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INSIDER No.433《FUKUDA》ダッチロールする福田政権──ガソリン再値上げが出来なければ墜落

 福田康夫首相は27日、官房長官も副長官も従えない異例の単独緊急記者会見を開き、道路特定財源を09年度から全額、一般財源化するとの約束と引き替えに、3月末で期限切れとなるガソリン暫定税率の継続について野党の妥協を取り付けようと図った。福田にしてみれば「皮を切らせて骨を切る」捨て身の戦法のつもりだったのかもしれないが、これは論理レベルでは何の整合性も説得性もない愚論にすぎないし、現実レベルでは一般財源化に激しく抵抗する古賀誠=元幹事長ら道路族をいきり立たせて自民党内からの“福田下ろし”の動きを加速させることになりかねない愚策にほかならなかった。

●本当に必要なのはいくらなのか?

 論理レベル。
(A-1)道路財源を一般化して道路以外の目的にも流用できるようにすべきかどうか、
(A-2)流用すべきだとしてどの程度か、
(A-3)流用を決めるのは財務省か地方自治体か、
——という問題と、
(B-1)ガソリン暫定税率を撤廃すべきかどうか、
(B-2)撤廃しないまでもどこまで減額するのか、
(B-3)撤廃もしくは減額の場合に代替財源は必要なのか、必要な場合にどこからひねり出すのか、
——という問題とは、別々に切り離して論じることは出来ないはずのことであって、まず今後10年間の道路整備中期計画に本当のところいくら必要なのかについて国会が精査して国民的合意が成り立った場合に、そこで次に初めて、しからばその財源をどのように調達するかという議論が浮上して、現在の特定財源を維持するのか、部分的もしくは全面的に一般化するのか、あるいはその一角にあるガソリン暫定税率を25円で継続するのか20円か15円か10円か5円か0円かにするのかという話になるはずである。

 つまり、そもそも政府・与党が昨年末に、10年間で59兆円の道路整備中期計画を中身の議論抜きに決定してしまったことが間違いの始まりなのだから、そこまで時計を巻き戻して「まず59兆円ありき」の国土交通省と自民党道路族の発想と姿勢を白紙撤回させた上で、1本1本の道路計画について地方の言い分もよく聞きながら国会の場で吟味して改廃しつつ優先順位を定めることが先決である。

 計画には、誰が考えても不要なものや、次の10年計画に回しても差し障りのないものも含まれている。それを国会が決定することが重要である。それと平行して、これまでも国会審議やマスコミ報道を通じてその一端が明らかになってきた財源の無駄遣いや不正流用などの乱脈の実態を徹底的に究明して、その分を排除しなければならない。「道路会計でタクシー代」5年間で23億円(17日付読売)などはまだ可愛いほうで、「道路会計が国交省人件費に」「児童手当にも」創設以来49年間に2.3兆円(27日付毎日)となると、本省の予算には計上できない余剰人員へのヤミ給与かという疑いさえ出てくる重大事である。「道路事業費9割入札せず」「天下り先51法人に特命随意契約」(10日付読売)にも水増し不正で血税が食い物にされている構造が見え透いている。

 こうしたものをすべて削り取って、なおかつ公共事業費を年々3%ずつ削減する原則を正しく適用した上で、今後10年の道路整備に必要な額が例えば45兆円なのか、38兆円なのか、それとも21兆円なのかということが確定されなければならず、それこそがすべての議論の出発点となる。仮に実質予算が33兆円で済むということになれば、年間2.6兆円、10年間で26兆円の暫定税率は完全撤廃してちょうどピッタリ辻褄が合うことになるし、また仮に予算が44兆円ということならば暫定税率を年間1.5兆円に減額して維持しようということになるかもしれない。

 というわけで、一般財源化を受け容れるから暫定税率を存続させてくれという福田の言い分は、彼の得意の表現を借りれば「どういう意味だかさっぱり分からないんですよね」ということになる。

●政権崩壊の墓穴を掘ったことにならないのか?

 現実レベル。
 すでに日銀総裁人事で大きく躓いて一段の支持率低下に直面している福田は、この年度末で無為無能ぶりをさらけ出せば一気に政権維持が難しくなるとの危機感を抱き、一念発起、この挙に出たのだろう。しかし「09年度から一般財源化」という福田の決断は、政権を支える二本柱である町村信孝官房長官、伊吹文明自民党幹事長にも、内閣としてこれを所管する冬柴鐵三国土交通相にも、ろくに根回しもせずに唐突に行われたもので、自民党内からは「独断専横」とか「殿、ご乱心」とかいった声が湧いている。

 もちろん、自民党内にも一般財源化賛成論は少なからずあって、27日の緊急記者会見の直前にも平将明ら自民党若手議員30人が福田を訪ね、「特定財源は自分たちの財布という役人の意識が国民の不信を招いた。一般財源化で情報公開と統治能力を高めるべき」と申し入れた。しかしそのくらいでは、古賀誠=元幹事長や二階俊博=総務会長、さらに青木幹雄=前参院議員会長も加わった老獪な道路族のボスたちを抑え込める保証とはならない。少なくとも伊吹とは綿密な道路族封じ込め作戦を練り上げていなくてはならないはずで、なぜ福田が会見で「党の方でもまとまったと思っている」と述べたのかは謎である。古賀は、幹事長とほぼ同格の選挙対策委員長のポストにあり、地方の選挙区をくまなく回って土建業者中心の旧来型選挙態勢を築き挙げつつある真っ最中であって、一般財源化を呑むくらいなら福田を引きずり下ろそうとするだろう。実際、古賀は26日夜に町村と会った時に「福田政権は誰が作ったのか、お分かりでしょうか」と凄んだという。また二階は総務会長で、一般財源化を党議とするには総務会の議決を経なければならないことを思えば、これは大きな難関である。

 もちろんトップが根回し抜きでいきなり重要政策を発表してしまい、党内や官僚機構の抵抗勢力の機先を制するという手法は有効な場合もあって、小泉純一郎元首相はこれを頻発した。それは、小泉の個人的な人気を活用して小気味よいワンフレーズで世論に直接働きかけて抵抗勢力に文句を言う暇を与えずに物事を進めてしまうというやり方で、しかも裏では飯島秘書官ら周辺が要所要所を予め押さえておくという周到さもあったが故に効果を発揮したのだが、国民にさっぱり人気のない福田がムニャムニャとした口調で記者会見を開いても世間はそれほど感動せず、さらに裏工作も仕組まれていないのだとすれば、成功の確率はほとんどゼロである。ということは、福田としては、追い詰められてのことではあるが、相当思い切った単独行動に出て血路を開こうとしたのには違いないが、世論の支持は得られず、抵抗勢力の反撃だけが激しくなって、政権の生命を縮める可能性の方が大きくなったということである。

 一方で福田は、4月から少なくとも一旦は25円下がるガソリン税率については出来れば4月末、そうでなくとも衆参両院議長の斡旋案が示した期限ギリギリの5月末までに衆院で再議決して元に戻す意向を表明しているが、現実には、この原油高の中で一度下がってしまった税金をすぐにもう一度上げるというのは、圧倒的とも言える世論の支持がなければ難しく、内閣支持率31%・不支持率53%、ガソリン税値下げを「よいことだ」72%・「よくないことだ」12%という世論状況(31日付朝日調査)ではとうてい不可能といえる。自民党は大筋、再議決やむなしという方向ではあるが、町村官房長官が首相に早期に再議決への決意を表明することで自治体や業界の混乱を回避しようとする立場であるのに対して、自民党執行部は「首相が明言してしまうと、再値上げが出来なかった場合に責任問題が避けられなくなる」として町村の動きを牽制している。世論がよほど大きく変わらなければ、自民党が再議決で結束しきれないかもしれず、その場合にそれだけの理由で福田が退陣に追い込まれる事態を回避しようというのが党側の意図だが、その時にしかし、古賀、二階らは暫定税率復活を強行させて福田が世論の袋叩きに遭うのを放置した上で、福田を引きずり下ろして、それと道連れに一般財源化を反故にしようとするかもしれない。それが福田名義の約束手形で、自民党が裏書きしていないということであれば、破棄するのは難しくない。

 こうして、早ければ4月末にも内閣総辞職、福田引退という場面も考えられる緊迫した情勢となってきた。

●財務省が福田政権を殺す?

 こんなことになったのも、福田が財務省に対して全く警戒感がないどころか、旧大蔵省コンプレックスではないかと思わせるほどの従順さでそのマインドコントロールを受け容れているからである。

 日銀総裁人事の混迷について彼が「(野党が言う)財金分離という意味がさっぱり分からない。むしろ財金が連携して初めて日本経済は適切な運営が出来ると信じている」と繰り返し表明しているのは、トボけているのではなく本当に分かっていないからで、だからこそ財務省事務次官出身者を2度も持ち出して拒否されて、後の対策が立たない思考の“空白”に落ち込んでいるのである。財政と金融が連携しなければ経済運営がうまくいかないのは当たり前で、誰もそんなことを否定していない。旧大蔵省=財務省の金融支配と日銀制御を復活させたのでは改革はすべて逆戻りになってしまうということを野党も言っているのであって、その意味が「さっぱり分からない」のでは日本の総理大臣をやる資格はないとさえ言える。

 道路財源の一般財源化というのは、それ自体は正しい改革の方向ではあるが、実はそれもまた財務省の要求である。道路に限らず特別財源を議員立法で次々に作って各省庁の独自予算としたのは、専ら若き故・田中角栄の才覚によることで、それ以前には旧大蔵省の一般財源から各省別の予算を振り分けて貰うしかなかった旧建設省も、このお陰で大蔵省から干渉されない独自の財布を握ってほとんど自由に使うことが出来るようになり、以後、田中とその派閥には頭が上がらなくなった。それを大蔵省は歯噛みしながら見ていたわけで、何とかしてこの特別財源を建設省から引きはがして一般財源に組み入れることは大蔵省の積年の悲願だった。

 そこで問題は、道路財源を一般財源にして「土建国家ニッポン」の基礎を突き崩すのはいいとして、それをそのまま財務省に委ねて同省の権限を強めるだけでいいのかということである。それでは、片山善博=前鳥取県知事(慶応大学教授)が指摘するように、国土交通省と財務省の縄張り争いで政治が財務省側に加担したというだけのことになってしまう。一般財源化ということは、それを道路以外の目的にも使うことになるが、そこで、それを決めるのは財務省なのか地方自治体なのかという問題を決定しなければならない。当初はひたすら特別財源と暫定税率の維持を主張していた東国原英夫=宮崎県知事が最近は「一般財源化された後の地方への配分方法を明確にしてほしい。逆に、地方での道路整備が進むチャンスかもしれない」と言い出している(31日付朝日)のはそこのところで、実際、国交省から取り上げた財源の全部もしくは大部分を地方に回してその使途を自由に決めさせるということになれば、地方分権の流れにも沿うことになるし、道路建設をめぐる無駄もむしろ省けるかもしれない。民主党の対案が、財源一般化と暫定税率廃止と共に「国直轄事業の地方負担金廃止」を3本柱の1つとしているのも、他の措置とも組み合わせて地方の自主財源を増やして結果的に暫定税率を維持する場合よりも地方が潤うようにしようという狙いからのことである。この辺は今ひとつ説明不足でディテールも曖昧だが、大いに議論すべきことである。「一般財源化は大いに結構。しかし財務省の焼け太りには反対。財源を地方の自主財源へ」という主張をもっと説得的に展開すれば、この議論はより実りあるものとなる。そうなればますます福田は追い込まれ、財務省の期待したような方向に問題が決着せず、同省からも彼が見放されることになる。▲

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