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INSIDER No.369《NORTH KOREA》“最後の切り札”を切った北朝鮮の自暴自棄──国連安保理は船舶臨検に踏み切るか?

 北朝鮮が9日に強行した地下核実験について、世界200カ所の地震観測所をネットワークして核実験を監視している「包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備室」は、マグニチュード4.0(誤差0.3以内)、TNT火薬換算1.5キロトンとしており、また韓国の地質資源研究院はマグニチュード3.58〜3.70、TNT火薬換算0.4〜0.8キロトンとしている。他方、ロシアや日本の観測値はもっと大きく、現時点で特定は難しいが、東京大学地震研究所の阿部勝征教授は0.5〜3キロトンと推測している。いずれにせよCTBTOが観測対象としている「1キロトン程度以上」に引っかかるか引っかからないかのぎりぎりの小規模のものだった公算が大きい。1キロトンは、広島型の濃縮ウラン原爆の15分の1、長崎型のプルトニウム原爆の20分の1程度に相当する。米紙ワシントン・ポストが9日伝えたところでは、米政府当局者は「本当に核爆発だったかどうか判断がつきかねるほど小規模で、どちらかといえば失敗だったのではないか」「爆弾の一部だけが爆発した可能性もあり、その場合、北は引き続き追加実験を行うかもしれない」と見ているという。

 北朝鮮が、実験室レベルの核弾頭を数発(7〜8発?)程度、保有しているであろうことは既に推測されていたことで、これが実際に爆発実験に付されたことで、核兵器の実用化に一歩近づいたことは確かだが、そうかといって多数の核弾頭をテポドンやノドンに装着して実戦配備したという事態にはほど遠い。核実験という、言わば究極のカードを振り回して隣国や国際社会を恫喝しようとする金正日の政治的野蛮は徹底的に糾弾され、国連安保理を中心とする一層厳しい制裁措置の対象となって当然であるけれども、かといって直ちに核の脅威への軍事的対応を迫られているかのように大袈裟に騒ぎ立てる必要もない。多くの専門家が指摘するように、一度核実験をやったから明日から核兵器を発射出来るというものではなく、実験を繰り返して精度を上げつつある程度まとまった数の弾頭を蓄えて、それ以外にも多くの技術的関門を突破して初めて本物の核保有国になるのである。

●なぜこの時期に?

 この時期に北が暴挙に出たのは、第1に、金融的窒息状態がいよいよ我慢の限界に来たからである。昨年の6者協議中断後の1年間に、米国を先頭に日本、シンガポール、タイ、オーストラリア、さらには中国までも含めて20カ国が戦列に加わって、北朝鮮の軍需品調達や偽ドル・偽タバコ・麻薬などの国家的な国際犯罪ビジネスの拠点になっている疑いのある銀行口座を次々に封鎖し、包囲網を狭めてきたことが奏功して、元々空っぽに近い国庫の外貨収入だけでなく、金正日が軍部をはじめ権力内部にバラ撒いて不満をなだめるために蓄えている裏金も、ほとんど干上がってしまったと言われており、窮鼠猫を噛むの心境に追い込まれる中で「金融制裁を解除しないと核でも何でもブッ放すぞ」という国際社会への脅迫手段に出たのだろう。とりわけ、長年にわたって北の対外経済工作の最大基地となってきたマカオで、バンコ・デルタ・アジアと中国銀行の口座を封じられ、貿易商社やそれを装った工作機関が総引き上げしなければならなくなったのは大打撃で、それはもちろん米国の差し金によるものだが、それを許容した中国に対しても北は恨みを募らせており、中国への意趣晴らしという意味合いも含まれているかもしれない。しかし、国際社会が核実験に驚いて制裁を解除するなどということがある訳はなく、むしろ制裁の一層の強化を招いて自分の首を絞めるだけである。

 第2に、米朝2国間協議に応じろというワシントンへのメッセージである。北にしてみれば、そもそも米国が北を核で恫喝しているから自らも核を開発して対抗しなければならないのであって、初めから相手は米国以外ではありえない。ところが6カ国協議の枠組みは、米中露日韓が寄ってたかって北に圧力をかけて核を止めさせようというもので、米国の核という“原因”を不問にして北の核という“結果”だけを取り除こうとする不当かつ一方的な構図でしかない。そこで、核実験に踏み切ることで、6カ国の話し合いで北だけが核を放棄することなどあり得るはずがなく、米国が2国間協議に応じて“核保有国”同士として相互(!?)核軍縮を進める以外にこの問題の根本的解決はないのだということを、誰よりも米国に思い知らせようとしているのである。が、毒を以て毒を制する式のこのような粗暴なやり方で、米国が考えを改めて2国間協議に応じてくる可能性はほとんど絶無であり、むしろ逆効果である。とりわけブッシュ政権は、世界を敵と味方に二分して、イラン、シリア、ヒズボラ、パレスチナなど気に入らない相手とは一切交渉しないという頑なな外交姿勢を採っていて、その稚拙さを内外から批判されているけれども、今更それを転換するつもりはない。従って、北はこれによって、「6カ国協議に復帰して、その場を通じて米朝2国間協議を実現する」という唯一現実的な打開策を自ら閉ざしてしまったことになる。

●武力行使の寸前まで進む?国連

 国連安保理は、常任理事国5カ国に安保理議長国である日本を加えた6カ国による大使級会合などを通じて、憲章第7章に基づく制裁決議の採択に向かって協議を進めている。第7章は「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」を規定しており、最初の第39条で安保理が「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略の存在を決定し、並びに、国政の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第41条及び第42条に従つていかなる措置をとるかを決定する」とした上で、第40条では、その勧告または措置の決定に至る以前の「暫定措置」、第41条では、「経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中断並びに外交関係の断絶」を含めて「兵力の使用を伴わない措置」、第42条では、前条の措置では不十分な場合は「国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動」を含めて「国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動」をとることが出来ると定めている。第43条以下は、それでも間に合わない場合の国連軍の出動であって、米日が提案している核・ミサイル関連の物資や技術の北への禁輸は第41条に該当し、北朝鮮に出入りする船舶の臨検は第42条に該当するの
で、憲章の条文上も、また実際に臨検を行えば武力衝突になる危険も出てくるという現実上でも、武力行使の寸前まで進むというのが「第7章制裁」の意味である。

 中国とロシアは、余り北を追い詰めると軍事的暴発や内部崩壊を引き起こしかねないという考慮から、これまで第7章制裁には反対してきたし、今も慎重な態度を保っているが、今回は米日主導の案に賛成せざるを得ないものと観測されている。しかし、暴発や崩壊を起こさせずにこれ以上、北を追い込む巧い手段などある訳がなく、これは国連と国際社会にとっても瀬戸際の対応策となるだろう。臨検を行うのが米国の艦船だった場合、北は「米帝国主義が国連を手先に使って我が国を攻撃している」と宣言して、軍事的報復に出る可能性もある。金正日の自暴自棄的な愚行によって、北東アジアの緊張はにわかに高まっているが、これは直ちに核の脅威への対処ではないことを確認しつつ、あくまで北を無用に挑発して紛争を引き起こすことのないよう慎重に行動することが関係国に求められるだろう。▲

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