Q4:国連が米国のOEFを「明示的に」支持もしくは許諾していないのは事実として、07年9月19日に安保理が採択した決議1776号では、日本のインド洋給油活動を含むOEF参加国への感謝が表明されたと言うではありませんか。
A4:その決議1776は、10月13日で期限が切れるISAF(国際治安支援部隊)の期限を1年間延長するためのもので、その長い長い前文の中に「北大西洋条約機構(NATO)が発揮している指導力に対して、ならびに、ISAFおよび海上阻止行動要素を含むOEF合同軍に対する多数の国々の貢献に対して、謝意を表明し」という一項が盛り込まれました。その他にも、ISAFとOEFを同等に評価している文言が数カ所出てきます。が、これは、俗な喩えで恐縮ですが、性悪な娘の出来ちゃった婚を親が「出来ちゃったものは仕方がないじゃないか」と後から渋々認めているようなもので、これを以て国連がOEFをオーソライズしているとか、OEFの一部である海上阻止行動とそのための日本の給油活動を積極的に評価しているとか喧伝するのは無理があります。ましてや、当時、一部のメディアは「日本の給油活動への感謝決議」とまで言いましたが、「給油活動」も「日本」も文言として出てくる訳ではないのにそこまで言うのは誇大でしょう。実際これは、日本政府から「海上阻止行動とそれへの給油活動を国連が認めているという形を何とかして作ってほしい」という内々の要請を受けた米国がロビー活動を展開してこの一句を無理矢理押し込んだのであり、ロシアは「個別国の国内政治事情が持ち込まれている」ことに不快感を示して棄権したほどでした。まあともかくも同決議の全文に目を通して下さい。
[資料2]安保理決議17762007年9月19日
(国連広報センター暫定訳)
安全保障理事会は、
アフガニスタンに関する従前の安保理諸決議、とりわけ決議1386(2001)、1510(2003)、1707(2006)および1746(2007)を再確認し、安保理諸決議1267(1999)、1368(2001)および1373(2001)もまた再確認するとともに、国際連合憲章に従い、テロ根絶を図る国際的な努力に対する支持を繰り返し表明し、
武力紛争における民間人の保護に関する安保理諸決議1265(1999)、1296(2000)、1674(2006)および1738(2006)、ならびに、女性および平和ならびに安全に関する安保理決議1325(2000)を想起し、
アフガニスタンの主権、独立、領土保全および国民統一を守る強い公約を再確認し、
国内全土で治安および法ならびに秩序をもたらす責任は、アフガニスタン当局にあることを認識し、また、アフガニスタン政府の国際治安支援部隊(ISAF)との協力を歓迎し、
アフガニスタンにおける課題の多面的かつ相互連関的性質を認識し、治安、統治および開発、ならびに、麻薬対策という部門横断的問題についての持続可能な進展が相互に補強し合うことを再確認し、また、アフガニスタン・コンパクトによって提供される包括的枠組みを通じて、一貫したやり方でこれら課題に取り組むアフガニスタン政府と国際社会の努力が続いていることを歓迎し、
アフガニスタンにおける平和と安定を促進するために国際連合が果たし続けている中心的役割を強調し、包括的アプローチとの関連において、国際連合アフガニスタン支援団(UNAMA)とISAFの目的における相乗効果に留意し、また、それぞれに与えられた責任に妥当な考慮を払い、さらに協力、調整および相互支援を持続させる必要性を強調し、
アフガニスタンの治安情勢、とりわけ、タリバン、アルカイダ、違法武装集団および麻薬取引に関与する集団による増加した暴力行為とテロ行為に対する、および、テロ行為と不正薬物とが相互に関連して、現地住民、国家治安部隊および国際軍事および文民要員に対する脅威が生じていることに対する、懸念を繰り返し表明し、
法の支配を保証し、アフガニスタン国民に基本的サービスを提供し、かつ、国民の人権と基本的自由の全面的享受を確保するアフガニスタン政府の能力にタリバン、アルカイダその他の過激派集団による暴力行為とテロ行為が及ぼす有害な影響に対する懸念もまた表明し、
アフガニスタン政府が、治安情勢を改善し、タリバン、アルカイダその他の過激派集団による脅威への対処を続けるため、ISAFおよび「不朽の自由作戦(OEF)」合同軍を含む国際社会の支援を受けて、継続中の取り組みに対する支援を繰り返し表明し、また、この関連で、ISAFおよびOEF合同軍によるものを含め、持続した国際的な努力の必要性を強調し、民間人およびアフガニスタン軍ならびに国際部隊を標的とする簡易爆発物(IED)による攻撃、自爆攻撃および拉致を含むすべての攻撃、および、アフガニスタンにおける安定化、復興および開発への努力に対するその有害な影響を、最も強い言葉で非難し、また、タリバンおよびその他の過激派集団が人間の盾として民間人を用いていることをも非難し、
あらゆる民間人の死傷について懸念を表明し、また、民間人の生活の保護を確保し、国際人道および人権法を堅持するため、あらゆる実行可能な措置をとる呼びかけを繰り返し表明し、
民間人死傷の危険性を最低限に抑えるため、ISAFおよびその他の国際部隊が行っている本格的な努力、特に戦術と手順の継続的な見直し、および、民間人の死傷者が出たことが伝えられた場合に、アフガニスタン政府との協力によって行われている事後審査を認識し、
アフガニスタン国軍および国家警察のさらなる強化、違法武装集団の解体、司法改革および麻薬対策を含む治安部門改革をさらに進める必要性を強調し、
この関連で、アフガニスタンの行刑施設における法の支配と人権の尊重を改善するためかかる施設の再建と改革の更なる進展の重要性を強調し、
アフガニスタン憲法の枠組みにおける平和的な政治対話および同国の社会経済開発に建設的に関与すること、および、違法武装集団が行うものを含め、暴力に訴えることを避けること、をアフガニスタンのあらゆる当事者と集団に対して呼びかけることを、繰り返し表明し、
アフガニスタンの安定に対する近隣および地域のパートナーによる貢献の重要性を認識し、また、アフガニスタンにおける治安、統治および開発を促進する効果的な手段として、地域協力を進めることの死活的重要性を強調し、
アフガニスタン全土へISAFの展開拡大が完了したこと、ISAFとOEF合同軍との調整が継続していること、およびISAFと欧州連合のアフガニスタン駐留部隊、とりわけその警察ミッション(EUPOLアフガニスタン)との協力関係が確立したことを歓迎し、
北大西洋条約機構(NATO)が発揮している指導力に対して、ならびに、ISAFおよび海上阻止行動要素を含むOEF合同軍に対する多数の国々の貢献に対して、謝意を表明し、
アフガニスタン情勢は、国際の平和と安全に対する脅威を依然として構成すると判断し、
アフガニスタン政府との調整のもと、ISAFの任務の全面的遂行を確保することを決意し、
これらの理由から、国際連合憲章第7章にもとづいて行動し、
1. 2007年10月13日から12カ月にわたり安保理決議1386(2001)および1510(2003)に定められた国際治安支援部隊の承認期間を、延長することを決定する。
2. ISAFに参加する加盟国が、その任務遂行に必要なあらゆる措置を講じることを認める。
3. ISAFの活動要件の全てに充足するため、ISAFをさらに強化する必要性を認識し、また、この関連で加盟国に対して、人員、機材その他の資源をISAFに供出し、決議1386(2001)により設置された信託基金への拠出を行うよう求める。
4. アフガニスタンにおける治安問題を長期的に解決するため、アフガニスタンの治安部門の実効的機能性、プロ意識およびアカウンタビリティを向上させることの重要性を強調し、また、ISAFその他のパートナーに対し、資源の許す限り、アフガニスタンの国家治安部隊、とりわけアフガニスタン国家警察の養成、指導およびエンパワーメントに向けた努力を持続させるよう促す。
5. ISAFに対し、部隊任務の遂行に際して、アフガニスタン政府および事務総長特別代表、ならびに、OEF合同軍との密接な協議を続けることを求める。
6. ISAF指導部に対し、四半期報告の提出によるものを含め、事務総長を通じて、その任務遂行に関する情報を定期的に、安全保障理事会に報告し続けることを要請する。
7. この問題に引き続き積極的に取り組むことを決定する。
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Q5:それにしても、この決議がISAFとOEFを同等のものとして並列しているのは、渋々ではあっても国連がOEFを追認していることになるのではないですか。
A5:一面ではその通りですが、それは国連と国際社会がOEFの正当性を事後的に承認し、その結果、米国の私的な戦争が国連の公的な戦争に質的に転換したということを意味するものではありません。イラク戦争も同じですが、米国が勝手に始めて自分で始末がつけられなくなってしまった事態について、そうだからと言って国連として平和希求や人道擁護の観点から放っておくわけにはいかないので、米国のタリバン政権に対する直接の戦闘が一応終結しアフガン暫定政府が発足した後の首都カブールの治安維持と地方の民生安定・経済復興には協力しようということで、01年12月20日に安保理決議1386を発してISAF(国際治安支援部隊)という枠組みを設定しました。これは、発足したばかりのアフガン暫定政府の国家軍及び警察を助けて治安維持を支援するために主として欧州警察機構(EUROPOL)が要員を派遣し、また非合法武装集団の解体、麻薬撲滅対策、人道支援、復興ニーズ調査などを支援するために国連や各国政府が文民専門家やNGOのスタッフを派遣するのであるけれども、情勢不安定の中でそれら文民要員・スタッフが活動を開始し継続するには軍隊による防護が不可欠であるということで、欧州中心の有志各国による多国籍軍を6カ月間限定で編成するという趣旨のもので、ISAFとは、狭義にはその多国籍軍のことですが、広義にはそれを含む各種支援活動の全体を指しています。さて、そこから先が話が複雑骨折的になってISAFの“変質”が始まっていくのですが、まず第1に、そうやって各種支援を始めてはみたものの、現実にはアフガンの内情は深刻な内乱状態で、最初は各種支援が主、それへの軍事的防護が従であったはずのものが逆転して、軍事的防護すなわちタリバン勢力はじめ武装勢力との戦闘が主になってしまう。第2に、半年後の02年5月には安保理決議1413で軍事的防護を延長し、03年8月にはNATOが非NATO国を含む多国籍軍(07年10月現在39カ国4万1197人)の指揮を執ることになり、さらに03年10月の安保理決議1510で(狭義の)ISAFの活動をカブール周辺からアフガン全土に拡大することになり、結果的にNATOが率いる多国籍軍が内乱に直接関与して全土でタリバンなどのゲリラと戦闘を展開する羽目となり、そうなると米英軍独自のOEFとの連携と任務分担が避けられなくなってしまう。第3に、事の必然として、米国の関与が大きくなり、07年2月からはISAFの司令官が米国人になった。この辺の経過については、ISAFの公HP(*1)をご覧下さい。つまり、米国の側からみればISAFを乗っ取った形になって、OEFとISAFの“癒着”が進んでいて、その実態を反映して、上記の安保理決議1776がOEFとISAFを同等視するかの表現になる理由なのです。ISAFの根拠となった安保理決議1386の全文は次の通りです。
*1:ISAF公HP
http://www.nato.int/isaf/index.html
[資料3]安保理決議13862001年12月20日
(内閣府調査局訳)
安全保障理事会は、
アフガニスタンに関する従前の理事会決議、特に2001年11月14日の決議第1378号及び2001年12月6日の第1383号を再確認し、
国際連合憲章に基づいてテロリズムを根絶しようとする国際的な努力を支持し、また同時に、2001年9月12日の第1368号及び2001年9月28日の第1373号を再確認し、
すべてのアフガニスタン人が不可譲の権利及び抑圧や恐怖から解放された自由を享受できるようなアフガニスタンの発展を歓迎し、
アフガニスタン全土の治安及びそこに法と秩序を確立する責任はアフガニスタン人自身にあることを認識し、
恒久的な政府機構が再構築されるまでの間のアフガニスタンにおける暫定取決めに関する2001年12月5日にボンで署名された合意(ボン合意)の承認を再確認し、
国際治安部隊をアフガニスタンに早期に展開する承認を検討願いたいとのボン合意付属文書1の第3項にある安全保障理事会への要請、並びに、アフガニスタン暫定行政機構との接触において、彼らが国連が承認した国際治安部隊がアフガニスタンに展開することを歓迎したとする2001年12月4日の事務総長特別代表の報告に留意し、
2001年12月19日付のアブデゥラ・アブデゥラ博士よりの安全保障理事会議長宛書簡に留意し、
2001年12月19日の英国外相からの事務総長宛書簡を歓迎し、また、同書簡において英国が国際治安支援部隊の編成及び指揮を主導するとした提案に留意し、
すべてのアフガニスタン人武装勢力が、女性の権利の尊重を含む人権法下、及び国際人道法下の自らの義務を厳格に遵守しなければならないことを強調し、
アフガニスタンの主権、独立、領土保全及び国民的統一に対する理事会の強いコミットメントを再確認し、
アフガニスタン情勢が依然、国際の平和と安全に対する脅威であると断定し、ボン合意によって樹立されたアフガン暫定行政機構と協議しつつ、国際治安支援部隊のマンデートの全面的な履行を保証するよう決定し、
国際連合憲章の第7章の下に行動し、
1. ボン合意付属文書1に想定されているように、アフガニスタン暫定行政機構がカブール内及びその周辺の治安を維持することを援助し、アフガニスタン暫定行政機構及び国連要員が安全な環境の中で活動できるようにするため、国際治安支援部隊を6カ月間設立することを承認する。
2. 加盟国に対し、国際治安支援部隊に要員、装備及び他の資材を提供するよう要請し、また、加盟国に対し、部隊の司令部と事務総長に通知するよう求める。
3. 国際治安支援部隊に参加する加盟国に対し、そのマンデート遂行に必要なすべての手段をとることを承認する。
4. 国際治安支援部隊に対し、任務を遂行するに際してはアフガン暫定行政機構及び事務総長特別代表と緊密に協議するよう求める。
5. すべてのアフガニスタン人に対し、国際治安支援部隊及び関係する政府・非政府機関に協力するよう求め、また、ボン合意参加者が自らの手段と影響力を全面行使することを誓約することによって、アフガニスタンに展開するすべての国連要員及び国際政府・非政府機関の要員の移動の安全と自由を確保することを含む治安を確保することを歓迎する。
6. ボン合意のアフガニスタン参加者が付属文書1において、カブールからすべての武装部隊を撤退させる旨誓約したこと留意し、また、彼らに対し、この誓約を国際治安支援部隊と協力しつつ履行するよう求める。
7. 近隣諸国及び加盟国に対し、国際治安支援部隊に、上空通過許可及び経由許可の提供を含む、要求に応じた必要な援助を供与するよう奨励する。
8. 国際治安支援部隊の費用が関係の参加国によって負担されることを強調し、事務総長に対し、基金を創設して、それを通じ加盟国が分担金を負担でき、また、関連の活動に支出できるようにし、また、加盟国に対し、この基金に貢献するよう奨励する。
9. 国際治安支援部隊の司令部に対し、事務総長を通して、その任務の履行に対する進捗に関して定期的な報告を行うよう要請する。
10. 国際治安支援部隊参加国に対し、アフガニスタン暫定行政機構が新しい治安組織及び軍隊を設立し、訓練することを援助するよう要求する。
11. この問題に引き続き積極的に関与することを決定する。
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Q6:そうなると、小沢さんが「ISAFは国連決議に基づいた活動だから日本は積極参加すべし」と言っているのは果たしてどうなのか、ということになりますね。
A6:その通りです。この点になると、私と小沢さんは意見が違うのかもしれませんが、私は、こんな体たらくのISAFに日本が参加するなどとんでもないことだと思っています。前に述べたように、原理的には、国連が行う公的な制裁戦争を含む平和創造・維持活動には、日本は制限なしに(つまり後方支援だけとか言わずに全面的に、自衛隊員が血を流して倒れることも辞さずに)参加すべきだという小沢理論は正しいです。しかし、現実的には、国連の機能不全とご都合主義、それをいいことにした米国はじめ大国の横暴によって物事が流れ流れていく中では、個々の事例が実体的にはどうなっているのかを見極めて是々非々で対応を決めることが必要になるでしょう。小沢さんも、実際に日本がどの程度、どういう様態で参加するかはその時々の政治判断だという趣旨のことを述べていますが、ここのところはもう少しはっきりと、原理的次元と実際的次元とを明確に区別して語った方がいいのではないかと思います。たとえばの話、広義のISAFの中でも、地方復興計画には日本も加わることが出来ると判断するのかどうか、その場合に、しかし、イラクでの偽りの復興支援の場合のように、文民スタッフを出せないような危険な状態なので自衛隊を出すけれども防護は他国の軍隊に頼るのか、それとも自ら戦闘任務を含めて引き受けるのかどうか、あるいは文民スタッフを出して自衛隊で防護するのかしないのか、といったことは原理的にはっきりしておいたほうがいい訳で、そのためには、テロ対策特措法といった臨時措置で、米国から言われたから何とかしなくてはというような格好で目先の対応を決めるのではなくて、日本の国際平和協力のあり方について思想的に明快な恒久的な基本法を制定することが望ましいのではないでしょうか。小沢さんが“大連立”という話に惑った大きな要因は、この恒久法制定に福田総理を引っ張り込む可能性に賭けようという思いがあったものと想像されますが、そうだとすればそれを密室談合のようなことではなく、恒久法の論点を明快に整理して福田に対してではなく国民に向かって説明して世論を形成することが必要でしょう。▲