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2007年10月31日

INSIDER No.418《OZAWA THEORY 1》Q&A:小沢さんのテロ特反対論がどうもよく分からないのですが…──私が代わってお答えしましょう!(その1)

 小沢一郎民主党代表の、インド洋給油は違憲で地上部隊派遣は合憲という理屈が、どうもいまいちよく分からないという声がある。私は、細部はともかく、基本的には小沢と同じ意見なので、彼に成り代わってQ&Aスタイルで問題を整理してみよう。

Q1:小沢さんは、アフガン戦争は「米国の自衛権発動による戦争であって、国連にオーソライズされていない」という趣旨のことを言っていますが、01年9月12日に出された国連安保理決議1368[資料1]では「テロ活動によって引き起こされた国際の平和及び安全に対する脅威に対してあらゆる手段を用いて闘うことを決意し」と述べ、さらに「憲章に従って個別的又は集団的自衛の固有の権利を認識し」とも述べているので、テロの直接の被害者である米国が個別的自衛権を発動してアフガン戦争つまりOEF(不朽の自由作戦)を始めることを国連が予めオーソライズしていることになるのではないですか?

A1:問題の焦点は、安保理決議が「明示的に」米国の具体的な行動すなわちOEFを支持しているかどうかです。決議1368は、9・11の翌日に取り敢えず国連安保理として犠牲者への哀悼の意を表し、一般論として、国連がテロとの戦いを一層強化する決意を示したもので、まだ犯人像が皆目分かっておらず、従って米国が具体的にアフガニスタンのタリバン政権を相手に戦争を起こして攻め込むという作戦を決めているわけでもなく、またそれについて国連に支持するよう要請しているわけでもない段階です。
 大体において趣旨が合っているからいいじゃないかと思うかもしれませんが、そういうものではないのであって、この決議でも触れているように過去に国連は国際テロ防止条約やテロ防止の安保理決議をいくつも採択していて、それと趣旨が合うなら加盟国が何をやっても構わないということになってしまい、国連憲章の紛争の平和的解決の大原則はたちまち崩壊することになります。
 史上初の米国主導の多国籍軍と言えた1950年の「朝鮮国連軍」の場合は、安保理は北朝鮮の武力攻撃を撃退する軍事行動のイニシアティブを米国に委ねることにし、米軍が国連軍の統一司令部の司令官を任命し、その下に各国がその軍隊を提供するよう決議しました。1990年の湾岸戦争の場合は、米軍主導の多国籍軍の軍事行動を安保理決議でオーソライズはしたものの、指揮関係は複雑で、米中央軍司令部が英国はじめ他の西欧諸国の軍をも事実上指揮したが、フランスは必ずしもその指揮下に入らず、またアラブ・イスラム諸国はサウジアラビア主導の統合軍司令部が指揮し、作戦全体を統御する司令官は存在しないままでした。また95年のボスニア内戦への介入の場合は、NATO主導の多国籍軍(平和執行軍)に安保理が「あらゆる手段をとる権限」を付与し、さらにそれ以前に現地に存在したPKO(国連防護軍)の権限も平和執行軍に統合することを決定しましたが、このように指揮権限まで含めて明示的にオーソライズしました。99年の東ティモールの場合は、インドネシアやアジア諸国は国連指揮下のPKOを望み、英国やオーストラリアはオーストラリアが指揮権を持つ多国籍軍を提案し、結局安保理が後者を容認しました。
 このように、明白な国連軍を編成することが出来ない現状で、PKOという国連憲章には規定のない形で対処するか、加盟国のどこかが主導する多国籍軍を容認するか、またその場合の指揮権をどう定義するかなどは、まったくケース・バイ・ケースに任されていて、単に大国が自分の都合のいいように国連を利用したり裏を掻いたりしているだけのこともあります。
 03年イラク戦争の場合は、それまで安保理がサダム・フセインを非難する17もの決議を発していたにもかかわらず、米国はそれだけでは不足と判断して、当時のパウエル国務長官が国連の場で世界を説得して明示的な支持を取り付けようとさんざん努力しましたが報われず、結局は、以前の決議があるからそれでいいのだと弁解しながら戦争を始めることになりました。アフガン戦争の場合も、米英中心の多国籍軍を国連が明示的にオーソライズしたことはなく、従って、国際法および国連憲章から見れば、これは国連による「公的」な戦争でなく、米英の「私的」な戦争ということになるのです。

Q2:国連の大原則とは何ですか?

A2:国連の目的の第1は「国際の平和及び安全を維持すること」で、そのために「平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること」、そして「平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって…実現すること」に置いています(憲章第1条)。その目的を達成するための原則は「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない」こと、そして「すべての加盟国は、その国際関係において、武力よる威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも、慎まなければならない」ことです(第2条)。
 簡単に言って、国際紛争を可能な限り平和的に解決しようというのが根本精神で、第6章「紛争の平和的解決」で第33条から第38条までそのための手続きを定め、さらに第7章「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に対する行動」で、第39条から第51条まで、国連による制裁措置について定めています。そのうち第41条は経済制裁、運輸通信手段の中断、外交関係の断絶など「非軍事的措置」で、第42条では、それで不十分な場合に「国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる」と、「軍事的措置」を規定しています。
 つまり、あくまでも平和的解決を徹底的に追求するけれども、それで間に合わなくなった場合には、武力による制裁的な軍事行動も辞さず、その場合には(憲章にはっきり書いてあるわけではないが解釈すれば)、理想的には「国連常備軍」、それが無理でも臨時の「国連軍」、あるいは国連が明白にその権限を「授権」した加盟国の軍隊による(典型的には)「多国籍軍」がそれを担うことになります。その上でさらに、51条では、そのような国連による軍事的措置が行われるまで時間がかかる時は、侵略を受けた当事国が「個別的または集団的自衛の固有の権利」を発動することを認めています。つまり、国連による公的な「制裁戦争」と個別国による私的な「自衛戦争」をはっきり区別した上で、前者の優位を規定しているのです。

Q3:だとしても、そもそも国連憲章が「個別的・集団的自衛権」の発動を認めていて、決議1368でもわざわざそれを再確認しているのだから、米国が個別的自衛権の名によってアフガン戦争を仕掛け、同盟国である英国が集団的自衛権を発動してそれに協力し参戦したのは正当で、何も非難される筋合いはないはずですね。

A3:まず、国連との関係は別として、テロという見えない敵による(どれほど被害が大きかったとしても)国際犯罪に対しては、まず警察的に対処するのが妥当であって、それを飛び越えていきなり国家間戦争という形で軍事的に対処しようとするのはいかがなものかという問題があります。
 米国は、9月20日には9・11の背後にはウサマ・ビンラーディンがいたと断定、アフガンのタリバン政権に対して「すべてのアル・カイーダ幹部の引き渡し」など5項目の最後通牒を突きつけます。それに対してタリバンは、ビンラーディンの事件への関わりについて証拠を示せば第三国に引き渡して裁判にかけるにやぶさかではないという態度を示しますが、米国はそれについて交渉するでもなく、「ふざけるな」と言って10月7日には英国と共にタリバン軍基地及びアル・カイーダ訓練所に対する大規模空爆を開始しました。
 結果、確かにタリバン政権は崩壊・逃走しましたが、アフガンは国家崩壊を起こして収拾のつかない混乱に陥り、ビンラーディンは行方知れず、アル・カイーダ幹部は全世界に拡散して各地でテロが激発、米本土に対する再テロの危険もむしろ増大しているわけで、このやり方が失敗だったことは明白です。それについては私の『アメリカ帝国の崩壊』に詳しく書いていますので参照して下さい。
 さて、国連との関係に戻ると、確かに国連憲章は「個別的・集団的自衛権」の発動を認めていますが、かと言って野放しで認めているのではなく、平和的解決の努力が破綻し、非軍事的強制措置も効力がなく、では国連としての軍事的措置をとるかということになったとしてもまだその合意は形成されていないという場合の、あくまで「例外的」なこととして、条件付きで、つまり国連が必要な措置をとるまでの間に期間を限定し、またその国がとった措置について安保理に報告する義務を課すという形で、認めているにすぎません。
 その意味合いを理解するには、国際法の領域における「戦争の違法化」の歴史を少し振り返る必要があります。19世紀から第1次世界大戦前までは、戦争や武力行使は国家の自由な権利とされ、まったく禁止されていませんでした。第1次大戦後に国際連盟が出来て、その規約である範囲で戦争や武力行使を禁止したが、規定があいまいだったので、1928年にパリに当時のほぼすべてに当たる63カ国の代表が集まって「不戦条約」を締結し、その第1条で「締約国は、国際紛争の解決のために戦争に訴えることを不法とし、かつその相互の関係において、国家的政策の手段としての戦争を放棄する」と、第2条で「締約国は、相互間に起こることがあるべき一切の紛争や紛議は、その性質や起因のいかんを問わず、平和的手段によるのでなければ、その処理または解決を求めない」と宣言しました。国際紛争解決のための戦争と国家的政策の手段としての戦争、ということは、すべての「侵略戦争」が禁止され、さらに第2条では戦争に至る以前の「武力の行使」も禁止されたわけですが、この議論の過程で、しかし、にもかかわらず他国から侵略や武力攻撃を受けた場合に自衛のための戦争ないし武力の行使を行うことは当然で、そこで「自衛権」という概念が浮上することになりました。侵略戦争はダメだが自衛戦争はOKということです。
 ところが、このせっかくのパリ不戦条約も役には立たず、11年後には第2次世界大戦が勃発、人類は一層悲惨な戦禍に喘ぐことになりますが、そうなってしまった国際法の面から見た要因は、大戦当時の英外相ジョージ・ロイドが喝破したように「戦争や武力行使をした国で、自衛権を援用しなかった者は、未だかつてなかった」——すなわち「自衛の名による侵略戦争」が横行する状態に歯止めがかからなかったからです。日本の満州事変はその典型で、日本は自衛のためやむを得なかったと主張したが、国際社会は侵略だと断定しました。米国の日本への原爆投下も自衛の名による過剰な侵略行為でしょう。
 そこで、第2次大戦の反省の上に立って出来た国連(国際連合)では、パリ不戦条約の趣旨を引き継ぎつつ、個別国の戦争と武力の行使を禁止し、国際の平和と安全のための軍事的制裁措置が必要な場合はすべて安保理事会の決定ないし許可に基づいて行うこととし、それが間に合わない場合に限って例外的に一定の制限の下で個別的・集団的自衛権の発動を認めることとなったのです。
 話が長くなりましたが、そういうわけなので、米英のアフガン戦争=OEFは、国連憲章が一般論として限定的に認めている個別的・集団的自衛権の発動には違いありませんが、だからと言って、このような戦争を仕掛けることを国連として決定も許可も授権もしていない以上、それは実質的には米英が勝手に始めたまさしく「自衛の名による侵略戦争」にほかなりません。(続く)

●[資料1]安保理決議13682001年9月12日(外務省訳)

安全保障理事会は、

 国際連合憲章の原則及び目的を再確認し、

 テロ活動によって引き起こされた国際の平和及び安全に対する脅威に対してあらゆる手段を用いて闘うことを決意し、

 憲章に従って、個別的又は集団的自衛の固有の権利を認識し、

(1)2001年9月11日にニューヨーク、ワシントン
D.C.、及びペンシルバニアで発生した恐怖のテロ攻撃を最も強い表現で明確に非難し、そのような行為が、国際テロリズムのあらゆる行為と同様に、国際の平和及び安全に対する脅威であると認める。

(2)犠牲者及びその家族並びにアメリカ合衆国の国民及び政府に対して、深甚なる同情及び哀悼の意を表明する。

(3)すべての国に対して、これらテロ攻撃の実行者、組織者及び支援者を法に照らして裁くために緊急に共同して取り組むことを求めるとともに、これらの行為の実行者、組織者及び支援者を援助し、支持し又はかくまう者は、その責任が問われることを強調する。

(4)また、更なる協力並びに関連する国際テロ対策条約及び特に1999年10月19日に採択された安全保障理事会決議第1269号をはじめとする同理事会諸決議の完全な実施によって、テロ行為を防止し抑止するため一層の努力をするよう国際社会に求める。

(5)2001年9月11日のテロ攻撃に対応するため、またあらゆる形態のテロリズムと闘うため、国連憲章のもとでの同理事会の責任に従い、あらゆる必要な手順をとる用意があることを表明する。

この問題に引き続き関与することを決定する。

2007年10月30日

INSIDER No.417《FROM THE EDITOR》

●季刊誌『住む』が鴨川の拙宅を紹介!

 内閣が代わるという日に呑気な話をして申し訳ないが、農文協が発売元の季刊誌『住む』の昨日発売の号、「“農”ある暮らし」特集に安房鴨川の拙宅が紹介されている。見た人が「豪邸じゃん!」と言ってくれたが、それほどでもなくて、カメラマンの腕がいいので実物以上にキレイに写っている。先日訪れた知人のドクターが、「これは高野さんがインサイダーで書いていたイメージから、だいぶ奥さんの趣味に妥協したな。でも、奥さんを大事にしないと田舎暮らしに奥さんが付いてこないからね」と言っていたが、そういう面もある。根本にあるのはあくまで外の光、風、土がそのまま室内に流れ込む日本民家の構造だが、見てくれはどんなにモダンでもいいというのが私のコンセプトで、そこから先の仕上げのディテールやインテリアは奥さん任せでこういうことになった。でもねえ、ここにいて向かいの山を眺めていると、内閣が代わったなんてどうでもいいことに思えてきてしまうのがマズイんだよねえ。

「住む」:
http://www.sumu.jp

(9月26日《ざ・こもんず》掲載)▲

●愛国心とフリーター

 雨宮処凜(かりん)の愛国心論が面白い。『雨宮処凜の「オールニートニッポン』(祥伝社新書)は、処凜がパーソナリティを務めたネットラジオでニート&フリーター問題を縦横に語り合った公開ナマ番組の記録で、第4章では『論座』07年1月号に「『丸山眞男』をひっぱたきたい/31歳、フリーター。希望は、戦争。」を書いて話題になった赤木智弘ほかとの座談を載せている。赤木の論は、ごく簡単に言うと、経済成長世代が好き勝手をしてきて責任をとらずにのうのうと生きているのに、不況になったらなぜ若者がフリーター化して割を食うのか、その不平等をブチ壊して「国民全員が苦しむ平等」を実現するには「日本が軍国化し戦争が起き、たくさんの人が死ねば日本は流動化する。多くの若者はそれを望んでいる」というもの。処凜は赤木と同じ1975年生まれで、北海道から出てきて21歳で右翼団体に加入、愛国バンド「維新赤誠塾」でボーカルとして活動。今はフリーター、プレカリアート問題を中心に旺盛な執筆活動を展開している。その彼女が赤木論文への感想をこう語る。

「『右傾化』と言われる若者が読むと、自分のことがものすごくわかってしまう。『愛国でごまかしているけど、こういうことだったんだ』と思うと思います。…私のところにも読者から『戦争が起こってほしい』というメールが来るんですね。…それプラス…『自分を愛国心でごまかそうとしていたけれども、愛国じゃごまかせないことに気付いた。自分が使い捨て労働力だということをもう認めた』…『もう愛国にすがるのはやめた』という意見もきたりして」

「(小林よしのりの)『戦争論』が出たとき、もうすでに右翼だったんです、私。…95年のときに20歳だったでしょう、わたしたちは。あれがすごく大きかったんですよ。阪神大震災とオウム事件と戦後50年が重ならなければ、私は絶対右翼にいかなかったと確信しています。あそこで価値観とか戦後の物語が崩れた。…阪神大震災で家が倒れ、人が死んで、ある意味、すごく流動化しましたよね。…しかもその上に戦後50年が来たので、『戦後日本の誤り』みたいのを思いきり突きつけられた。…自分は20歳でフリーターで…ホームレスにならない生き方がわからないくなった第一世代だったと思うんです。そうしたら、何かそこと、『学校で教えられない歴史』という、靖国史観みたいなものがすごい結び付いたんです。学校で教えられてきた『頑張れば何とかなる』というのがまったく通用しない時代になっちゃった。なんだ、学校で教えられたことは全部嘘だったんだ、と」

 見事な自己分析、と言えるだろう。若者たちが何で小林よしのりなんかにかぶれるんだ?というのはオジさんたちの年来の疑問だが、ここにはそこへの回路の1つのパターンが描かれている。中西輝政は、97年に歴史教科書と拉致を両輪とした「保守革命」の上げ潮が始まって、今年の安倍参院選大敗でそれが終わったと慨嘆したが(本欄9月19付)、それは上からの見方で、下の方ではそれより前にこのような若者たちの乾ききった意識が藁束のように火を着けられるのを待っていたということなのだろう。(10月16日《ざ・こもんず》新・時事用語辞典に掲載)▲

●戦争の民営化

 米誌『TIME』10月22日号によると、イラクに駐留する米軍は16万8000人であるのに対し、米国防総省、国務省、米国その他の進出企業が雇用契約を結ぶ民間人スタッフは18万2000人で、その内訳は米国人2万1000人、他の外国人4万3000人、イラク人11万8000人である。その大多数は運転手やコックなどの仕事に就いているが、2〜3万人は武装した民間警備兵すなわち傭兵で、その出身国籍は米国、チリ、フィジー、ネパール、南アフリカ、英国など30カ国に及ぶ。米国の民間警備兵のほとんどは米国防総省に雇われているが、米国務省に雇われているのは1395人で、その内945人が米国人、421人がその他の外国人、29人がイラク人である。

 米国の傭兵会社「ブラックウォーター」が警備の領域を超えて事実上、対テロ作戦に従事し、イラク人を虐殺していることが非難を浴びているが、そのようなことをしているのは同社だけではなく、10月9日にバグダッドで2人のイラク人女性を射殺したのはオーストラリアの警備会社の傭兵で、彼らは米国籍の会社RTIインタナショナルに雇われていた。(10月17日《ざ・こもんず》新・時事用語辞典に掲載)▲

●大阪読売TV「情報ライブ・ミヤネ屋」が全国放送に!

 私が毎週火曜日にナマ出演してきた大阪読売TVの昼ワイド番組「情報ライブ・ミヤネ屋」は、これまで月〜金の15:55から2時間の夕ワイドだったのが、10月からは13:55から3時間の昼ワイドに枠を拡大、しかも関西圏だけだった放送エリアも、関東圏と長野県を除く日本TV系25局にネットされ、一挙、全国版の番組にのし上がった。

 この番組は、当初は金曜日の15:55から2時間の週1回で始まったが、昨年8月からは月〜金の帯番組となり、さらに日本TV・読売TV共同制作で14年間続いてきた草野仁の「ザ・ワイド」が今年9月一杯で終了となったことから、読売TVとしては大決断を下して、その穴を埋める形で「ミヤネ屋」の時間帯を繰り上げると共に枠を3時間に拡大した。他方、日本TVはやる気が乏しく、その穴を人気ドラマの再放送などでお茶を濁した。そのため系列の地方各局が雪崩を打って「ミヤネ屋」を受けることになった。

 従来から関西各局は、朝ワイドと夕ワイドについては独自番組を競い合ってきたが、昼ワイドで関西独自番組を打つのはたぶんこれが初めてで、まして関西発のワイド番組がほぼ全国にネットされるというのもたぶん初めてだろう。関西発の全国番組が東京周辺だけ観られないというのも、TVにおける地方分権にとって画期的な出来事と言える。

 番組は、大阪朝日放送出身のフリーの人気アナウンサー=宮根誠司の司会で、ニュース、時事解説から芸能、旅・料理・健康など生活情報まで幅広く盛り込んだまさにワイドで、「高野さん、なんであんな番組に出てるの?」と言われることもあるが、ニュースや時事解説のコーナーへの取り組みはまことに真摯であるのに加えて、関西風の味付けの生活情報も勉強になることが多いので、喜んで毎週大阪に通っている。火曜日の出演者は私の他、近藤サト、松尾貴史、吉村作治など。月曜日は飯星景子、国定浩一、黒木昭雄、見城美枝子、水道橋博士ら。水曜日は小沢遼子、ガダルカナル・タカ、八幡和郎ら、木曜日は秋野暢子、浅野史郎、神足裕司、原田武夫ら、金曜日は大谷映子、池田健三郎、海江田万里、北野誠、高木美也子らと、なかなか多彩である。

番組HP:
http://www.ytv.co.jp/miyaneya/index.html

(10月19日《ざ・こもんず》掲載)▲

●11月11日に芝公園で「土と平和の祭典」が開かれる!

 11月11日(日)に港区立「芝公園」を借り切って「土と平和の祭典」が開かれる。故・藤本敏夫が目指した「農的生活」への想いを若い世代に受け継いでいこうという加藤登紀子さんの発案で、2人の次女で鴨川で自ら農を実践しているYaeさんが実行委員長となって、今年2月以来、全国の農と食、そして環境と平和にこだわって地道な活動を展開する様々なグループ・個人に声をかけて種を蒔いてきた。この日はそれらの人々が全員集合する一大農家市場が出現、中央のステージではYae、加藤登紀子はじめ豪華なゲストによるライブとトークが行われる。恐らく参加者が1万人を超える大賑わいとなるはずで、職と農に関心ある方々は是非ご参加を。

案内はここ:
http://www.tanemaki2007.jp/index.top.html

また、11月4日(日)には早稲田大学「早稲田祭」の企画の一環として「私たちの食のゆくえ/日本の食糧問題について考える」シンポジウムが、14時から14号館102教室で開かれ、高野も登壇する。(10月30日《ざ・こもんず》掲載)▲

2007年10月29日

INSIDER No.416《TOKUSOHO》本質論議に入れないテロ特新法審議──結局、時間切れ・先送りか?

 国会は、29日の守屋武昌=前防衛事務次官の証人喚問に続いて、30日に衆院テロ防止・イラク支援特別委員会での野党質問、31日に福田康夫首相と小沢一郎民主党代表との初の党首討論を予定しているが、これでテロ特新法の審議が軌道に乗る見通しは暗く、11月10日までの会期内にはもちろんのこと、相当大幅に会期を延長してもなお、今国会で成立する可能性はますます小さくなりつつある。

●進退窮まる福田政権

 守屋の証言内容次第では、彼の再喚問や、彼を接待漬けにして次期輸送機(CX)のエンジン受注を図ったとされる宮崎元伸=山田洋行元専務(日本ミライズ社長)の喚問、また海自給油艦が米補給艦経由で米空母キティホークに提供した軽油の量を偽った上、同艦の航海日誌の該当ページを破棄して隠蔽しようとした海上幕僚監部の寺岡正善=防衛課長(当時、今年初めから10月22日までは片山さつき代議士の公設秘書)はじめ防衛省幹部の喚問など、野党が喚問波状攻勢に出るかもしれず、さらにはその延長上で、隠蔽当時にも防衛庁長官として責任ある立場だった石波茂=防衛大臣に対して参院野党が問責決議案を提出することもありえよう。

 仮に衆院が早々に新法を通過させて参院に送付し、その段階で参院が石波を問責に付した場合、それだけでは彼を辞めさせるだけの効力=法的拘束力はないものの、彼に答弁に立つ資格はないとして参院が審議拒否もしくは引き延ばしをする理由には十分になるわけで、そうすると会期を延長してもなお衆院に持ち帰って3分の2で再議決する時間的余裕がなくなるかもしれないし、またそうでなかったとしても公明党が再議決に同意するかどうか不確定である。ならばいっそ、会期を延長せずに衆院に法案を留めて参院に送らず、「継続審議」にするという方法もないではないが、それでは福田政権は「テロ特国会」と名付けられたこの国会を何の実りもないまま終わらせることになり、11月中旬に予定された訪米にどの面下げて行けばいいのか分からなくなってしまう。

 すでに福田首相は進退窮まりつつある状態で、思い返せば安倍晋三前首相は、9月の時点で11月にこのような窮地に立つことになることを予想して、「そうなってから辞めるよりも今辞めた方がいいと判断した」と言って政権を投げ出したのだったが、言うまでもなくそれは何の解決でも改善でもなく、単に無責任に次の人に問題を押しつけただけのことで、その通り福田が安倍に代わって、しかも安倍辞任〜新総裁選びの政治空白によって時間がなくなった分だけ余計に、窮地に立っている。気の毒なことである。▲

2007年10月15日

INSIDER No.415《TOKUSOHO》迷走止まらぬ特措法論議──政府・与党の答弁は破綻へ

 10日の衆院予算委員会で本格論戦が始まったテロ特措法を巡る論議は、すでにこの段階で守勢に回って弁解がましいことを並べ立てている政府・与党側の答弁が次々に綻びを見せている有様で、これでは新法が参院で否決後に衆院に戻っても、公明党の賛成を得て3分の2で強引に採択して、海上自衛隊のインド洋・ペルシャ湾での「無料ガソリンスタンド」の活動を継続することは相当難しいのではないか。

 政局的に鍵を握るのは公明党で、戦術論のレベルで言えば、9月12日、安倍辞任直前の記者会見で同党の北側一雄幹事長が「確かに(新法が衆院に送り返された場合の)再可決の制度はあるが、行使するか否かは政治判断だ。世論の動向を勘案して判断していく」と語っているのは、自民党にとって相当なプレッシャーである。「世論を勘案して」というのは、平和志向の強い創価学会婦人部・青年部の反発を無視できないという意味と同時に、3分の2の数の力による再可決が世間の非難を浴びて政局騒然、早期(年末・年始)の解散・総選挙に転がり込むのを避けたいという意味でもある。

 戦略論のレベルで言うと、民主党の小沢一郎代表が主張して止まない、「集団的自衛権を発動して米国の(私的)武力行使に協力するのは違憲だが、集団安全保障の原理に立って国連の(公的)武力行使に参加するのは合憲」という論理は、小沢が新進党時代に、元国連職員で公明党出身の東祥三衆議院議員(当時)をブレーンとして作り上げたもので、本来、公明党はこれに反対することは出来ないはずなのだ。逆に言えば、民主党は裏から公明党に手を回してこの問題での共闘を働きかけ、自公間の離反を画策することが出来るかもしれない。

 対民主党のみならず対公明党にも説得的な議論を展開しなければならない政府・自民党だが、それにしてはこの問題への対処はお粗末で、ほとんど支離滅裂に近い。

●パキスタン艦はハイオク?

 日本海上自衛隊のインド洋での給油活動が絶対不可欠である理由として、当初、ジョン・T・シーファー大使は「パキスタンの艦艇は高品質の燃料が必要で、米国の燃料は使えない。日本が参加しなければ影響は重大だ」と政官界を説いて回った。それを受けて谷内正太郎外務次官も9月10日の記者会見で「パキスタンの艦艇は自動車で言えばハイオクを使わなければならず、それがないと行動が難しくなる。それを提供出来るのは日本の補給艦だけ」と説明した。またメディアでは、「パキスタンがアフガン戦争に参加している唯一のイスラム国であることの象徴的な意味は大きく、それが活動出来なくなった場合に日本は国際的な非難を浴びて孤立する」といったまことしやかな恫喝的な解説も横行した。ところが翌11日の記者会見で「日本の燃料でないとパキスタン艦は動けないというのは本当か」と訊かれた吉川栄治海上幕僚長は、「それはないと思う」と述べ、他国の補給艦でも給油は可能だと指摘した。駐日米大使と外務次官の発言を海自トップが否定するのは異常事態だが、2人の間違いが余りに初歩的な技術上の問題だったので、調子の合わせようもなかったのだろう。

 実際、パキスタン海軍の主力である6隻のフリゲート艦(2750トン)は英国で約30年前に建造された「アマゾン級」の払い下げ品であって、英国製の軍艦が米=NATO共通仕様の「F76」燃料以外の高品質な燃料を必要とすることなどあるはずがない。現実に日本がパキスタンを含む各国艦艇に給油しているのは「F76」と同等の(日本で言う)「軽油2号」で、これは何のことはない、日本全国どころか世界中のガソリンスタンドで売っている普通のディーゼルエンジン用の軽油と同質のもの(の艦艇用)にすぎない。江田憲司衆院議員(無所属、橋本内閣の首相補佐官)が米海軍中央司令部・第5艦隊のホームページに「日本自衛隊からF76の給油を受けた」との記述があるのを発見し防衛省に問い合わせたところ、自衛隊が給油しているのは「F76と同等のもの」という回答だった。

 吉川海幕長は上述の会見で「日本の補給艦は燃料清浄器を回して、不純物を除去したクリアな燃料を供給するよう心がけている」と付け加えたが、「燃料清浄器はどこの国の軍艦でも付けているでしょう」と問われると「普通であれば付けている」と、それが特別のことではないと認めている。「ハイオク」などという戯言が一体どこから出てきたのか。

 それにそもそも、田岡俊次の『世界』11月号論文によれば、パキスタン海軍は6隻の主力艦に対して大型2隻、小型3隻の補給艦を保有していて十二分の給油能力を備えているし、またその主たる哨戒海域は主要基地グワダール港の前面で、アラビア半島南西沖にいる日本艦に給油を受けるよりも母港に戻った方が早い。日本の油はタダというだけのことで、「日本が参加しなければ影響は重大だ」などというのはデマである。

 確かに、8月23日に統合幕僚監部が発表した2001年12月2日から2007年8月20日までの「補給・輸送協力支援活動等の実績について」を見ると、艦艇用燃料の補給は11カ国の駆逐艦・補給船等に774回、約48万キロリットル行っていて、国別では米国350回のダントツトップに続いてパキスタンは139回で第2位を占めている(以下、フランス94回、カナダ43回、イタリア40回、イギリス33回、ドイツ29回、ニュージーランド15回、オランダ11回、ギリシャ・スペイン各10回)。これには国別の補給量が記されていないが、以前の発表資料で見ると、パキスタンは回数は多いものの1回の補給量は極めて少なく、少量を頻繁に補給されていることが判る。他方、8月23日資料では水の補給が117回、約6430トン行われ、これは全量パキスタン向けだった。ということは、パキスタンが本当に必要だったのは日本の水で、そのついでに燃料補給も受けたというのが実態かもしれない。

 いずれにせよ、国会は米大使、外務次官、海幕長らを証人喚問するなどしてこの問題に決着を付けるべきだろう。

●安保理が日本に感謝?

 民主党の小沢一郎代表が「アフガン戦争は米国の自衛のための戦争であり、国連によってオーソライズされたものでないから、それに日本がいかなる形にせよ協力するのは憲法違反」との理由でテロ特措法(延長)に反対を表明したことから、政府・自民党は何とか国連のお墨付きらしきものを手に入れようと躍起になり、折良く9月19日に安保理が採決したアフガニスタンにおける「国際治安支援部隊(ISAF)」の任務を10月13日以降も1年間延長するについての決議1776の前文に、日本の給油活動への“感謝”の文言を潜り込ませるべく画策した。その結果盛られたのが次の一文である。

「NATOにより発揮されたリーダーシップに対して、またISAF及び海上阻止行動を含むOEF連合への多くの諸国の貢献に対して、感謝の意を表明する」

 OEF(不朽の自由作戦)は、9・11を受け米国が「これは米国の自衛戦争であり、国連の決議などいらない」と啖呵を切って始めた戦争で、その目的は旧タリバン政権の打倒とアルカイーダの掃討である。小沢の言うとおり、これは「米国の自衛戦争」、つまり本土攻撃を受けた米国が個別的自衛権を発動して開始した戦争であり、英仏などNATO諸国やオーストラリアなど米国の同盟国が集団的自衛権を発動してこれに参加し、あるいはポーランドやパキスタンはじめ同盟国ではないが9・11への同情や他の思惑から参加したからと言って、さらには参加はしないが支持・容認を表明した国々があったからと言って、その本質に変わりはない。米軍を主体に約20カ国からなる陸上部隊8000人が主にアフガン東部で作戦に従事し、また米第5艦隊を主体に日本を含む約20カ国がインド洋・ペルシャ湾での海上阻止行動に参加してきた。

 一般に、国際法の常識として、戦争には原理的に自衛戦争、侵略戦争、制裁戦争があり、このうち自衛戦争と侵略戦争は国家が国権の発動として行うものであるのに対し、制裁戦争は国連もしくはそれを代位する地域安保機構が国際社会の意思として(ということは国権=個別国家の利益確保の目的を超えて)平和秩序の攪乱者を鎮めるために行うものである。自衛戦争は合法であり侵略戦争は不法であるが、実際には自衛の名による侵略があって、その境目は定かでない。アフガン戦争はまさに自衛の名による侵略戦争であり、テロ特措法論議はまさにその点を改めて吟味することから始めなければならないはずだが、いきなり「延長は1年間か2年間か」というような些末な話になってしまうのがこの国の国会の現実である。他方、制裁戦争は、国連憲章が規定する安保理指揮下の国連軍が存在しない現実の下では、その都度編成される多国籍軍に頼らざるを得ないが、しかしそれには、国連が総会や安保理の決議などで明白な指示と定義を与えている場合、関連する過去の決議などがあって多国籍軍側が「趣旨に合っている」と主張しうる場合、国連によってオーソライズされていない場合などがあって、これまたグラデーションをなしていて境目が難しいけれども、アフガン戦争=OEFは最後の場合に属する。

 ISAF(国際治安支援部隊)は、タリバン政権が崩壊した後にカルザイ政権が成立したものの首都カブール周辺の秩序維持さえままならず、かといって米軍はビンラーディンとアルカイーダを追って困難な軍事作戦を続けていてその面倒まで見ることが出来ないという現実を踏まえて、言ってみれば「この戦争は米国が勝手に始めたものではあるけれども、一応新政権も成立したことではあるし、それを支援して一日も早く秩序を回復することは人道上喫緊であり、またそれが米国をアフガンの泥沼化から救い出す一助にもなるだろう」という趣旨で、01年12月の国連決議1386に基づいて創設された多国籍部隊である。国連指揮下の平和維持活動(PKO)ではなく、指揮権はNATOに委ねられているが、明白な国連決議に裏付けられていることは間違いない。

 ところが問題は、OEFがほとんど失敗に終わりつつあることである。ビンラーディンの行方が分からないばかりか、アルカイーダは世界中に拡散して米本土に対する第2の9・11を狙っており、また国内ではタリバンが大復活して領土のほぼ3分の1程度を実効支配してテロを含む本格的な軍事作戦を展開している。このため、本来は戦闘終了後の治安維持と民生安定の支援を目的としていたISAFは、OEFを補完する軍事作戦を強化せざるを得なくなり、03年10月の決議1510に基づいて04年からはその作戦範囲を全土に拡大した。米国が国連を馬鹿にして自分で始めた戦争が収拾がつかなくなって今更ながら国連に助けを求めている形であるけれども、国連=ISAF側はそこは大人の態度で呑み込んで、アフガン民衆を戦乱と飢餓から救うためにこの任務を引き受けているのである。

 そういう訳なので、安保理の今回の決議前文は「ISAFのアフガン全土への拡大の完遂、ISAFとOEF連合の連携の継続、ISAFとアフガン駐在EUPOL(欧州警察機構)との協力」を謳い、その文脈の中で、上述のISAF及びOEFへの参加諸国への感謝を述べているのであって、これを以て日本政府が「日本の活動が評価された」などと宣伝するのは筋違いである。知られているように、ロシアは、OEFが国連の承認に基づかない米国の自衛権行使であり、また「ある国」つまり日本の国内事情を安保理決議に持ち込むのは妥当でないとして、この決議に棄権したが、そのように日本の画策は国際的にも見え透いていた。

 だいたい、海上阻止行動と今は言っているが、それは取って付けたような話で、最初はアフガン空爆の支援、03年春にイラク攻撃が始まってからはその支援が目的であり、実際に両国での米軍などの作戦が地上での内戦介入に移って泥沼化してからは、日本の給油活動も急減している。政府は、海上阻止行動によってインド洋がアルカイーダに支配されるのを防いできたと胸を張るが、アルカイーダがインド洋の支配など目論みているはずもなく、アフガンと中東・欧州との移動・輸送にしても、目立つに決まっている海上ルートなど使わずに「中央アジア暗黒回廊」の陸路を自由に利用して行っているのが現実で、海上阻止行動はほとんど意味がない。米国が恐れているのは、日本が離脱することの政治的マイナスだけであり、そのためにこれだけのコストを払うのが妥当かどうかを冷静に検討する必要がある。

●イラク戦争に転用?

 江田議員が火を着け、反核NPOの「ピースデポ」が具体的な証拠を突きつけて大問題になった、日本の油が米海軍のイラク作戦にも活用されていたという問題も、以上のような問題状況に照らして捉えなければならない。

 米軍の立場に立ってみれば明らかなことだが、03年春のイラク侵攻が始まってからはもちろんのこと、アフガン戦争以前から続けられてきた空母などによるイラク監視作戦(OSW=イラク南部に米英が設定した飛行禁止空域をイラク空軍機が違反飛行するのを監視し攻撃・爆撃する作戦)や海上臨検、イラク侵攻を決意してペルシャ湾に兵力集中を開始した段階まで含めて、アフガンとイラクは1つの大戦域での作戦で、こちらのために調達した弾薬や資材や燃料をあちらで使ってはならないなどという馬鹿馬鹿しい区別がある訳がない。

 問題になったのは、03年2月25日に海自補給艦「ときわ」が米補給艦「ペコス」に燃料を給油し、その直後にペコスがさらに米空母「キティホーク」とイージス巡洋艦「カウペンス」に給油し、その両艦が約17時間後にホルムズ海峡を通過してペルシャ湾内に入り、OSW、やがてイラクへの空爆やトマホークミサイル射撃にした事実。このことは、03年5月にも国会で取り上げられ、当時官房長官だった福田康夫首相は、ペコスへの給油は20万ガロン(750キロリットル)、ペコスからキティホークへの給油は80万ガロンで、20万ガロンは空母1日分の消費量に過ぎず、また同空母はOEFの任務にも就いていたので問題ないと答弁した。しかしピースデポは米国で公開された資料に基づいて、ときわからペコスへの給油量は80万ガロンであり、ペコスはそれをキティホークに67.5万トン、カウペンスに14.9万トン給油したことを明らかにし、政府もそれを認めて訂正・謝罪した。そうなると、キティホークは空母の1日分の消費量の3日分以上を日本から供給されていたことになり、4日後の28日にOSWに従事していたときにはまだ日本からの供給分が混じった燃料を使用中であったことは確実である。そこで困った政府・防衛省は、衆院予算委員会が始まる10月10日の朝までに急遽、「ホルムズ海峡通過時は33ノットの高速航行で、その後、数回の艦載機の出動時にも高速航行が必要だったので、1日20万ガロンという標準値を上回る消費量だった」という説明を用意した。しかし、米会計検査院の統計では、通常型空母の標準的消費量は1日11万3000ガロンとされており、これだと日本の燃料で6日間は行動していたことになる。

 しかし、この議論そのものが空しいもので、船でも自動車でも、燃料タンクが完全に空になってから給油することはあり得ず、また日本からの給油分だけタンク内の別室に蓄えておいてそれを先に3日以内で消費するよう心がけるなどということもあり得ないから、初めからときわの軽油2号はタンク内の残りと混じり合って長きに渡り使用されたと考えるのが自然である。しかも、米艦が艦載機を発進させたりトマホークを発射したその瞬間に日本の燃料がまだ残っていたかどうかという話自体が漫画的で、その作戦のためにホルムズ海峡を越えてペルシャ湾に入るその燃料を供給していれば、それは「イラク戦争に転用された」ことになるのである。

 こうして政府答弁はとんでもないところに填り込みつつあって、この調子で、たまたま明らかになった03年2月のペコス〜キティホーク&カウペンスのケースだけでなく、これまで105回、計27万キロリットルの米英補給艦への給油の最終的な行き先と用途を精査するということになれば、泥沼に陥って破綻していくことになる。

 根本は、政府も国会も、アフガンの現実を実地調査して日本として何をなすべきかを検討することなく、米国の戦争の本質と国際法的な性格を理論的に整理してそれと日本の安全保障との関わりを議論するでもなく、従ってまた小沢の「ISAF参加論」についてもまたそれを国連憲章、日本国憲法、日米安保条約の体系との関わりで、日米軍事同盟に基づく集団的自衛権の発動か国連の国際集団安全保障への貢献かという原理的な問題として論争の俎上に乗せるのでなく、「小沢は前は親米だったのに今は反米になった」などという全く別のレベルで論じていることにある。小沢の『世界』11月号「今こそ国際安全保障の原則確立を」は、短いながら簡明に彼の主張の要点をまとめていて参考になる。▲

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