Calendar

2007年7月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

Recent Entries

Recent Comments

« INSIDER No.402《NORTH KOREA》拉致敗戦?──安倍首相に降りかかるさらなる難題
メイン
INSIDER No.404《SUB-PRIME》サブプライム問題ごときでなぜ世界がガタガタするのか?──電子的金融カジノのふしだらさ »

INSIDER No.403《SANINSEN》自爆に突き進む安倍政権──早まる衆院選?

 安部政権初の国政選挙となった参院選が、大方の予想を超えて自民党の歴史的な惨敗に終わり、政局は一直線に衆院選の繰り上げ、民主党政権の誕生の可能性に向かって流動し始めた。

●「果断の人」という誤解

 自民党の敗因について、新聞などは「年金、厳しい判断」(日経30日付)と月並みな総括をするが、より根本的には、その年金問題を含めて、相次ぐ閣僚の政治資金疑惑や失言問題のすべてに共通して、安倍晋三首相の対応が単に後手後手に回ったというに止まらず……、
▼仲良し同士でかばい合ったり、
▼弁解がましいことを並べ立ててはぐらかそうとしたり、
▼法には触れていないことを強調して開き直ったり、
▼他人のせいにして自分だけ罪を逃れようとしたり、
──まあおよそ潔くも美しくもない、グズグズした、卑怯者の態度に終始してきたことへの国民の不快感・不信感の累積が限度を超えてしまったことにある。高まるばかりの不支持率はその表れと見てよい。

 安倍は「果断の人」として人気が上がって自民党総裁にまで上り詰めたはずなのに、それがこのようにグズグズを繰り返して人気を失ったのはなぜなのか。それは最初の「果断」という評価がマスコミが作った誤解に過ぎなかっただけで、彼は元々こんな程度の人物だったのである。

 安倍の果断が評判になったのは、官房副長官時代に拉致被害者5人を北朝鮮に返さないという断固たる政府方針を決める主役を演じたためである。しかし、本誌が何度も指摘してきたように、それは果断と言えるものではなく、単に被害者・家族・支援者の自然な感情に基づく運動の論理に彼が情にほだされて簡単に同調してしまった、むしろ政治家としてあるまじき直情径行的な単純思考の露呈に過ぎなかった。家族・支援者の「あんな国に返してなるものか」という気持ちは当然であるけれども、政治家がそれに同化してしまっては話にならず、そこでは「皆様のお気持ちは重々理解しているけれども、ここは一つ私にお任せ下さい」と引き取って、裏も表もある外交交渉の駆け引きに持ち込んで行かなければならなかった。彼のエセ果断によって日本政府は北との交渉の扉を泥靴で蹴って閉ざしてしまった格好になり、後は、これもまた運動側の感情論に根ざした成算も着地点もないままの経済制裁、その延長での横田めぐみさんの遺骨の余りに性急な偽物断定と突き進んで行って、ますます出口を見失うしかなかった。つまり、彼のほとんど唯一の成功事例と評価されている拉致問題での強硬態度とは、むしろ彼が押したり引いたりの政治や外交の駆け引きに必要な複雑思考が苦手であることを示す、私に言わせれば失敗事例だったのである。

 安倍政権のこれまで10カ月を振り返れば、就任直後の電撃的な韓国・中国訪問は確かに初回いきなりクリーンヒットの趣があった。が、これは最初から安倍政権を作って幹事長に収まるつもりだった中川秀直が半年も前から周到に準備したシナリオに沿ったもので、安倍自身の才覚によるものではなかった。それ以降は、昨秋の郵政造反組の復党問題に始まって最近の赤城農水相の絆創膏騒動に至るまで、およそグズグズの連続で、しかし彼はそれをグズグズとは思っていなくて、「世論の動向に右顧左眄することなく信念に基づいてまっすぐに突き進めば必ず道は開ける」くらいに思ってきたのだろう。そこが単純思考で、どうも彼は祖父=岸信介の悪いDNAだけを引き継いだのかもしれない。

 ところで教育再生は安倍の目玉であるはずだが、これも人気回復には何の役にも立たなかった。「教育再生会議」の人選と運営の酷さもさることながら、教育再生、とりわけいじめ問題克服の鍵は「卑怯者になるな」ということを指導者がその生き方を通じて身を以て教えることであり、安倍が潔さのかけらも欠いて自他の責任を曖昧にし続けているようでは子供たちは見習いようもない。

 こうして、自民党の敗因の最大のものは、そもそも指導者の器でない安倍を単に国民的人気があるという安易な理由でほぼ満場一致に近い形で総理にしてしまった1年前の同党の無気力状態にある。器でないのであれば周りで支えなければならなかったが、お友達人事と官邸の無能によってそれもままならず、グズグズを繰り返した。そしてそのグズグズの総仕上げが、参院選がまだ開票半ばであるのに早々に行われた安倍の「続投」宣言である。彼が要所要所できちんと責任を明らかにしてテキパキと問題を片付ける能力がないことに国民が苛立っていて、その結果がこれであるというのに、そこでまた自らの責任について触れることなく「今後もよろしくおねがいします」と言うとは、どういう神経なのか。このようにして安倍は自分がどういう立場に置かれているか一向に分からないまま、自爆に近づいていこうとしている。

●安倍で衆院選が戦えるのか

 自民党の獲得議席が、18年前の宇野辞任の時と比べて1議席だけでも上回り、史上最低記録を更新しないで済んだのは、せめてもの救いと言えるかもしれない。しかし、参院自民党のドンと言われる青木幹雄議員会長のお膝元=島根での敗北、No.2の片山虎之助参院幹事長自らの落選、塩崎恭久官房長官の地元=愛媛ばかりか四国4県での全敗など、内容的に見れば参院自民党は半壊どころかほぼ全壊状態に陥り、No.3で安倍嫌いの舛添要一に取り仕切ってもらうしかない有様である。しかも、どうあがいても議長と主要委員長のポストを野党に握られるのは避けようもなく、臨時国会以降、政局の運営は極度に難しくなって解散・総選挙にいつ転がり込んでもおかしくない状況となる。

 今は安倍の続投に異を唱える気力も出ない自民・公明両党だが、衆院選が視野に入ってくれば「安倍では戦えない」という声が噴出するのは目に見えているし、何よりも、自民党にとってほとんど唯一の全国的組織基盤となっている創価学会の側から自公連立を解消すべきかどうかという議論が出てくるだろう。周知のように、2年前の郵政総選挙でもそれ以前の一連の選挙でも与野党の総得票数はほぼ拮抗しており、衆議院の小選挙区の場合、1選挙区あたり平均2〜3万と言われる創価学会票がなければ当選できなかった自民党議員は数多い。もはや自民党は自公選挙協力なしにはまともに選挙を戦えなくなっている。事情は公明党にとっても同様で、自公協力がなければ公明党もまた中政党に留まることなく共産か社民程度の少数党になってしまうので、簡単には自民党と決別することは出来ない。

 とはいえ、今回の選挙では自民党が惨敗しただけでなく、公明党もまた“常勝神話”を打ち破られて1桁の議席に留まった。それは、安倍の卑怯者ぶりへの不快感は学会員にとっても同じである上に、安倍の改憲路線への特に学会婦人部・青年部の反発があって、自公協力が思い通りに作動しなかった結果である。そこで太田昭宏代表にのしかかるディレンマは、自民党と決別すれば議席は確保できず、だからと言って無為に連立=協力を続けて行けば公明党=学会のアイデンティティの重要な柱である平和希求が浸食されて組織が維持できないということである。

 これは公明党に限ったことではない。1993年に戦後38年間に及ぶ自民党一党支配の体制が崩壊して細川=反自民連立政権が誕生して以来、自民党はいかなる選挙においてももはや単独で過半数を制する力を持たず、ただ野党の分立状態を利用して、最初は社会党とさきがけ、次ぎに公明党と自由党、自由党が離れた後は公明党と保守党、保守党が消滅してからは公明党……と、次から次へと野党を連立相手に引き込んでは食い潰すことで権力の座を保ってきた。その間、社会党とさきがけは文字通り食い殺され、保守党は吸収され、自由党は早めに離れた分だけ壊滅を避けることが出来たものの民主党に合流することで命脈を繋ぐしかなかった。そして最後に残ったのが公明党で、言い換えれば自民党にとって最後の連立相手が公明党なのだが、それすらも食い殺しかねない自民党であることが示されたのが、今回の結果である。

 とすると、公明党には、極端に言えば、このまま連立=協力を続けて食い殺されるのを待つか、連立を離脱して小党の1つという地位に甘んじるか、という2つの選択しかないが、第3のすり抜け策としては、改憲=安倍を早期に退陣させて「よりリベラル」と説明できるような自民党になって貰うことで何とか連立を継続するという手がある。連立を離脱して民主党との協力に切り替えるという可能性は、民主党が絶対に応じないので、可能性ゼロである。そこで実際には第3のすり抜け策を追求するしかなく、そのため公明党もまた安倍早期退陣の圧力を掛ける側に立つということだろう。

 自公連立が解消されればもちろんのこと、すり抜け策を用いて継続した場合も今回のように選挙協力が巧く作動しなくなっていくので、いずれにせよ次の総選挙では自民党が大敗し民主党に政権を譲る可能性が大きくなる。つまり、94年以来の自民党の権力維持の手法は通用しなくなり、これで初めて、93年に衆議院に小選挙区制を導入して2大政党による選挙を通じての政権交代が当たり前に行われる先進国らしい政治風土の醸成が本格的に始まることになるのである。

 民主党の小沢一郎代表は、1人区に焦点を絞った頑固な組織戦略を一筋に追求し、「これで勝てなければ政治家を辞める」とまで宣言して(それは安倍とは対照的な潔さだった)、実際に言ったとおりの結果を同党にもたらした。中堅・若手の間では小沢の独断的な党運営への不満が満ち満ちていたが、この結果を前にして文句を言えるはずもなく、小沢の求心力は否応なく高まるに違いない。小沢は恐らく表芸と裏芸の二股路線で進むはずで、一方では、その文句なしの求心力を活用してバラバラと言われてきた路線を統合して本当に政権交代を実現するための21世紀国家ビジョンをまとめ上げつつ、参院を通じて安倍政権を痛めつける戦術を駆使して、真正面からの押し相撲で挑んでいくだろう。が、他方では、安倍をめぐる自民党内のこれから起こるゴタゴタを睨みつつ、事と次第によってはお得意の政界再編というか、自民党の反安倍分子を引き剥がすための裏工作に手を染めるかもしれない。政界再編と言うと、マスコミでは、民主党の前原グループのような安保で自民党と近い路線を持つ部分が自民党に行き、加藤紘一ら自民党のリベラル部分が民主党に合流するといった単純な展開を期待する論調もあるが、たぶん小沢の頭にあるのは、民主党から脱落者を出さずに自民党を分裂に追い込む方策だろう。すべては、次の総選挙での民主党政権実現に向かってすでに動き出している。▲

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.the-journal.jp/mt/mt-tb.cgi/507

Profile

現在、INSIDERニュースレターの内容は、ご覧の《THE JOURNAL》内でブログの形で公開されております。
誰でも無料で閲覧し、またそれについて感想や意見を書き込むことが出来るようになっておりますが、従来通り、お手元に電子(Eメール)版配信もしくは印刷版郵送の形で講読を希望される方は、引き続きEメール版:年間6,300円(税込)、ペーパー(紙)版:年間12,600円(税込)をお支払いください。[法人購読の場合は年間105,000円(税込)になります]
ウェブ上で無料で閲覧できるものが、Eメール版・ペーパー(紙)版が有料なのはどういうわけだと思われるかもしれませんが、後者の場合、読者名簿管理と請求の事務、配信と郵送の手間が必要であり、とりわけ印刷版の場合は紙代、封筒代、印刷代、郵便代のほか宛名を印刷して封筒に貼り、印刷されたものを三つ折りして封入し、糊付けし、紐で束ねて郵便局に運び込むのに膨大な手間とコストがかかっていることをご理解下さい。
また、無料で閲覧できるならそちらに切り替えたいという方もおられると思いますが、残余の購読期間は引き続きEメール版もしくはペーパー(紙)版を配信させて頂き、購読料を途中返還することは致しませんのでご了解下さい。

BookMarks

TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

INSIDER(インサイダー)
http://www.smn.co.jp/insider/

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.