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INSIDER No.442《FUKUDA》7月サミット後、政権崩壊へ?──首相問責“初可決”のボディブロー

 民主党はじめ野党3党が提出した福田康夫首相に対する問責決議案が11日の参院本会議で、首相に対する問責としては史上初めて、可決された。もちろん、衆院での内閣不信任決議と違って法的拘束力のない、いわば「竹光」ではあるが、そうと分かっていても、この散々だった国会の会期末に、野党がこのまま何もせずに引き下がるよりも、及ばずながら一太刀浴びせる決断に結束して踏み切った方が、国民の気分には合致している。

 法的にはともかく、政治的には、両院の1つが「福田を首相とは認めない」ことを決議したことで彼は“半総理”(13日付夕刊フジの表現)に転落した訳で、それでなくとも低迷にあえぐ福田人気がさらにズルズルと下がり、与党内での求心力も地に落ちていく助長要因となることは間違いない。平沼赳夫=元経産相(無所属)が同日夜、民主党若手の勉強会での講演で「サミットまでは福田で行くが、サミット後は総辞職や麻生太郎=前自民党幹事長への禅譲となる可能性がある」と述べたのはその通りで、この夏は政変の季節となる公算が大きい。

失敗が見えているサミット

 福田が早くから、7月サミットを苦境脱出の渡河点と定め、何とかそこまでは頑張ってサミットを成功に導き、それを反転攻勢、政権浮揚のテコにしようと考えてきたのはまぎれもない事実で、胡錦涛=中国国家主席の来日、欧州歴訪などの外交日程を組んだのも、サミット1カ月前のタイミングで9日に地球温暖化対策の「福田ビジョン」を発表したのも、すべてそのためである。しかし、そもそも数々の地球的な課題の中から地球温暖化の問題をサミットの中心議題に据えたのは、判断ミスでなければ無知のなせる業で、周知のように米国とEUと日本とBRICsと後発途上国群それぞれの都合と思惑が入り乱れている中で、それらを調整してポスト京都議定書の枠組み設定を方向付けるには、世界がのけぞるほどの強烈なメッセージを打ち出して機先を制しておいて、その勢いで各国を説得しまくって妥協点を探る以外に方法はないが、何事につけても「他人事」の障子の影法師のような福田にその迫力はない。

 実際、9日の「福田ビジョン」はお粗末極まりない。第1に、「低炭素社会・日本」をめざして2050年までに温暖化ガス排出量を「現状比で60〜80%」削減するという長期目標を誇らしげに発表した。これは、「1990年比で60〜80%」と言っているEUとの対比でそれを上回る目標を打ち出そうという狙いからのことだが、他方で「50年までに現状比で半減」というのは今や世界常識で、その時に「70〜80%」ならまだしも「60〜80%」という幅のある言い方をしても余りインパクトにならない。

 さらに、そもそもから言えば、2050年が「低炭素社会」の目標年次になるのかどうかの検討が必要だろう。「ピーク・オイル(石油生産の頂点)」は、どんなに保守的な立場を取るにしてもそれ以前には確実に訪れていて、放っておいても石油消費量は減っていく。その時点ではテーマはすでに「低炭素社会」から「脱炭素社会」に移っているはずで、例えば燃料電池=水素発電機による自動車や家庭用電力があまねく普及しているかもしれない。だとすれば、むしろ日本は「今や低炭素化の目標でいがみ合っている時ではない。50年に脱炭素社会を目指そう。日本は世界に率先して水素エネルギー社会を実現し、その技術を中国を含むアジア近隣にも積極的に提供していく」というくらいのことを言えばよかったのだ。

 第2に、50年目標では見得を切っておきながら、そこへ至る20年までの中期目標となると腰砕けで、これでは説得力がない。福田は20年までに「現状比で14%」削減するとの試算があることを紹介しただけで、目標は来年決めると語った。20年の目標を掲げられないのになぜ50年の目標が掲げられるのかの説明はない。しかも、「現状比で14%」というのは90年比に換算するとわずか4%にすぎず、昨年12月のバリ会議での20年に先進国は「90年比で25〜40%」削減という世界合意とかけ離れている。これでは、イニシアティブどころか、逆に世界から非難を浴びることになりかねない。

 第3に、国内排出量取引の制度を導入する意欲を示したのは画期的だが、具体的には「今秋から国内統合市場を試行的に実施」と表明しただけで、本格実施の時期については明言を避けた。産業界と経済産業省の反対論・慎重論を説得する目処が立っていない中で福田が周辺と図って独断専行した結果だが、経産省幹部は「試行は否定しないが、本格実施が前提なら死ぬ気で抵抗する」と語っていて(10日付朝日)、現実にはEUが主導し、米次期政権が同調して事実上の世界市場を形成しようという流れに、まだ国内市場も出来ていない日本が完全に乗り遅れることになる公算が大きい。もちろん、排出権取引そのものが果たして言われるほど有効かという根本的な議論は残っていて、仮にそれを否定するなら、企業に排出量規制に向かわせるインセンティブを与える別のメカニズムを提唱しなければならない。

 こうして、せっかくサミットの中心議題に地球温暖化を掲げたのはいいとして、産業界も含めた日本の姿勢が余りにも未整理で中途半端であるため、実りある議論となる可能性はほとんど皆無であり、従ってそれで人気上昇を図ろうという内政的思惑も失敗に終わるだろう。

●今緊急に議論しなければならないこと

 今更言っても後の祭りだが、本当はこのタイミングで世界主要国首脳が一堂に会して熱心に議論すべきは、投機マネーの暴走をいかに制御し規制するかということだろう。一方では、サブプライム問題をきっかけとした世界金融システムの動揺は、すでに山を越したという見方がある反面、米住宅価格の下落が止まらない中で今年後半にもさらに大きな谷が待ちかまえているという見方も有力である。世界金融危機を防止しそれを正しい姿に再建するために主要国首脳が一致した認識と決意を世界に示すことは極めて重要であり、その議論は当然にも、電子的カジノと化した米国式金融資本主義の放埒批判を含めて21世紀の資本主義のあり方という文明論的次元にまで及ぶことになろう。

 他方では、今や当事者や専門家にまで理解不能になりつつある証券化された金融商品の複雑怪奇を嫌って金融から投資ファンドや年金基金のマネーが逃げ出して、単純明快な商品先物相場にドーッと流入する、いわゆる「単純さへの逃避(フライト・トゥー・シンプリシティ)」が、食料と石油の異常な高騰となって全世界の人々の実生活を脅かしている。日本の経産省は07年度のエネルギー白書で、07年後半の米国産原油の先物価格1バレル=平均90ドルのうち30〜40ドルは金融市場から逃げ出した投機マネーだと分析しているが、08年に入って120ドル以上、最近では140ドルに迫っていることを思えば、投機の要因はさらに比重を増していると推測できる。

 穀物はじめ食料の高騰のどれだけが投機マネーのせいであるかを示す数字は見当たらないが、そのもう1つの要因であるブッシュ政権のトウモロコシ利用によるバイオ燃料生産という天下の愚策の影響については、世界銀行のエコノミスト=ドナルド・ミッチェルは「65%がバイオ燃料が原因」と試算している。それに対して、3日からローマで開かれた食料サミットに出席したブラジルのルラ大統領は「食料価格の高騰は1つの理由では説明できない」と逃げ、シェーファー米農務長官はバイオ燃料の影響は「3%以下」と強調した。片や65%、片や3%以下というのでは、議論さえ成り立たず、対策の打ち出しようがない。石油と食料の高騰への投機マネーの影響がどれほどなのか、また食料の場合にバイオ燃料の影響がどれだけか、世界主要国の首脳が共通の認識を確立して、断固たる決意を持ってこの史上希なるふしだらに立ち向かう決意を示すべき時だろう。

 金融市場の内部でマネー亡者たちが損得を競っているのは勝手で、ただそれが度が過ぎると銀行破綻などの形で間接的には実生活に影響が及ぶけれども、穀物や石油は最貧国も含めて全ての人々の日々の生活の糧であって、それをごく一部の金持ちが短期的な投機のために弄ぶなどということが許されていいはずがない。これこそ世界が直面する最大の危機であるけれども、福田にそれに立ち向かう覚悟は見えない。こうしてサミットは、地球環境問題という「語られる」であろうことにおいて失敗するだけでなく、投機マネー問題という「語られない」であろうことにおいてもまた失敗するだろう。

 であればなおさら、サミットの後では、自民党の内部からも「もう福田ではダメだ」という声が広がることは避けられない。福田としては、サミットの成否がどうであれ、馬鹿に仕切っている安倍よりも短い任期で辞めることだけは避けたいという思いから、内閣改造、8月臨時国会召集、秋口までの対北朝鮮外交の打開などをカードに政権延命を図るだろう。その時彼にとって残された最後の“求心力”の拠り所は、「そんなら総選挙をやるぞ」という自民党への脅しだろう。福田で総選挙をやれば大敗必至、政権を失うことになりかねないのは自明で、そこで、福田の居座りを認めて総選挙を先延ばしするのか(と言っても来年9月までだが)、それとも福田を引きずり下ろしていつ総選挙に転がり込んでもいいように準備を整えるのか、というのが自民党にとっての選択肢となる。とはいえ、福田なら負けて別の人なら勝てるという目算も立たないところが自民党の苦悩である。

 結局、本誌が小泉政権誕生直後に書いたように、小泉・田中真紀子の“変人”コンビという奇策は、自民党にとって国民に目くらましをかけて政権を維持するための「最後の切り札」だったのであり、最後の切り札の後にもう1枚、手品師の袖口に秘められた本当の最後の切り札などあるはずがなく、だから安倍は1年で倒れ、福田もまた1年で倒れそうになっている。福田が麻生か小池百合子か誰かに譲っても事の本質は同じで、かくして日本政治は、細川政権によって道筋が付けられた「政権交代ある政治風土の醸成」に向かって、さんざんな回り道をしながらも、しかし確実に、進んでいくのである。▲

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