Calendar

2006年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

Recent Entries

« INSIDER No.351《BOOKS》あなたは脳細胞の99%を眠らせたまま死んでいくのか?──溜め込んで3冊ずつ読むスローな読書術・その1
メイン
INSIDER No.353《FROM THE EDITOR》 »

INSIDER No.352《POLITICS》政治の流れを大きく変えた千葉補選──小沢民主党に勢いがついた!

 昨日の千葉7区補選は、そこが一体千葉県のどこなのか、誰と誰が立候補しているのか、全国的にはほとんどの人が知らないまま、しかし今後の政治の流れに決定的に影響を及ぼす天下分け目の大決戦として注目を集め、結果は1000票弱の僅差で民主党が勝利した。

●小沢効果

 最大の要因は、言うまでもなく「ニュー小沢効果」である。偽メール事件で同党はほとんど瀕死状態に陥って、この選挙も候補者選びが難航して不戦敗覚悟でパスしようかというところまで追い詰められていたのに、26歳の前県議のお嬢さんの“勇気ある”立候補決意と、投票2週間前に誕生した小沢一郎代表の陣頭指揮でここまで盛り返し、来年夏の参院選で自公政権の息の根を止めるかどうかの挑戦権を確保した。本当に政治は「一寸先は闇」で、昨秋の総選挙での小泉圧勝、年末・年始にかけての「4点セット」での民主党の攻勢、偽メール事件での民主党沈没と前原辞任から一転、その2週間後の補選勝利による急浮上と、まあ目まぐるしい政局温度の乱高下ではある。

 「ニュー小沢効果」の第1は、13年前に『日本改造計画』80万部のベストセラーを引っさげて経世会=竹下派を「ブッ壊し」て自民党を離脱、細川政権のプロモーターとなった小沢に対する“待望論”がまだ地合いとして相当に残っていて、たまたまの巡り合わせで小沢代表が実現したことで、それが半ば自動的に掘り起こされたということである。

 実際、地方に講演に行って出会う商工会議所や商工会の経済人などにも、「私もあの時、『日本改造計画』を夢中で読んだ。一度、小沢に(首相を)やってもらいたいという気持ちはずっと抱いていた」と言う人が驚くほど多い。その人たちは、細川=非自民連合政権を熱狂的に迎え、それが短命に終わったことに失望し、しかし新進党から自由党へ、そして民主党との合流へと流れる小沢に「やっぱり、もう終わったのかな」と思いつつ仕方なく小泉=自民党支持に一旦復帰し、しかしまだ小沢への期待を捨てきれないでいた——といった感じであり、そのような“小沢神話”(なのか“小沢幻想”に終わるのか?)が全国的に復活する可能性があることが明らかになった。その掘り起こしを確実にするためには、前に書いたように、小沢が『新・日本改造計画』を9月までに出すことである。

 9月までに——というのは、自民党総裁選を迎えて、小泉は、「小泉劇場」を「安倍劇場」に遺伝させようとして、TVのワイドショーにそれを面白おかしく取り上げさせて、昨年の刺客騒ぎのような狂態を演じさせようとするだろうが、その時に小沢が、「そんなお遊びはもうたくさんだ。私の国家ビジョンはこれだ。安倍君が有力とかいう話だが、彼のビジョンはどういうものなのか」と言い放って、事実上「俺の相手が出来るような自民党総裁を出して来て貰いたい」みたいなニュアンスで自民党総裁選に先制攻撃的に介入することが重要だからである。ワイドショー的バカ騒ぎはもうウンザリだと思っている人たちを小沢支持に引きつける機会として自民党総裁選を利用するくらいの仕掛けが民主党に必要なのではないか。

 小沢効果の第2は、“選挙上手”という田中角栄・竹下登譲りのこれまた神話が、これで民主党内に一気に行き渡ったことである。岡田と前原が短命に終わったのは、「小泉劇場」に対抗しなければならないと思いながらも、そのためのイメージ戦略と組織戦略の車の両輪を巧く設定出来なかったためである。イメージ戦略は上記の“小沢神話”復活で十分だが、それだけではダメで、他方で周到な組織戦略が要る。とりわけ前原は、「労組のしがらみ」を脱却するなどと子供じみたことを公言して徒に労組の反発を買うばかりで、労組そのものが言ってみれば巨大な市民運動組織に変容しなければ存続さえ難しくなっていて、そのために民主党の助けを必要としているという問題を全く理解していなかった。他方、自民党は、小泉の「自民党をブッ壊す」のお陰で旧来の支持団体を本当にブッ壊してしまい、組織的には1選挙区平均2〜3万票と言われる創価学会票に頼らざるを得ないというイビツな形に落ち込んでいる。

 そこで小沢は、自ら同選挙区の最有力企業であるキッコーマンを訪れて既知の茂木友三郎会長に挨拶し、すると面白いことに茂木は同社労組幹部を小沢に紹介し、労使一体で民主党を支援することを約束した。これを手始めに小沢は決して人任せにすることなく、中小企業や労組や旧自民党支持団体をこまめに歩いて支持を訴える“どぶ板選挙”を展開した。そのため連合労組も戦線に復帰し、笹森清前会長を現地に送り込んで、終盤では「最後は創価学会票と労働組合票の対決だ」とハッパをかけたという。労組票と言っても昔のような結束力はなく、どれほどの効果があったのかは分からないが、他方で自民党が頼りにする創価学会票は、全国婦人部長を投入して2万5000〜3万票の総動員を図ったにもかかわらず、恐らくは小泉の靖国参拝のマイナス影響もあって思ったほどの成果は上がらず、労組票の掘り起こし効果の方が上回ったと見られる。

 こうした小沢の地を這う活動に対して、自民党は「劇場型選挙」の再現で対抗した。現職首相が補選ごときに応援に入るのは異例なことであるけれども、小泉も1回だけ現地に入って1万人の大集会で演説し、看板の安倍は3回も行き、麻生、谷垣、福田も各1回行き、“小泉チルドレン”を大量投入し、さらにTVタレントのハマコウまで動員したが、効き目はなかった。その裏で小沢に対抗するだけのこまめさを発揮するのは武部幹事長の役目であったけれども、その組織能力は比べものにならなかった。

 来年夏の参院選では、最大の焦点となるのは地方の29の1人区(現在は27で内自民25、野党2)で野党がどれだけ逆転できるかである。そのそれぞれで小沢が今回やったような精密な下からの組織工作を今から1年間かけて積み上げていった場合に、その多くで民主党が勝利を収める可能性が見えてきたということである。自民党の参院議員会長=青木幹雄は、参院での与野党議席差は「15人しか余裕がない。15人減ったら完全に自民党政権が終わりになる」と語っているが(17日付毎日)、まさに自民党にとってのその恐怖を現実のこととして突きつけたのが今回の選挙結果だったと言える。

●安倍窮地

 このことは、ワイドショー的人気が高く、来年参院選を勝ち抜くには最適任だろうということをほとんど唯一の理由として、ポスト小泉レースの先頭を走ってきた安倍にとって、深刻な事態である。

 千葉だけではない。麻生に近い中堅議員は「3回入った千葉で負け、地元と言える山口の岩国市長選で負け、同じ森派の中川秀直政調会長の息子が出て応援した東広島市長選で負けた。選挙に強いという『安倍神話』は完全に崩壊した」と語っている(25日付朝日)。

 千葉補選と同日に行われた山口県岩国市長選では、岩国基地への米空母艦載機移転計画の是非が争点となり、計画撤回を訴えた旧岩国市長の井原勝介が、受け入れに前向きな自民推薦の前岩国JC理事長を大差で破った。また、広島県東広島市長選では、早々と安倍支持の態度を明らかにしている中川の次男だけに、安倍は特に力を入れて応援したが、取りこぼした。付け加えれば、沖縄県沖縄市長選も、嘉手納米軍基地の自衛隊による共同使用が争点の1つとなり、明確に反対を訴えた民主・社民ほか推薦の東門美津子=前衆院議員が当選した。

 劇場型選挙が通用せず、安倍を顔に押し立てても勝てないということになれば、彼を小泉の後継者にする理由は消えてしまう。かと言って彼が今回の小沢のように組織選挙が戦えるかと言えば、かつて幹事長として責任を負った03年の衆院選では勝てず、04年の参院選では大敗して退任しているほどで、全く役に立たない。

 こうした状況で、自民党内の反安倍勢力が“福田政権”実現のため派閥を超えて手を組むという流れはますます加速することになろう。とはいえ、福田自身の安倍とは対照的な地味さに加えて、彼を担ごうとしているのは森喜郎、加藤紘一、古賀誠、青木幹雄ら(田原総一朗の表現では)「土俵からはみ出している人」、つまり半ば終わりかけている人ばかりで、清新さが全く感じられないのが苦しいところである。ただ福田になれば彼は靖国参拝問題の解決と日中・日韓関係の修復に全力を注ぐだろうから、安倍の場合と比べてその点での野党からの攻撃を回避することは出来る。

 いずれにせよ、自民党に問われるのは、国家ビジョンを巡って小沢と渡り合えるだけの力量である。久間章生総務会長が「民主党と比べてきちんと政策を打ち出せるかどうかだ。特に地方に強い政策が必要になる」と語っている(25日付朝日)のはその通りで、小泉の真似事をしてワンフレーズで人をはぐらかしたり、「分からないことは分からないんだ」と開き直ったり、およそパフォーマンスで翻弄できるような相手ではない。政策とビジョンで正面切った議論に応じる覚悟がなければ、ますます小沢の攻勢にタジタジとなるばかりだろう。

●政策対決

 議論の焦点は数々あるが、地方に関しては個別の政策というよりも、地方分権構想自体が大きな論争テーマとなろう。自民党は、中川政調会長を中心に「道州制」案の策定に取り組んでいるが、その先触れとなる北海道道州制特区推進法案の4月12日まとまった素案は、国の補助金を形を変えてほぼそのまま残す一方で、道に委譲する権限は砂防、民有林の治山事業の一部など8項目だけで、当初の小泉プランからは大後退した。これでは道州制そのものもろくなことにはならない。これに対して民主党は単なる地方分権というよりも、中央集権を廃絶して「地域主権連邦国家」に変革する案を掲げており、小沢自身も『日本改造計画』の頃から300基礎自治体に大きな権限を与える徹底分権論者であって、自民党の中央集権の下での地方分権か、民主党の非中央集権化された地域主権かという論争が起きれば興味深い。

 “格差”是正も大きなテーマである。千葉補選で小沢は「アジア外交破綻」と「格差拡大」を小泉政治の悪しき遺産として攻撃し、太田和美候補は「格差ゼロ社会を」と訴えて支持を得た。これに対して自民党は「これから格差是正をスピードアップする」(武部)と受け身に追い込まれ、これを跳ね返すことが出来なかった。もっとも、「格差ゼロ」とは、選挙では対立図式を単純化しなければならないことを差し引いても、明らかに言いすぎで、これについて民主党はもっと厳密な議論を仕掛けないと、社民・共産から自民党抵抗勢力、さらには藤原正彦までが口を揃えて改革否定の口実に格差を誇大に言い立てているのと同じになってしまう。

 『日本経済新聞』19〜21連載の「格差を考える」が書いているように、盛んに持ち出されるジニ係数(所得の偏りを0〜1の数字で示すもので、例えば0.5であれば上位4分の1が全所得の4分の3を占める)が厚労省調査で2001年が0.4983で3年前に比べ0.0263上昇したというのも、その増加分の64%は高齢者世帯(現役時代より所得は下がるのが普通)の増加、25%は単身世帯の増加による世帯人員減少によるもので、これを以て「改革のせいで貧しい者が増えた」言うのは無理である。あるいは、学校給食費が払えず就学援助金を受け取る世帯が増えていると言われるが、これも、東京都足立区の場合、夫婦と子供4人の世帯の年収換算で580万円程度までがこの制度を利用でき、また埼玉県川越市の場合は年収700万円程度までが援助対象となっている。一方、国税庁の調査では全国の給与所得者の7割は年収500万円以下で、そうなるとたいていの人は就学援助を受けることが出来ることになってしまい、「負担能力があるのに免れている人が増える」傾向が指摘されている。これを以て「給食費も払えない子が増えているんですよ」と叫ぶのもちょっと筋が違う。

 この連載で経済学者の小宮隆太郎が言うように「言葉の定義も測り方も不明確」なまま“貧困”イメージが先行すると「怠けている人と一生懸命働く人の所得が異なることを格差と」呼んで後者の足を引っ張るようなことになりかねず、「より精緻な分析が必要」となる。

 あるいは、ニートやフリーターを「だらしない」と非難し、「正規の就職をするのとしないのでは生涯収入にこれだけの差が出て、結婚もできなくなるんだぞ」と脅して無理にでも就職させようとするセミナーが盛んだが、これはナンセンスで、確かにだらしないだけの奴もいるけれども、多くはむしろ自分の夢や目標があって、それへのステップとして敢えてアルバイト生活を選んでいる。それは「金よりも大切なことがある」という1つの価値観の模索なのであって、金で説得することは出来るはずがない。フリーターは「定職に就かずに臨時的な仕事を続けている人」(23日付日経)なのだそうで、だとすると私も30歳から今までずっとフリーターもしくはフリーライターで、そうしているのは職がなかったからではなくて、金よりも大事なことのために生きたいからである。

 こうしたことを含め、21世紀に一体どういう国家・社会を作っていくのかについて正々堂々の大議論が繰り広げられる中で、来年参院選で有権者がそれに審判を下すことになれば、日本政治は子供じみたバカ騒ぎから少しだけ卒業できることになるのではないか。そうなることこそが真の“小沢効果”である。▲

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.the-journal.jp/mt/mt-tb.cgi/456

コメント (2)

「元キャバ嬢」という候補者の怪文書を流した人は、この「元キャバ嬢」という経歴が決定的なダメージを与えるのでは?という思惑があったと思う。
 しかし、結果は思惑とは逆効果となった。元キャバ嬢の候補者ってどんな人なの?という興味本位の好奇心で千葉補選が異様な劇場型になり、武部幹事長演出の有権者をコケにする小泉劇場にあきれた浮動票が民主党にながれてしまった。その票と小沢代表の地道な集票とあいまって1000表差の僅差で勝利になった。
 もっとも計算が外れたのが「元キャバ嬢で何が悪いの?」という有権者の反応だったのではないか。通常の感覚だと、キャバクラというのは、売春こそしないが、女性の性を商品化し、次のさらにエスカレートする風俗産業への入り口であり、限りなく風俗に近い水商売だと思うのだが、千葉県民は別にいいんじゃない、と気にもとめなかった。逆に怪文書で人を貶めようとした反対陣営に対する拒絶反応の方が強くでてしまった。今回の選挙の勝利をTVではしゃぐ民主党議員の顔を見ていると、民主党も自民党と同じく、劇場型政治にまだまだどっぷりつかっている気がしてならない。

 今回の太田候補の経歴を非難するつもりはないが、千葉県民は自分の娘が「社会見学のために、キャバクラに勤めますと」、言い出したら、なんというのかなど、考えてしまった。キャバクラ勤めは社会学習になる!と女性教師にキャバクラのアルバイトを勧める教育委員会の偉い人が出てくるんではないかと、心配にもなってしまう。

 もはやこの国には隠すべき秘密とかスキャンダルはなくなってしまったのかもしれない。それで写真週刊誌も廃刊になった。自分に関係のないところで、誰が何をしようが、関係ない。みんなヨゴレでしょ、政治家だけに清廉潔白もとめるなんてやめましょうという意識なんでしょうか。
 スキャンダルの喪失って恥を失うことかもな、など考えてしまいました。

さすが切れ味鋭いコメントです。
小沢神話まだまだ続きますね。劇場から神話へ舞台は移る。

Profile

現在、INSIDERニュースレターの内容は、ご覧の《THE JOURNAL》内でブログの形で公開されております。
誰でも無料で閲覧し、またそれについて感想や意見を書き込むことが出来るようになっておりますが、従来通り、お手元に電子(Eメール)版配信もしくは印刷版郵送の形で講読を希望される方は、引き続きEメール版:年間6,300円(税込)、ペーパー(紙)版:年間12,600円(税込)をお支払いください。[法人購読の場合は年間105,000円(税込)になります]
ウェブ上で無料で閲覧できるものが、Eメール版・ペーパー(紙)版が有料なのはどういうわけだと思われるかもしれませんが、後者の場合、読者名簿管理と請求の事務、配信と郵送の手間が必要であり、とりわけ印刷版の場合は紙代、封筒代、印刷代、郵便代のほか宛名を印刷して封筒に貼り、印刷されたものを三つ折りして封入し、糊付けし、紐で束ねて郵便局に運び込むのに膨大な手間とコストがかかっていることをご理解下さい。
また、無料で閲覧できるならそちらに切り替えたいという方もおられると思いますが、残余の購読期間は引き続きEメール版もしくはペーパー(紙)版を配信させて頂き、購読料を途中返還することは致しませんのでご了解下さい。

BookMarks

TOKYO KALEIDO SCOOP
http://www.smn.co.jp/

INSIDER(インサイダー)
http://www.smn.co.jp/insider/

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.