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INSIDER No.370《NORTH KOREA》金正日は“狂気”なのか?──臨検に踏み込む日本の危うさ

 先週の『週刊新潮』は「“狂気”の衝撃波/核ミサイル来年発射で東京の死者130万人!」と、『週刊文春』も同様に「“狂気”の金正日開き直りの核実験/中西輝政緊急提言・米の核ミサイルを即時日本に配備せよ」と、どちらが狂気かと疑うほどの勢いで特集を繰りだしている。

 確かに核兵器はそれ自体が狂気の究極兵器であり、核実験と聞いただけで恐怖に陥るのは理解できないことではないけれども、本誌前号でも指摘したように、(1)金正日はこのタイミングで核実験を強行することで米国との2国間交渉のきっかけを掴もうとするそれなりの計算に立ってこの挙に出た、(2)しかしそうかと言ってその計算に成算があるわけではなく、むしろ客観的には自業自得の結果に陥る公算が大きい、(3)それでもこの賭けに打って出たのは、金融制裁などで追い詰められて窮鼠猫を噛む的な心理に陥っているからで、そのため計算違いが更なる計算違いを引き起こす危険がある——つまり、狂気そのものと狂気の演出(すなわち狂気の振りをすること)とは違うことを一旦認識した上で、なおかつ狂気の振りが本当の狂気に転がり込む可能性があって、それは具体的にはどういうケースであるかについて冷静に分析しておかないと、この事態への対処を誤ることになる。

●ドント・パニック、ジェントルメン!

 ドナルド・グレッグ元安保担当補佐官は、9日付『ヘラルド・トリビューン』紙への寄稿で「パニックに陥るな(Don't panic)。金正日の目的は生き残りであって、自殺ではない」と述べたが、その通りで、その背景には、金は(米国の忌み嫌うイスラム原理主義者ではないので)本当に狂気の行動に出ることはありそうにないというワシントンの外交政策マフィアにほぼ共通する認識がある。ブッシュ政権が今のところ比較的冷静に振る舞っているのも、アフガニスタン、イラク、それにイランへの対応で精一杯で北朝鮮に構っていられないという事情はもちろんあるけれども、それ以上に、最も現実的な本当の危険は北が自分で米国へ向かって核を発射することではなく、アル・カイーダなどに核弾頭を売り渡し、それが米国内でのテロ攻撃に使われることにあると考えているからである。もしそのようなことが起きるか、起きそうになって辛うじて予防されたという場合、米国は、今度は慎重に証拠を押さえて国際社会の同意を取り付けた上で、北朝鮮への軍事攻撃に踏み切るだろう。今はまだその遙かに手前の段階である。

 北朝鮮研究者であるB.R.マイヤーズは13日付の『ヘラルド・トリビューン』で、面白いことを書いている。「裕仁天皇は宗教的狂信派でも自殺願望的でもなかったが、勝ち目のない戦争に日本を導いた。北朝鮮はスターリン主義国家と思われているが、実はその世界観は遙かにファッショ時代の日本に近い」と。数千年に及ぶ民族の血の繋がりを誇り、その象徴として指導者が、白い雪を頂いた峰を背景に白い馬に跨ってみせた挙げ句、その民族的純潔性を守るために「死を以て国を守れ」と国民に呼びかける辺りは、裕仁と金はそっくりである。もちろん金はたくさんの人を殺すことは出来るが、かつての帝国日本ほど世界の安全保障にとっての脅威をもたらすことはないし、そもそも帝国を築こうともしていない。しかし北の世界観がそのように非合理的なものである以上、北が自分で核兵器を使うことはないと決めつけることは出来ない……とマイヤーズは言う。

 蛇足ながら、白い雪を頂いた峰とは、日本では富士山、北では白頭山である。ヒトラーも白い馬に乗っていた。

 実際、北の共産独裁と韓国の一時期までの軍事独裁は、大日本帝国の植民地支配が産み落とした不肖の兄弟とも言うべき一面があって、北の奇行や愚行に怒ったり笑ったりする前に、日本もほんの60年前までは今の北と似たような訳の分からぬ怖い国と世界中から思われていたこと、そして日本がそのDNAを彼の地に残したことが今の北を生む少なくとも一因になっていることに、少しだけ思いを馳せるべきだろう。エリック・クラプトンの歌に「Before you accuseme, take a look at yourself(俺を責める前に、お前自身のことをちょっと振り返って見ろよ)」という科白があって、まあこれは男女の痴話喧嘩の話なのだが、第3者から見て「目くそ鼻くそを笑う」類だと嘲笑されないような北への対処が日本に求められているのである。

●日本に核ミサイルは降るか?

 週刊誌が言うように、来年、東京に北の核ミサイルが撃ち込まれるという事態があり得るのだろうか。結論を言えば、極めてあり得ない。

 13日付『毎日新聞』経済欄のコラム「経済観測」が次のように解析しているのはおおむね正しい。

▼北朝鮮は韓国や日本には少しも軍事的脅威を感じておらず、ターゲットはもともと米国だった。……米国の脅威にさらされている体制の安泰を図るため、米国に対する抑止力になる長距離ミサイルと核兵器の開発を急いでいるのだ。

▼したがって、北朝鮮は韓国を攻撃する意図はないし、日本を攻撃したいとも思っていないだろう。だが、米国が北朝鮮の核施設をピンポイント爆撃したり、完ぺきな経済制裁を主導したりすれば、自暴自棄になって韓国を攻撃するだろう。そうなればソウルは火の海になるに違いなく、軍事オプションは不可能なのだ。

▼国際社会として可能なのは、じわじわと経済制裁を強化しつつも完全に命綱を断つことなく、中露に北朝鮮への働きかけを強化させるしかない。成功する保証はないが、他のオプションは実際上とれないし、一方で人道支援もやめられないだろう。結局、悪名高い太陽政策は放棄できないことになる……。

 そのへんの軍事専門家よりもこの匿名の市場ウォッチャーのほうが余程的確に事態を見透している。すなわち、第1に、北の軍事的・外交的ターゲットは最初から一貫して米国である。かつて北朝鮮は、“自国の南半分”を占領している米帝国主義に対して中国と旧ソ連の支援を受けて戦争を仕掛けて駆逐しようとし、結果としてその目的を達しきれずに38度線を境に休戦協定を結んだのであり、そのようにして“南半分”を事実上占領し続けることになった米国が、以前は在韓米軍基地に地上配備した戦術核兵器で、現在は第7艦隊の戦略ミサイル原潜や水上艦船に積んだ巡航ミサイルや空母搭載の戦闘爆撃機など圧倒的な海洋核戦力で、常時、北の中枢部に狙いを定めていることが、北にとっての基本的な脅威であり恐怖なのである。その米国の脅威にさらされているからこそ、北はそれに対する抑止力として、苦しい中でも、核開発に励んできた。逆に言えば、米国による核恫喝がなければ、北は核開発をする理由がないことになる。それは、米国の支援を受けたイスラエルの核の脅威があればこそイランが核開発を急ぐのと同様で、この原因と結果の関係を取り違えてはいけない。

 従って、事態の根本的解決のためには、まず米国はじめ中国やロシアも含めて核大国が核実験禁止、核軍縮から核全面廃棄への道程を明示して誠実にそれを実行しつつ、朝鮮半島、中東、南アジアなど喫緊の地域の非核化を実現するための交渉の場を設営しなければならない。それを抜きに、米国があれこれの国を“ならず者”呼ばわりして先制攻撃も辞さないかの脅迫を行うから、それらの国がかえって核開発に突き進むことを煽る結果になっているのである。米国は、中国、イスラエル、インドと同様、96年の「包括的核実験禁止条約(CTBT)」に署名はしているが批准しておらず、日本政府内には「米中が批准し、条約発効に向けて機運が高まっていれば、北朝鮮に実験禁止を迫る国際圧力ももっと強まっていただろう」という声もある(15日付朝日)。

 第2に、北の原理的認識からすれば、韓国と日本はその米国に従属して、米軍に対して対北朝鮮攻撃のための出撃・補給基地を提供しているだけの従属国ないし傀儡国であり、それ以上の直接の軍事的脅威ではなく、何もない時にいきなり北が韓国や日本に核にせよ何にせよ攻撃を仕掛けてくることは基本的にはあり得ない。ほとんど唯一、韓国や日本が攻撃対象となり得るケースは、北と米国が戦闘状態に入って、その米軍の出撃基地や補給ルートを叩くために北がありったけのミサイルを韓国や日本にブッ放す場合である。日本が周辺事態法などを発動して米軍の後方支援に当たれば、北から見れば日本も参戦国となるから、その可能性はなおさら増す。仮に1発でも日本に飛んでくれば、「後方支援しかやっていないのにミサイルを撃ち込むとは何事か」「北の発射基地を叩け」「日本も核武装しろ」と世論が激高し、日本国憲法第9条は頓死する。

 ちなみに、この時、北が実用に足る核弾頭を保有しているか否かは本質的な問題ではない。北は通常爆弾を弾頭にしたミサイルで韓国や日本の原子力発電所を集中攻撃する作戦シナリオを用意していると言われており、本当のことを言えば、核開発などしなくても日韓を核攻撃することが出来る。

 従って、戦争になってしまえばどうしようもなく、まず戦争が起こらないようにすることに全力を尽くさなければならない。

●北の暴発はどうしたら防げるか?

 第3に、北と米国の戦争はどのようにして起こり得るか。北の暴発、ブッシュの暴発、船舶臨検などの小競り合いからの偶発などである。

 北の軍事的暴発は、経済・金融制裁が徹底的に行われて社会破綻と権力崩壊が起きるという場合に起こり得る。そこで、制裁には限度と出口の設定が伴わなければならない。限度を超えた徹底的な制裁とは、北の貿易総量約30億ドルの5割を占める中国と3割を占める韓国が全面禁輸に踏み切ることであり、とりわけ中国が丹東から鴨緑江をくぐって伸びるパイプライン経由の石油供給をストップすれば、北の経済も軍もたちまち麻痺してしまう。中国は93年の核危機の際にはこのパイプラインを一時止めて制裁に加わったが、今回はまだ止める気配を見せていない。

 また北は、正常な輸出による外貨収入とほぼ同規模の密輸収入があると見られており、それはミサイルなど軍需品のほか、国家的に密造した偽ドル、偽タバコ、覚醒剤、偽医薬品(バイアグラなど——ネットで米国発を装って販売されている安い薬の大半は北製で、不潔なところで製造された、所要成分がろくに入っていない粗悪品なのでご注意を!)などを中国、韓国経由で持ち出し、その稼ぎをマカオなどの銀行で洗浄して環流させる形を採ってきた。この不正資金の環流は金融制裁で相当程度打撃を受けているものと推測されるが、中国と韓国が貿易を止めれば密輸品も搬出路を失って北は完全に資金的に枯渇する。

 本当に制裁を効果あるものにするには、中国・韓国が全面協力してそこまでやらなければならないが、それは北の軍事的暴発に直結する危険があるので、両国は慎重である。とすると、単に船舶の臨検を議論するだけではダメで、とりわけ陸路を通じての中国経由の密輸品を含めた輸出入を段階的に締め上げて行きながら、「6者協議への復帰とその場を通じての米朝2国間協議開催」という出口に北を誘導していく緻密なロードマップを作って国際的に合意するのでなければならないだろう。

 ブッシュの暴発は、彼が北の生意気ぶりに切れて“先制攻撃権”を発動して北の核施設や金正日の居所をピンポイント爆撃することで、理論的には、北の暴発より遙かに起きやすい。しかし現実的には、イラクとアフガニスタンの泥沼化で身動きも取れない有様では、新しい戦線を開くことは事実上不可能であり、また上述のようにワシントンは北の核が密輸されてアルカイーダなどテロ組織の手に渡って核テロに使われることを最も恐れている(しかも北が実験を繰り返して持ち運び可能なところまで弾頭を小型化するには相当な時間がかかる)ので、少なくとも当分の間は米国側からの暴発はないだろう。しかし、米国務省の一部やペンタゴンには対北強硬論が根強く存在しており、北の挑発が度が過ぎるとブッシュが急にそちらに傾く危険は残っている。

 北からの核拡散を防ぎ米国の心配を取り除くためにも、制裁には海路だけでなく陸路での核弾頭を含む密輸を規制する措置が盛り込まれるべきだろう。しかしこれはなかなか難しいことで、シンガポール防衛戦略研究所のバーナード・リー助教授は「北朝鮮はテロ組織との取引を視野に入れるだろう。……外貨が欲しい北朝鮮にとって、潤沢な資金を持つとされるアルカイーダは魅力的だ。……国際社会がいくら監視していても、抜け道はある。そうなったら悪夢だ」と指摘している(13日付読売)。

●臨検は武力紛争のきっかけになるか?

 国連安保理が満場一致採決した制裁は、“第7条決議”であるためそれへの参加は加盟国の義務となったという点で極めて厳しいものであるが、しかしあくまで“第41条”による制裁であることを(中国の必至の工作で)明記したので、臨検もその範囲に留まることになり、“第42条”による事実上の武力行使の第1段階としての陸海空軍による「示威、封鎖」となることは回避された。が、臨検の範囲、程度、方法についての各国解釈はバラバラで、それぞれが行動の基準とする国内法も色々なので、やり方次第ではそれが戦争を引き起こすきっかけになりかねない。

 決議直前まで米国と中国の間で議論の火花が散ったのは、まさにその点で、決議案づくりを主導した米国は、この決議が「PSI(大量破壊兵器の拡散防止のための安全保障構想)を補完し発展させたもの」であることを強調、決議で言う「貨物の検査(inspection)」が不審船に対する強制力を持つものだという解釈である。それに対して、そもそも「北朝鮮に対して挑発的すぎる」という理由でPSIに参加してこなかった中国は、もちろん反対で、米国と激しくやりあった末に、各国が「自国の当局と法律に基づき……貨物の検査を含む協調行動をとる」という文言を盛り込ませた。これは、米国流解釈に賛成でない場合に臨検に参加しない、もしくは自国流のやり方で参加する余地を残す意図だったと考えられる。

 PSIは、02年にブッシュ大統領が提唱し、各国の自発参加を呼びかけたもので、北朝鮮やイランなどによる大量破壊兵器の移転・輸送を、国際的に協力して阻止するための措置を検討し実践するための枠組み。これまでに75カ国以上が参加し、海上阻止行動を中心とする国際共同訓練を積み重ねてきた。このPSIが発展したものが今回の決議であるとすると、自由参加だったPSIが国連加盟国の義務に格上げされる訳で、中国が抵抗したのも無理はない。

※外務省HPのPSI解説:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fukaku_j/psi/index.html

 さて、一口に「臨検」というがその定義は曖昧で、従って41条に基づくそれであっても実際には限りなく42条のそれに近づいていく可能性を孕んでいる。今回の国連決議に使われているのはinspectionで、これは通常「船舶検査」と翻訳する。平時の国際法である「国連海洋法条約」では110条で、海賊行為、奴隷運搬、不法放送などを行っている疑いのある不審船や無国籍船に遭遇した軍艦がvisitを行うことが出来る権利を定めているが、これは通常「臨検」と訳される。他方、戦時の国際法である1902年ロンドン宣言など「海戦法規」では、封鎖に伴うsearch、visit、visit & searchなどの言葉が使われ、予め封鎖を宣言した対象国・地域に戦時禁制品を輸送する商船に停戦を命じ、臨検し、拿捕し、貨物を没収し、あるいは船舶を破壊することが出来ることになっているが、これも「臨検」と訳され、交戦権行使の1形態である。軍艦による臨検は、それを検査と呼ぼうと、「国連憲章第7章41条の実行性を高める半軍事行動であり、41条と42条の間の行動であり戦時国際法の概念である」とする解釈もあり(Wikipedia「臨検」の項)、そうなるとますます41条と42条の境目ははっきりせず、限りなくグラデーションになる。

 米国は国内法で、警告と威嚇のための低空飛行や周辺海面への射撃、あるいは船長の同意を得ずして武装兵士がヘリコプターからロープで降下して強行乗船するテークダウンなどを行って強制臨検し、抵抗すれば必要な範囲で武力行使することになっている。従って、米軍主体の臨検となれば、実際には41条と42条の区別など掻き消されてしまう。

●日本は周辺事態法で参加できるのか?

 日本では、海洋法条約110条に辛うじて対応する国内法は海上保安庁法17条の「立入検査」で、ここでは「船舶、積荷及び航海に関し重要と認める事項を確かめるため船舶の進行を停止させて立入検査をし、又は乗組員及び旅客に対しその職務を行うために必要な質問をすることができる」とされている。が、海洋法条約110条で定めているのは平時における軍艦による臨検であり、日本の海上自衛隊がそれを行うための根拠法はない。海上自衛隊が臨検を行うのは、周辺事態で「船舶検査活動法」を発動した場合と、武力攻撃事態で「外国軍用品等海上輸送規制法」を発動した場合で、後者は日本が侵略されている最中に自衛権行使の一環として行うことなので今回の問題とは関係がない。

※防衛庁HPの「海上輸送規制法」の概要と条文:http://www.jda.go.jp/j/yujihousei/index02_1.html

 周辺事態とは、簡単に言えば朝鮮半島や台湾海峡などで戦争になり米軍が出動した場合のことである。99年周辺事態法には「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」が起きて米軍が出撃した時に、自衛隊が領海内だけでなく公海上に出てその後方支援を行うことことを定めていて、さらに同法の関連法として「船舶検査活動法」がある。その第2条には、(1)周辺事態の下で、(2)「貿易その他の経済活動に係る規制措置」すなわち経済制裁や臨検、封鎖などが実行され、(3)日本もそれに参加している時、(4)国連安保理が決議して必要な措置を執るよう要請してきた場合に、(5)あるいは安保理の要請がない場合はその船舶の旗国(本国のこと)の同意を得て——その船舶の検査を行うことにしている。

 しかし、公海上での本格的な臨検は「武力の行使または武力による威嚇」となり違憲なので、実際の実施に当たっては(1)航行状況の監視、(2)信号弾などによる自己の存在の顕示、(3)無線を通じての船舶の名称などの照会、(4)停止の要請、(5)船長の承諾を得ての乗船検査・確認、(6)目的地や航路の変更の要請、(7)船長などに対する説得、(8)接近、追尾——という遠慮がちなものにとどまらざるを得ず、また武器の使用も海上保安庁並みに制限されることになっている。

※防衛庁HPの船舶検査活動法の概要:http://jda-clearing.jda.go.jp/hakusho_data/2003/2003/html/15252200.html
※同法の条文:http://www.ron.gr.jp/law/law/syuhe_se.htm

 で、いま日本政府は、北朝鮮の核実験とそれに対する安保理の制裁発動を“周辺事態”と認定してこの「船舶検査活動法」を発動、臨検の主力になるであろう米軍に対して後方支援を行おうとしているのだが、これに対しては、当の防衛庁に「いくら何でも核実験だけで周辺事態と認定するのは無茶。周辺事態法を外交の道具として弄ぶものだ」という強い抵抗があり、また自民党内にも「臨検に日本が加担した場合、北朝鮮は宣戦布告と見なして暴発する可能性がある」(山崎拓、14日鹿児島での発言)など慎重論がある。

 周辺事態と認定するための基準として6類型があり、その第4は「ある国の行動が国連安保理で平和に対する脅威などと決定され、安保理決議の経済制裁の対象となり、日本の平和と安全に影響する」となっていて、文字面だけ読めば今回の事態に合致するのは確かだが、しかし周辺事態法が全体として想定しているのは、すでに武力紛争が発生しているがまだ日本への直接攻撃が行われていない場合であるから、防衛庁が考えるように、これを周辺事態とするのは拡大解釈であり、法律的に無理がある。また現実的にも、山崎が心配するように、北のほうから見れば、米軍主体の臨検そのものが武力行使であり、日本は後方支援だけだなどと言っても通用せず日本も参戦国とみなして攻撃対象とするに決まっているので、簡単に紛争に巻き込まれる。

 もともと周辺事態法が持っている曖昧さが呼び起こす危険が露呈した形であり、それを避けようとすれば、すでに自民党国防族の間ではしゃいだ声が出ているように、船舶検査に強制力を持たせ、また米軍以外の艦船にも後方支援を提供できるよう特別措置法を制定すべきだということになるが、これはもちろん憲法上、新たな問題を浮上させる。

 このように、ちょうどアフガニスタン戦争で押っ取り刀で対米後方支援の特措法を作った時と同様の、ブッ飛んだような議論が政府・与党内を駆け抜けているが、そもそも本来、この制裁活動は安保理が主体になって実施すべきもので、自動的に米軍主体で臨検体制を敷くのが当たり前のような話になって、日本がそれを前提に「米軍への協力の仕方をどうするか」と色めき立っているのはいかがなものなのか。米軍が能力的にその任に最も適していることに疑いの余地はなく、また制裁決議を主導したのが米国であるという経緯からしても、そうなるのは自然の流れとも言えるが、考えてみれば、それは北に「米国が国連を手先に使って武力攻撃を仕掛けてきた」という受け止め方をされて仕方のない挑発的なやり方であって、制裁のプロセスを巧みにコントロールしながら北を出口に導いて行くには最も適さないかもしれない。本当にそれでいいのか、また中国や韓国も参加して陸路を含めた物資制限を段階的に実施するにはどうするか、など落ち着いた検討が必要ではないか。

 北の狂気の振りを本当の狂気に転化させないための、特に6カ国協議参加の5カ国の緊密な連携こそ大事で、米国に付いて行きさえすれば大丈夫というような小泉流を安倍が継承するだけでは危ない。▲

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