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INSIDER No.429《CAPITALISM》金融資本主義に破滅回避の道はあるのか?──春山昇華『サブプライム問題とは何か』を読もう!

 レーニン『帝国主義』を読もうというのは半ば冗談だが、米国内の住宅ローンの返済遅滞がなぜ米欧各国の政府・中央銀行が銀行救済に乗り出すような世界的な金融システムの危機に繋がるのかを少し突っ込んで知るには、春山昇華『サブプライム問題とは何か』(宝島新書)を読むべきである。著者は国際投資の専門家で、96年から個人投資家向けのブログ「おかねのこねた」を主宰、その記事をベースにまとめた、これもいま流行のブログ本である。昨年11月に出版されてすでに6刷を重ねている。その結論もまた私と同じく、今回の事態が「アメリカ帝国の終わりのはじまりなのかもしれない」(P.194)ということである。

ブログ「おかねのこねた」:
http://www.doblog.com/weblog/myblog/17202

●市場と国家という古くて新しい問題

 レーニンは、大銀行の支配が全産業・全社会を覆い尽くし、政治までをも従属させつつある金融寡頭制的な金融独占資本主義=帝国主義の放埒は、やがて主要国の間の全世界的な市場と資源の分割をめぐる戦争を引き起こして破滅的な結末を迎え、その瓦礫の中から、より高度で合理的な社会主義の生産システムが立ち上がって資本主義に置き換わると考えた。実際、20世紀の世界は2度に及ぶ破滅的な大戦争を体験し、それを通じて彼はロシアにおいて初の社会主義国家を創設したが、世紀末になってみれば、生き残ったのは資本主義で、自滅したのは旧ソ連をはじめ社会主義の方だった。市場の働きを全く無視して、産業と金融を国有化して官僚の統制に任せるという、高度でも合理的でもない稚拙な方法では、そうなったのも当然だが、しかし金融資本主義のやりたい放題に何らかの社会的規制を加えなければ資本主義そのものが破滅するというレーニンの命題は、依然として、と言うより、ますます正しい。

 結局のところそれは、市場での自由競争の暴走による失敗と、それに対する国家の過剰な介入による失敗とを、共に回避する道筋はあるのかという、古くて新しい難問を我々がまだ抱え続けているということであり、そこで、ソ連型社会主義は解決策にならなことが明らかとなった後では、次のような選択肢が検討課題となるだろう。

(1)欧州の社民政権が模索している、市場経済を原理としつつも、誰も彼もが同等に競争に参加出来る強者であるはずもない以上、強者に対する社会的規制と弱者に対するセイフティー・ネットとを政府が手厚く用意しなければならないとする「第3の道」路線の多様な模索も、つまりはコントロールされた市場経済を目指すものだが、それはどこまで有効で、しかもその規制と自由の適切なバランスはどこにあるのか。

(2)中国型の「社会主義市場経済」、すなわち一部は社会主義的に制御された市場経済というのは、これまでは「共産党一党独裁の下で市場経済を発展させることなど出来るはずがない」という幼稚な偏見に晒されていたけれども、もしかしたら米欧型の金融資本主義を超える、コントロールされた資本主義の別のモデルになるのではないか。少なくとも北京指導部は、日本のバブルとその崩壊、今日の米欧銀行の破綻を深く研究しつつ、「我々のやり方ならあんな風にはならない」と考えているのではないか。

(3)カネがカネを生む利子収入を原理的に禁じた「イスラム金融」という方式は、米欧型の金融とは異質の、金融の節度についての確固たる信念を指し示していて、世界はそれに学ぶことが出来るのではないか。

●世界政府・世界中央銀行が必要?

(4)さらには、世界政府と世界中央銀行という構想はどうか。これについては昨年8月21日の本欄「サブプライム問題ごときでなぜ世界がガタガタするのか?」の末尾で、そのしばらく前の「サンデー・プロジェクト」の楽屋で中原伸之=元日銀審議委員、水野和夫=三菱UFJ証券チーフエコノミストの両氏と私が交わした次のような禅問答風の会話を紹介しておいた。

高野「結局、サブプライム問題というのは単なる住宅ローン問題で
なく、アメリカ経済の放埒の象徴なんですよね」
水野「そうです。カネ、カネ、カネの欲望がどこまでも広がる」
高野「マネーの無政府性が解き放たれて誰も制御できない」
水野「だから、世界中央銀行が必要なんですね」
中原「いや、そうなると(金融だけでなく)税もやらないと」
高野「あ、世界政府ですか」
中原「そう」

 世界政府・中央銀行が出来る現実的な可能性はゼロに等しいが、今日の事態の論理的な帰結はそれなのかもしれない。とすると、世界政府は無理でも、せめて主要国サミットが経済政策調整という本来の機能を取り戻して、そのためにはロシアだけでなく中国やインド、さらにはイスラム代表なども正式メンバーに迎え入れて、世界資本主義の救済方法について議論すべきではないか。7月洞爺湖サミットでは地球温暖化対策が主な議題となるとされているが、それよりも遙かに重大かつ緊急な課題がここにある。

 春川も書いている(P.169〜171)。

▼この数年、マネーサプライや金利のコントロールの面で、にわかに状況が変化し…中央銀行が金利を引き締めても、市場金利は上昇しなくなった。市場勢力が債券市場に資金を流入させ続けているからだ。…市場勢力とはいわゆるヘッジファンド、ブライベート・エクイティ・ファンド(未公開株投資)、LBOファンド(レバレッジド・バイアウト=企業買収等への投資)だ。…銀行も多数のファンドを設定しており、市場勢力の一翼を担っている。

▼市場勢力に流入する資金は近年、とてつもないスピードで増大している。国境を越えた存在となった大量の資金は、地域・通貨・時間を超えて調達・運用・投資され…そこでは、効率性、資産の増殖スピードの速さ、国境を超えた普遍性という基準が優先される「市場経済民主主義」の社会である。

▼一方、それに対抗する政府などの体制側には、世界政府とか世界中央銀行というものは存在しない。個々の政府・中央銀行が自国の金融機関を独立して監督しており、国際的な連携プレーは少ないのが現状だ。国境があって、内政不干渉であることが近代国家の基本原則である…のに反して市場勢力は利害が一致すれば誰とでも連携し、競争も激しい。どちらの側が進歩が速いかは明白だろう。

▼[そのため]中央銀行などがとる行動は歴史的に見ると徒労に終わってきた。…これは、いわゆる少数エリートによる失敗と言われている。今や市場参加者という多数の目(=集合知)の方が遙かに効率的に物事を観察・判断している…。

 アダム・スミスが「神の見えざる手」と呼んだものを、Web2.0用語を使って「集合知」と言われると、ややたじろいでしまうが、確かにグローバル化した金融市場のカネ、カネ、カネの欲望のあくなき追求に対して、国家はほとんど無力で、失敗を続ける以外にないのである。しかしそれでは、資本主義は自損する。

 問題は、実体論的には電子的手段によって極大化しグローバル化したマネーの無政府性と未だ国境の中に留まっている政府・中央銀行との矛盾、本質論的には金融と人々の暮らしぶりという意味での経済との乖離にある。それをどの方向に打開すればいいかについての哲学的ないし文明論的議論が客観的には求められているサミットで、福田康夫首相がイニシアティブを発揮する可能性はもちろんゼロである。(《ざ・こもんず》2月14日掲載)▲

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