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2008年7月14日

INSIDER No.449《SUMMIT》予想どおり“失敗”に終わったサミット──なのに「共有」「合意」という見出しを乱舞させるメディアの罪

 言葉のお遊びはいい加減にして貰いたい。毎日新聞を例にとれば、G8の結果について報じた9日付一面トップが「2050年半減『世界で共有』/G8合意/中期目標は数値盛らず」、翌日のMEMについて報じた10日付が「『長期目標共有』で合意/温暖化でG8と新興国/『50年半減』盛らず」と大見出しがついているが、これはどちらも「『50年半減』で合意成らず」でなければおかしい。

 9日付の見出しだけ読めば、「2050年CO2半減」の長期目標についてG8が合意したという印象しか浮かばない。ところが実際には、記事の中身は誰もが理解できるように、米国は明らかにこの長期目標に反対で、G8は合意に失敗した。また「半減」をいつを基準年にして達成するのかについて欧州と日本との間で大きな食い違いがあり、それを埋めることにも失敗した。従ってさらに、それを達成するための現実的な目標として2020年の中期目標を確定することが長期目標への真面目さを占う試金石として注目されたが、もちろんそれにも失敗した。

●メインテーマにしたのが間違いの始まり

 そもそもから順を追って言えば、まず日本国内でさえも確かな合意がない。安倍晋三前首相は6日のサンプロに退陣以来初めてTV出演して、終始にこにこと愛想よく、饒舌に、「昨年のドイツ・サミットで《2050年にCO2半減》を提案して『真剣に検討する』という議長総括を引き出したのは自分だ」と語った。しかしその中身のことになると、半減というのがいつを基準年としての話なのかについては曖昧のままに留まっていて、「数値目標というよりビジョンを共有しようという呼びかけだった」ことを認めた。

 このように、曖昧なことを足して二で割るといった調子で安易に口にして、後なって困ってしまうというのが日本外交のパターンで、あの京都議定書にしてからが、欧州がそれなりの意思統一に基づいて90年基準で8%という目標を明示しているのに対し、当初は米国も日本も反対していた。ところがゴア副大統領が乗り込んできてこれもまた唐突に「米国は7%」と言い出して、驚いた日本は弾みで「じゃあ6%」と言ってしまって、結果的に全く達成できずに窮地に追い込まれた。その反省に立てば、今回のサミットで国内議論の調整と米欧それに中印など新興国との摺り合わせを万全にすることなく、地球温暖化をメインテーマに押し上げることは危険極まりないことと考えるのが普通なはずだが、外務官僚の入れ知恵なのかどうか、福田康夫首相は「昨年の安倍は半減を『真剣に検討する』に留まったので、今年はそこから一歩踏み出して『合意』に持ち込めれば大成功」という課題設定をしてしまった。

 それならそれで、まず国内の議論を固めなければならないが、そこではまず《2050年にCO2半減》を安倍の言うように単なるビジョンとして神棚に飾っておこうという話なのか、それともG8共通の数値目標として義務化しようとするのかを明確にしなければならなかった。が、そこは曖昧のまま福田は「福田ビジョン」で独断専行的に《2050年にCO2半減》を長期目標だと宣言した。ビジョンであれば、どうせ42年も先のことでそのころ世の中がどうなっているかも分からないから「まあいいか」という程度の合意らしきものは達成されうるが、それが長期目標であるならば、基準年を明確にして、さらにその達成のために必要な2020年の中期目標を明確にしなければ目標にはならない。ところがそうなれば産業界ははっきりと反対で、中期目標は国内的に設定不可能である。それでは、世界の誰も長期目標を真面目なものとは受け止めないから、何の説得力もない。ブッシュ大統領を説得できなかったのは当たり前で、そのためG8は長期目標も中期目標も具体的な数値をあげて「合意」を達成することは出来なかったである。

 ではG8は何を合意したのかと言えば、「50年半減」を気候変動条約の全締結国と共有し採択を求めることに合意したのだが、G8で合意できなかったことをどうして全世界に向かって合意を求めることが出来るのか。「何を言ってるんだ、顔を洗って出直してこい」と言われるに決まっている。事実、G8翌日のMEMでは早くも「50年半減」が消えて、「世界全体の長期目標共有を支持する」ことで「合意」した。内容抜きの長期目標を共有するというのは一体どういうことなのか。長期目標を共有できればそれに越したことはないけれども、具体的な数値やその負担率に踏み込んだら全く合意不可能ですね、という意味である。日本国内もG8もMEMも全部「総論賛成、各論反対」で、しかも後になるほど内容が後退している。こういうのを「失敗」と言うのである。

 何で新聞ははっきり「失敗」と書かないで、「共有」とか「合意」とか、さも何事かが成し遂げられたかのような言葉のトリックにいそしんで福田や外務省を喜ばせようとするのか。しかもそのメディアの「サミット翼賛」の大合唱を調子を合わせて、広告までもがエコ技術の全面広告(旭化成など全紙に3ページ広告を打った!)ではやし立てている有様は一体何なのか。電通がこのサミット特需で大儲けして、新聞もその広告ほしさにデタラメ記事を書いたというのが真相であれば、この国のジャーナリズム精神は死に貧していることになる。

●目標は「低炭素化」でなく「無炭素化」ではないのか

 もっとそもそもという話をすれば、《2050年にCO2半減》という目標そのものが馬鹿げているのではないか。その頃には、誰が考えても石油生産は世界的にピークを過ぎて急速に生産量が下降に向かっているにちがいなく、私がサンプロで発言したように「放っておいてもそのくらいのCO2は減っていく」(田原総一朗さんも「あっ、そうか」とか言っていた)。だから、「低炭素化」の中期目標を2020年に設定することには意味があるかもしれないが、長期目標を2050年に設定することにはほとんど意味がない。2050年について語るなら「無炭素化」=「脱石油」の目標であって、そこでは、石油に代わる新しいエネルギー源をどれだけ開発し普及させるかを各国が競い合うことでなければならない。

日本は、2050年までに世界に先駆けて(議論の余地はあるところだが例えば)「水素エネルギー社会」を作り上げてその技術を中国はじめアジアにも惜しみなく注ぐつもりであって、米国あたりがグズグズ言って石油の海に沈みたいのなら日本独力でも《2050年にCO2半減》を遙かに超えて世界とアジアの無炭素化を実現する核であるとでも宣言するなら、日本は「オ、オーッ」と世界をうならせたかもしれない。せっかくのチャンスをピンチに変えた福田首相の暗愚が問われるところである。▲

INSIDER No.448《FROM THE EDITOR》

●「大阪高野塾」第7回は7月15日に開催!

 大阪高野塾の第7回は7月15日18:30より、北浜東のエルおおさかで開かれます。詳細はhttp://osaka-takano.com/schedule/100000003157.htmlをご覧下さい。

●8月モンゴル旅行は中止となった!

 かねてお知らせしてきた8月のモンゴル旅行は、諸般の事情により中止します。事情とは、期日までにお申し込みいただいた人数が私共が内々に想定していた最少催行人数をやや下回る程度にとどまったこと、私自身と主催者である創樹社の山川氏がそれぞれに仕事上、俄に身辺多忙になってきたこと、さらに6月末の総選挙後に現地の政情が不安になっていることなどで、それらを勘案して無理に実施することもあるまいとの結論に至ったものです。お誘いしておいて、読者のからからも何人かお問い合わせなど頂いていたにもかかわらず、このようなことになり誠に申し訳ありませんが、ご了承下さい。来年はモンゴルもしくはウズベキスタンの旅を企画する予定ですので、ご期待下さい。

●「ジャーナリスティックな地図」が発売された!

 私が池上彰、麻木久美子両氏と共に監修に携わった地図帳『現代世界を斬る!ジャーナリスティックな地図/世界・日本』が帝国書院から発売された。後半は普通の世界と日本の地図帳、前半は50余りのテーマについて地図・写真・データ・グラフをふんだんに使って解説したテーマ図で、環境、社会、政治経済、国際、文化・娯楽などの分野の身近な問題について分かりやすく解説している。

 7月2日発売で、その日に麻木さんのご尽力で「はなまるマーケット」で5分間ほど取り上げられたことも奏功して、初日にして「楽天ブックスデイリーランキング」14位、「アマゾン総合ランキング61位を記録した。定価1600円。是非お買い求め下さい。

●《ざ・こもんず》は内容・形式とも全面刷新する!

 本誌が運営するブログ・サイト《ざ・こもんず》は、依然試行錯誤の最中ですが、このたびコンテンツとスタイルの両面で大刷新を敢行し、再スタートする予定で、現在鋭意準備中です。詳細が決まり次第お知らせします。ご期待下さい。▲

2008年7月 8日

INSIDER No.447《TASPO》タスポ・カードの怪(続)──タスポ・カードの普及率は22%

 前回に米英で1000円たばこになって何が起きたのか、知っている人がいたら教えて!と書いたが、まず起きることは密輸の激増で、毎年3%ずつ値上げするという世界最先端の高価格・高税率(現在85%!)政策をとっているイギリスでは、たちまち密輸が増えて、2000年に2億ポンド(約440億円)以上の予算を付けて税関職員1000人を増員して対策を強化した。もしこの対策を採らなければ、2003年度のたばこ市場における密輸シェアは36%にも達しただろうと英歳入関税庁は自賛している(が、同年度の実際の密輸者シェアはまだ19%もある)。実際にはアイルランドなど低価格国から旅行者が大量に持ち帰るといったケースが多いらしい。ロシアではマールボロが何と123円だから、ロシアン・マフィアの暗躍もあるかもしれない。カナダでも高価格にしたら密輸が増え、仕方なく税率を下げた。1000円論の落とし穴の1つは密輸対策のコストということになる。

 さてこの記事はタスポについて書こうと思って始めたのだが、たばこ1000円論にかかずらって遠回りをしてしまった。が、このタスポという制度もまた、これまで述べてきた喫煙者を差別しつつ搾取するという官の薄汚い思想を基盤として立ち現れてきたものなのだ。

●手続きの煩わしさ

 実際、このタスポというシステムくらい馬鹿馬鹿しいものはない。

 第1に、たかがたばこを買うのに、顔写真入りのカードを(事実上)政府に申請して許可を得た上で常時持ち歩くよう喫煙者に命じるというこの異常なまでの仰々しさは、一体何なのか。お前らは喫煙などという社会的な迷惑を撒き散らしているけしからん輩なのだから、そのくらいの手間すなわち労力と時間を費やして「自販機でたばこを買わせて下さい」と政府にお願いするのは当たり前だろうが、という侮蔑的・差別的な姿勢が見え透いていて、繰り返すが、後期高齢者に対する酷薄な扱いと同質のものがある。

 ある禁煙運動家のサイトには「たばこ使用はニコチン依存症をもたらすので、喫煙者はたばこについてだけは自己判断力を発揮することができなくなるのです」とまで言っている。そういう重度中毒者もいるかもしれないが、飲酒者が全部アル中患者でないのと同様に、喫煙者のすべてがそうではない。私など、前に述べたように1日2.5箱の世間的に言うヘビー・スモーカーであるけれども(もっとも本数でヘビーかどうかを決めるのは科学的根拠がないという説もある、そりゃあそうだよね、タール8mgのと1mgのとを同じ本数を吸って害が同じ訳がない)、例えば米国に行った時には、特に東海岸や西海岸での極端な喫煙差別が不快なので、1週間なら1週間の旅行期間中、全く吸わない。日本にいても、たまの休日に「今日は吸わない」と決めて吸わない日もある。また会議や飲食店でも“間接禁煙”を嫌がる(もしくは嫌がりそうな)人の前では遠慮するようにしている。私は明らかに自己判断力を発揮して吸ったり吸わなかったりしているのであって、偏見に基づく差別は不当である。

 ご存じかとは思うが、タスポ・カードの給付を受けるには、(1)たばこ屋の店頭で貰うかTASPOのホームページからダウンロードするかして専用の「申込キット」を入手する、(2)運転免許証・各種健康保険証・住民基本台帳カード(写真付)・各種年金手帳・各種福祉手帳・外国人登録証明証・住民票(写し)のいすれかのコピーを用意し、(3)3カ月以内に撮影した縦45ミリ×横35ミリの正面・無帽・無サングラス・無マスク(当たり前だろう)・無背景の顔写真に用意し、(4)申込書に姓名・生年月日・自宅電話・住所を記入し捺印ないしサインして、(5)郵送で申し込む。それが物理的に面倒だということもさることながら、何でこんなことをしてまでアホ官僚どもを満足させなければならないのかという怒りが先に立って、意地でもタスポなんぞ作るものかと思う人が多い。

 私はもちろん作らないし、先日、映画監督・俳優の奥田瑛二が鴨川の拙宅に遊びに来たときに「作る?」と言うので「断固拒否」と答えたら「そうだよね、俺も作らない」と。「だけどイザという時に困るから、事務所のスタッフには『お前、作っとけ』と言っておいた」と狡いんだよね。でも人間としてのプライドに賭けてこんなものは作らないという人は少なくないでのはあるまいか。私は以前から、近所の薬局兼たばこ屋やコンビニでカートン単位で買い置きしており、特にコンビニで買うと100円ライターをおまけしてくれるから1箱320円が310円になってそのほうがいい。

 そういうわけで、手続きの煩わしさだけでなく、その背後にある差別思想が嫌なので、カードを作らない人のほうが多いという結果になるだろう。日本たばこ協会が6月26日まとめたところでは、タスポ普及率は喫煙者の22%にとどまっている(27日付朝日「タスポ普及2割/作成の手間が足かせ?/税収減の可能性」)。協会などは「これから普及が本格化する」と強気を崩していないが、私はすでに制度設計の失敗が見え隠れし始めていると思う。

●「タスポ特需」を生む巨大システム

 タスポの馬鹿馬鹿しさの第2は、開発と初期導入に900億円をかけ、今後も運営に年間100億円を費やし続けるというこのシステムの巨大さである。

 世界各国の自販機規制対策を見ると、自販機そのものを廃止・撤去した国が多く、フランスはじめ西欧ではベルギー、オーストリア、北欧ではノルウェー、旧ソ連・東欧圏ではハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、ブルガリア、それにロシア、東南アジアではシンガポール、タイ、香港などがそうだ。次に多いのは、日本もそれまでそうしていたように、自販機の設置場所を管理・監視可能な屋内の場所に限定するというもので、イギリス、イタリア、スペイン、ポルトガル、フィンランド、チェコ、カナダ、オーストアラリアなど。成人識別カード方式を採るのはドイツ、オランダ、韓国、日本だけである。米国は全土で15万台で、州によって対策は違うが、おおむね場所規制である。

 ドイツは自販機が85万台もあって、日本の62万台(昨年末で52万台に減ってこの騒動でさらに減りつつある)に比べて人口当たり2倍もある突出した自販機天国である。オランダは2万台しかない。ドイツとオランダの成人識別の方式は、既存のゲルトカルテ(電子マネー機能付き銀行カード)に「16歳以上」であることを確認するためのタグを電子的に追加するという簡便なもの。韓国も、国民が全員持っているIDカードをそのまま使っている。

 それに対して日本は、財務省の指導の下、たばこ販売業界の団体である日本たばこ協会、小売店の組織である全国たばこ販売協同組合連合会、自販機メーカの日本自動販売機工業会の3者共同で全く新しいシステムを構築することを早々に決めて2001年から取り組みを開始、千葉県八千代市、鹿児島県種子島での実証実験を重ねてこの7月1日から全面実施に入った訳だが、こんな壮大な無駄を自販機ごときに費やしているのは全世界で日本だけなのだ。多くの国のように、この際キッパリと自販機をやめてしまえば、廃棄のコストだけで済むが、それでは喫煙者を「生かさず殺さず」にして税をあげるという財務省の大原理が破綻する。何とかして未成年者には自販機で買わせないようにしながら売上げも税収も減らさない方法はないかとこねくりまわしているうちに、とんでもない迷路に填り込んでしまったという訳だ。

 まず50〜60万台の自販機を成人識別機能及び電子マネーのチャージと引き落としの出来る機能が付いた最新型に入れ替えなければならないから、富士電機、サンヨー、オムロン、グローリー、サンデンなどの自販機メーカーにとってはその分が丸々新規需要として降って湧く。次にシステムの開発・運営にはNTTデータ、NECトーキン、NTTドコモ、大日本印刷、トッパンホームズ、トランスコスモス、日立製作所、ベルシステム24が携わっていて、その新型自販機のすべてを24時間、NTTドコモの回線を通じてオンライン化してNECや日立が作った巨大コンピューターで一元的に管理する。大日本やトッパンはICカードの開発に関わってるのだろう。カードの識別そのものは端末レベルで行われるようだが(と言ってもおそらく番号を読み取って紛失・違反カードでないか確かめるだけ——顔写真を読んで本人の素顔と照合するという操作は行わない——ということは、顔写真は警官が未成年とおぼしき喫煙者に職務質問した時に他人のカードを不正使用していないかどうかチェックするためのもの)、紛失と偽って二重にカードを取得する輩を防がなければならないので、紛失届けの出たカード番号は直ちに無効にしてその旨を端末に送信しなければならない。また、このカードには電子マネーの機能が付いているので(そのほうが他人に貸与したり紛失したりしにくいという考えからそうなったらしい)その決済情報を電子マネーセンターで管理して1台1台の分を集計して端末に返さなければいけない。その上で電子マネーセンターはたばこ店ごとに売上げを振込・振替するよう金融機関に依頼する訳である。タスポ側ではさらに、カードの発行申し込みを郵送で受け付けて厳格な本人確認をしてカードを郵送するカード発行センター、さらに電話で紛失届けを受け付けるためのコールセンターも用意する。これらのシステム構築に900億円、毎年の運営費に100億円かかる。「タスポ特需」である。それを誰が負担するのか。主としては日本たばこ協会で、つまりは喫煙者である。

●個人情報の悪用の危険

 第3に、付け加えると、こんなことで簡単に役所に顔写真付きの個人情報を委ねていいのか、という問題がある。

 タスポは「誰がいつ、どこの自販機でたばこを買ったのか」という購入履歴を収集する。財務省=国税庁は、たばこが1000円になっても平気で1日3箱を買い続けている“金持ち”をピックアップして税務調査の対象にするかもしれないし、警察庁は、指名手配の犯人がたばこを買ったら直ちに通報される仕掛けを裏側に潜ませて足取り調査に利用しようとするかもしれないし、厚生労働省は職員採用に当たって喫煙者を予め排除するためにこの記録を活用するかもしれない。とにかく、顔写真付きの第一級の個人情報だから、どんな悪いことに使われるか分かったものではない。

 他方、タスポで収集された情報がハッキングなど何らかの手段で盗み取られたり、誤って流出する危険もある。

●タスポがなくても自販機で買える

 こんな馬鹿げた巨大システムを構築して、タスポホームページなどで「全国のたばこ自動販売機では『タスポ』がないと買えなくなります」などと大宣伝しておきながら、他方で財務省は今年4月、松村テクノロジーが開発した運転免許証による年齢確認システムをたばこ自動販売機に取り付けることを認可していて、数は少ないがすでに数千台は設置されている。とすると、「タスポがないと…」というのは明らかに虚偽である。松村テクノロジーは偽札鑑定技術の世界No.1企業で、松村喜秀社長は北朝鮮の偽ドル札「スーパーK」の発見・命名者として世界中に名を知られている。彼は早くからタスポを馬鹿馬鹿しいシステムだと指摘、すでに酒類の自動販売機などで実用化されている運転免許証による認証方式の導入を働きかけてきて、財務省も遅まきながらその主張の合理性を認めざるをえなかった。

 松村は日経BPのサイトでコラムを連載していて、その第24回、27回でこの問題に触れている。

★松村コラム:
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/ea/

 また松村テクノロジーのホームページでこの技術を紹介している。

★松村テクノロジー:
http://www.matsumura-tech.com/2100MA.html

 もちろん運転免許証を持たない喫煙者もいるので、これですべてを賄うことは出来ないが、初めから運転免許証でも認証できて、それを持たない人にだけ簡易なカードを発行するという仕組みにすることは出来たはずなのだ。

 もう1つ、自販機メーカーのフジタカが開発した「顔認証方式」というのもあって、これも7月4日になって財務省が認可している。利用者の目や口の大きさや配置、骨格の情報などから年代層を判断して未成年者を識別し、20歳前後と識別した場合に運転免許証識別装置へ誘導、免許証の生年月日を読み取り、年齢の確認と同時に差し込まれた免許証の写真と、利用者が同一人物であるかを照合する。免許証の写真と本人の顔のナマ映像とを照合する機能は、タスポにも松村方式にもないもので、一層の厳格性がある。

★フジタカ:
http://www.fujitaka.com/newsrelease/2008/20080704.html

 財務省が渋々ながらも松村方式、フジタカ方式を認めたのは、タスポ・カードの普及率の低さに愕然とし、その欠陥を補う手段を導入せざるを得ないと判断したからで、すでに半ば「敗北」を認めたに等しい。フジタカのホームページには「フジタカはTIOJ様のたばこカード方式には、一切反対しておりません。成人識別は、たばこ店様や利用者が市場原理に基づき判断するものと考えます」と書いてあるが、その通りで、廃業の危機に直面している零細たばこ店やタスポの差別思想に反発する利用者のこれらの非タスポ・システムへの支持が広がっていけば、タスポは嘲笑と共に「市場原理に基づき」葬られていくかもしれない。

 ちなみに、タスポと違って松村方式やフジタカ方式では、識別するときに個人情報を記録したり保存したりせず、その場で識別するだけである。(つづく)▲

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