INSIDER No.174《DOUBLE-CROPPING》人生二毛作開墾記・その8──敷地の中から水が湧いていることの幸せ
1月24〜25両日は、日本一の芝生屋さんである清水興産グループの清水勇夫会長から同社の精鋭14人の草刈りボランティア部隊に派遣命令が下され、平野英四郎隊長の指揮の下、2日間で一気に我が山林の敷地最上段まで藪を切り開いてくれた。さすがプロ集団で、刈払機、チェーンソー、鋸、鉈を駆使して、藪を払い、蔓を切り、枯木を倒して、さらに草や枝は燃やし、太い幹は後で薪にするようまとめて、あれよあれよという間に開墾作戦第1期の「とにかく上まで藪を切り開く」という目標が達成されてしまった。清水さん、平野さん、そしてプロの作業員の皆さん、本当にありがとうございました。自然王国スタッフのK君と私が加わって総勢16人。やっぱりこういうことは人海戦術に限る。
清水さんは私のモンゴル旅行や六本木男声合唱団の仲間で、ゴルフ場やサッカー競技場の芝生の施工・管理ではナンバーワンの会社を率いており、日本芝生協会の会長でもある。時々ゴルフを教えて貰ったり、私が川淵三郎キャプテンと引き合わせて「学校校庭の芝生化」の運動に一緒に取り組んだりしている。「冬は芝生の仕事が暇なので、“社員研修”として作業員を派遣しますよ」と言ってくれて、この日、横浜の本社と千葉県市原市の作業所から14人の部隊が来てくれたのである。隊長の平野さんは、芝生管理の超一流博士で、ゴルフも釣りもプロ級で、よく遊んで貰っている関係。1日目の夜は半数以上が自然王国の小屋に泊まったので大宴会になった。
皆さんのめざましい働きのおかげで、2日目の午後になってようやく、初めて、敷地のほぼ全貌が見渡せるようになった。下から見上げると、藪だらけだった時には何か暗い圧迫感のようなものがあって、かなり急な斜面のように感じていたのが、意外になだらかで、一番奥に行って少し急斜面になっている地形であることが分かった。西日が差し込むようになったせいもあるのだろう、明るく柔らかな景色で、そこに焚き火の煙が漂って幻想的な趣さえ感じられる。庭園デザイナーのSさんも駆けつけて、「いやあ、南から西にかけての森の景観がいいですねえ!」と歓声をあげた。
こうして切り開いていくと、藪の中からいろいろなものが発見される。中段中央には小振りの梅があり、その左手上方には甘夏ミカンが4本あった。たぶん前の持ち主が植えたのだろう。藪に埋もれていて危うく切り倒しそうになったのを、「あれ、これはもしかしたら甘夏じゃない?」という具合に気が付いて残したものだ。タラの芽も何本か残した。自然薯も蔓や誰かが掘った穴があちこちにある。自然薯掘りに慣れた人は誰もが「こりゃあ、来年になったら自然薯の宝庫だよ」と言う。下の林道の向こう側は(余所の土地だが)ハチクの竹林で、筍も採り放題である。他にも丁寧に見ていけばいろいろなものがあったに違いないが、今はそんなことを言っている場合じゃない、シャニムニ切り開くのが先で、それでも後で出てくるものは出てくるだろうし、欲しいものがあれば植えればいい。
●水源が3つ見つかった!
最大の関心事である水源は、これまでに3つ発見した。第1は、敷地の上の、昔ここが棚田だった時の最上段にあって、これが田んぼに水を供給する源だったのだろう。前の地主が、コンクリートの槽を埋めて、そこから土中にパイプを通して左方の大きな水タンクに貯水し、さらにそこから土中パイプで下の水道栓まで繋がるよう工事がしてあるが、パイプもタンクも泥が詰まっていて使い物にならない。山の浸み水は使っていないと散ってしまって出が悪くなる。それでも僅かに清らかな水が浸み出していて、白い沢ガニが何匹も棲んでいるから、まだ生きている水源である。一度周りを深く掘って、パイプとタンクを工事し直せば、段々水量が増えるのではないか。
第2の水源は、東隣の森に入った辺りにあり、ここのほうが水量はやや多い。亀の形をした大きな岩に巨木の根が絡みついたその根元に水が湧いていて、そこから5メートルほどパイプを引いて大きなコンクリートの槽に流れるようになっている。地元長老のKお父さんによると、昔はここから下の方の3軒の家が水を取っていたそうだから、相当な水量があったのだろう。お父さんを通じて水利権者に了解を得れば利用して構わないとのことなので、まずはここから水を引くことを試してみることにしよう。こういう工事はK君がお手のものである。
この第1と第2の水源は、お父さんから聞いていたものだ。ところがさらに、中段に第3の水源があった。1月11〜12両日、現地に行き、宅地として造成された部分のもう1つ上の段の茅と野バラの山を(風が余りなかったので)野焼き同然に盛大に燃やした。枯れ草や枯れ枝の山を野バラの棘に難渋しながら抱きかかえて焚き火のところまで運ぶ作業をしていると、段々地面が見えてきて、そのさらに上の段との間の土手のほぼ中央から水が少し滲み出しているのが見えた。そこを枯れ葉をかき分けてよく見ると、土手に沿って左(西側)にすこーし水が流れて湿っていて、5メートルほどのところで大きな穴が開いていてそこに水が吸い込まれている。
ところがその先をさらに枯れ枝を取り除いていくと、ずっと下の方まで緩やかなC字形を描いて、元は田んぼの脇の水路だっただろうと思われる跡があるではないか。それに沿ってどんどん掻き分けて行くと、元水路はその段を東に向かって横切って、右手の雑木林の手前で下に曲がってだいぶ下の方まで続いていて、その先は急な斜面になっていてちょっと分からなかったが、全長40メートルくらいだろうか、れっきとした小川の跡なのだ。
そこで、近所のDIY屋に車を飛ばして小さな掛矢(カケヤ=杭打ちなどに使う樫など堅い木で作った槌)を買ってきて、水を吸い込んでいる穴を土で埋めでその上から石を集めてカケヤで叩き込み、上から粘土をかけてまた突き固めると、少しずつではあるが水が下へと流れ始めた。
で、今度は土手下の水源を見ると、1カ所は本当にちょろちょろではあるが水が浸み出していて、その近くに沢ガニが1匹いたので、間違いなく水源である。ところがその30センチほど右にもう1カ所、水が溜まった小さな穴があり、その水は右に流れているようだ。シャベルを使ってその水も左に流れて、先の水源と合流するようにしてやると、だいぶ小川に流れる水が増えた。夕方、暗くなって引き上げるまでに、水はお湿り程度ではあるけれども15メートルくらい先まで届いていた。いまは一番枯れている時期だから、これで雨が降るともっと流れるだろう。
前の地主は、上述のように、ずっと上の方の第1の水源からタンクを経て、この元小川をまたいで地中パイプを引いて、梅の木の横に蛇口を設けていた。ということは、彼がこの工事をした10数年前にはすでに小川は枯れていたか、水量が落ちていたのだろう。しかしここもやり方次第ではチョロチョロ小川を再生することが出来るかもしれない。いや、なかなか面白い。湧き水が余るようならそのまま敷地を流れる小川にして、クレソンでも生えていて、蛙や沢ガニがいて鳥が遊びに来るようにしたいもんだと思っていたけれど、そんなものを人工的に作らなくても初めからちゃんと小川があったのだ。
それにしても、第1、第2、第3とも水の出をよくする作業が必要で、自然王国代表の石田三示さんに聞くと「基本的には深く掘ってみることだが、無駄骨を避けるには井戸屋か何か専門家に見て貰うのがいい」と言っていた。石田宅も自然王国も山の浸み出し水を使っていて、水はチョロチョロ(2センチほどの細いパイプに半分ほど)でもタンクを大きくすれば日常の用には十分足りるそうで、さらに雨水も利用することを考えれば、まず上水は心配ない。
これで塩素ガス殺菌の市水道の水を飲まなくて済む。しかも、水道は電気と違って自分で引かなければならないから、150メートルほど離れたKお父さんのお宅のところからここまで管を引けば、加入料と工事費を合わせて250万円ほど負担しなければならないし、さらに当たり前だが後々水道代を払わなければならない。大変な出費になる。
しかし実はお金の問題などどうでもいい。水道水というのはご承知の通り、塩素ガスを投入して水の中に次亜塩素酸という活性酸素を発生させ、その強力な酸化作用で水中の細菌を殺す。ところがこの活性酸素は水道水の中に残留して、それで顔や手を洗えば肌を酸化させて表面を破壊するし、内臓に入れば細胞を酸化させてガンをはじめ様々な障害を引き起こす。活性酸素こそ万病の元と言われるゆえんで、健康のためにありとあらゆる薬やドリンクを試す人がそれを飲むときに水道水で飲んだり、トレーニングやエアロビクスに取り組んで「あー、疲れた」と言って水道水で喉を潤したりしているのでは、何の意味もない。
そこで浄水器を取り付けて活性酸素を除去する訳で、それでもやらないよりかはマシだが、活性酸素を除去しても活性水素は発生しない。そこでさらに高価な電気分解装置を導入して、活性水素の豊富な「還元水」を作るのがベストということになるのだが、そうまでしなくても、本当の天然の山の浸みだし水なら人工的な還元水に近い水質が得られる(ちなみに天然水と銘打ってボトルで売っている水には活性水素は少ししか含まれていない)。この土地は、上にも左右にも人家がなく、十年以上にわたって農薬を使用したことがないのは確実だから、調べてみないと確かなことは言えないが、恐らく優れた水が出るはずで、これが何より幸せなことなのである。▲