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2007年7月31日

INSIDER No.403《SANINSEN》自爆に突き進む安倍政権──早まる衆院選?

 安部政権初の国政選挙となった参院選が、大方の予想を超えて自民党の歴史的な惨敗に終わり、政局は一直線に衆院選の繰り上げ、民主党政権の誕生の可能性に向かって流動し始めた。

●「果断の人」という誤解

 自民党の敗因について、新聞などは「年金、厳しい判断」(日経30日付)と月並みな総括をするが、より根本的には、その年金問題を含めて、相次ぐ閣僚の政治資金疑惑や失言問題のすべてに共通して、安倍晋三首相の対応が単に後手後手に回ったというに止まらず……、
▼仲良し同士でかばい合ったり、
▼弁解がましいことを並べ立ててはぐらかそうとしたり、
▼法には触れていないことを強調して開き直ったり、
▼他人のせいにして自分だけ罪を逃れようとしたり、
──まあおよそ潔くも美しくもない、グズグズした、卑怯者の態度に終始してきたことへの国民の不快感・不信感の累積が限度を超えてしまったことにある。高まるばかりの不支持率はその表れと見てよい。

 安倍は「果断の人」として人気が上がって自民党総裁にまで上り詰めたはずなのに、それがこのようにグズグズを繰り返して人気を失ったのはなぜなのか。それは最初の「果断」という評価がマスコミが作った誤解に過ぎなかっただけで、彼は元々こんな程度の人物だったのである。

 安倍の果断が評判になったのは、官房副長官時代に拉致被害者5人を北朝鮮に返さないという断固たる政府方針を決める主役を演じたためである。しかし、本誌が何度も指摘してきたように、それは果断と言えるものではなく、単に被害者・家族・支援者の自然な感情に基づく運動の論理に彼が情にほだされて簡単に同調してしまった、むしろ政治家としてあるまじき直情径行的な単純思考の露呈に過ぎなかった。家族・支援者の「あんな国に返してなるものか」という気持ちは当然であるけれども、政治家がそれに同化してしまっては話にならず、そこでは「皆様のお気持ちは重々理解しているけれども、ここは一つ私にお任せ下さい」と引き取って、裏も表もある外交交渉の駆け引きに持ち込んで行かなければならなかった。彼のエセ果断によって日本政府は北との交渉の扉を泥靴で蹴って閉ざしてしまった格好になり、後は、これもまた運動側の感情論に根ざした成算も着地点もないままの経済制裁、その延長での横田めぐみさんの遺骨の余りに性急な偽物断定と突き進んで行って、ますます出口を見失うしかなかった。つまり、彼のほとんど唯一の成功事例と評価されている拉致問題での強硬態度とは、むしろ彼が押したり引いたりの政治や外交の駆け引きに必要な複雑思考が苦手であることを示す、私に言わせれば失敗事例だったのである。

 安倍政権のこれまで10カ月を振り返れば、就任直後の電撃的な韓国・中国訪問は確かに初回いきなりクリーンヒットの趣があった。が、これは最初から安倍政権を作って幹事長に収まるつもりだった中川秀直が半年も前から周到に準備したシナリオに沿ったもので、安倍自身の才覚によるものではなかった。それ以降は、昨秋の郵政造反組の復党問題に始まって最近の赤城農水相の絆創膏騒動に至るまで、およそグズグズの連続で、しかし彼はそれをグズグズとは思っていなくて、「世論の動向に右顧左眄することなく信念に基づいてまっすぐに突き進めば必ず道は開ける」くらいに思ってきたのだろう。そこが単純思考で、どうも彼は祖父=岸信介の悪いDNAだけを引き継いだのかもしれない。

 ところで教育再生は安倍の目玉であるはずだが、これも人気回復には何の役にも立たなかった。「教育再生会議」の人選と運営の酷さもさることながら、教育再生、とりわけいじめ問題克服の鍵は「卑怯者になるな」ということを指導者がその生き方を通じて身を以て教えることであり、安倍が潔さのかけらも欠いて自他の責任を曖昧にし続けているようでは子供たちは見習いようもない。

 こうして、自民党の敗因の最大のものは、そもそも指導者の器でない安倍を単に国民的人気があるという安易な理由でほぼ満場一致に近い形で総理にしてしまった1年前の同党の無気力状態にある。器でないのであれば周りで支えなければならなかったが、お友達人事と官邸の無能によってそれもままならず、グズグズを繰り返した。そしてそのグズグズの総仕上げが、参院選がまだ開票半ばであるのに早々に行われた安倍の「続投」宣言である。彼が要所要所できちんと責任を明らかにしてテキパキと問題を片付ける能力がないことに国民が苛立っていて、その結果がこれであるというのに、そこでまた自らの責任について触れることなく「今後もよろしくおねがいします」と言うとは、どういう神経なのか。このようにして安倍は自分がどういう立場に置かれているか一向に分からないまま、自爆に近づいていこうとしている。

●安倍で衆院選が戦えるのか

 自民党の獲得議席が、18年前の宇野辞任の時と比べて1議席だけでも上回り、史上最低記録を更新しないで済んだのは、せめてもの救いと言えるかもしれない。しかし、参院自民党のドンと言われる青木幹雄議員会長のお膝元=島根での敗北、No.2の片山虎之助参院幹事長自らの落選、塩崎恭久官房長官の地元=愛媛ばかりか四国4県での全敗など、内容的に見れば参院自民党は半壊どころかほぼ全壊状態に陥り、No.3で安倍嫌いの舛添要一に取り仕切ってもらうしかない有様である。しかも、どうあがいても議長と主要委員長のポストを野党に握られるのは避けようもなく、臨時国会以降、政局の運営は極度に難しくなって解散・総選挙にいつ転がり込んでもおかしくない状況となる。

 今は安倍の続投に異を唱える気力も出ない自民・公明両党だが、衆院選が視野に入ってくれば「安倍では戦えない」という声が噴出するのは目に見えているし、何よりも、自民党にとってほとんど唯一の全国的組織基盤となっている創価学会の側から自公連立を解消すべきかどうかという議論が出てくるだろう。周知のように、2年前の郵政総選挙でもそれ以前の一連の選挙でも与野党の総得票数はほぼ拮抗しており、衆議院の小選挙区の場合、1選挙区あたり平均2〜3万と言われる創価学会票がなければ当選できなかった自民党議員は数多い。もはや自民党は自公選挙協力なしにはまともに選挙を戦えなくなっている。事情は公明党にとっても同様で、自公協力がなければ公明党もまた中政党に留まることなく共産か社民程度の少数党になってしまうので、簡単には自民党と決別することは出来ない。

 とはいえ、今回の選挙では自民党が惨敗しただけでなく、公明党もまた“常勝神話”を打ち破られて1桁の議席に留まった。それは、安倍の卑怯者ぶりへの不快感は学会員にとっても同じである上に、安倍の改憲路線への特に学会婦人部・青年部の反発があって、自公協力が思い通りに作動しなかった結果である。そこで太田昭宏代表にのしかかるディレンマは、自民党と決別すれば議席は確保できず、だからと言って無為に連立=協力を続けて行けば公明党=学会のアイデンティティの重要な柱である平和希求が浸食されて組織が維持できないということである。

 これは公明党に限ったことではない。1993年に戦後38年間に及ぶ自民党一党支配の体制が崩壊して細川=反自民連立政権が誕生して以来、自民党はいかなる選挙においてももはや単独で過半数を制する力を持たず、ただ野党の分立状態を利用して、最初は社会党とさきがけ、次ぎに公明党と自由党、自由党が離れた後は公明党と保守党、保守党が消滅してからは公明党……と、次から次へと野党を連立相手に引き込んでは食い潰すことで権力の座を保ってきた。その間、社会党とさきがけは文字通り食い殺され、保守党は吸収され、自由党は早めに離れた分だけ壊滅を避けることが出来たものの民主党に合流することで命脈を繋ぐしかなかった。そして最後に残ったのが公明党で、言い換えれば自民党にとって最後の連立相手が公明党なのだが、それすらも食い殺しかねない自民党であることが示されたのが、今回の結果である。

 とすると、公明党には、極端に言えば、このまま連立=協力を続けて食い殺されるのを待つか、連立を離脱して小党の1つという地位に甘んじるか、という2つの選択しかないが、第3のすり抜け策としては、改憲=安倍を早期に退陣させて「よりリベラル」と説明できるような自民党になって貰うことで何とか連立を継続するという手がある。連立を離脱して民主党との協力に切り替えるという可能性は、民主党が絶対に応じないので、可能性ゼロである。そこで実際には第3のすり抜け策を追求するしかなく、そのため公明党もまた安倍早期退陣の圧力を掛ける側に立つということだろう。

 自公連立が解消されればもちろんのこと、すり抜け策を用いて継続した場合も今回のように選挙協力が巧く作動しなくなっていくので、いずれにせよ次の総選挙では自民党が大敗し民主党に政権を譲る可能性が大きくなる。つまり、94年以来の自民党の権力維持の手法は通用しなくなり、これで初めて、93年に衆議院に小選挙区制を導入して2大政党による選挙を通じての政権交代が当たり前に行われる先進国らしい政治風土の醸成が本格的に始まることになるのである。

 民主党の小沢一郎代表は、1人区に焦点を絞った頑固な組織戦略を一筋に追求し、「これで勝てなければ政治家を辞める」とまで宣言して(それは安倍とは対照的な潔さだった)、実際に言ったとおりの結果を同党にもたらした。中堅・若手の間では小沢の独断的な党運営への不満が満ち満ちていたが、この結果を前にして文句を言えるはずもなく、小沢の求心力は否応なく高まるに違いない。小沢は恐らく表芸と裏芸の二股路線で進むはずで、一方では、その文句なしの求心力を活用してバラバラと言われてきた路線を統合して本当に政権交代を実現するための21世紀国家ビジョンをまとめ上げつつ、参院を通じて安倍政権を痛めつける戦術を駆使して、真正面からの押し相撲で挑んでいくだろう。が、他方では、安倍をめぐる自民党内のこれから起こるゴタゴタを睨みつつ、事と次第によってはお得意の政界再編というか、自民党の反安倍分子を引き剥がすための裏工作に手を染めるかもしれない。政界再編と言うと、マスコミでは、民主党の前原グループのような安保で自民党と近い路線を持つ部分が自民党に行き、加藤紘一ら自民党のリベラル部分が民主党に合流するといった単純な展開を期待する論調もあるが、たぶん小沢の頭にあるのは、民主党から脱落者を出さずに自民党を分裂に追い込む方策だろう。すべては、次の総選挙での民主党政権実現に向かってすでに動き出している。▲

2007年7月14日

INSIDER No.402《NORTH KOREA》拉致敗戦?──安倍首相に降りかかるさらなる難題

 私は3月14日付のインサイダーNo.384「出口を見失う安倍外交」で、「日米vs北の圧力図式を作り上げて拉致で進展を得ようとする安倍の目論見は崩れ、逆に朝米vs日の図式で核問題を前進させて日本を孤立化させようという北の術策に嵌ることになった」と指摘したが、この日本にとっての最悪事態はいよいよ現実のものとなりつつある。参院選で自民党が40議席台後半に負けを止めることが出来れば、安倍は辞任しなくても済むかもしれないけれども、その代わりに、6カ国協議の進展と米朝和平から国交正常化への流れが加速する中で、秋には、拉致優先の対北強硬路線が完全に行き詰まって安倍政権が立ち往生することになる可能性が大きい。参院選で40議席台前半の大敗を喫して辞任しておいた方が、むしろ安倍にとっては幸せかもしれない。

●シーガルの助言

 「拉致敗戦」とは、10日発売の『中央公論』8月号に載った米国の北朝鮮核問題の専門家=レオン・V・シーガル(米社会科学調査評議会北東アジア安保部長)へのインタビュー記事のタイトルで、安倍の拉致優先路線はすでに敗北したという意味である。「日本は北朝鮮問題で致命的な孤立に追い込まれる」という副題の付いたその記事は、3月時点での私の分析方向と基本的に一致しており、なおかつ6カ国協議の現局面とそれに関して日本が嵌り込みつつある危機についての最も優れた解説となっているので、このテーマに関心ある方は是非ともその全文を読むことをお勧めする。ここでは要点のみをまとめよう。

(1)ブッシュ大統領は本気で北と和平を進めようとしており、それを押し止めようとした安倍の5月ワシントン訪問は失敗に終わった。大統領は安倍の拉致問題への配慮要請に決して言質を与えなかったし、ライス国務長官は北をテロ支援国家リストから外すつもりであることを、「あなたを困らせたくはないが、もし話が進めば我々は取引するつもりだ。そうなればあなたは行き詰まるだろう」というニュアンスを含めて伝えたはずだ。

(2)7月に入ればIAEAが北に入り、プルトニウム計画は事実上閉じられる。米国としては、原子炉と再処理施設の無力化という「次の段階」に向けて、いわゆる「すべての核関係リスト」を北に提供させる交渉に入りたい。米国にとっていま最も重要なのは、プルトニウム問題に早く結論を出して、ウラン濃縮問題に取り組むことなのだ。もし北が態度を変えて、喜んで協力しよう、その代わり「テロ支援国家リスト」から外してくれと言ったら、米国は外す手続きを開始するだろう。北がそのリストに載っているのは、米国法によれば理由はただ1つで、航空機ハイジャック犯の日本赤軍メンバーをかくまっていることだ。平壌が残っている数人を追い出せば法的な理由はなくなる。北は88年以来、彼らをいつでも帰国させる用意があり、全員が帰国を切望していると表明している。

(3)そこで日本への私の助言だが、北に対して「まず拉致問題を解決すべきだ」と言い続けることによって問題の解決を得ることは出来ないだろう。日本は02年の日朝平壌宣言の全条項について北と交渉せざるを得なくなるだろう。前回の6カ国協議が行き詰まった原因は、日本が拉致問題の解決を言い続け、北も日本に対して平壌宣言に基づいて動くべきだと言い続けたせいだ。日本が拉致が先だと言い続ければ交渉は全く始まらない。北も日本を困らせたいのではない。日本と交渉したいのだ。もし日本が拉致問題だけでなく平壌宣言全体に関して交渉を開始しなければ、北はテロ支援国家リスト問題に集中することによって日本を孤立させようとするだろう。

(4)ブッシュ政権も北も、日本が交渉を開始するよう望んでいる。だが交渉は実現しなかった。このままいけば、実に厄介なことになりかねない。北は日本に対して、平壌宣言を履行するよう警告した。それから、何回かのミサイル実験で脅しをかけた。平壌宣言には、ミサイル実験の一時凍結が盛り込まれている。日本が宣言の実行に応じなければ、実験凍結も消滅する、という意味だ。思うに、もし日本が動かなければ、8月か9月ごろ、北の画策によって日本は6カ国協議で孤立し、さらに北はミサイル実験を行うかもしれない。

(5)米国にとっていま最も重要なのは、プルトニウム問題に早く結論を出して、ウラン濃縮問題に取り組むことなのだ。ブッシュ政権がクリントン以上の(対北外交の)成果を生み出すためには、核関係リストの提出が致命的に重要となる。それが手に入らないと、これは日本が北との交渉に応じないせいだと、米国が日本を責めることになりかねない。

●次の段階

 実際、IAEAの査察チームは14日に平壌入りし、寧辺の核施設の停止・封印を監視し検証する作業に取りかかる。それに対応して韓国は、重油100万トンの人道・エネルギー支援のうち第1段階の5万トンの提供を開始、すでに第1便を出荷した。こうして、2月の6カ国協議で元々は「60日以内(4月14日まで)」と合意されていた「初期段階の措置」が遅ればせながら転がり始めたのを受けて、18〜19日には北京で6カ国協議の主席代表会合が開かれ、「次の段階の措置」について議論を始める。「次の段階」とは、2月合意によれば、北が「すべての核計画の完全な申告」と「(寧辺だけでなく)既存のすべての核施設の無能力化」に応じれば、他の5カ国がその見返りに重油の残り95万トンを提供するというもの。シーガルが言うように、米国はこれを通じて北が「存在しない」と言い続けている高濃縮ウラン計画を明るみに出し、それを封印することに最大の力点を置いている。激しいやりとりが予想されるが、これもシーガルが言っているように、米国は「テロ支援国家」のレッテル外しをカードの1つとして北の妥協を引き出そうとするだろう。

 またヒル国務次官補(米主席代表)は11日に日本に立ち寄った際に、朝鮮半島の休戦協定を和平協定に置き換えるための「和平体制協議を年内に始める必要がある」「これを北の核ビジネスからの完全撤退と絡める必要がある」との考えを示した。周知のように、米朝両国は国際法的には「戦争状態」にあり、1953年の休戦協定から半世紀以上の間、「撃ち方止め」の号令がかかったまま、いつまた戦闘を再開するか分からない不安と不信の中で睨み合いを続けてきた。北の立場からすれば、自分を睨んでいるのは米軍の圧倒的に優勢な通常戦力だけでなく今日では海洋を中心とした核戦力であり、その核爆弾がいつ平壌に撃ち込まれるか分からない恐怖に対抗するには、自ら核開発に手を染めざるを得なかった。増してブッシュが大統領が登場して、「先制攻撃」論を主張しながら北を「テロ支援国家」「ならず者国家」呼ばわりするに至って、その恐怖は極点に達し、昨年10月9日の核実験に踏み切ったのだった。つまり、北の核開発は米国による核恫喝から逃れることが唯一の動機であって、国際法的な戦争状態が解消され恒久的な和平が実現すればその動機は失われる。ヒルが「和平協議を核ビジネス撤退と絡ませる」と言っているのはそういう意味で、従って彼は「和平体制協議の年内開始」も北に対する交渉カードとして用いるだろう。

 これについてシーガルは、「私が得ている情報からの推測だが」と断りつつ、米国は当初から北に対して、「北が核を捨てたらわれわれは平和条約に調印する、だがそれに関する協議は早期に始めることが出来る」「その協議の1つの方法として、暫定的な一連の和平合意について交渉し、信頼醸成措置ないしは、北側が言うところの『軍事停戦委員会に代わる和平メカニズム』に調印することも可能だ」との立場を伝えているはずだと語っている。和平プロセスが始動すれば、それはほぼ自動的に米朝国交正常化の手続きに繋がっていく。まだ紆余曲折があり時間がかかることは間違いないとしても、米朝関係がそのような方向に進むことは間違いないことで、しかもブッシュは残り1年半の任期中にこれを達成しようとするだろう。

 このように米国が北との和解を急ぐのは、北が将来、米本土に到達するような長距離核ミサイルを保有しかねないという潜在的脅威もさることながら、金に困った北が核物質を国際テロリスト集団に売り渡して、それによって米本土で「核テロ」が起きるかもしれない現実的脅威を除去するためである。10日の米ABCテレビ(電子版)は、複数の米情報機関高官の話として、アルカイーダの小規模集団が米国に潜入したか、潜入を試みていることを示す情報があり、米政府が12日に関係省庁による緊急会議を予定していると報じた。
http://blogs.abcnews.com/theblotter/2007/07/al-qaeda-cell-i.html

 米本土で第2の9・11が起きるとすれば核テロの可能性が最も大きいことは、ほぼ常識で、先頃のロンドンでのアルカイーダ・コネクションの摘発以後、米政府の緊張は高まっている。

●安倍政権の頓死?

 問題は、このように核テロの危険と直面しながら北の核封印を急ぐワシントンはじめ国際社会の危機感に満ちた状況認識を、日本政府が全く共有しようとしていないことであり、シーガルの苛立ちもそこに向けられている。その原因は言うまでもなく、安倍の「拉致最優先」の路線にある。彼は、比例代表の目玉として中山恭子=拉致問題担当補佐官を立候補させ、また自らも選挙演説の中で「就任以来70回に及ぶ首脳会談、国際会議で拉致解決を働きかけてきた」ことを内閣の実績の1つとして強調しているが、その実態はと言えば、6カ国協議はもちろんのこと、日米首脳会談でも東アジア首脳サミットでも主要国サミットでも、それ自体のテーマにほとんど関心を払うことなく、ひたすら「拉致」の一言を発表文に書き加えるよう外務当局を駆り立てることでしかなかった。もちろん事は人権に関わる重大問題であるから、各国首脳も安倍の立場に「理解」は示すものの、陰では「まるで何とかの一つ覚えだ」と思っているに違いない。

 安倍がこの問題のチャンピオンに躍り出たのは、言うまでもなく、5人の拉致被害者が“一時帰国”した際に、本人たちの気持ちは本当のところどうだったのか分からないが、家族・支援者たちの「帰らせない」という強い心情を重んじて、それを政府方針として決定するために官房副長官としてイニシアティブをとったことによる。北への怒りと不信に満ち満ちている家族・支援者のその心情は当然であるけれども、それに政治・外交次元の論理を同化させることが正しかったかどうかは疑問の残るところで、当時私は安倍にテレビ局の廊下で「あれじゃあ交渉を断絶させるだけでしょう。5人を一旦は返して、安倍さんが一緒に付いて自ら人質になって平壌に行って、被害者と向こうに残っている家族がじっくり話し合って結論を出すのを保証するようガンガン交渉して、早々と結論が出て帰国するという人は連れて帰ってくる、もっと話し合いが必要な人はその結論を尊重するよう北に確約させる——というふうにしたら、安倍さんは英雄になり、交渉は閉ざされずに済んだんじゃないか」と言ったことがある。それは思いつきの一案にすぎなかったが、心情的な運動の論理を尊重しつつも、裏もあり表もある政治・外交の論理で打開する道筋はあったはずで、その点、安倍は直情的に過ぎた。

 長いインタバルの後、北が膠着状態の打開のために横田めぐみさんの遺骨を出してきた時にも、安倍を筆頭とする政治の側は、運動側の心情に傾いて、性急に「偽物」と断定した。3カ所の鑑定先のうち2カ所ではDNAそのものが鑑定不能で、唯一、帝京大学の分からはDNAが出たが、それはめぐみさんのものではなかった訳だが、国際的に権威ある科学雑誌『ネイチャー』も当時指摘したように、その骨から他の人のDNAが検出されたからと言って、それは骨に触れた人のDNAかもしれず、骨そのものが偽物であると結論づける根拠とはならない。ところがそこでも運動と政治が合体して、「ほらみろ、北は嘘つきじゃないか」というキャンペーンに活用された。骨が偽物であったとしても、めぐみさんが生存しているという証拠にはならないが、運動としては当然、生きているという前提に立って「返せ」と要求することになる。日本は骨は偽物だ、めぐみさんは生きていると言い、北は本物だ、めぐみさんは亡くなっている、というのでは、この問題はにっちもさっちも行かなくなって、完全な膠着状態に陥った。これを打開するには、遺骨を第3者に託して再鑑定し、それでも白黒がはっきりするかどうかは分からずグレーという結果に終わる可能性もあるけれども、ともかくも日本も北も受け入れられる結論を出さなければならない。そのことは、自民党では加藤紘一らが前々から主張していることであり、それを支持する識者もいる。しかし、日本政府としては一旦偽物と結論したものがひっくり返る可能性が何分の一かでもあるような再鑑定には応じられない。そのため、打開策の案もないまま突っ張り続けるしかないのである。

 外交情報通によると、日朝対立が核解決の障害となっていることを懸念する中国と米国はそれぞれ日本政府に対し最近、当方で再鑑定するから遺骨を渡してくれと申し出たが、何と日本は「遺骨はもうない」と言って断ったとされる。

 こうして、日本が6カ国協議の枠組みからドロップして米国からさえも叱責されかねない事態が刻々と近づいている。参院選を生き延びたとしても、安倍政権がこの問題で頓死する可能性がある。▲

INSIDER No.401《SANINSEN》一人区で自民は4つしか勝てない?

 今週の『サンデー毎日』のトップ記事は「29一人区で“自民当確5”の衝撃」(http://www.mainichi.co.jp/syuppan/sunday/)。こりゃあ崩壊ということだ。ところが、先日大阪で聞いた政界情報通の話では、かの野中広務は周辺に「一人区で自民党は4議席」というもっと厳しい予測を語っているという。こういう極端な数字が出てくるのは、往々にして、わざと流して陣営を引き締めたり、世論的に「そこまで自民を負けさせていいのか」と思わせたりするための情報操作である場合があるのだが、野中は小泉・安倍政権には冷ややかな立場だから、そういうバイアスは掛かっていないだろう。もっとも、逆に「安倍なんか負ければいいんだ」という願望が混じっているかもしれないが。

 さて、参考までに、「どの党に投票するか?」についてメディア各社の一部内部資料を含めてデータを比べてみよう。まあ世論調査というは、やり方次第でずいぶん違うものだということがよく分かるが、それでも7月初旬で自民vs民主の比例の数字を見ると、すべて民主が自民を上回っている。統計学的にはめちゃくちゃだが、ここにある6社の数字の平均を取ると、自民23.75、民主28.65ということになる。3年前の参院選直前の数字と比べると、大体において、自民が数ポイント低く、民主が数ポイント高いようだ。周知のように、3年前の選挙は自民が得票数でも議席数でも民主に負けて、それでも小泉は開き直り、安倍幹事長だけが責任をとらされて代理に格下げされた。今度は幹事長のクビだけでは済まされそうにない。

(1)A新聞社

調査時期     (5/26-27) (6/30-7/1)

自民(選挙区)   26    28
自民(比例)    28    27
公明(選挙区)    5     6
公明(比例)     6     7
民主(選挙区)   30    33
民主(比例)    35    35
共産(選挙区)    4     4
共産(比例)     4     5
社民(選挙区)    2     1
社民(比例)     3     1
その他・未定     -     -

(2)B新聞社

調査時期      (6/5-7) (6/26-28) (7/3-5)

自民(選挙区)    25.30  21.70 24.20
自民(比例)     22.20 20.80 22.00
公明(選挙区)    3.50 5.30 4.20
公明(比例)     4.50 5.60 4.60
民主(選挙区)    25.10 24.00 22.80
民主(比例)     23.90 22.20 25.00
共産(選挙区)    2.80 3.10 3.50
共産(比例)     2.90 3.90 3.50
社民(選挙区)    0.80 1.30 1.70
社民(比例)     1.70 1.20 2.50
その他・未定(選挙区)34.80 37.40 35.90
その他・未定(比例) 36.70 37.50 34.60

(3)C新聞社

調査時期      (5/19-20) (6/30-7/1) (7/7-7/8)

自民(選挙区) 33 26 25
自民(比例) 31 19 22
公明(選挙区) 4 4 -
公明(比例) 4 5 5
民主(選挙区) 20 25 28
民主(比例) 21 25 26
共産(選挙区) 4 3 -
共産(比例) 3 3 4
社民(選挙区) 2 1 -
社民(比例) 3 2 2
その他・未定(選挙区)36 40 -
その他・未定(比例) 38 45 -

(4)D通信社

調査時期      (6/23-24) (6/30-7/1) (7/7-7/8)

自民(選挙区) 21.40 19.20 19.80
自民(比例) 19.80 17.90 17.60
公明(選挙区) 4.30 5.30 -
公明(比例) 4.90 5.70 5.80
民主(選挙区) 22.00 22.90 23.30
民主(比例) 22.10 24.50 24.60
共産(選挙区) 2.30 4.20 -
共産(比例) 3.10 4.20 3.80
社民(選挙区) 0.90 1.00 -
社民(比例) 1.20 1.30 2.40
その他・未定(選挙区)41.10 39.30 -
その他・未定(比例) 42.00 41.00 41.60

(5)Eテレビ局   

調査時期      (7/6-7/8)

自民(選挙区) 32.20
自民(比例) 25.20
公明(選挙区) 2.80
公明(比例) 5.10
民主(選挙区) 27.20
民主(比例) 26.70
共産(選挙区) 3.60
共産(比例) 3.40
社民(選挙区) 0.80
社民(比例) 1.50
その他・未定(選挙区)31.10
その他・未定(比例) 33.80

(6)Fテレビ局

調査時期      (7/7-7/8)

自民(選挙区) 30.50
自民(比例) 28.70
公明(選挙区) 6.40
公明(比例) 6.80
民主(選挙区) 35.50
民主(比例) 34.60
共産(選挙区) 3.80
共産(比例) 5.00
社民(選挙区) 2.20
社民(比例) 3.10
その他・未定(選挙区)14.00
その他・未定(比例) 13.20

2007年7月11日

INSIDER No.400《SANINSEN》安倍首相のTV大作戦は奏功するか?

 参院選告示を目前にして、8日午前中のTVは各局とも7党の党首対決。支持率低下に苦しむ安倍晋三首相は、TVに出まくってしゃべりまくって反転攻勢をかけようという作戦のようで、サンプロでもまあ饒舌に、「総理がそんな細かいことまで言わなくていいんじゃないか」と思うほど、とにかく口数だけは多くて、相変わらずムスッとして聞かれたことだけ答える小沢一郎民主党代表とは好対照をなした。

 ビックリしたのは、安倍にSPやお付きがぞろぞろ付いてくるのは当然として、メイクさんやらスタイリストやらが2台の車に乗って4人も随行して来て、テレ朝の美粧室を1列占領して何やかやと念入りに世話を焼き、最後は頭にサーッとスプレーをかけて、全員で拍手とともに「いってらっしゃあい」と声を揃えて送り出したことだ。何だこりゃあ!「喜び組」かあ。サンプロを20年近くもやっていて、メイク&スタイリストを4人も連れ歩く総理はもちろん政治家は初めて見た。TVを通じての復活に賭ける安倍の意気込みを垣間見た思いである。この話を翌日、毎日の岸井にしたら、「安部も官邸もどうしたらいいか分からなくなって、狂ってきたんじゃあないか」と。

 安倍にとって現実は厳しい。久間章生防衛大臣の爆死の次には、今度は赤城徳彦農水相の事務所費疑惑が浮上、先週土曜日の『夕刊フジ』のトップ見出しは早くも「赤城農相、辞任必至」である。前任の松岡利勝大臣が「ナントカ還元水」で火だるまになって自殺までして、その後釜に据えるのに「赤城の事務所費は大丈夫なのか」くらい調べなかったのか。危機管理能力の甘さなどと新聞は指摘するが、それ以前に、政権として最低限のチェック機能も働いていないことを示す失態である。

 赤城の就任初日から暴露され始めた資金疑惑を列記すれば……、
(1)松岡前農相が絡んだ官製談合疑惑で捜査を受けてきた「緑資源機構」の工事受注業者らが作る政治団体「特森懇話会」が、赤城の資金管理団体「徳友会」のパーティ券を03年から3年間に計26万円購入していた。
(2)「徳友会」が林業土木関連業界の政治団体「林土連懇話会」から03年から3年間に計40万円の寄付を受けたのに政治資金報告書に記載していなかった。
(3)また、農協など国から補助金を受け取っていて政治献金が禁じられている2つの法人からも、計30万円の寄付を受けており、赤城側は、うち20万円は個人献金だったとして報告書を訂正、残り10万円は返却した。
(4)そこへ、今回のほとんど使っていない政治団体事務所に10年間に約9000万円の人件費、事務所費、光熱水費など経常経費を計上していたという疑惑の浮上である。

 こんな人を松岡の後に据えるかねえ。安倍は、前国会で政治資金規正法改正案を成立させて透明化に努めていると言うが、この改正では、政治家が1つだけ持つことが出来る「政治資金管理団体」について「5万円以上」の支出は領収書の添付を義務づけるというだけのもので、当時から「なぜ5万円なのか」という疑問が噴出、野党は「1万円以上」を主張し、小沢は「1円からすべて公開すべき」と言っていたが、与党はこれを強行採決で押し通した。おまけに、これは政治資金管理団体に限っての話なので、今回の赤城のケースのように、それ以外の政治団体や政党支部の経費に関しては対象外で、野党はそれについても「尻抜けだ」と批判してきた。早くも、法改正の無意味さを立証した形である。

 結局、佐田玄一郎をクビにし、松岡を自殺に追い込んだ政治資金疑惑を、法改正で乗り切ろうとした安倍の思惑は赤城の問題で早々と覆された訳で、安倍がいくら多弁を費やしても国民の不信は一層深まるばかりである。▲

2007年7月 4日

INSIDER No.399《METABOLIC SYNDROME》メタボリック・シンドロームの嘘八百──厚労省のキャンペーンに騙されるな!

 昨日の大阪読売TV「情報ライブ・ミヤネ屋」の特集の1つは、メタボリック・シンドロームで、題して「揺れる“メタボ基準”、太っていても大丈夫!?」。厚生労働省は、来年から40歳以上74歳までの被保険者とその被扶養者にメタボ診断を義務づけることを決めた。ヘソ周りで計ったウェストが男性で85センチ、女性90センチを超えるとメタボ容疑者となり、さらに血圧(上130mmHg以上、下85mmHg以上)、血中脂質(中性脂肪150mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl未満)、血糖(空腹時110mg/dl以上)の検査でこの基準を上回る項目が2つ以上あれば、メタボすなわち内臓脂肪型肥満と判定され、その人は面談指導と最長6カ月に渡る電話やメールでの支援・激励を受けながら出腹克服に取り組むことになる。厚労省の狙いは、こうして高血圧、動脈硬化、糖尿病など生活習慣病を予防することで、32兆円の医療費を2兆円程度削減できるようにすることにあるが、果たして本当か?

●お節介が過ぎる

 私は、身長や体型や体質の違いを無視して一律に基準を決めるのはおかしいし、そもそも国がここまでやるのはお節介が過ぎると思っていたので、前に同番組の司会者の宮根誠司やスタッフたちと飲んだ時に、これを番組で取り上げることを提案、スタッフがリサーチの上、『間違いだらけの診断基準』の著書もある東海大学医学部の大櫛陽一教授をスタジオに招いてこの日の特集となった。

 ちなみに、「情報ライブ・ミヤネ屋」は1年前から月〜金の15:55〜17:55という枠でやってきて、大阪各局の独自番組がひしめく“夕方ワイド大阪戦争”の中で、先行番組を脅かす大健闘を続けてきた。火曜日のレギュラー・コメンテーターは松尾貴史と私、他に近藤さと、吉村作治、原田隆史といった方々が入れ替わりで出演し、他の曜日もなかなか賑々しい陣容である。他方、東京日本TVと大阪読売TVの共同制作で毎日13:55〜15:50の枠で長年続いてきた草野仁の「THE ワイド」が9月一杯で終わることになり(それで有田芳生は政治家に転身するのかな?)、日本TVはその時間をドラマの再放送か何かで穴埋めするらしいが、読売TVは、「ミヤネ屋」を13:55に繰り上げ16:55まで3時間の、プロデューサーによれば「読売TV始まって以来」の大型独自番組に格上げすることを予定している。

●基準値への疑問

 さて、メタボだが、第1に、男性85センチ、女性90センチという一律基準はこれでいいのか。これでいくと、男性は2人に1人、女性は5人に1人、つまり対象年齢層5700万人のうち1960万人がメタボという“病気”の患者と認定されることになる。男性の半分は病気だと!

 ところが、国際糖尿病連合(IDF)は日本の基準に異を唱え、他のアジア諸国と同様、男性90センチ、女性80センチでよろしいと言っている。なぜこの違いが出てくるのか、そして何よりも日本基準では女性の値が男性のそれを上回るのに国際基準では逆なのか。初めて知ったのだが、日本と世界では測定方法が違う。日本ではヘソ周りで計るが、世界はいわゆるウェスト、つまり肋骨の下部と骨盤のトップの中間の胴のくびれの部分で計る。

 なぜ日本はヘソ周りなのかと言えば、CTスキャンで測定する際に腹全体の内臓脂肪量を一番正確に計れるのがその位置だからなのだが、大櫛教授によれば、そのことと、その位置で外周を測って何センチ以上と決めることとは何の関係もない。むしろ、その位置だと、骨盤上部にメジャーが掛かるので、必然的に骨盤が大きい女性のほうが基準値が大きくなるし、また男女にかかわらず、骨盤が発達している人は内臓脂肪量が少なくてもメタボ容疑者と判定されてしまう。例えば私は、普段から骨盤周りのストレッチをやっていることもあって年齢の割には腰がしっかりしている方だから、ヘソ周り90センチ、ウェスト85センチで、日本基準ではアウト、国際基準ではセーフである。

●痩せすぎの方が問題

 結果的に、厚労省は過大な基準を設けて国民に「太りすぎに気を付けろ、痩せる努力をしろ」と脅し上げようとしている訳だが、そこで第2に、痩せていれば安心なのか。ノーだと大櫛教授は言う。肥満度の目安として、身長(メートル)の2乗で体重(キログラム)を割ったBMI(Body Mass Index=体重指標)はよく知られているが(それだけでは内臓肥満は分からないというのでメタボが騒がれ出したのだが)、日本では22が標準体重で、18以下が痩せ、25以上が肥満とされるが、米国では、18.5以下が痩せすぎ、18.5〜25が標準、30〜35が標準以上(overweight)つまり小太り、35以上が肥満(obese)とされる。で、米国のデータでは、各年齢層に渡って、痩せすぎの人が最も死亡率が高く、肥満、標準がそれに次ぎ、小太りが一番死亡率が低い。つまり肥満の害よりも痩せすぎの害のほうが大きく、事実、イタリアやスペインでは、身長175センチ以上、体重55キロ以下のモデルはショーに出演できないなど、痩せすぎの健康被害に警鐘を鳴らす措置を採っている。が、日本では太りすぎにばかり警告を発して痩せすぎについてはほとんど言われることがない。そこへ持ってきて、このメタボ・キャンペーンでますます「痩せているほど健康」と誤解する人が増えかねない。

 私の場合、身長170センチで5年ほど前には体重が78キロ近くにまで増えてBMIが27の肥満領域に突入、中性脂肪も「異常」と言われるほど高くなっていささか危機感を抱き、藤野武彦=九大名誉教授のBOOCS健康法(http://boocs.net/index1.html)の発想を取り入れて朝食を極度に軽くしてほとんど1日2食に近い食生活、日本酒ガブ飲みを止めて焼酎・ウィスキー主体のほどほどの飲酒生活に切り替えて、わずか3カ月で苦もなく体重70キロ、BMI24の「標準領域だがやや小太り気味」まで落として、以後それをキープしているので、今度はむしろこれ以上痩せないよう注意している。

●騙されないように!

 なぜ厚労省はこんなにも「痩せろ、痩せないと死ぬぞ」と国民を脅すのか。日本政策投資銀行の試算では、メタボ市場は2800億円規模で、実際、昨今は週刊誌の広告ばかりかタクシー広告でもメタボ・クリニックの宣伝が溢れている。製薬会社が儲かって、メタボ業界が育って、厚労省役人の天下り先が増えるということなのか。で、肝心の医療費は減るのか。大櫛先生の試算では、日本基準では肥満でない人(例えば私)までメタボ患者扱いにされることになるので、逆に医療費は4〜5兆円増えるという。確かに、この国の仕組みでは、メタボ指導となれば必ず、「あなたは中性脂肪が高く、HLDC(善玉コレステロール:この言い方も間違いなのだそうだ)が少ないから、この薬を飲みなさい」ということになるに決まっている。厚労省のやっていることは、年金も介護もメタボも、でたらめばっかりだ。騙されないようにしよう。■

2007年7月 3日

INSIDER No.398《SANINSEN》安倍政権の断末魔──参院選で大敗、政局混沌か

 29日までに社会保険庁改革法案、公務員天下り規制法案、政治資金規正法改正案をバタバタと成立させて、延長国会は実質的に終了、翌日には早速各党幹部が全国に遊説に散って参院選が事実上スタートした。支持率急落に苦しむ安倍政権にとっては、何が何でもこれらの法案を成立させて、「やるべきことはやっています」という形を整えなくては参院選を迎えようもなかったのだろうが、形式面から言えば、これら3法案を含め教育基本法改正案、国民投票法案など同政権の“実績”とされる重要法案のほとんどすべてが強行採決であって、むしろ安倍の国民に対する説明能力と野党に対する国会対策=調整能力の欠如を物語っているし(強行採決は18回!)、内容面で言えば、どれもが中途半端だったりザルだったりで、具体策はこれから有識者会議を作って考えるという体のスカスカのものだった。従って、せっかくの会期延長も、支持率低下を食い止める効果を発揮しそうになく、自民党大敗、安倍退陣という惨憺たる結果に陥る公算が強まっている。

●自民45議席が攻防ライン

 周知のように、与党が参院の過半数122議席を維持するためには、公明党が改選数12に対して13(比例8、選挙区5)の立候補者を全員当選させることを前提に、自民党が改選数64に対して83(比例35、選挙区48)の立候補者から51人を当選させなければならない。が、創価学会の組織力を背景に毎回確実に全員当選を果たしてきた公明党が、全体としての与党に対する逆風に加えて、組織内の主力である婦人部・青年部に安倍の改憲路線への反発が根強いこともあって、1〜2の取り落としが出るかもしれず、そうなると自民党が52〜53を獲らないと過半数を確保できない。

 ところが、7月2日付朝日新聞の世論調査で内閣支持率は政権発足以来最低の28%、不支持率は48%、「参院選比例区でどの党に投票するか」では民主党25%に対し自民党19%。3日付毎日新聞の「自民、民主のどちらに好感を持っているか」では民主66%、自民33%だった。このままでは自民党が50議席を割るのはほとんど確実で、焦点は、47〜49あたりで止まって無所属や国民新党を取り込めば何とか過半数に届くのか、それとも、小泉政権のラスプーチン=飯島勲前秘書官が6月12日の講演で述べたように「過半数を10議席以上割り込む大変な事態」、つまり40議席前後の記録的大敗に陥るのかというその負け具合に絞られてきた。安倍が辞任しないで済むかどうかのギリギリのラインは45で、9年前の参院選で橋本龍太郎首相が辞任した44議席以下になれば内閣崩壊は避けられまい。

 もともと自公連立政権は見かけほど強固な構造を持っている訳ではない。05年の郵政総選挙で与党は圧勝したものの、小選挙区の得票数・得票率は、自民党3252万票=47.8%、公明党98万票=1.4%、与党合計3350万票=49.2%、比例区では自民党2589万票=38.2%、公明党899万票=13.3%、与党合計3488万票=51.5%で、小選挙区で見れば与党合計は野党合計を下回っていた。にもかかわらず与党が衆院議席の約3分の2を占める圧勝となったのは、言うまでもなく小選挙区制のマジックで、例えば東京の小選挙区では自民党は50.0%の得票率で23議席、公明党は1.7%で1議席を得たのに対し、民主党は36.5%で1議席を得たに過ぎなかった。だから小選挙区制は自民党に有利なんだという者がいるが、それは間違いで、自民党が公明党=創価学会を抱き込んでいるからこそ1選挙区当たり2〜3万票と言われる学会票が自民党候補に上積みされてギリギリのマージナルなところを軒並み突破し得たということであり、自民党単独であればもちろんのこと、自公一体であっても風の吹き方次第で同じようなマジック的雪崩現象が民主党側に起きることがあってもおかしくないケースの1つが今回参院選である。

●政治不信<国家不信

 安倍がここまで追い詰められたのは、言うまでもなく、年金不安の噴出と松岡前農水相の自殺という異常事態が折り重なったためである。

 年金記録の杜撰さという問題は、もちろん直接に安倍政権の責任ではないけれども、民主党の長妻昭議員が昨年6月に最初に国会でこれを指摘し、その後も民主党が繰り返し問題提起して来たにもかかわらず、小泉・安倍両政権ともこれにまともに取り合おうともせずに事実上放置し、5月に至って「宙に浮いた5000万件」という衝撃的な事実が明るみに出るに及んで初めてあたふたと対策を打ち出したものの、「未入力の厚生年金1340件」「未入力の船員保険36万件」などのでたらめが次々に暴露されて完全に後手に回った。それを何とか挽回するための博打が異例の会期延長だったが、肝心の年金記録の全容を明らかにしないままでは何ら説得力がない。上記の3日付毎日調査では「政府の説明通り、1年以内の照合できると思うか」との問いに92%が「思わない」と答えている。

 国民は、国家というものはむやみに金が掛かり、時として過度の干渉をして鬱陶しいものではあるけれども、最終的には国民を保護してくれるものだとは思っていたし、それを実務的に支える官僚も、非能率で怠惰な連中でいかなるクリエイティブな能力も期待できないけれども、最低限の事務的能力は発揮しているはずだとは信じていた。それがこのでたらめぶりで、『月刊現代』8月号の岩瀬達哉レポートのタイトルを借りれば「年金“振り込め詐欺”」のようなものだったことが判って、毎度お馴染みの政治不信とか官僚不信とかを通り越して、“国家不信”に陥りつつある。この不信は根源的であって、安倍の舌足らずの口先で言いくるめられるような筋合いのものではない。

 他方、松岡利勝前農相の自殺は、この内閣に死の穢れを塗りつけた。『FACTA』7月号「もはや散り際の安倍内閣」は、「すでに『死人に口なし』の幕引きムードが漂う」が、「現職閣僚の自殺がどれほどの深刻な凶事であるかを、安倍首相とその取り巻きたちはまだ十分に理解していない」として、次のように深い指摘をしている。

▼古来、国の祭祀を司る天皇がまつりごとの精神的基軸であり続ける日本では、殊に死の穢れを忌み嫌う。……『死人を出した内閣』という汚点を拭い去るのはおろか、覆い隠すこともできはしない。
▼マスコミは松岡自殺を『戦後初』と報じたが、歴史の認識が生ぬるい。明治に内閣制度が発足して以来……現職大臣の自殺は他に1人、終戦前夜に『一死を以て大罪を謝し奉る』の遺書を残して割腹した阿南惟畿陸軍相の例がある。阿南が連なった鈴木貫太郎内閣は2日後に総辞職した。
▼阿南の死は明治憲法下での大臣任命権者であった天皇に対し、終戦に伴う陸軍の暴発を最高責任者として未然に防ぐという歴史的使命を自覚し、武士らしく身を処した結果であった。政治とカネのスキャンダルで追い詰められた揚げ句の(松岡の)自裁とは、次元も背景も意味もまったく異なる。
▼戦後も閣僚は首相の任命を受けて天皇が認証する。首相が天皇に対し責任を以て身辺、能力、識見を請け合い、天皇はその人選を拒む余地なく追認して閣僚が誕生する。である以上、松岡氏の自殺は、安倍首相が天皇に誤った認証を行わせたことを意味する。……安倍首相は尊崇するはずの皇室に対しても、取り返しのつかない傷を負わせたことになる。
▼いったん死の影をまとった政権は、その死からほどなく瓦解し再起し得ないのが日本のまつりごとの常道なのである……。

 支持率の異常なほどの低さという“量”の問題ではなく、その裏にある年金問題での国家不信の深刻さ、松岡自殺の皇室不敬の重大さという“質”の問題として、安倍はとっくに辞任していてしかるべきであり、その状況を会期延長による穴ぼこだらけの2〜3の法律の強行採決くらいで乗り切れると思ったのだとしたら、すでに正常な判断力を失っていると考えざるを得ない。

 問題は投票率だろう。安倍自民の凋落にもかかわらず小沢民主の政党支持率はまったく上がらない。自民離れした「支持政党なし」層が必ずしもわざわざ投票所に足を運んで民主に投票しようとはしないかもしれず、とするとシラケムードの中で投票率が落ちて、「安倍自民と小沢民主の“負け比べ”(伊藤惇夫、『諸君』8月号座談会)になる可能性もある。民主がそれを避けて一気に政権交代への流れを作るには、政府批判に終始することなく、年金制度の完全一元化、国民総背番号制に基づく全国民再登録、社保庁と国税庁の再編合体による歳入庁の創設ということになるのかどうか、ともかく抜本的な年金立て直しの構想を掲げて、そのために政権を獲る覚悟を示さなければならないが、果たしてそういう戦い方が出来るのかどうか。▲

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