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INSIDER No.389《DPJ》小沢民主党は「格差」争点で参院選に勝てるのか?──グローバリゼーション3.0の地平

 統一地方選第2波及びそれと同時に行われた沖縄・福島の参院補選の結果について、民主党の鳩山由紀夫幹事長は22日夜の会見で「福島では『もっと格差是正を前向きにやれ』との厳しいメッセージを出せた」「安部内閣に対し今まで以上に格差の問題を議論すべきだと主張したい」と述べたが、果たしてこの総括は正しいか。

 日本経済新聞23日付第1面の論説で西田睦美編集委員は「民主は補選でも地方選でも争点設定に成功したとは言い難い。景気は回復基調が続き、格差是正の主張はいまひとつ浸透していない」と指摘したが、私自身も、19日に都内のホテルで開かれた小沢一郎後援会に呼ばれて講演した際に、冒頭次のような趣旨を述べた。

●小沢後援会の講演で

▼統一地方選、とりわけ東京はじめいくつかの知事選を通じて明らかになったことは、「格差是正」が必ずしも争点になっていない、もしくは争点にすることに成功していないということだ。

▼なぜなら、21世紀に入って基本的に2%成長が続いている中で、確かに格差が各所に目立つとはいえ、それは相対的格差であり、絶対的格差ではないからだ。相対的格差であるということは、かなりの程度、気分の問題で、格差を重大問題だと考える人と成長持続のメリットに目を向ける人とバラつきが出てくるので、「そうだ!」と有権者の気持ちが1つにはなりにくい。

▼社民党や共産党は、古くさい経済学にしがみついて、あたかもこの日本で絶対的格差、あるいは絶対的貧困化が進んでいるかのようなことを言っているが、少なくとも民主党は、そのような主張とは自らを峻別しなければならないのではないか。

▼民主党がこのまま進めば、22日の選挙も、さらに参院選も、決定的に勝利を収めることは出来ず、自民・公明も民主もどちらも勝ったとは言えないドローに近い結果になる可能性がある。

▼私は、参院選の本当の争点は、改革ビジョンの全体性であると思う。小泉内閣は、あれほど大騒ぎをして「改革だ、改革だ」と叫んだが、結局のところ、手近なドアをいくつか蹴破ってみせただけで、それらのいくつかの課題の行き着く先と全体的な関連性、すなわち「改革とは何か」、「それらをやり遂げることでどういう国を作りたいのか」というトータルなビジョンを示すことは出来なかった。増して後を継いだ安部は、ただ「美しい国」という空疎なことを言うだけで、本当に改革をやるのかどいうかも疑わしい。

▼私が期待するのは、ご本人にも代表就任直後から何度か直接申し上げたが、かつて93年に80万部を売った『日本改造計画』を書いた小沢代表が、今の時点でその新版を世に問うて、それを前面に掲げて、「自民党では改革は出来ない、21世紀の日本は民主党に任せろ!」と訴えることである。今は小沢の顔が見えない。組織戦略だけで参院選に勝つのは難しく、もちろん地を這う組織戦略は大事だけれども、同時に政策・ビジョン面でのイメージ戦略も実行して貰いたい。それで参院選が面白くなる……。

●格差問題の捉え方

 実際、率直に言って格差問題の捉え方を間違えると、民主党は袋小路に填り込みかねない。

 第1に、格差問題は、世界経済の7分の1に当たる5兆ドルの経済規模を誇るこの国で、しかも2%程度の持続的成長を実現している中で、その成果の配分が地域的・産業的・階層的に偏りがちであることによって生じている、まさに相対的な格差であり、その受け止め方は人によって相当大きな違いがある。従って、それを問題にするには、格差一般ではなく、分野によってきめ細かく実態と対策を明らかにして具体的に政府・与党に迫らなければ、争点化は難しい。

 第2に、その背景には、冷戦後の世界経済の構造変化があり、日本一国的に解決することは出来ないことを認識しておく必要がある。『週刊エコノミスト』今週号は、過去に例のない世界同時成長の持続を「世界経済“黄金の10年”」と呼んで特集を組み、これを、15世紀末からの大航海時代のグローバリゼーション1.0、産業革命以後、多国籍企業の時代までの同2.0に続いて、世紀末頃からの世界のフラット化による資本主義の大発展=同3.0が訪れていると規定している。

 その通りで、冷戦の終結によって、一方では、旧ソ連・東欧、インド、中国など社会主義国やブラジルなど発展途上国から、一挙に数十億人の、おおむね教育水準が高くしかも豊かになるためにいくらでも働こうという意欲満々の人々が市場経済に参入し、資本主義は世界中どこででも低コストの労働力を調達することが出来るようになった。他方、同じく冷戦の終結によって、米国を筆頭として、軍事目的に開発された高度技術が民用に転用され、とりわけその象徴であるインターネットの普及が世界をますますフラット化させると同時に、資源とそのコストの観念に一大変革をもたらした。情報資源は言わば無限であり、例えば1つのコンピューター・ソフトを開発したとして、それを1本売るのと100万本売るのとでは製造・販売コストはほとんど変わらない。その特質を逆用すると、ソフトを無料で無制限に配布したとしても別の形で利益を得る場合もあるし、あるいは、利益はないが名誉を得て満足する場合もある。そこでは既存の経済学も経営学も通用しない“無償経済”の世界が広がっていく。

 グローバリゼーション3.0によって、旧社会主義圏や途上国の人々は、もちろん世界資本主義の搾取に身を晒しながらではあるが、閉鎖経済の下では叶うはずもなかった豊かになる夢を追うことが出来るようになった。反面、先進国では人々は、ますます世界単一化する労働市場を通じて旧社会主義圏や途上国の人々と直接競合することによる賃金抑制という未体験ゾーンに突入し、労働環境や雇用形態の激変の中で、より質の高く付加価値の大きい労働力としてスキルを高め、自らを鍛え直すことを通じてしか根本的にはこの状況に対処することは出来ない。このグローバリゼーション3.0への適合を巡って、勝ち組と負け組が分かれるのはある意味で当然で、それは小泉政権が市場原理主義に傾いたせいでも何でもない。

●フリーター出現を恐れるな

 第3に、このグローバリゼーション3.0に、明治から100年余りの「発展途上国型経済」をきっぱりと卒業して次の100年の「成熟先進国型経済」へと踏み込まなければならないという「100年目の改革」課題が折り重なったのが、その日本バージョンである。上述の「改革とは何か」の答えも、まさにこの点に求めなければならない。それは一言で言えば、中央官僚主導の政策や所得配分の仕組みを全面的に解体して新たな市民・民間・地方主導の物事の決定の基本システムを作り上げることであり、またそれと裏腹の「お上にお任せ」の奴隷根性から自立自存の「下々に任せろ」の真の国民主権意識への変革である。

 この100年目の大転換にあっては、誰も今までと同じに安穏に生きていくことは出来ない。石原慎太郎都知事までが選挙で「安心」を訴えたのは噴飯もので、世界経済構造の変化と日本独自の100年目の転換がもたらす不安を耐え抜いて新しい生き方を見つけることが時代の課題である。一例を挙げれば、「フリーターがかわいそうだ」などと思うのは、今までの価値観や労働観がこれからも続くという前提に立った時代遅れの発想で、ましてや政府と連合労組が手を組んで「正規社員とフリーターでは生涯賃金が1億円も違ってくるぞ」などと脅迫して、若者たちを“正業”に就けようなどとしているのは滑稽でさえある。

 もちろん、フリーターには単にだらしないだけの奴もいるし、ニートの中には精神的治療が必要な者もいる。しかし、全体としてのフリーターは、自分らの親や先輩たちのようではない新しい生き方をしなければならないと考えていて、それについて親も教師もアドバイスを与えることが出来ないでいるから、自分らで模索するしかないのである。彼らの中には、ホリエモンに憧れて、それこそ付加価値の高いIT産業でベンチャーを興して勝ち組になろうと思っている者もいれば、何年間かはバイトで過ごして小金を貯めて、NPOを創立してアフリカ難民救済に取り組もうとしている者もいる。そのどちらもが、それなりに、自覚・無自覚は別として、グローバリゼーション3.0と100年目の転換への適合のための苦闘なのであり、むしろ彼らの苦闘の中にこそこの国の未来が宿ると言って過言ではない。

 従って格差を後ろ向きに、発展途上国型経済の常識に立脚して是正しようとするのは愚の骨頂である。前に向かって、21世紀日本の新しい生き方とそれをサポートするシステムを提案することであり、それがつまりは「改革」の本旨である。▲

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