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INSIDER No.376《ISG REPORT》米「イラク研究グループ」報告書の要点

 ジェームズ・ベーカー元国務長官とリー・ハミルトン元上院議員を共同議長とする「イラク研究グループ」が12月6日発表した報告書の冒頭部分、「共同議長からの手紙」(序言に当たる)と「エグザクティブ・サマリー」(主要論点の要約)を仮訳して参考に供する。

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《共同議長からの手紙》

 イラク問題を解決する魔法の方程式はない。しかし、状況を改善しアメリカの利益を守るために採りうる対策はある。

 多くのアメリカ人は、イラクの状況だけでなく、イラクについての政治的議論の状態に不満を抱いている。政治指導者たちは、今や長引いて費用も嵩んでいるこの戦争に対して、責任ある結論を下すような超党派のアプローチを確立しなければならない。我が国が必要としているのは、レトリックよりも実質を重んじる議論であり、適切な予算的裏付けを持ち持続可能な政策である。大統領と議会は協力しなければならない。アメリカ国民の支持を獲得するためには、指導者たちは国民に対して包み隠さず率直でなければならない。

 この時点でイラクで何らかの対策を採ることによって、宗派間の戦闘や暴力の増大、あるいはカオスに向かっての転落を止められるかどうかは、保証の限りではない。もし現在の傾向が続くなら、あり得る結末は深刻である。イラクにおける米国の役割と責任、そして我が政府が行ってきたコミットメントからして、米国は特別の義務を負っている。我が国は、イラクが抱える多くの問題に全力を挙げて取り組まなくてはならない。米国は中東に長期にわたる関係と利益を有しており、関与を続ける必要がある。

 イラク研究グループの10人のメンバーは、よりよい前進方向があるとの確信に基づいて、この報告書で1つの新しいアプローチを提言する。すべての選択肢が論じ尽くされた訳ではない。イラクによりよき未来を与え、テロリズムと戦い、この地域を安定させ、そしてアメリカの信頼と利益と価値を守るための別の政策を追求することも可能だろう。この報告書は、イラクの政府と国民もまた安定した希望に満ちた将来のために行動すべきであることを明らかにする。

 この報告書に盛られた勧告を実現するには、強大な政治的意思と政府の行政・立法両部門の協力が求められる。熟達した遂行能力が求められる。政府各機関による統一した努力が求められる。そしてその成功は、政治的に分極化したこの時代にあってアメリカ国民が統一できるかどうかにかかっている。アメリカ人は、民主主義の範囲内で活発な議論をする権利を享受することが出来るし、しなければならない。しかし、もしこれが広範な持続可能なコンセンサスによって支えられなければ、イラクにおけるどんな対策も、米国の外交政策も、失敗に帰することになる。

 米政府の内外、イラク、そして世界中の人々が我々のインタビューに応じ、情報を提供し、研究グループを支えてくれたことに感謝する。また作業グループの専門家メンバーやスポンサー組織から派遣されたスタッフに感謝する。そして何よりも、寛容と超党派の精神でこの困難な問題に一緒に取り組んでくれた研究グループの委員の皆さんに感謝する。

 この報告書を大統領と議会、そしてアメリカ国民に提出するに当たって、我々は、イラクで任務に就いてきた、そして今も就いている軍人・民間人を問わずすべての男女と、本国にいるその家族に対して、これを捧げたい。彼らは類い希な勇気を示し、多大なる犠牲を払った。すべてのアメリカ人は彼らに恩義がある。

 我々はまた、国のために犠牲となった多くのイラク人、そして我が国とイラク国民の側に立った連合軍のメンバーの名誉を称えたい。

ジェームズ・A・ベーカーIII
リー・H・ハミルトン

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《主要論点の要約》

 イラクの状況は深刻かつ悪化しつつある。成功を保証することの出来る道筋はないが、見通しを改善することは可能である。

 この報告書で我々は、イラクで、米国で、そして[中東]地域で採りうる対策について多くの勧告を行う。我々が最も重きをおいて勧告するのは、イラクおよび同地域における新しい、より強力な外交的・政治的努力であり、また米国がその戦闘部隊をイラクの責務から解き放って撤退させることを可能にするような、イラク駐留米軍の主要任務の変更である。我々が信じるところ、この2つの勧告は同じ程度に重要であり、また相互補完的である。これらが効果的に実行されれば、そしてイラク政府が国民的和解に向かって前進すれば、イラク人はよりよい将来を築く機会を手に入れ、テロリズムには大打撃が加えられ、この世界の中でも重要な地域の安定が強化され、そしてアメリカの信頼と利益と価値は守られるだろう。

 イラクにおける課題は複雑である。暴力の範囲と致死率は増大している。それをもたらしているのは、スンニ派の反乱者であり、シーア派の民兵であり、アル・カイーダの暗殺団であり、広く拡散する犯罪である。安定を達成する上で主要な難問は宗派間抗争である。イラク国民は民主的に選ばれた政府を持っているが、その政府は、国民的和解を進めて基本的な治安を確保し、重要な行政サービスを提供することが出来ないでいる。ペシミズムが蔓延している。

 状況が悪化し続ければ、結果は深刻なものとなるだろう。カオスへの転落は、イラク政府の崩壊と人道上の大惨事の引き金となるだろう。近隣諸国が介入し、スンニ対シーアの衝突は広がるだろう。アル・カイーダのプロパガンダは勝利を収め、彼らの作戦基盤は拡張されるだろう。米国の世界的地位は下落し、アメリカ人はさらに分裂するだろう。

 過去9カ月の間に我々は前進するためのあらゆるアプローチを考察した。そのどれにも欠陥がある。我々が勧告したコースにも欠点があるが、しかしそれはイラクと同地域の行く末に積極的な影響を与える最善の戦略と戦術を含んでいると確信してやまない。

<対外的アプローチ>

 イラクの近隣諸国の政策と行動はイラクの安定と繁栄に大きく影響する。この地域のどの国も、カオス化したイラクから利益を得ることはない。しかしイラクの近隣諸国はイラクが安定を達成するのを助けるために十分なことをしていない。いくつかの国は安定を妨げてさえいる。

 米国は直ちに、イラク及び同地域の安定について国際的なコンセンサスを作り上げるための新たな外交的攻勢に打って出るべきである。この外交的努力は、イラクの近隣諸国をはじめ、イラクのカオス化を回避することに関心のあるすべての国々を包括すべきである。イラクの近隣諸国と同地域内外の主要国は、イラク自身では達成することが出来ない同国内の治安と国民的和解を強化するために、支援グループを結成すべきである。

 イランとシリアがイラク国内の出来事に影響を与える能力と、彼らがイラクにおけるカオスを回避することへの関心とを考慮すれば、米国はこの両国に建設的に関与すべきである。両国の行動様式に影響を与えることを追求する上で、米国は活用できる促進要因と阻害要因の両方を抱えている。イランは、イラクに対する兵器と軍事訓練の供与を止め、イラクの主権と領土的統一を尊重し、イラクのシーア派が国民的和解に進むよう影響力を行使すべきである。イランの核開発計画の問題は、引き続き国連安保常任理事国の5カ国プラスドイツによって対処されるべきである。シリアは、イラクとの国境を管理して、そこを出入りする資金、反乱部隊、テロリストの流れを止めるべきである。

 米国は、アラブ・イスラエルの対立と同地域の不安定の問題に自ら直接対処することなしには、中東における目標を達成することは出来ない。レバノン、シリア、そしてイスラエル・パレスチナそれぞれの国家樹立についてのブッシュ大統領の2002年6月のコミットメントなど、すべての戦線における包括的なアラブ・イスラエル和平に対する米国の新たな、そして一貫したコミットメントがなければならない。このコミットメントは、イスラエル、レバノン、パレスチナ人(彼らがイスラエルの生存権を認める前提で)、シリアとの2国間及び相互間、多国間の直接対話を含むものでなければならない。

 米国がイラクと中東に新たなアプローチをするようになれば、イラクから撤退した戦闘部隊を活用することを含めて、アフガニスタンに対する一層の政治的、経済的、軍事的支援を提供することも出来るに違いない。

<対内的アプローチ>

 イラクの将来に関して最も重要な問題は、今やイラク人自身の責任能力である。イラク国民が自分自身の運命をコントロール出来るように仕向けることへと、米国のイラクにおける役割を調整しなくてはならない。

 イラク政府は、イラク軍の数と質を向上させることによって、イラクの治安に責任を負えるようになるべきである。このプロセスは現在進行中ではあるが、それを促すには、米国は、戦闘部隊を含む米軍事要員の数を大幅に増やしイラク軍を支援すべきである。これらの対策が進めば、米戦闘部隊がイラクから撤退し始めることが出来るだろう。

 イラクにおける米軍の主要任務は、イラク軍を支援することに移行すべきであり、それによってイラク軍は米軍に代わって戦闘作戦の主な責任を担うようになるだろう。現地の治安状況に予期しない展開が生じない限り、2008年の第1四半期までに、部隊防護に必要な一部を除くすべての戦闘旅団を撤退させることが出来るだろう。その時点で、イラク内の米戦闘部隊は、部隊単位でイラク軍と同居する形でのみ配置され、緊急展開および特殊作戦、訓練、装備、助言、部隊防護、調査、救急などの任務に携わることになろう。情報と支援の活動は継続されるだろう。この緊急展開および特殊作戦の部隊の重要な任務は、イラク国内のアル・カイーダを攻撃することであろう。

 イラク政府が、今後しばらくの間、特に治安の責任を担えるようになるために米国の支援を必要としていることは明らかである。しかしながら米国は、たとえイラク政府が計画通りに転換を実行しなかった場合でも、米国は部隊再配置を含めて自らの計画を遂行するであろうことを、イラク政府に対し明言しなければならない。米国は、イラクに配置された大規模なアメリカの部隊を無期限に維持するかのようなコミットメントをしてはならない。

 再配置が進むにつれ、軍事指導者は米国に帰還した部隊の訓練と教育に力を入れ、完全な戦闘能力を回復させるべきである。装備が戻ってきたら、議会は十分な予算を手当てして今後5年間の内に装備を回復させるべきである。

 米国は、国民的和解、治安、統治能力に関して具体的な目標(あるいは里程標)を達成するために、イラクの指導者と密接に協力すべきである。奇跡は期待できないが、イラク国民は対策が奏功して事態が改善されることを期待する権利がある。イラク政府は、自国の市民のみならず米国や他の国々の市民に対しても、支援を受けるに値する存在であることを示す必要がある。

 ノウリ・アル・マリキ首相は、米国と協議しつつ、イラクにとって重要な一連の目標を掲げてきた。彼の目標リストは出発点としてはそれでよいけれども、政府を強化しイラク国民に利益をもたらすような目標を含むものに拡張されなければならない。ブッシュ大統領とその国家安全保障チームは、イラクの指導者との緊密かつ頻繁な接触を保って、これらの目標の達成に向かって実質的な進展を生み出すためには迅速な行動が必要であるという明確なメッセージを伝え続けるべきである。

 もしイラク政府が政治的意思を行動で示して、国民的和解、治安、統治能力という目標の達成に向かって実質的な進展を実現するなら、米国はイラク治安軍に対する訓練、援助、支援を継続し、また政治的、軍事的、経済的支援を継続する意思があることを明確にすべきである。もしイラク政府が、国民的和解、治安、統治能力という目標に向かって実質的な進展を実現しないのであれば、米国はイラク政府に対する政治的、軍事的、経済的支援を削減すべきである。

 我々の報告書は他のいくつかの分野についても勧告を出している。それには、イラクの裁判システム、石油部門、米国のイラクにおける[経済]再建努力、米国の予算措置、米政府要員の訓練、米国の情報能力などの改善提案が含まれる。

<結論>

 イラク研究グループの一致した見解では、これらの勧告は米国のイラク及び同地域における新たな前進方向を提供するものである。これらは包括的であって、1つのまとまった形で実行される必要がある。分割されて個別に実施されるべきでない。地域全体の力学が働くようにすることが、イラクにとってもイラク国内の出来事にとっても重要である。

 課題は気の遠くなるようなものである。この先困難な日々が待ち受けていよう。しかし、この新たな前進方向を追求することによって、イラク、地域、米国はもっと強力なものとなって浮上することが出来る。▲

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