INSIDER No.346《MEDIA》ブログは新聞を殺すのか?——『NEWSWEEK』の特集が面白い!
『NEWSWEEK』先週号のカバーストリー「ブログは新聞を殺すのか?」は、18ページを費やした総力特集で、米国における新聞とインターネット・ニュースとの相克の最新動向を描いていて面白い。
このタイトルはややセンセーショナルで、ブログは新聞を殺さないし、その必要もない。ただし、新聞がブログを含むネット・ニュースのパワーを正しく認識することなく既存の権威と権益に安住していると頓死してしまうかもしれないのであって、その意味では、「新聞はネットに真剣に対応することなしに生き残れるのか?」というのが正確な設問だと言える。
これは、ホリエモンがニッポン放送=フジテレビ株の買収に乗り出したときに、「テレビを殺す」と言って大いに顰蹙を買ったことを思い起こさせる。当時、本誌も書いたように、別にホリエモンが殺さなくても、テレビは今のままでは放って置いても自ら死んでいくのである。ホリエモンはもう少し丁寧に、「放送と通信の融合という問題を、あなたがた既存のテレビ界の方々が、今のような中央キー局のテレビ支配が今後とも永続するかの前提に立って、最近インターネットとかいう便利なものが出てきたらしいので、それをテレビ・ショッピングくらいなら使ってやってもいいかな、くらいにしか認識していないのはとんでもない間違いで、そんな程度の認識で旧体制にあぐらをかいて安逸をむさぼっていると、ネット企業がテレビ局を買収することになりますよ。つまり、放送が通信を融合するのでなく、通信が放送を融合する時代が来ているんですよ」と言えばよかったのだ。
新聞も同様で、米国でも日本でも多くの新聞がそうであるように、当日・前日分の記事の要約をウェブに載せるという程度で新聞が通信を融合したつもりになっていると、ヤフー・ニュースを筆頭とする大手ネット・ニュース、ブログによるプロのジャーナリストやアマの個々人の自由闊達な発信、プロとアマが協働する“市民記者”参加型のニュース・サイト、草の根市民のコミュニティ通信——といった通信側での新しいメディア形態の大展開に到底太刀打ち出来ず、ある日突然、自分が頓死したのに気付くといったことになりかねない。
以下、『NEWSWEEK』記事の要点を私流に拾い読み(正確な要約ではない)。
▼米国の日刊紙の発行部数は、85年に6277万部であったのに対し、それ以降は部数減少が止まらず、04年には5463万部にまで落ちた。紙数も75年の1756紙が04年には1457紙に減った。大手でも、多少とも部数を伸ばしているのはUSAトゥデー、WSジャーナルだけで、NYタイムズ、ワシントン・ポスト、LAタイムズなどは横ばいないし下降気味で、各社とも社内のリストラを繰り返している。
▼その最大の原因は、時間と空間の制約なしにニュースを発信するネットニュースの人気が高まり、新聞購読者数を遙かに上回るビジター数を持つようになったことである。米国の新聞は大手といえども基本的にローカル新聞であって、発行部数は最大で70万部程度、家族その他で回し読みしたとしてその2〜3倍である。それに対してヤフー・ニュースの“ユニーク・ビジター数”(同一人物の複数回利用を1人と数える利用者数)は3000万人近くもある。マイクロソフトNBCニュース、AOLニュースなども2000万〜2600万人程度のユーザー数を持つ。もちろん新聞社やテレビ局のウェブを利用する人もいるが、そのユニーク・ビジター数は500万〜800万人程度の辺りに固まっており、それと紙版の読者を合わせてもネット・ニュースにはかなわない(しかも多くは新聞購読者とウェブ利用者は重なっている)。例外はNYタイムズで、NYタイムズ・デジタルのユニーク・ビジター数は05年3月に800万程度から突然、3000万に跳ね上がり、現在は3500万でだんとつトップになった。これはNYタイムズが人気のニュースネットである「アバウト・ドットコム」を買収したためである。
※ヤフーニュース http://news.yahoo.com/
※マイクロソフト・ネットワーク http://www.msn.com/
※アメリカ・オンライン http://www.aol.com/
※グーグルニュース http://news.google.com/
▼新聞のメリットの1つは、家や車の売買、求人・求職、イベント告知などの案内広告だが、この分野でもネット上の案内広告専門サイト「クレイグズリスト」の隆盛が凄まじく、国内123都市、海外35カ国80都市で地域別・ジャンル別に月間800万件以上の新規案内広告を掲載して月間30億ビュー(同一人物が複数回利用すれば複数回で数える)に達している。この影響で、新聞への企業の広告費はまだ増勢にあるが、案内広告費は2000年以降急減している。
※クレイグズリスト http://craigslistfoundation.org/
▼さらに、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)による大小無数の発信が広がり、その中には新聞やテレビなど旧体制の大手メディアの報道をこてんぱんに批判して人気キャスターを降板に追い込んだりするケースもしばしば現れて、ネット側の上げ潮と旧メディアの老化のコントラストを印象づけた。組織としての新聞など報道機関と個人のブログが単独で対抗することなど出来るはずがないが、ブロガーがネット上で数十万、数百万と連携した場合にはそのようなことが可能になる。ブログは、受信と発信が混然となった完全な双方向性が最大の特徴で、無限の対話と情報交換を通じて真実に辿り着いていくことが可能な、下からの民主主義の担い手である。新聞やテレビもウェブを開いて読者・視聴者の意見を受け付けたりもするけれども、それは従来の投書欄や視聴者参加番組とたいして変わらない擬似的双方向性であって、本質的には上からの一方向性のメディアである。そこをどう超えていくことが出来るのかが新聞に問われていると言える。
▼ネットニュースブログは、しかし、今のところ対抗的メディアであって、新聞が消滅してしまっては成り立たない。大手ネットニュースが採っている手法は「アグリゲーター(収集者)」で、たくさんの新聞、雑誌はじめウェブサイトにある情報を掻き集めて要領よく参照できるようにしたもので、端的な話、自分でバグダッドに支局を開設することが出来るわけではない。ブログにしても、新聞やテレビの報道を批判することは出来ても、自身が組織だった報道機関に成り代わることは出来ない。しかし(記事の末尾のこの問いかけは面白い)、もし何百人ものブロガーに資金を提供する企業や投資家が現れたら? そうなったら話は別だ。ブログと新聞の違いはなくなるだろう……。
日本の新聞は米国ほど減退していない。スポーツ紙も含めた日刊紙の部数は90年代後半以降、5700万部台で、スポーツ紙を抜いた一般紙で4700万部台で、微増微減を繰り返している。が、例えば『朝日新聞』を見ると、01年830万部、02年826万部、03年824万部、04年825万部と、じりじりと後退している感じで、それは『読売新聞』でも同様で、『毎日新聞』ではもっと深刻である。1世帯当たりの部数を見ると、90年代半ばには1.2前後あったのが一貫して減り続けて04年には1.06、このままでは1.0を切る日も近いだろう。
日本でも、特に若い世代を中心に、新聞を購読はおろかたまにスタンドで買うことさえもなく、専らネットでニュースをチェックする人が確実に増えている。日本のネットニュースは米国に比べ未成熟ではあるが、例えばグーグル・ジャパンのニュースは、その謳い文句に寄れば「610以上のサイトから最新ニュースを収集・検索」するもので、画面構成もなかなか洗練されていて、使い勝手がいい。ヤフー・ニュースは新聞各紙頼りでやや平凡だが、ライブドア・ニュースは市民記者スタイルを採り入れたり、海外のユニークなサイトと連携したり、それなりの工夫が見られる。また竹内謙が主宰する「JANJAN」のような市民参加型の独立ネット新聞も現れた。手前味噌ながら、本誌が立ち上げた本邦初のプロが発信するブログ集合体《ざ・こもんず》も話題を呼びつつある。
※グーグル・ニュース http://news.google.co.jp/
※ヤフー・ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/
※ライブドア・ニュース http://news.livedoor.com/
※日本インターネット新聞 http://www.janjan.jp/
※《ざ・こもんず》 http://www.the-journal.jp/contents/
それに対して、「アサヒ・ドットコム」はじめ新聞側のウェブは、当日を中心に最新記事のごく短い要約を見せるだけで、「詳しくは新聞紙面で」という誘い水程度で、ほとんど意味がない。米国における通信と新聞の相克はそのまま日本の明日を暗示していると言える。▲
コメント (1)
頭の固い新聞社は危機感のないまま瀕死の状態を迎える事になるだろう。
投稿者: さやえんどう | 2006年3月15日 13:40