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INSIDER No.355《IRAN CRISIS》イラン攻撃に前のめりになる米国——戦術核兵器使用を真剣に検討

 イランに「30日以内にウラン濃縮活動を停止する」よう求めた3月末の国連安保理議長声明をイランが無視したことから、米政府高官たちのイラン非難の合唱はますます高潮しつつある。

 ライス国務長官は4月27日ブルガリアでの会見で、安保理が非難決議や経済制裁などもう一歩踏み込んだ措置をとるよう求め、さらに30日にはワシントンでの会見で、「国連安全保障理事会が迅速に行動しなければ、有志国が追加的な措置を検討することもできるし、そのつもりだ」と言明。中国やロシアの抵抗で今後の安保理協議が不調に終われば、欧州や日本など同盟国を中心とした制裁に動く可能性を示唆した。資産凍結を含む経済制裁だけでなく、対イラク型の有志連合による軍事攻撃も視野に入れた、あからさまなイランへの脅迫である。

 ブッシュ大統領も5月8日の独紙とのインタビューで、アハマディネジャド大統領をアルカイダのウサマ・ビンラディンや副官のザワヒリ、イラク国内のアルカイダ系武装組織の指導者ザルカウィと同列のテロリストの親玉であると断じ、イラン指導部が核兵器を入手すれば実際にそれを使ってイスラエルを攻撃する可能性があると警告した。

 もちろんライスは、「安保理を通じての外交交渉を最優先する」との立場を基本的に崩していないし(30日TV番組)、ブッシュ大統領も「外交努力は始まったばかりだ」と慎重態度を保っている(5月8日ドイツのTVのインタビュー)ものの、中国とロシアを含め安保理が制裁決議に踏み切る可能性はほとんどゼロであり、「始まったばかり」の外交努力は夏までに挫折し、9月の9・11事件5周年、11月米中間選挙の2カ月前というタイミングで、ブッシュ政権が強引にイランへの軍事行動に踏み切る公算が大きくなっていると見るべきである。

●いつか来た道

 《ざ・こもんず》の中村忠彦の「ワシントン・コンフィデンシャル」が4月21日付で書いているように、これは「いつか来た道」である。

 まず第1に、イラクのサダム・フセインと同様、イランのアハマディネジャドを米国を破滅させようと狙っているテロリストの悪魔的な親玉であると一方的に決めつける。

 第2に、あやふやな(結果的には虚偽の)情報を誇大に膨らませて、イラクと同様イランが、核および大量破壊兵器を極秘裏に開発・保有していると宣伝する。

 第3に、そのあやふやで実際には虚偽である場合が多い情報の端緒は、イラクの場合と同様イランの場合も、“反体制の亡命者”からもたらされた。亡命者は、米国に自分らを売り込んで活動資金を引き出し、あわよくば米国の力を借りて本国政府を打倒して凱旋したいので、あることないことを言う。

 第4に、本当にあるかないか確証のない核・大量破壊兵器の“脅威”が、繰り返し「もしあったらどうするんだ」という調子で語られているうちに、次第に証拠などどうでもよくなって、「あるに違いない」という雰囲気に、言っている方も言われている方も染め上げられて行く。そこでは、イラクもしくはイランの核・大量破壊兵器の問題が国際社会にとってまだ“疑惑”の段階(証拠がない)なのか、“懸念”の段階(明らかな兆候的証拠がある)なのか、“潜在的脅威”(実際に開発を進めていて数年中には実用化される可能性がある)にまで達しているのか、さらには早急に軍事的対処が必要な“現実的脅威”(すでに実用化して使用される可能性がある)にまで高まっているのか——という初歩的な戦略分析の区分などかき消されて、疑惑がいきなり現実的脅威と(意図的に)混同されて騒ぎ立てられる。

 第5に、その戦略論的理性の喪失状態の中で、疑惑だけでも攻撃の理由になるという「先制攻撃論」がまかり通り、国際法違反の一方的な軍事攻撃が発動される……。

 結局、ブッシュ政権はイラク戦争の惨憺たる結末がなぜもたらされたのかについて、何も理解しないまま、また同じ間違いを繰り返しつつある。しかも、イランの場合がイラクの場合と違うのは、(1)ブッシュの支持率は主要調査で20%台にまで下落し、歴代大統領の中でも最低水準に達しつつあって、9・11後の愛国的熱狂は再現しない、(2)国際社会は以前よりもなおさら武力行使を支持せず、英ブレア首相と小泉首相の右大臣・左大臣は共にレイムダック状態に近い、(3)米財政はイラク戦費の下血状態をこのままに新たにイラン戦費をひねり出すことは出来ない、(4)仮に戦費を調達しても現実に投入する軍隊がない、(5)従って、ほとんど唯一の現実的な攻撃は、戦闘機の低空突入もしくは巡航ミサイルによる疑惑施設への強力爆弾もしくは戦術核兵器投下ということになるだろうが、疑惑施設の特定さえ難しい状況では、とんでもない民間被害が出て米国は全世界的非難を浴びることになろう。

 問題を、「なぜイランには原子力平和利用の権利が制限されるべきなのか」という原点に戻すべきである。イランが言っているように、原子力平和利用は「奪うことの出来ない、締約国の固有の権利」(核不拡散条約第4条)であり、目的用途を事前申告し、査察を受け入れて開発する限り、誰もそれを制約することは出来ない。イランは現にIAEAによる査察も受け入れており、そこで疑惑が発見されたとしてもそれはあくまで査察の徹底を通じて解明すればいいだけのことで、査察は頼りにならないから軍事攻撃だというのでは無法の世界である。イラクの大量破壊兵器疑惑も国連が長年にわたり査察を行い、97%がたの確率でそれが存在しないとの結論に達していたにもかかわらず、ブッシュ政権は、国連および査察団の能力は信用ならないとして、軍事攻撃を急いだ。そうではなくて、さらに査察を強化して疑惑を徹底解明することが当時、唯一の合理的な解決策であったはずで、結果として大量破壊兵器は存在せず、ブッシュは大恥をかいた。

 同じ間違いを繰り返しながら、米帝国は自滅の道を転がって行くのである。▲

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