家は、農業のみならず水系の保全、土壌の維持、森林の保護など自然環境の保護でも重要な役割を担っており、それなくしては実は平地の大規模農業のインフラも確保できない——などである。これらの経済合理性だけでは割り切れない農業の特殊性を無視して、零細農家を一律に「やる気がない」などと決めつけて簡単に切り捨てようとするところに、財界や経済財政諮問会議や日経新聞などによる農業論の欠陥がある。

●専門家なる学者の暴論

 昨年9月に『日経ビジネス』に掲載されて議論を呼んだ神門善久・明治学院大学教授のインタビュー「農家切り捨て論のウソ」は、そのような言説の典型だった。

「『零細農家、切り捨て』などという論議は、農業問題に長年取り組んできた私のような立場からすれば、ちゃんちゃらおかしい話です。第一、あれは大衆迎合的なマスコミが作り上げた“お涙頂戴”のストーリーでしょう。そんなマスコミのストーリーに政党が便乗しているだけです。零細農家が切り捨てられるなんてことはあり得ません」

「マスコミは『零細農家イコール弱者』のような形で描きたがりますが、現実には彼らほど恵まれた人たちはいない。農地の固定資産税が軽減されているうえに、相続税もほとんどかかりません。たとえ“耕作放棄”をしていてもですよ。そのうえ、農地を売却すれば大金を手にできる。『田んぼ1枚売って何千万円も儲けた』なんていう話はザラにある。しかも、そうした農地の多くは敗戦後の米国主導の“農地解放”を通じて国からもらったようなものです。濡れ手で粟なんですよ」

 この人が本当に「農業問題に長年取り組んできた」のかどうかは疑わしい。農地を売れば大金を手に出来るなどというのは都市近郊のごく限られた地域の話で、ほとんどの中山間地ではそんなことはあり得ない。現に東京から車で1時間半弱の鴨川市の私の家の近所では、ある農家が「宅地・建物を1500万円で買ってくれれば5反歩の田んぼをタダで付けてあげる。ただし、その田んぼを維持してくれる人に限る」と言って売りに出している。宅地・建物だけでその値段はまあ妥当なので、農地の値段などタダ同然ということになる。そこまで中山間地は切迫している。彼はまた言う。

「最近、『仕事がなくて生活に行き詰まり、一家心中した』という悲惨なニュースを耳にしますが、あれは都市部の話です。「農業に行き詰まり、生活苦のために零細農家が一家心中した」などという話は聞いたことがありません。零細農家には切迫感がないのです」

「いいですか、日本の零細農家の大半が兼業農家なんですよ。兼業農家の全所得に占める農業所得がどのぐらいか知っていますか。たった15%程度ですよ。兼業農家の家計収入の大半は、世帯主らが役所や企業などで働いて得る、いわゆる“サラリーマン収入”なんです。だから、本当は彼らのことを兼業農家ではなく、“農地持ちサラリーマン”と呼んだ方がよいのかもしれません。繰り返しますが、彼らは農家と称しながら、実は農業所得に依存していない。ハナから農業所得なんか家計の当てにしていませんよ。なのに、そこに国が所得補償するのはおかしい」

 農家が生活苦で自殺することが少ないのは、自分らで食い物を作っているからだし、またいざとなれば村のコミュニティが支える共助システムが働く余地が残っているからである。彼らこそがむしろ人間本来の暮らし方を保っていることを尊敬こそすれ侮蔑するべきでない。また兼業農家は、兼業することで辛うじて農業の底辺を守り耕作地の減少と自給率の低下を食い止めているのであり、兼業だから裕福で農業には真面目に取り組まない不逞の輩だとどうして決めつけることが出来るのか。むしろ長い日本の歴史の中で、農業はほとんどが兼業で営まれてきた——というよりも、どんな職業の人も何らかの程度田畑を持ったり関わったりして自給的な生活をしていた事実を無視して、戦後農政が愚かにも専業化・効率化・大規模化を闇雲に推進してきたことが日本の農業を破滅に導いたのであり、それへの反省から新農基法によって農村社会のあり方や環境問題も視野に入れた方向に転換しようとしていた矢先に小泉流市場原理主義に基づく経済財政諮問会議の路線が出てきて、この人のように零細・兼業農家そのものを否定するかの暴論が出てきて、農水省もそれに引きずられることになった。

●日本では中山間地対策が重要

 第3に、その上で、欧米と日本との違いにも着目しなければならない。欧米では、日本に比べて遙かに農業経営の大規模化・効率化が進んでいる状況下で、補助金制度から所得補償制度への転換が行われた。ところが日本では、国土全体で中山間地が69%を占めており、農地の42%も中山間地にある。平地では、1haの農地を10倍に規模拡大すればその通りとは言えないまでも相当の効率化が望めるが、中山間地では10倍に拡大しても効率はほとんど変わらない。その条件下では、株式会社などへの農業への参入を自由化したところで、株式会社は平地には関心を持つが中山間地には関心を持たない。また農家自身による集団営農も、とりわけ中山間地においてはかなり難しい。そこで農水省は、4ヘクタール、集団営農10ヘクタール以上でないと所得補償の対象となる“担い手”に値しないという線引きを行ったのだが、ではそれ以下の農家はどうするのかについては全く考慮せず、集団営農に踏み切らないなら絶滅しても仕方がないという態度である。これは、農水省自ら新農基法の根本趣旨に反していることを意味していて、上にも述べたように、農水省が経済財政諮問会議の路線に引きずられた結果と言える。

 問題は、次のように整理されるべきだろう。

 第1に、所得補償制度が旧来の補助金バラマキとは違って、市場価格との不可避的な乖離を補償することで農業の市場原理への適合を促すところに眼目があることをはっきりと認識すべきである。経済財政諮問会議の路線の立つ人たちはこのことさえ分かっていない。

 第2に、では日本の所得補償制度としての「品目横断的経営安定対策」は妥当なものかと言えばそうではなく、とりわけ「4ヘクタール」と足切りをしたことの是非が論争の中心問題で、自民党=農水省と民主党の意見の違いは主としてこのことに関わっている。その上で、補償はなぜ10割でなく9割なのか、対象品目がなぜ3品目のみなのか、なども大いに議論の対象となりうる。農水省はこのことをよく整理でていない。

 第3に、食をめぐる諸問題の解決を図る上で、日本の耕地の4割を占める中有山間地とそれを担う零細・兼業をどうするのかこそが中心的な政策テーマとならなければならない。専業化・効率化・大規模化は、それが出来る地域では徹底的に追求されるべき経済政策ではあるけれども、それだけで日本の食と農が抱えるずべての問題を解決できると思うのは大錯覚である。農水省はこのことをよく分かっていない。(本記事は7月22日付けの《ざ・こもんず》ブログに掲載したものに若干手を加えました)▲

INSIDER No.450《FUKUDA》これで政権喪失を回避できるのか?福田改造人事──福田vs麻生の暗闘に公明党の及び腰が絡む三つ巴

 8月1日発足の改造内閣を福田康夫首相は「安心実現内閣」と命名した。しかしこれは、国民にとっての安心実現とはほど遠く、むしろ福田自身がコケることなく政権を長続きさせて、出来れば来春の解散・総選挙で政権を奪われることを回避したいがための「安全運転内閣」と呼ぶにふさわしい。

●小泉「改革」を捨てていいのか?

 改造人事の特徴の第1は、小泉色の完全払拭である。小泉〜竹中路線の流れを汲む「経済上げ潮=改革継続派」の主唱者である中川秀直を要職に登用せず、それに連なる大田弘子と渡辺喜美は経済財政相と行革担当相から外した。反面、その経済財政相のポストをわざわざ、中川と真っ向対立してきた「消費税増税派」の筆頭=与謝野馨に与え、さらにそれと主張を同じくする伊吹文明前幹事長と谷垣禎一前政調会長を党4役から横滑りさせてそれぞれ財務相と国土交通相に就けた。小泉の郵政改革に反対して一時離党した保利耕輔と野田聖子を法相と消費者行政担当相に引き上げたこととも併せて、「小泉改革路線の否定だとの声も」(2日付読売)でて当然の露骨な反小泉姿勢の表れである。

 与謝野は、小泉内閣の後半でも経済財政相を務めたが、前任者の竹中平蔵が官僚政治打破の砦としてフル活用した経済財政諮問会議の骨抜き化に腐心した。安倍・第1次福田内閣でそのポストを継いだ大田は、竹中時代に戻そうと努めたものの、トップの姿勢が軟弱では孤軍奮闘に陥らざるを得なかった。こういう文脈で与謝野が経済財政相に返り咲いたことで、小泉政治の象徴としての経済財政諮問会議もまた事実上、終わった。

 恐らく福田は、悪いことは全部小泉改革のせいだと言わんばかりの俗論に与しているのだろう。小泉内閣の官房長官を長く務めた福田とにしては奇妙なことではあるが、彼は森第2次内閣で官房長官に就いて、森が小泉に代わっても留任を求められたのであって、「別に小泉に登用されたわけではない」というプライドがあるのかもしれない。福田が父親の秘書官を務めている頃、小泉は福田邸の書生だった。

 しかし、小泉改革が諸悪の根源だというのは、藤原正彦レベルの全くの俗論でしかない。確かに、規制緩和や民営化、市場原理導入のやり方はしばしば乱暴で行きすぎの部分もないではなかったが、その根本趣旨は、明治以来100年を超える発展途上国型の官僚政治の跋扈と正面から対決して、世界第2位の成熟経済大国にふさわしい次の100年の経済・社会の運営のシステムを政治主導で作り出していこうとするところにあった。それが不徹底に終わっていて、景気、物価、税制、福祉、医療、安保など国民生活に直結する難問山積みの中で、そのどれもがいちいち官僚体制の壁に阻まれて、個別バラバラでその場限りの対応策しか打ち出せないでいることが、福田政治の閉塞の原因であって、本当は、「改革」の旗を一層高く掲げて、政治がトータルなビジョンと戦略を示して国民の納得と支持を獲得し、そこで得た力を背景に苔生した官僚体制の壁を打破していくだけの気迫を示さなければならない。それが出来ないからこそ、「福田は何をしようとしているのか見えない」と言われてきたというのに、相変わらず何をしたいのか、政策の方向と優先順位が不明確なままに、実質的には官僚迎合の反改革的人事を行って事足れりとしているところに、福田の限界が露呈している。

 簡単に言って、官僚体制の無能と怠惰を打破しうる人材を要所に配するという考慮の跡が一切感じられないというとの一点で、この内閣は既に落第である。

●麻生は「選挙の顔」になるのか?

 人事の特徴の第2は、麻生太郎の幹事長登用で、これが今回の目玉である。表向きは、どうやっても支持率が上がらず「福田では選挙は戦えない」という声が与党内で広がる中で、国民的人気がある(ということになっている)麻生を取り込んで「選挙の顔」にしようという狙いだが、裏側では、このまま行けば秋にも「福田下ろし」の動きが賑やかになるのは必至で、その時に反福田勢力に担がれる筆頭は麻生なので、予め取り込んでその動きを封じようということだろう。いずれにしても、福田にとっては麻生の取り込み以外に政権を維持し選挙に立ち向かう道筋はなかった。

 麻生にしてみれば、福田政権発足時に「原理が違う」とまで言い切って入閣を拒んだ経緯からして、今さら福田の誘いにホイホイと乗ったのでは面子が立たない。しかし、このまま非主流的立場を貫いて福田に手を貸さなければ、自民党が惨敗して政権を失う公算が大きく、ということは麻生政権の可能性も遠のく。逆に福田の懐に飛び込んでおけば、一方では、福田の評判がますます悪化して総選挙前に禅譲、文字通り麻生の顔を前面に押し出して選挙を戦うという、労せずして「福田下ろし」が成功したのと同じことになるケースも出てくるかもしれず、他方では、そうでなくても幹事長として政策と選挙対策を取り仕切ることで負け方を少なくして、選挙後に自ずと総理の座が転がり込んでくるケースもないではない。

 心が揺れ動く中で、麻生はまず古賀誠選対委員長の権限を削いで幹事長に選挙対策の権限を渡すことを条件として突きつけたが、これは福田内閣発足時に党則を変えてこのポストを「党4役」の1つに付け加えた経緯があって、福田としては到底受け容れられない。そのため幹事長選びは7月31日夕の段階で一時混沌とするが、同夜福田が直接麻生に電話、翌日午前中に両者会談が実現して麻生の受諾が決まった。そこで麻生が何を要求したかは明らかでないが、多分福田は「あなたが頼りだ。好きなようにやってくれ。場合によっては選挙前の禅譲もありうる」くらいのことを言ったのではないか。「麻生氏サイドは事実上の“総理総裁分離”を勝ち取ったと受け止めているようだ」(2日付毎日)というのはそういう意味だろう。

 自民党内のレベルでは、この2人の虚々実々の暗闘的な駆け引きが政局の行方を左右することになる。副次的には、麻生と古賀の関係も難しく、選挙対策の権限をめぐって鞘当てが続くことになろう。

 政権内のレベルでは、これにさらに、連立そのものに及び腰になりつつある公明党の思惑が絡む。公明党としては、ともかく「福田と心中したくない」の一心で、この改造を機に一段と福田と距離を置きつつ、福田でなく麻生による総選挙を早期に実施することで野党転落を避けることは出来ないかと考えている。早期を望むのは、同党が最重視する来年7月都議選との関係で、それより少なくとも3カ月以上前に総選挙を済ませたい思惑があるためで、福田が想定する来年度予算成立後、春の総選挙には断固反対、年内か遅くとも年初の実施を展望している。それに絡むのが秋の臨時国会の会期と来年1月に期限切れを迎えるインド洋での海上自衛隊の給油活動のための特別措置法の扱いで、公明党としては、元々創価学会内でも評判の悪い同法を延長し、しかも選挙直前という時期にまたもや衆院3分の2の再可決という形で強行する姿を晒したくない。そのため、会期は短く同法延長は見送りにしたいが、麻生は「再可決を辞さず」の構えで、こればかりは折り合いがつきそうにいない。

 このあたりを何とか丸く収めようと、福田は今回公明党に、浜四津敏子代表代行の入閣を求め、さらに従来から1つだった同党閣僚ポストを2つにしてもいいとまで媚びたが、同党の反応は冷ややかで、「1つで結構、それも袋叩きに遭いやすい国交相などではなく当たり障りない環境相あたりで」というものだった。福田の「春に総選挙」路線にはついて行けない。麻生で年内総選挙ならOKだが、特措法の扱いでは麻生と折り合えない。さて公明党はどうやって連立を維持しつつ生き残るのか。

 自民・公明両党とも、政権喪失の危機に直面していることが分かりきっていながら、ますます呉越同舟的な連立船に乗り合わさざるを得ず、力を合わせて難局を突破しようという求心力はむしろ弱まっている。その点でもこの人事は不成功である。

●「改革」の本道は民主党政権に受け継がれるのか?

 こうした有様では、内閣支持率も、一度はご祝儀相場で数%上がるかもしれないが、大きく改善することはあるまい。「改革」の本道から遠ざかって、個々の問題にその場しのぎの対応を重ねるばかりでは、とうてい国民に「安心」を与えることは出来ないからである。まさにそこに小沢=民主党のチャンスがある。

 民主党の代表選に対立候補が出るかどうかという問題は依然くすぶってはいるが、私の見るところでは対立候補は出ず、渋々ながらというのも含めて満場一致、小沢再選となる。なぜなら、誰が出ても形の上だけの対立候補となることが決まり切っていて、かえって国民をシラケさせる危険のほうが大きいからである。小選挙区制導入後、12年目にして初めて、選挙を通じて正々堂々と政権交代を実現する可能性が見えている中で、現在の政界では、かつて自民党離脱時に『日本改造計画』を出版して80万部を売った実績のある小沢ほど“骨太”のトータル戦略を描ける人物はいないし、しかも政権を獲ることの面白さも怖さも知り尽くしていて、なおかつ選挙戦術の手練手管を駆使してそれを達成するノウハウを持っている者はいない。彼は極めて問題的な人物ではあるけれども、政権を獲りに行くには彼の凶器性を活用しないという選択は民主党にとってあり得ない。そういう小沢に対する“冷たい合意”はすでに同党内の8〜9割に行き渡っているのではないか。

 小沢の側では、党内の政策面での異論を吸収しつつ一刻も早く改革の大プランをマニフェストとして明らかにして、それをテコに冷たい合意を“熱い合意”に転換することだろう。そこでの勝負は、自民党的政策の部分性・目先性に対して全体性・未来性を対置できるかどうかである。

 例えば、福田が口約束した「道路特別会計の一般財源化」を、財務省の手先のような谷垣新国交相がどう扱うかは既に見えている。ガソリン税の値上げはそのままにして、申し訳程度に無駄な道路計画の見直しを行って、ほぼそっくりの財源を国交省から取り上げて財務省の懐に移すというだけのことだろう。それ対して民主党が対置するものがあるとすれば、ガソリン税の値下げというにどどまらず屋上屋を重ねて複雑怪奇になっている自動車関連税制全般の見直しと再編を踏まえて、道路計画についても新たな明確な基準で抜本的な見直しを行って、しかもその財源を財務省には手渡さずに直接に地方に分配して、この面からも地方分権を一層促進する、といった方策であろう。すべての政策課題を、そのように、当面の弥縫策の積み重ねから解き放ち、官僚体制と対決して抜本的な改革に繋げていくように提起すること。それによって民主党は、福田政治の限界はもちろんのこと、小泉政治の限界をも突破して、本当に国民に安心を与えるとはどういうことかを提案することが出来る。

 秋の政局を通じて自民党政治はあいかわらずゴタゴタ続きとなるが、その時に民主党もまたモタモタしていたのでは、来るべき総選挙で国民は何を選択すればいいのか相変わらず分からないことになる。福田はやっぱり自分を変えられなかった。さて、小沢は本当に自分を変えられるのだろうか。▲

Profile

現在、INSIDERニュースレターの内容は、ご覧の《THE JOURNAL》内でブログの形で公開されております。
誰でも無料で閲覧し、またそれについて感想や意見を書き込むことが出来るようになっておりますが、従来通り、お手元に電子(Eメール)版配信もしくは印刷版郵送の形で講読を希望される方は、引き続きEメール版:年間6,300円(税込)、ペーパー(紙)版:年間12,600円(税込)をお支払いください。[法人購読の場合は年間105,000円(税込)になります]
ウェブ上で無料で閲覧できるものが、Eメール版・ペーパー(紙)版が有料なのはどういうわけだと思われるかもしれませんが、後者の場合、読者名簿管理と請求の事務、配信と郵送の手間が必要であり、とりわけ印刷版の場合は紙代、封筒代、印刷代、郵便代のほか宛名を印刷して封筒に貼り、印刷されたものを三つ折りして封入し、糊付けし、紐で束ねて郵便局に運び込むのに膨大な手間とコストがかかっていることをご理解下さい。
また、無料で閲覧できるならそちらに切り替えたいという方もおられると思いますが、残余の購読期間は引き続きEメール版もしくはペーパー(紙)版を配信させて頂き、購読料を途中返還することは致しませんのでご了解下さい。

BookMarks

TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

INSIDER(インサイダー)
http://www.smn.co.jp/insider/

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.