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INSIDER No.420《METABO?》メタボ撲滅という厚生労働省の陰謀──日本人の半分が“病人・半病人”にされてしまう!

 “分煙”という名の事実上の“禁煙”強制キャンペーンに続いて、いま厚生労働省が血道をあげているのがメタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)撲滅大作戦である。

 メタボとは、内臓肥満・腹部肥満に高血糖・高血圧・高脂血症のうち2つ以上を合併した状態と定義される。これらはそれぞれ単独でも大いに健康を損なう要因だが、複合すればなおさら動脈硬化性の疾患に陥りやすいということで、予防と治療が急務とされている。06年5月に厚労省が発表した診断基準によれば、

▼ウェスト周囲径が男性85センチ以上、女性90センチ以上で、
▼さらに次のうち1つ以上に該当すれば予備軍、2つ以上に該当すればメタボとなる。
(1)血圧=最高血圧130mmHg以上または最低血圧85mmHg以上
(2)脂質=中性脂肪150mg/dl以上またはHDL40mg/dl未満
(3)血糖=空腹時血糖値110mg/dlまたはHbAlc5.5%以上

 ところがこの基準は、『メタボの罠/“病人”にされる健康な人々』(角川SSC新書、07年10月刊)の著者である大櫛陽一=東海大学医学部教授によれば、ほとんどデタラメに近いもので、これがそのまま適用されると40〜74歳の日本人の49.7%が病人もしくは半病人として病院での受診を勧奨されることになる(日本人間ドック診協会の分析)。これは、太りすぎあるいは太り気味だから「気をつけましょう」という健康指導のガイドラインではなくて、06年5月に審議不十分と言われながら衆院厚労委員会で強行採決(!)され6月に成立した医療制度改革法に基づいて、08年度から実施される「メタボ特定健診・特定保健指導」制度の下で、40〜74歳の被保険者は皆その健診を受けて、2人に1人は病院通いを勧められて検査を受けたり薬を投与されたりしなければならないことになるのである。

 厚労省の表向きの企図は、肥満を減らせば医療費が2兆円削減されるというにあるのだが、この基準では、行かなくてもいい人まで病院に行って診療費と薬代を払うことになり、大櫛教授によれば「医療費がさらに5〜6兆円増加し、そのしわ寄せとして必要な医療が削減されることになるだろう。この新しい健診は、日本の健診制度や医療制度を崩壊させる危険性があるのだ」。

●メタボって何だ?

 メタボは元々は、80年代末の米国で、米国人にありがちな豚か牛のように巨大な肥満者が、当然にもありとあらゆる病気、とりわけ高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病や多くの心疾患に罹りやすいことが問題視され、スタンフォード大学のジェラルド・リーヴェンがこれを「シンドロームX」と名付けてアンチ肥満運動に火を着けたのが発端である。98年にWHOがこれを「メタボリック・シンドローム」と定義し、その頃から日本でも「皮下脂肪は良いが内臓脂肪は悪い」「生活習慣病は肥満が原因」などと議論されるようになり、05年には日本肥満学会はじめ8つの代表的な医学会の連名でメタボの基準が発表された。それに飛びついたのが厚労省で、06年に上述の公的基準が定式化された。

 これが一見して奇妙なのは、ウェストの基準が「男性85センチ・女性90センチ」と、女性が男性より大きな値となっていることである。国際糖尿病連合(IDF)の基準では、欧州人で男性94センチ・女性80センチ、南アジア人・中国人・日本人で男性90センチ・女性80センチ(*1)、また全米コレステロール教育計画(NCEP)の基準では米国人で男性102センチ・女性88センチ(*2)とされており、いずれも男性が女性より大きい。なぜそうなるかと言えば、世界では内臓脂肪を最も反映する位置として肋骨下と骨盤上の骨がなくくびれた部分でウェストを測るが、日本ではそのやや下の臍の位置で測るので、男性の場合は世界基準にほぼ近くなるが、女性の場合は骨盤上部に引っかかって内臓脂肪ではなしに骨盤の大きさを反映してしまうからである。これは、日本ではCTを用いて内臓脂肪面積を測る際に臍を位置決めに使っているという“慣習”があって、それを日本肥満学会が踏襲しているためで、大櫛に言わせれば医学的に無意味な「稚拙なミス」である。IDFは06年、「日本のウェスト基準は奇妙であり、男性90センチ・女性80センチに修正すべきだ」と勧告したが、厚労省はこれを受け入れていない。

*1:IDF資料
http://www.idf.org/webdata/docs/IDF_Meta_def_final.pdf

*2:NCEP資料
http://www.nhlbi.nih.gov/guidelines/cholesterol/atp3xsum.pdf

 男性の場合、世界基準とほぼ等しい数値となるが、それにしては米国人102センチ、欧州人94センチ、アジア人90センチと比べて日本人だけ85センチというのは厳しすぎる。女性の場合は逆に、同じく88、80に対して90と緩すぎる。ということは、まず最初の関門となる腹囲の計測で、世界基準で測った場合と比べて日本基準では、男性はメタボでないない人までが病人もしくは半病人と判定され、女性は反対に該当者が見逃される可能性が高いということである。

 BMI(ボディ・マス・インデックス=体重(kg)÷身長(m)×身長(m))で言うと、欧米では肥満はBMI=30以上で、それが35以上の明らかな太りすぎになると死亡率が急激に上昇する。逆に18.5以下の痩せすぎになっても死亡率が増える。そして25〜29.9の小太り型が最も死亡率が低い。メタボ健診の基準とされている男性のウェスト85センチというのは、BMI=23.5に相当するので、これでは小太り型の健康者も異常と診断されることになる。米国では、BMI=35以上の明らかなデブが8.3%もいる反面、18.5以下の痩せすぎは2.2%しかおらず、肥満対策が中心となって当然である。ところが日本では、35以上はわずか0.3%しかおらず、反対に18.5以下が米国の3倍の6.7%もいる。特にダイエット指向の若い女性にそれが多く、日本ではむしろ痩せすぎ対策のほうが重要である。なのに厚労省は国民を「太りすぎだ、もっと痩せろ」と脅そうとしている。

●それぞれの数値も疑問

 大櫛は、ウェスト以外の数値基準についても次のように疑問点を挙げている。

(1)血圧——年齢を無視した一律の基準であるため、高齢者では異常値が5割を超え、受信勧奨率も3割を超える。

(2)中性脂肪——健康へのリスクとなるのは500mg/dl以上であり、特に中年男性に対して基準が低すぎる。

(3)HDL(善玉コレステロール)——女性に対する基準が低すぎるため、運動不足や栄養バランス不良などを見逃して、糖尿病の早期予防が出来ない。

(4)LDL(悪玉コレステロール)——中高年男性の6割、女性の7割前後が異常になる。

(5)肝機能検査——判定値を男女別に設定していないので、女性に対する判定が甘くなりすぎる。

(6)空腹時血糖——判定値が今回大幅に引き下げられたので、異常率が男性の6割近く、女性の4割以上となる。若い女性には適切だが、男性と中高年女性では偽陽性を3〜5倍に増やすことになる。

 総じて、根拠も統計手法も怪しく、年齢層や男女別による違いや、都市と農村など地域特性や職域集団の特質なども無視した一律の数値なので、実情とかけはなれた診断が下される危険が大きいということである。本来、メタボは新しい病気なのではなく、糖尿病や心血管系疾患を予防するための生活習慣の改善目標にすぎないのに、それが一人歩きして病人扱いされる人が激増するのである。

 例えば血圧の場合、高血圧に対する分類、診断基準、降圧目標が度々引き下げられてきて、08年度からのメタボ健診では、最高血圧140/最低血圧90mmHgを超えると受診勧奨され、130/85まで下げるよう指導される。すでに現在、成人の約20%が血圧を下げる薬を飲んでおり、その比率は年齢と共に上昇して70歳以上では46.5%、半分近い人が飲んでいる(03年の調査)。その結果、04年度に日本国内で生産された血圧降下剤と血管拡張剤は年間8000億円以上、医薬品全体の12.5%を占める巨大市場となっているが、今後はこれがさらに膨らむ可能性がある。ところが大櫛によれば、男女とも中高年になるにつれ血圧が上がるのは自然のことで、160/100の範囲であれば何の問題もない。逆に高齢者に強力な薬剤治療を施して血圧を無理に140以下に下げると脳梗塞の発症がむしろ増え、また日常生活能力が低下したり副作用が出たりするという報告もある。

 コレステロールもまた誤解に満ちている。日本ではこれまで「総コレステロール220mg/dl」という日本動脈硬化学会の基準が普及し、そのため健診受診者の中高年女性の5割以上が高脂血症と診断されてコレステロール低下剤を投与されてきた。ところが欧米では総コレステロール基準は260〜270であり、また女性は皮下脂肪が発達していて脂質を貯めて利用する能力が高いため「女性にコレステロール低下薬は不要」というのが常識である。特に日本人の場合は、総コレステロールが低い方がガンなどによる死亡率が高く、220前後は最も死亡率が低い。このことはさんざん批判されてきたことで、そのため厚労省は今回のメタボ健診基準では「総コレステロール」の項目を外した。しかし、HDLもLDLも「低ければ低いほどよい」という発想は相変わらずで、“悪玉”と不当に呼ばれてきたLDLも体に不可欠のものであり少なすぎると細胞の補修が出来なくなるという事実を無視している。

●官学業の癒着

 なぜこんなデタラメがまかり通るのか。一言でいえば厚労省・医学界・製薬会社の癒着である。日本版メタボの基準を作った張本人は、日本肥満学会と日本動脈硬化学会を牛耳ってきた松澤祐次である。彼が03年度まで教授を務めた大阪大学医学部第2内科(現在の大学院医学研究科分子制御内科学)に対する奨学寄付金を調べると、00年度から05年度までの6年間で8億3808万円で、そのほとんどが製薬会社からの寄付金だった。ずば抜けて多いのは三共(現在の第一三共)の1億1600万円で、この会社は日本で最大シェアを持つコレステロール低下薬(メバロチン)の製造・販売で年間2000億円を売り上げている。

 臨床学会が診断基準を下げて厳しくすれば、病人と判定される人が増えて、製薬会社が儲かる。厚労省はそれをチェックすべき立場にあるが、実際には、製薬会社が金を出して研究させ学会に新基準を作らせて、それに基づいて製薬会社が申請をすればそれを医療保険適用医薬品として認可するだけである。製薬会社の業界団体である日本製薬団体連合会の代々の理事長は厚労省キャリアの天下りポストであるし、タミフル問題では同省で医薬品の認可を担当していた元課長が製薬会社に天下っていたことが表沙汰になったように、企業との直接の癒着も甚だしいので、チェックなど出来るわけがない。

 厚労相自身も年間400億円の「科学研究補助金」を握っていて、自分らの裁量で研究者にバラ撒くから、研究者もまた官僚が机上で描く健康運動に沿った研究を競って補助金を貰おうとする。

 さらにメディアにとっては製薬会社は重要なスポンサーであり、また厚労省は取材源であるから、こうしたデタラメを暴くどころか、おかしなところに目をつぶってキャンペーンを盛り上げたりする。

 図に乗った厚労省はこの11月、大人を“犠牲”にするだけでは気が済まなくなって、6歳から15歳の子供のメタボについても診断基準をまとめる方針を明らかにした。こうして、大人だけでなく子供までもが製薬会社の餌食にされようとしている。▲

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