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INSIDER No.394《MATSUOKA》安部内閣の“アキレス腱”が断裂──松岡農水相自殺の衝撃

 昨秋の安部内閣発足時に農水相として初入閣した松岡利勝は、農林業土木に絡む利権操作や畜産はじめ農林団体・企業の利益の露骨な代弁で名を馳せて、それまでに何度もメディアの調査や検察の捜査の対象となってきた人物であり、就任当初から同内閣の“アキレス腱”と呼ばれてきた。「緑資源機構」の官製談合事件の捜査が身辺に迫る中で28日、彼が首つり自殺したことは、そのアキレス腱がおよそ考え得る最悪の形で断裂したことを意味しており、同内閣にとって歩行困難に陥るほどの衝撃となった。

 彼の死の直前に集計された毎日新聞の世論調査では、内閣支持率が11ポイント急落して内閣発足以来最低の32%(日本経済新聞でも12ポイント減の41%)を記録した。その主な要因は、年金記録5000万件の行方不明という社会保険庁のでたらめに対する怒りと、「ナントカ還元水」などという口から出任せで事務所経費の不正経理を誤魔化そうとした松岡の馬鹿さ加減に対する呆れ返りだが、より根本的には、その2つの国民的関心事のいずれについても断固たる措置を採らないばかりか納得のいく説明をしようともしない安部首相に対する深い不信である。

 このダメージを7月5日の参院選公示までの5週間に回復出来る見込みは少なく、むしろこれを機に安部内閣がレイムダック状態に近づいていく可能性のほうが大きい。上述の毎日調査では、「夏の参院選で勝ってほしい政党」は民主42%、自民33%と、昨年12月以来過去3回の調査ではいずれも自民が民主を上回っていたのに対して今回初めて民主が逆転した。「比例代表でどの政党に投票するか」では、民主35%、自民28%、公明6%、共産4%、社民3%、国民新1%で、自公合計34%を民主が単独で上回っている。もちろん今後の与野党攻防にもよるけれども、もしこの地合いが大きく変わらないまま参院選に突入すれば、安部自民党の敗北は避けられない。

●検察の松岡包囲網

 松岡自殺の真相は不明だが、松岡と35年来の親交がある兄貴分だった鈴木宗男衆院議員がホームページや記者団への談話で明かしているように、松岡本人は国民に向かって率直に事実を説明し、恐らくは大臣辞任を以て償いをしてこの問題から逃れたかったに違いないが、「政府の方針は決まっているし、国対からも言われているので、今は黙っているしかない」(松岡本人)という状況の中で検察の捜査が身に迫り、精神的に追い詰められていったものと推測出来る。

 そもそも安部内閣は、「若くてテレビ映りもいい安部ならば参院選で大負けすることはないだろう」というまことに安易な自民党内のコンセンサスを背景に、事実上、無競争に等しい緊張感を欠いた総裁選を通じて誕生し、さらにそれを反映して、松岡のような能力も資質も疑問が残るような者も含めて論功行賞を旨として人事が行われた結果、昨年末には本間正明=政府税調会長の官舎不倫同棲問題、佐田玄一郎=行革相の経費不正処理問題が浮上して早くも人事面から内閣の一角が崩れ始めた。年明けて柳沢伯夫=厚労相の「産む機械」発言が非難を浴びると、安部は「これ以上、閣僚を辞めさせては“辞任ドミノ”が起きる」と危機感を抱き、国会論戦の場やメディアで何を言われようとも鉄面皮を貫いて彼を擁護することにした。そのため、松岡のナントカ還元水問題が起きても、「辞めるな、しゃべるな、シラを切り続けろ」との内閣の事実上の申し合わせを踏襲せざるを得なかったのである。

 柳沢のは単なる失言の域を出ないが、松岡のは「政治とカネ」の不透明性に直結している問題であり、これで突っ張ることは、国民から失笑混じりの軽蔑を誘ったばかりでなく、長年にわたり松岡を“宿敵”と定めてきた検察当局の“やる気”を掻き立てる結果となった。今年1月に東京地検特捜部長に就いた八木宏幸は、同副部長時代の02年に鈴木宗男が北海道の製材会社「やまりん」から500万円を受け取って同社の救済を林野庁に働きかけた事件(1審有罪、控訴中)を手がけており、その際、同社から200万円を受け取った松岡の事情聴取も担当したものの、請託の立証が出来ずに逮捕を断念した経緯がある。

 八木は就任の会見で「政官財に潜む不正を見つけ、ひそかに悪いことをしている人に恐れられる特捜部でありたい」と、特捜畑一筋の彼らしい宣言を発し、2月には早速、環境ベンチャー企業「イー・エス・アイ」を詐欺の疑いで強制捜査し、京塚光司社長を逮捕した。京塚は、謎めいた宗教団体「慧光塾」の中心メンバーであり、怪しげな経営指導セミナーを開くなどして経営者を中心に信者を集め、彼らから増資などの名目で資金を募ってイー・エス・アイに注ぎ込んだ挙げ句、経営破綻に陥っていたのだが、この慧光塾に傾倒していたのが安部首相の母親の洋子で、安部は同塾のイベントに母親と連れ立って出席して“広告塔”として一役買ってきた。京塚が詐取した金の一部は安部に回ったのではないかと推測されている。

 その八木が次のターゲットとしたのが「緑資源機構」の官製談合事件で、4月には特捜部内でも政界捜査を専門とする「特殊直告1班」をその担当とし、それに他班から5人の刑事を応援に付けたばかりでなく全国からも応援検事を集めて、まさに鈴木宗男事件並みの捜査態勢を整えた。4月19日には公正取引委員会が改めて緑資源を捜索して林道整備をめぐる談合を刑事告発、それを受けて東京地検が5月24日、緑資源の理事ら6人を逮捕すると同時に、翌25日には同じく緑資源が熊本県小国町で進める総事業費154億円の「特定中山間保全整備事業」にまつわる受注企業15社から松岡への金の流れについて本格捜査に着手した。

●福岡からも火の手が

 他方、「やまりん」事件の時に八木の上司の東京地検次席検事、その後、大阪地検検事正として食肉業界の闇の帝王=浅田満ハンナン元会長を血祭りにあげた佐渡賢一は、今は福岡高検検事長で、福岡のコンサルティング会社「エフ・エー・シー」が起業家育成のためと称してWBEFなるNPO法人を立ち上げるに際して、松岡にパーティー券代100万円を渡して内閣府にNPO認可を働きかけたとされる事件の捜査を進めている。

 ハンナン事件は、01年にBSE問題が食肉業界を直撃した際に、松岡が鈴木宗男と共に自民党BSE対策本部の先頭に立って、畜産業者が抱える輸入牛肉の在庫を買い上げる制度を設けるよう農水省に迫りまくり、浅田がその制度を利用して対象外の国産牛肉まで輸入物に偽装して巨額の補助金を詐取していたもの(1審有罪、控訴中)。浅田の会社のビルには鈴木の政治団体が入居しており、過去にその団体から松岡の政治団体に500万円の寄付が行われていた事実も明らかになった。

 松岡の農水利権と言っても、一番おいしい農業土木は伝統的に旧竹下派の牙城であり、叩き上げの松岡は林業関係や、同和問題とも絡んでややこしい畜産関係とかに偏っていた。鈴木を浅田に繋いだのは恐らく松岡で、500万円はそのお礼だったのではないかと推測されている。昨年、週刊誌で報じられたところによると、松岡が女性問題でトラブルに巻き込まれた時には、山口組構成員である浅田の弟が間に入って“解決”しており、松岡の浅田を通じての闇世界との関わりは尋常なものではなかった。

 福岡のエフ・エー・シー=WBEFは、起業指南を名目に1口100万円の出資金を全国8000人から総額130億円も集めて費消しており、それ自体が詐欺容疑としてすでに福岡県警の捜索を受けているが、そのWBEFを事実上仕切っているのは「インド文化協会」会長と称する内田大円で、彼は松岡の有力後援者。同協会が05年10月に「ハリウッド映画『仏陀』製作発表パーティ」を開いた際には、幹事長代理だった安部も出席して挨拶しているが、この映画が実現していないことは言うまでもない。ここにも、単に「パーティー券100万円」というに止まらない闇の深さがある。

 こうして松岡包囲網が次第に狭まる中、八木特捜部長は「国会会期末を(山場と)考えろ」と部内に指示していたと言われ、国会終了後、参院選までの間に松岡逮捕は免れない情勢となっていた。恐らく小国町に捜査が入った時点で松岡は死を覚悟し、先週末には地元を訪れて後援者、母親、父親の墓前を巡って挨拶した上で28日、自ら命を絶ったのである。

 結局、安部は、単に閣僚が1人また1人と辞めていって内閣がガタガタになることを恐れただけではなく、自分自身にさえも検察の影がちらつき出していることに脅えつつ、松岡の問題で検察に対して弱気を見せたら自分も危ないという思いから、彼に突っ張りを命じたのではなかったか。事の本質は、安部自身と検察との確執であり、その中で内閣のアキレス腱が真っ先に断裂を起こしたのである。▲

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